平成24年度 第1回市原市議会定例会 3月2日(金)

【代表質問】 小沢 みか

1. 地方分権・地域主権改革に対する取り組みについて

H5年の「地方分権推進法」の制定に始まり、H12年に施行された「地方分権一括法」などを経て進められてきた地方分権改革も、今年度に入り加速度を増してきている。
H23年には、第二期分権改革となる第1次・第2次の一括法が成立し、法令による義務付けや枠付けの見直しや県の権限の市への移譲が進められることとなった。合計230もの法律が関係し、膨大かつ多岐にわたっている。

市原市でも、40以上の項目がH24年4月以降、順次移譲されることになっている。
佐久間市長は公約で「地域主権の確立」を掲げており、また全国市長会内に設置された地方分権改革検討会議の委員を務められるなど、地方分権にかかわる課題に対し、各自治体の首長とともに様々な意見交換や提言をしてこられ、それだけに大きな思いをお持ちのことと思われる。

そこで、分権の矢が次々と放たれている今現在においての佐久間市長のお考えを問う。特に、一括法制定後に明らかになってきた改革のメリット・デメリットや、課題解決のためには市原市行政の何を変えるべきか、といった点についてのご答弁をお聞かせ願う。

答弁 市長
地域主権改革により、地方自治体においては、議会をはじめ市民の皆さまとともに地域のあり方や未来について自らの責任において考え、自主的かつ総合的に地域の諸課題に取り組み、それを解決することが強く求められていると思います。
自立都市いちはら、幸福都市いちはら、ということを私は申し上げさせていただいておりますが、全国市長会に設置された「地方分権改革検討会議」の委員として、現在も国と地方の役割分担や財源等、様々な観点から検討を行っております。 今回の改革により、これまで国の法律や都道府県の条例で定められていた基準等が、一部ですが地域の実情に応じて条例により定められるようになったこと、義務付け等が一部見直され事務が簡素化されたこと等は、改革のメリットとして評価しているところです。
一方、デメリットとしては、財源等の移譲が伴っておらず、地方交付税により措置されることとなっていることから、不交付団体である本市にとっては業務は増えるが財源措置が伴っていないことが課題であると考えています。

このような状況下、今後も権限移譲により業務の増加が予想されることから、限られた市の財源の中で自らの地域を経営していく企画力、いわゆる政策立案能力や法務能力のある職員を育成していく必要があると考えています。
加えて、常に市民目線で物事を考え、効率的・効果的な業務を遂行するとともに、政策課題に対し、知恵を絞り、知良い意志を持ってまちづくりに取り組む職員を育成してまいります。

分権改革の課題のうちの一点について、再度質問する。

 例えば、先ほど例に挙げた保健師による未熟児の訪問指導など、権限移譲には業務量の増加・高度化・専門化が伴う。
この課題に対する執行体制は、今後どう担保されるのか。

(答弁)総務部総務課 行政改革推進室 権限が委譲されてくる事務については、平成24年4月1日施行予定の組織機構の一部見直しにおいて、それぞれの事務量に応じ、3名の増員をはかる予定です。
また、ご指摘の通り人数だけの対応では困難であることから、現在事務を行っている県の職員に同行したり、研修会等にも参加する等準備を進めています。
事務の移譲にあたりましては、引き継ぎ等に万全を期し、市民サービスの低下を招かないよう、職員の専門性を確保してまいります。

分権改革は、これまでの国と地方の上下・主従関係を改め、地方の自己決定権の拡大を進めるものだが、これはあくまでも手段であって、真の目的は地域の実情にあわせた的確できめ細かな公共サービスの提供と、個性を生かした地域社会づくりにある。
そのためには、市自らが政策を考え、実施し、責任を負うという意識への改革と覚悟が必要である。

 H22年12月議会の他会派からの「改革の進展に対応できる職員とはどうあるべきか」との質問に対し、佐久間市長から「常に市民目線で物事を考え、効率的・効果的な業務執行や政策課題に対し、強い意思を持って臨む職員が必要であり、企画力、いわゆる政策立案能力や法務能力のある職員を育成していくこと重要」との答弁があった。
職員に対する意識の醸成ついては現在具体的にどのように取り組まれているのか。

(答弁)総務部総務課 行政改革推進室 本市では、平成18年3月に策定した市原市人材育成基本方針に基づいて、職員の意識改革に取り組んでおります。
人材育成基本方針では、市の課題等を傍観者的に捉えるのではなく、職員として自覚を持って考え、自ら解決することを重点的に醸成すべき項目の一つとして掲げ、これに沿った研修等を実施するとともに、人事評価制度の評価項目としても取り上げています。
加えて、職員が主体的に意識改革を含めた能力開発に取り組めるよう選択研修等も実施しているところです。

