平成18年度 第2回市原市議会定例会 6月29日(木)

市議会レポート【個別質問】桑田なお子

1.景観と景観法について

市原市では平成12年から毎年、都市景観賞を設け、平成15年からは都市景観建造物を指定し、美しい町並みに対しての啓発活動がなされるなど、市独自の取り組みがされてきた事は評価いたします。しかしながら、戦後の経済優先、徹底した土地の収益性のこだわりに左右され、都市景観やその町が築いてきた歴史など考慮されなかったため、固有の文化や風景を失い、その結果、日本国内の駅前は同じような雑然とした景観になってしまいました。市原市も例外ではありません。そのような中、国では景観法・屋外広告物法・都市緑地法を加えた通称「景観緑三法」を平成16年に施行し、我が国初めての景観についての総合的な法律を作りました。
基本理念として良好な景観は国民共通の現在未来にわたる資産であるとし、景観の形成には地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和が不可欠であり、観光や地域活性化への配慮が必要とし、景観形成には地域の個性を伸ばす多様な形成を図るべきで、住民、事業者、行政の協働により進めるべきとしています。
市原市では平成11年3月に都市景観条例を作り、平成17年4月には景観行政団体になっていますが、平成19年度までの継続事業として、新たに景観法に基づく景観計画の策定が予定されています。
そこで4点お聞かせ下さい。

1点目、さらに美しい景観を作るために新たな規制や規則などが盛り込まれる事と思いますが、具体的にはどのような内容になるのか、特に景観上、一番の問題点といわれる広告物の規制、電線の地中化などはどのように考えておられるのか、お聞かせ下さい。

2点目、市原市の実状にあった施策は何なのか、お聞かせ下さい。

3点目、より積極的に景観形成を図る地区を指定すべきと考えますが、景観地区をどこに設けるのか、予定をお聞かせ下さい。

4点目、景観計画策定にあたっては、市民によるワーキンググループ方式を取り入れ、例えば街路樹選定、公園管理など具体的なテーマを話し合い、計画に盛り込んだらどうでしょうか。見解をお聞かせ下さい。

さて、景観の中には歴史、文化、自然等が含まれ、大きな比重を占めているわけですが、4月に発行された「けいかん研究室」に載っていた「いちはら景観周遊MAP」、そして、先日もらった「いちはら文化財ガイドブック」を頼りに公園や文化財を見て歩きました。しかしながら案内が不十分で、なかなか目的地にたどり着けませんでした。せっかくの宝があるにもかかわらず、活かしきれていない現実があります。

そこで2点うかがいます。

1点目:土地の人しか、たどり着けない公園・文化財では「宝のもちぐされ」です。主要道路からわかるような案内板、歴史がわかる説明文などが必要と感じますが、現状をどの程度把握しておられるのかお聞かせ下さい。

2点目:河川公園を管理するのは土木部河川課、文化財を扱う部署は教育委員会ですが、各部署との連携無しではどうにもなりません。
これからの連携をどのように図られようとしておられるのか、お聞かせください。

2.教育基本法について

憲法制定後、教育勅語に代わって出来たのがこの教育基本法です。
憲法と同様に主権者である国民が制定したもので、権力者の暴走を抑制するのがこの教育基本法であり、11条からなる基本法のほとんどの条項が行政にあるべき姿を求めています。
しかしながら、この度国会に提出され、継続審議となった改正案は私たち国民にあるべき姿を求め、規定しています。例えば、改正案に新たに加わったものに、幼児期の教育、学校・家庭および地域住民などの相互の連携協力、とありますが、本来これらは信頼の中で培われるもので、法で縛りをかけるものではありません。又、改正案では教育振興基本計画を作ることになっており、細かい点まで法整備がなされようとしています。
つまり、現行の教育基本法が保障している「教育の自主性」や「主権者である国民」の立場が否定され、又、個人の内面的価値まで踏み込むものであり、改正とは言いながら全く別の考え方になっています。これを政府・国家による教育への介入というのは言いすぎでしょうか。
よく問題にされるのは「愛国心について」です。オリンピックやドイツでのワールドカップの試合を見ていますと、わざわざ教育基本法の中に入れなくても、国を愛する気持ちは充分に育まれていると誰もが思います。
心の問題を、教育の現場で評価することが出来るのかが疑問ですが、今から4年前の2002年、福岡市内の小学校社会科の評価で「国を愛する心情をもつ」という項目があげられABCの3段階で評価された事実があります。しかし、評価する教育の現場では無理があり、先生方からも戸惑う声があがった、と聞いています。
つい先ごろまで改正派の主張は、戦後の荒廃した教育の元凶は、この教育基本法だったと主張していましたが、果たして「国を愛する」ことで解決するのでしょうか。
そこで3点お尋ねいたします。

第1点目、法律は改正や見直すことも必要かもしれませんが、平和と民主主義、さらに自国の利益に偏らない人類的課題を踏まえての改正であるかどうかが問題です。今回の改正案は、時代に逆行しているように感じますが、そのことについての考えをお聞かせ下さい。

第2点目、心は法の立ち入り禁止区域です。「国を愛する」ことを法律で決めることは内心の自由を定めた憲法第19条に違反すると考えますが、見解をお聞かせ下さい。

第3点目、自己を尊重する気持ち、自己信頼が低いと問題行動が多いといわれています。自己信頼を高めるにはひとり一人の「生きる意味」が尊重され、生き方に敬意が払われてこそ、自分の尊厳を取り戻すことが出来ます。「国を愛する」という教育をすることで、教育の荒廃を止めることが出来るのでしょうか、見解をお聞かせ下さい。

