平成24年6月定例県議会

「子ども・被災者支援法」の実効性を高めることを求める意見書(案)

国会では「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進関する法律案」(略称「子ども・被災者支援法案」)が与野党合意で提出され、成立した。
本法は第二条第二項で「被災者一人一人が、第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であ
っても適切に支援するものでなければならない」と基本理念を謳っている。
「自主避難」を選択した人々も含め、原発事故の影響に苦しむ人々の生活再建の大きな契機となるものと評価するものである。

そこで本法をより実効性のあるものとするため、以下の点を強く求める。

1.「支援対象地域(第八条第一項)」においては、「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが、一定の基準以上である地域」とし、その「一定の基準」は、省令などで定めるとしているが、国会での議論を経て規定すること。

2.「医療費減免および医療の提供(第十二条第三項)」において、その対象を「子どもおよび妊婦」に限定し、同条第二項では生涯にわたる定期的な健康診断の対象が「事故当時子どもであった者(胎児である間にその母が当該地域に居住していた者含む)およびこれに準ずる者」としている。しかし、チェルノブイリ原発事故の健康被害が、事故後26年経過した現在も深刻な状態であること、また、長期化する低線量内部被曝の影響は重篤な疾病として発現するまで相当の時間の経過があることが考慮されなければならない。健康診断の保障および医療費の減免は、対象を上掲の「一定の基準」以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある一般の「成人」にまで拡大し、「免除」とすべきである。
3.同じく第十二条第三項の除外規定では「被ばくに起因しない負傷又は疾病にかかる医療を除いたもの」となっている。被ばくと疾病との因果関係の立証責任は、あくまでも原子力政策を推進してきた国にあることを明記した上で「被曝者手帳」あるいは「健康管理手帳」を交付し、健康に関する情報の本人保管と、定期健康診断、通院・医療行為の無償化、社会保障などを法的に保障することを明記すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年6月 日

千葉県議会議長

内閣総理大臣 あて


大飯原発3・4号機再稼働決定の撤回を求める意見書(案)

6月16日、野田首相は、福井県に立地する関西電力大飯発電所三号機及び四号機について、「安全性を確認」「地元の同意が得られた」とし、再稼働を正式決定した。
今回の再稼働決定は、4月6日に定めた安全基準により「安全性が確認された」ことが発端であった。しかし「安全基準」は経産省の「原子力安全・保安院」が2日間で作成したものを、野田首相はじめ専門的知識を持ち合わせない4名の大臣による、たった3日間の非公開の会合で、あくまでも政治判断として決定されたものにすぎない。内容も福島第1原発事故後の緊急対策とストレステスト(安全評価)の1次評価でよしとし、時間のかかる抜本的対策はすべて先送りとした。そもそも、東京電力福島第一原発の大事故の検証も未だ終わっていない。さらに、関西電力はその「安全基準」決定のわずか3日後に「大飯発電所3・4号機における 更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画」を発表しているが、ベント設備も、防潮堤のかさ上げも、免震施設の建設もすべて先送り、専門家の指摘する「活断層」の調査も行われない。「福島のような地震・津波が来ても、原子炉は安全だ」「全電源が失われても、炉心損傷に至らない」と断ずる科学的根拠は皆無である。
また、本年4月1日から発足する予定であった原子力規制庁は、国会での法案審議が進まず未設置のままであり、客観的に監視や評価、規制を行うための組織は従来のままである。野田首相はじめ4閣僚が「再稼働」を決定する法的根拠も皆無である。
今回の大飯3・4号機の再稼働の強行は、現在すべてが停止している原発の本格的再稼働のきっかけになることが懸念される。新聞等の世論調査においても国民の多数は再稼働への不安を表明し、今後も大規模地震の発生が確実視される中、財界の意向にすぎない「電力不足」を理由とした原発の再稼働は認められるものではない。
国においては、今回の大飯原発3・4号機の再稼働決定を即座に撤回することを強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年6月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣 あて