「地域の実情」の名の下で、条例改正による最低基準の引き下げや安易な要件の緩和・人員の削減などが行われる可能性もないわけではなく、土地利用や市独自の新規事業などでは、国や県よりも身近な市の裁量が働くことで、行政と地権者や事業者との関係が近くなり、癒着や不正が懸念される。
従って、議会は今後も政策や予算のチェックや執行機関への監視という役割に、心して取り組まなければならない。
そしてそれに加えて、これまで以上に積極的に住民・利用者・関係者の意見を集約し、政策や条例を提案する力が、これからの議会には必要であると自覚している。

地方分権・地域主権改革は諸刃のつるぎだが、活用しだいで市原市の特徴が活かされ、住民の暮らし・福祉・経済・自治の発展につなげていくことができる。変化を恐れない、挑戦する自治体の姿勢も必要である。
佐久間市長をはじめとする行政のかじ取りに期待したい。

2. 平成24年度当初予算案について

市原市の来年度当初予算案を見ると、税収は固定資産税と都市計画税が評価替えにより大幅に減少、法人市民税も景気低迷のあおりを受けて8.8%減少の見通しとなっている。一般会計の予算規模は831億1千万円と2年ぶりのマイナス予算となった。
しかし、限られた歳入を「安全・安心に暮らせるまち」「個性輝く活力に満ちたまち」「子育て・教育一番のまち」という3つの重点施策に「選択と集中」させ、さらに「東日本大震災を教訓とした危機管理の強化」という理念がしっかりと読み取れる予算編成なっており、その点は評価する。
しかし、気になる点がいくつかあったので、順次伺いたい。

(1) 東京電力株式会社による電気料金の値上げについて

今年に入り東京電力株式会社が契約電力50キロワット以上の「自由化部門」の企業に対し、4月より電気料金を17%値上げすると発表した。
この発表を受け佐久間市長は、船橋市・習志野市・千葉市との湾岸4市共同で東京電力株式会社に対し納得いく情報開示を求める旨の要望書を提出した。
予定通りに値上げされた場合、地域経済や市の予算執行に大きな影響を及ぼすのは必至である。

 そこで、市ではこの電気料金値上げによる影響をどの程度と試算されているのか。そして、それに対しどのような対策が考えられているのか。お聞かせ願う。

(答弁)財政部 契約管財課 市全体への影響については、対象となる施設が下水道処理施設などのプラント設備をはじめ、学校や公民館など多岐にわたっており、全体での試算には時間を要している状況です。
本庁舎に限って申し上げますと、値上げ分にかかる電気料金はおよそ700万円となる見込みです。
また、ご指摘のように2月16日に千葉市・船橋市・習志野市・本市の4市で、さらなるコストダウンなどを東京電力に要望いたしました。

さらに、2月22日に千葉市長会、町村会において、緊急要望書を提出したところです。
電気料金が値上げされた場合の対策は、昨年にも増して、蛍光灯の間引き、エレベーターの停止、使用電力の可視化など、できる限りの節電対策を講じてまいりたいと考えています。

 節電といえば昨年の夏、電力需給バランスの悪化によって電力使用制限令が発動されたことを受け、市原市役所節電行動計画が策定された。7月1日から9月9日の間の計画だが、この間どのくらいの節電効果があったのか。

(答弁)財政部 契約管財課 23年度の節電行動計画は、施設規模や業務内容に合わせた数値目標を定めて取り組みました。
25%以上の削減を目標とした本庁舎では、25.5%の削減をしました。
また、15%以上の削減を目標に取り組んだ福増クリーンセンターでは44%、臨海球技場では53.2%の削減を、5%以上の削減を目標とした松ヶ島終末処理場は29.8%、菊間終末処理場は12.9%の削減を達成いたしました。
この他の施設では、15%以上の削減を目標とし、18.8%の削減をしたところです。
このように、すべての施設で目標を達成することができました。

昨年の電気事業法による使用制限値15%を大きく上回っており、取り組みの成果が表れたと言える。
しかしどうしても足りないときは財政的な処理をするほかない。
市原市は、電力購入費の削減につながる競争入札による特定規模電気事業者PPSとの契約をH19年度から行っているが、入札に応じるPPSが少ないため、今のところ契約は公民館での1社に留まっている。今後電力の自由化を一層進めるよう、国に働きかける必要がある。
また、再生可能エネルギーをはじめとするエネルギー施策について、自治体が真剣に取り組まなければならない時期に来ていることも確かである。今後さらに本腰を入れて取り組まれるよう、要望する。