3.児童ディービスについて

市内では現在5つの施設で児童ディサービスがおこなわれています。
内容は、集団的療育や放課後の預かり、レスパイト・サービス(レスパイトとは休息の意味で、障害児を持つ親が、自由な時間を持てるように民間施設などが障害児を一時的に預かるサービス)となっています。
今回の障害者自立支援法においては「日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練などのサービスを提供するもの」となり、専門的療育を行う場と明確に位置づけ、放課後の預かりや、レスパイトなどは地域生活支援事業のタイムケア事業などを利用する方向になっています。
しかしながら、現実には明確に分けることは出来ません。児童ディサービスの実態は障害児に専門的な支援を提供するほかに、放課後の預かりや、レスパイトなど、多様な利用の仕方がなされています。
学童保育でも障害児を受け入れるようになってきましたが、対象となるのは比較的軽い障害をもった子どもたちです。しかし本当に多くの支援の必要な子どもたちには、児童ディサービスがなくてはなりません。
仮に、「療育型」の児童ディサービスと、「放課後型」の児童ディサービスと呼ばせてもらいますと、「放課後型」は3年間の経過措置が行われる予定が、厚生労働省から
厳しい基準が示され、「放課後型」児童ディサービスとしての運営を継続するのが難しくなっていると聞いています。

10月から「放課後型」児童ディサービスが、もしも出来なくなった場合、現在、通っている子どもたちの行き場が無くなってしまいます。サービス提供実績の評価を十分に行い、現状」をよく把握し、サービス提供水準を後退させることなく、子どもたちの居場所を確保すべきですが、地域生活支援事業のタイムケア事業への移行準備も踏まえて、今後どのように考え・計画されておられるのか、見解をお聞かせ下さい。

4.就学前の障害児の居場所について

先日、市民ネットワーク主催で行った「就学前の育ちにくい子どもについて」語り合いませんか、の座談会には、新聞のイベント情報を見て、遠く香取市、船橋市、千葉市、袖ヶ浦市、木更津市から大勢の方々が駆けつけてくれました。色々心配な事例に対しては、アドバイザーがユーモアを交え的確な助言を提供していました。
生まれてくる子の約3%に、何らかの支援が必要だと言われています。
これは、親の育て方が悪かったとか、しつけが出来ていないという問題ではなく、統計的に示されている数字です。つまり、誰にとっても我が子に支援が必要になるかも知れないのです。子育て支援にはこのような支援の必要な子どもが生まれた時のサポート体制もしっかり作っていかなければなりません。安心して子どもを産み、育てるにはこの視点は欠かせません。全体から見て、数は少なくかもしれませんが、助けが必要な人には支援はおこなわれるべきです。

現在、公立保育園では各地区で障害児を受け入れていますが、公立の幼稚園では園長の裁量に任されています。行政は発達支援センターに通いながら、地域の幼稚園に通うことをすすめるのであれば、公立幼稚園は率先して障害児を受け入れるべきと考えます。昨年の教育委員会の回答では「公立幼稚園では1学級35人編成で担任1人なので障害児を受け入れることは出来ない」とありましたが、今年も同じ回答になるのでしょうか?補助員を付けるなり、対応が必要と考えますが見解をお聞かせ下さい。

又、「市原の子どもは市原で育てる」という市政を実施していくためには、民間施設との協力は必要不可欠です。市の実施計画では認可外保育園の支援策が示されていますが、認可外幼稚園に対してもその実績を評価し、その働きに具体的な支援をおこなうべきと考えますが、見解をお聞かせ下さい。

幼児期の子どもはちょっと変わった子に対しても全く意識することなく、ごくごく普通に接します。どんな子どもも成長していく力を自分の中に持っています。大人になってからバリアフリー、心のバリアフリーと言われても、お互いに知らなくては、助け合うことも支えあうことも知らずに育ってしまいます。排除する社会は、一見、効率よく見えますが、脆く貧しい社会です。人間であるかぎり、誰でも弱さを抱え、誰でも病気になり、老いていきます。老いる事は、誰もが障害者となることを意味します。

小さいうちから障害があってもなくても共に生活する体験が必要と考えますが、見解をお聞かせ下さい。

5.市原市農林業振興計画(案)について

「魅力ある元気な農林業の振興」との副題でこの度、今後10年の主な事業を体系的に整理した「市原市農林業振興計画」案が出されました。この計画書の資料編には計画策定の経過、アンケート調査結果が載っており、興味深い内容となっていました。
この中から疑問に思ったことの5点をお聞かせ下さい。

1点目、農業の担い手対策について伺います。切実で緊急性のある問題だと、アンケートの結果から見ても読み取れますが、今までの対策事業でどんな効果が出ているのか、そして今後どのように取り組まれていくのか、その内容をお聞かせ下さい。

2点目、市内には観光農業やイロイロな作物に付加価値を付け、家族経営協定を結び、夢をもって取り組んでいる農家もあります。ぜひとも、そのような農家をモデルとして、それに続く農家が育つような仕組みが必要と考えますが、見解をお聞かせ下さい。

3点目、新規就農者への支援整備では現状は年間1人です。目標が5人とありますが、どのような農業者を想定しておられるのか、また、専業だけでなく気軽に農業に接したいと思う圧倒的多数の人たちに対して、積極的な施策を取るべきと考えますが、見解をお聞かせ下さい。

4点目、地産地消と「食育」を実践するうえで学校給食は大事な場です。ある学校では野菜を作り給食で食べる試みもされています。地場産物を増やすこととして、どのような品目を増やしていかれるのか、お聞かせ下さい。

5点目、食品衛生法の改正で、農薬に残留量規制の網をかける「ポジティブリスト制度」が5月29日から始まりました。市原市では、この制度のため空中撒布面積は1割弱減ったと聞いています。ポジティブリスト制度が、今後どのように反映されていくのか、お聞かせ下さい。