平成18年度 第4回市原市議会定例会 12月13日(水)

市議会レポート【個別質問】桑田なお子

1.教育基本法と教育現場について

全国各地で、イジメによる自殺者が、後を絶ちません。11月17日には伊吹文部科学大臣が、小学校・中学校・高校生の子どもたちと大人に向けて緊急アピールを出しています。
「子どもは、社会を映す鏡」と言われていますが、まさに行き詰った希望の見えにくい大人社会の反映だと感じます。
又、幼い頃から塾や習い事で、時間の余裕が無く、目いっぱい遊んだ事の無い子ども達のストレスの重さを、「子どもの権利条約」の観点から国連・子ども権利委員会は指摘し、日本に対し、学校での系統的なカリキュラムによる人権教育および教師への研修プログラムの必要性と、競争によるストレスおよび学校嫌いの防止など、踏み込んだ提言を行っています。イジメはどこでも起こり得る問題です。現実の大人社会でもいたるところにいじめの構図はあります。もとより、いじめられる子どもの心身の痛みを理解し、除く取り組みはしなければなりません。しかし、一方、いじめる側の子どもの心もまた病んでいることを認識し、対応しなければなりません。それなのに、国ではイジメ対策として、いじめに加担した教師への懲罰やいじめた子の出席停止などの、即物的な対策が取られようとしています。果たして、それでいじめ問題が解決するのでしょうか。なぜ、子どもたちはイジメをするのか、その原因を探り、根本から取り組む事が必要ではないでしょうか。往々にしていじめる方は力が強く、周辺にいる子どもは、自分がいじめられる側になることを恐れ、見て見ぬふりをするか、つられてイジメに加担してしまう問題もあります。
以前、議会でも取り上げましたCAPプログラム(child assault prevention・子どもが暴力から自分を守るための教育プログラム)を取り入れ、役割劇(ロールプレイ)を通して
イジメを静観する傍観者から行動する傍観者に変え、自分の大切さを知り、人の権利も大切にする子ども達を育くみ、イジメを減らしている学校もあります。
子どもが、本来持っている力を引き出し、自分で考え行動できるようにすること、自分に自信を持ち、将来に希望を抱き、毎日の学校や家庭や地域での暮らしを楽しむ力をつけることが大切ではないでしょうか。しかしながら現状は、子どもたちから学ぶ楽しさや生きる喜びを奪い、学力中心の教育のあり方が、できる子とできない子を二分化しています。経済格差が、そのまま教育を受ける機会の格差につながり、就職難などの問題に結びついて、将来の経済格差につながる教育のあり方、社会のあり方を根本から問い直す必要があります。
さて、このような中、政府は戦後教育の荒廃は教育基本法の不備だったから引き起こされたかのように言いはやし、教育基本法を変えようとしています。この基本法は、日本国憲法が制定された翌年に作られ、教育の目的を、戦前の教育勅語による臣民教化から、一人ひとりの人間性の開花をめざす、主権者国民の自己形成へと転換していくものへと変えました教育基本法前文には、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに普遍的にして、しかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」と高らかに謳いあげています。
教育基本法を変えたいと思う政治家は、子どものモラル低下、子どもの犯罪率の増加をあげますが、戦争直後の50年前に比べて少年犯罪発生率は五分の一以下になっているのです。確かに親殺し、子殺しなどの惨い事件は跡を絶ちませんが、それは教育基本法のせいではありません。私には日本国憲法を変えようとする人たちの狙いが、次には日本国憲法を変え、戦争ができる国にしようとしているとしか思えません。
そこで、4点お尋ねいたします。

1点目、教育委員会はいじめ対策月間として、10月30日から1ヶ月間・夜8時まで電話相談を受け付ける対応をしたことは評価するものです。通常の数倍の相談を受けたと聞いています。そのほかに、いじめの問題にどのように取り組んでおられるのでしょうか?又、教育基本法を変えれば、現場のイジメや非行などが解決するとお考えでしょうか?

2点目、改正案では、政府が教育振興基本計画を策定し、それに沿って、地方公共団体も計画を策定することになっていますが、それは、自治体の自治権、裁量権の侵害にあたるのではないでしょうか?

3点目、「学力向上と競争意識の涵養」のため、来年春から、小学校6年生と中学校3年生対象に全国一斉学力テストが実施されようとしています。過去に、一斉学力テストは学校間競争を激化させ、色々な弊害が生じ1966年に廃止されました。
敢えて今再開し、行う意味をどのように考えておられるのか、お聞かせ下さい。

4点目、政府はイジメ対策に緊急性が高いと判断し、補正予算を組むことになりました。市原市では既に、全部の中学校にスクールカウンセラーやアシスタントを配置しています。しかしながら、昨年に比べて時間数が減らされています。今回又、見直されると思いますが、カウンセラーや現場の先生方が忙しくしていると子ども達は、相談しにくいものです。もっと余裕のある対応ができるように、人手を増やす事も検討しなければなりません。現場教師は部活指導にも多くの時間を割かれています。ゆったりと子どもの相談にも乗れるような、負担軽減の工夫についてお聞かせ下さい。