(2) 危機管理の強化について

H24年度予算案では、東日本大震災を教訓に危機管理体制を強化し、災害に強いまちづくりを進めるための事業として、総額約18億9700万円が計上されている。防火行政無線システム配備や消防救急無線配備、小中学校施設耐震対策など、災害対策に対し最優先で取り組まれることが予算にも反映されており、評価する。

しかし予算案からは、臨海部の企業災害に対するアプローチに関しては今一つ読みとることができない。
震災後一年を経過した今も、市民からは臨海部企業の危機管理や安全性に対する懸念の声が多く寄せられている。市民の間に企業災害に対する不安が根強く存在する以上、市はもう一歩踏み込んだ対策をとれないものだろうかと感じている。

今後はソフト面の対策が鍵になってくるが、これについては、これまでの議会でも、企業との情報交換を図りながら連携強化を進めていくという趣旨のご答弁があった。

 では実際に、臨海部企業と市の間では震災以降どのような話し合いが持たれ、どのような合意がなされているのか。
また、現在改定中の千葉県石油コンビナート等防災計画では、地域との連携はどのような位置づけがされているのか。お聞かせ願う。

(答弁 総務部 防災課) 臨海部企業間との話し合いについては、石油化学を中心とする主要企業への聞き取りを実施したところ、企業側からも災害対応へのあり方や情報の共有化など、市との連携強化を図りたい旨を確認しています。今後、県・市・消防局・特定事業間での協議を持つなど、特別防災区域内の防災計画との整合性や連携強化に向けて、具体的な防災計画の構築に努めてまいりたいと考えています。

また、県では、石油コンビナート等防災計画等の見直しを進めているところであり、災害時の関係機関相互の連携を図り、効率的な災害対応や情報の共有・受伝達、企業の社員はもとより、隣接事業者及び住居避難の必要性の有無や地域への広報活動など、特別防災区域における防災対策の強化を整備することとしています。

H24年度4月より、新たに市長直属の部長級職員として配置される危機管理監は、専門的な立場で庁内の総合調整を担うとのことである。
その立場を大いに活かして、国や県、近隣自治体との関係調整のみならず、企業とのパイプ役としての任務も大いに期待している。
臨海部企業に対しては、普段から行政や市民と交わり信頼関係を築くような仕掛けを構築することで、市民の不安解消にもつなげるよう、当局の積極的な取り組みを要望する。

 では次に、耐震対策について伺う。
本庁舎耐震対策事業として新規に515万円が計上されているが、これは具体的に何を検討するための予算か。

(答弁 企画部 企画調整課) 市役所本庁舎については、利用者の安全と災害時における復旧・復興の拠点としての機能確保を図るため、庁内の「検討会議」において検討作業を進めていまして、これまでに、庁舎の構造上の問題点や機能上の問題点とともに、求められる機能などについて整理を行ってきました。
今後は、建て替えや移転等を含めた具体的な手法についての比較・検証が必要になることから、コンサルタント業者等への外部委託により、専門的なノウハウを活用しながら、判断材料となる資料作成等を行う予定です。

 では、庁内では、震災以来これまでにどのような検討の場が設けられ、そこでは実際にどんな話し合いがなされたのか。

答弁 企画部 企画調整課 まず、詳細な意見聴取等が必要であろうという考えから、「検討会議」のもと、関係課の職員によって構成する作業部会を、「防災・建築」、「機能・環境」、「計画・執務」の三つの小部会に分け開催してまいりました。
また同時に、広く情報を募る必要がある、という考えから、「検討会議」等の委員構成に含んでいない主管課、あるいは行政委員会などによる会議、さらには窓口機能を持つ部署による会議を開催するとともに、「全職員アンケート」等も行いました。
これらの情報について、作業部会を「全体会議」という形で3回開催しながら、事実関係を精査・検証したうえで、「検討会議」への報告をしたところです。

具体的な内容については、主要なものでは、耐震性能や設備の問題点として、「軸耐力補強工事を実施したことにより、『IS値0.6相当』の機能は確保したものの、耐震性能を向上させるものではないことから、現時点においてもIS値が低い」、あるいは「エレベーターが老朽化しており、停止してしまうことがある」、「現庁舎は、構造基準はもとより、排煙設備など現行の建築基準法には適合していない」などの現状が確認されました。
その他の情報については、未成熟で今後の検証も必要であることからこの場での公開は差し控えますが、現在の本庁舎が深刻な問題を抱えていることが明らかになってまいりました。
早急に具体的な対応策について検討することが必要であるという判断を行い、外部委託を活用し検証を進めていくということです。