2.障害を持つ子の居場所について

この秋、県議会では全国で初めての「障害者の差別をなくしていこう」という主旨の条例が採択されました。正式な名称は「障害のある人もない人も、ともに暮らしやすい千葉県づくり条例」です。 何が差別にあたるのか、どうしたら暮らしやすくなるのか、それを知るには幼い頃から障害があってもなくても、共に遊び生活をする事が大切です。 去る10月31日、公立の牛久幼稚園で「幼稚園・小学校・保育園の合同研修会」が行われました。研究発表のテーマは「心豊かな子どもの育成~人とのかかわりを通して」でした。入園当初、集団に全く入れなかった子ども達が、園長はじめ全職員あげての教育的取り組みの結果、少しずつ皆の中で過ごせるようになったとの報告だったそうです。 実は、年長クラス33名中3名、年少クラス33名中5名の障害を持つ子がいたのです。 先日、実際はどうだったのか牛久幼稚園に聞き取りに行ってきました。 入園後、障害が判明し、発達支援センターに通うように保護者にすすめた例は3件。障害児が8名いるということで、急遽補助教諭を入れてもらったとの事です。 比較的軽い障害だったこともありますが、先生方の熱意と苦労が保育の中で、先生と子ども、子ども同士のつながりを生み出し、それが障害児や周りの子ども達の成長に大きく貢献した、評価されるべき貴重な保育実践です。この幼稚園ではイジメはないそうです。 先生は「普段大事にしなければいけない、一歩一歩を誠実に歩む大切さを教えられ、教師も育てられた」と語っておられました。 そこで4点伺います。

1点目、障害があってもなくても、子ども達がともに育つ環境を整える事が求められています。現在、私立の9つの幼稚園には障害児が17人、公立の幼稚園には○人、受け入れていますが、私立幼稚園には年間に国と県を合わせて39万2千円、市から6万円の補助金が出ています。比較的障害の軽い子どもは受け入れやすいのですが、そうでない手のかかる子が、受け入れの気持ちのある認可外の幼稚園に通っているケースもあります。しかし、認可外の幼稚園の場合は、一切、補助金が出ません。こうした事態を把握しておられるのか、どのような対応を検討しておられるのか、お聞かせ下さい。  そして又、公立幼稚園が率先して、障害児の受け入れに当たるべきと考えますが、合わせてお聞かせ下さい。

2点目、保育園の場合、現在は親が働いている、いわゆる保育に欠ける子どもを受け入れる、障害児保育を実践して来ています。しかし、一歩進んで、保育園の入園の条件に親の就労を問わず「障害をもつ子にとっても居場所とする」方針を掲げるべきと考えますが、今後の方針をお聞かせ下さい。

3点目、国は保育の待機児対策として、「認定こども園」制度を普及させようとしています。千葉県でも習志野、柏でモデル事業が行われ、その課題も浮かびあがってきました。市原市では、「認定こども園」制度導入をどのように取り組むお考えでしょうか?又、そこでは障害児受け入れは、どのようになっていくのでしょうか? 今後の取り組み方針など、お聞かせ下さい。

4点目、子どもの障害に気づいたら、早い段階での対応が必要と考えます。発達支援センターでは、スマイル通所希望者(待機者)100人近くいると聞いています。待機者をなくし、相談しやすい体制の強化が待たれますが、充実に向けての計画をお聞かせ下さい。又、土・日の開設も必要ではないかと考えますが、併せてお聞かせ下さい。

3.学童保育について

兄弟姉妹の数が減り、仲間と遊ぶ機会が少なくなった現在、学童保育の持つ意味は大きなものがあります。学童保育はその利用料金も一律になり、保護者の負担も減り、多少の課題はありますが、順調に運営されています。
国では、あらゆる子どもを対象とした放課後子どもプランを打ち出していますが、市原市では、順次、学童保育を充実させるとの事ですが、それは必要であり大切だと思います。
市内の小学校45校の内、学童保育があるのは17校、来年は4校増やして21校としています。今回の議案でも条例を改正して設置可能な学校に早急に開設するとの方針に対し、評価するものです。
しかしながら、毎年4校ずつ増やしていくと単純に計算しても、あと6年かかります。そこで3点お尋ねいたします。

1点目、先日も国分寺台東小学校区での開設を求める要望を聞きました。今後、市内の24の小学校区での設置計画をお聞かせ下さい。

2点目、小規模校であっても学童保育は必要です。例えば東海小学校に学童保育がないために、隣の千種小学校に通う児童もいます。一方は児童数がますます減り、一方ではますます児童数が増えるという現象が現れています。小規模校の20人に満たないところに対する対策をお聞かせ下さい。

3点目、今回新たに開設される学童保育の中には、地域の方々で運営する団体もふくまれています。地域の特色を活かした色々な形の学童保育が考えられると思いますが、先ずは小学校との連携が欠かせません。しかしながら現実は、校長始め先生方の学童保育にたいして、「学校とは一線を画したい」との態度表明をされる方も、中にはおられます。
学童保育推進のためには、教育委員会と連携が必要ですが、どのような形の連携をとっておられるのか教育委員会の側からの答弁をお聞かせ下さい。

4.市原市国民保護計画(案)について

平成18年11月に市原市国民保護計画(案)が出されました。
この夏、計画の素案が出て、8月18日~9月8日までパブリックコメントを受け付け、5人から意見が提出されたと聞いています。11月21日に第3回目の市国民保護協議会が行われましたが、その答申案は承認され、約35分で会議は終了ました。
国民保護計画は住民の生命、身体及び財産を保護し、被害を最小限度にとどめるという基本的人権の尊重と謳われていますが、果たしてそうなのか、と疑問を抱いてしまいます。そこで4点伺います。

1点目、自然災害とテロ・戦争被害は似ているようですが、「避けられず備えるもの」である災害と、人が引き起こすテロ・戦争とは根本的に異なります。防災対策と国民保護計画は区別すべきと考えますが、見解をお聞かせ下さい。

2点目、「国民保護計画」という名称では、自治体における保護の対象も日本国籍をもつ人に対してだけの行われるような印象を抱いてしまいますが、外国籍住民を含む地域住民を対象にしているのか、お聞かせ下さい。

3点目、「協力は強制しない」とありますが、小さなムラの場合、事実上の強制になるのではないかと考えます。拒否の自由、意見表明の自由という基本的人権をどのように守るのか、どのような方法で知らせていくのかお聞かせ下さい。

4点目、「千葉県との事前相談における主な修正指摘事項」を読みますと、対策本部の設置は、内閣総理大臣~総務大臣(消防庁)~県知事~市長、との流れになり、自治体が戦争遂行のための下請け機関になってしまうのではないかと危惧するものです。これは、「住民の福祉の増進を図る法」である地方自治法の役割を根本から否定しているのではないかと考えますが、見解をお聞かせ下さい。

5.郷土ゆかりの人々と資料について

総合計画の「ともに育むまち」の中で文化の項目に「市民が郷土の歴史の理解を通してふるさとの意識を育まれるよう、貴重な文化遺産の保護や活用を図ります」とあり、そして又、「本市にゆかりのある芸術家の作品などの収集を行うと共に、収蔵施設の整備について検討を進めます」とあります。
つい先日、「市原市立中央図書館開館15周年記念事業」として「郷土ゆかりの資料展」が行われていました。市内の個人の方の収蔵作品が、多数、展示されたとの事ですが、その収集の広範さに頭が下がります。あわせて、フロアーには、市が購入したという、深沢幸雄氏のガラス絵も展示されており、拝見しました。
私自身、市原市に住むようになって30年近く経ちますが、市原市ゆかりの方々の活躍をこうした実際の資料で知ったのは、初めてでした。そして青鞜社で活躍した原田琴子のことを知ったもの初めてでした。
最近、竹中繁さんの伝記を読みました。彼女は朝日東京新聞の初めての女性記者で、晩年鶴舞に住んでおられた方です。市川房江とも親交があり、市川房江も晩年鶴舞の地を度々訪れ、そこで自叙伝の執筆をされたと聞いています。又、NHKテレビ日曜美術館で再放送にもなった画家の松田正平も鶴舞に住んでいました。
一方、民具なども歴史を語る大切な資料です。高滝のレストランがある1階にも何点か展示されていますが、系統立てて展示する必要があるのではないでしょうか。知人からも、「亡くなった親が集めた民具や昔のものがあるけれど、市に博物館や資料館があれば活用してもらいたいのだけれど・・・」との話も聞いています。戦後、急速に生活用式が変化し、昔の暮らしを知る方々も高齢になってきています。今が最後のチャンスだと思います。そこで4点お尋ねいたします。

1点目、市原市にゆかりのある人で、まだ知られていない人もいるはずです。このままだと貴重な資料がバラバラになってしまうのではないかと心配です。ここで一つにまとめる作業が必要だと思いますが、見解をお聞かせ下さい。

2点目、埋蔵文化財に対しては、調査や整理がなされていますが、古文書や民具などの資料の整理の計画の予定はあるのか、お聞かせ下さい。

3点目、市が譲り受けた民具や資料など、休園になった幼稚園が収蔵庫になっていると聞いています。閉めたままでは、収蔵したものも建物も傷んでしまいます。現在の状況をお聞かせ下さい。

4点目、お金をかけた資料館などの建物を作る時代ではありませんが、何らかの形で市原の宝と呼べる貴重な資料を保存し、活用を図るべきと考えます。既存の遊休施設を利用し、展示・公開していくことは考えられないでしょうか。見解をお聞かせ下さい。