私がこの問いかけをした理由は、市の顔でもある本庁舎が今後どうなっていくのか、大勢の市民がかたずを飲んで見守っているからである。
建て替えはやむなしなのか、また建て替えるとすればどこにするのか?いろいろな憶測が飛び交っていて、市民ネットにも問い合わせが多く寄せられている。
しかし、これだけ大きな事業でありながら、市からの積極的な情報開示はなかった。
旧イトーヨーカドー市原店の譲り受けの突然の公表と同様に、この本庁舎耐震対策事業も、このまま議会や市民の関与がないままことが進められ、突然公表されるのではないかと、大変危惧している。
このようなやり方に対し、市民からも、「市原市のいう協働は、結局のところ行政側に都合のいい協働でしない」という声が数多く寄せられている。果たしてこれでいいのだろうか。
施策決定の過程で市民に情報を開示し市民を巻き込んで議論を尽くすことは、確かに混乱や困難をともなう可能性があるが、これが本来の市民自治への第一歩である。
当局にはぜひその壁を乗り越えていただくよう、強く要望する。

(3) アートフェスティバル事業について

市制施行50周年に向け、来年度はいよいよ本格的な準備に入るということで、アートフェスティバル事業に6010万円の予算が計上されており、観光振興課には新たに推進室が設置されることになっている。
この6010万円は今後立ち上げられる実行委員会への補助金と伺っているが、このアートフェスティバル事業の中身が今一つはっきりしない。

 例えば、予算案の概要の説明には、地域住民・市民団体、アーティスト、企業、サポーター、そして行政がアートを媒介にしてミックスするイメージが描かれているが、どのような協働事業を考えているのか、ご答弁願う。

答弁 経済部 観光振興課
この事業では、若手を中心とする国内外のアーティスト、住民、企業、千葉県内や首都圏の大学、行政等が連携し、協働しながらプロジェクトを展開する予定です。
具体的には、次代を担う国内外のアーティストが制作活動や生活の場の一つとして地域に入り、コミュニティーの一員として地域の方々との協働による新しい市原の魅力を創出していくものです。 このほか、地域資源や地域住民の活動、アーティストの想像力を活用し、空き家等の建物再生、サイクリングなどのスポーツとの連携、お土産や食の開発など様々な取り組みについて、現在検討を進めています。
これらの取り組みを通して、継続的な地域活性化の礎を築き、さらなる50年に向けた地域づくりの展望を切り開いていきたいと考えています。

昨年の11月23日から12月4日まで南市原において「アート漫遊いちはら」が開催された。私も開催期間中に現地を訪れ、美しい里山と、地元の皆さんが一つになり主役となった活動と温かいもてなしに触れることができ、南市原独特の癒しの魅力を再確認した。
ところで、「アート漫遊いちはら」はアートフェスティバルへの布石と位置づけられており、この事業に対する総括は気になるところである。

 そこで、「アート漫遊いちはら」による交流人口の増加や経済効果の分析結果、また今後に向けた課題をお示しいただきたい。
さらにそれを受け、アートフェスティバルの交流人口の増加や経済効果はどの程度を見込んでいるのか、ご答弁願う。

答弁 経済部 観光振興課 「アート漫遊いちはら」は、ふるさと雇用再生特別基金事業を活用して、社団法人市原市観光協会に観光交流ゾーン活性化事業として業務委託しました。
来場者数については、9000名以上が訪れたとの報告を受けています。

経済効果ですが、今回の委託事業では具体的な数値化を行っておりませんが、小湊鉄道株式会社からの聞き取りによると、昨年10月までの乗降客は東日本大震災による観光業の落ち込みで前年を下回っておりましたが、11月、12月は前年を上回る乗降客であったとの報告を受けておりますので、経済効果は大きいものであったと考えています。
今後の課題ですが、協力団体との意見交換会でも指摘されましたが、事前周知のタイミングや方法の検証や、効果的な情報発信が必要であると考えています。

次に、アートフェスティバルついて申し上げます。
来場者数ですが、先進事例であります新潟県十日町市の大地の芸術祭は50日間で38万人、瀬戸内国際芸術祭は105日間で94万人の来場者数を記録しました。
本市も先進事例等を参考に適切な来場者数の目標を定めてまいりたいと考えています。
また、定住人口の拡大については、現時点での数値目標は定めていませんが、お越しいただいた方々に市原の魅力を知っていただき、リピーターとなり、さらには将来住んでみたいと思っていただくことで、定住人口増につなげていきたいと考えています。

次に、経済波及効果ですが、現在本事業の計画を策定する中で、適正な来場者数の目標設定に基づき、試算を行っているところです。
併せて開催終了後に実績評価として、実来場者数に基づいて民間調査機関による検証も行ってまいりたいと考えています。

一過性に終わらせないために、思いを持った人材の確保と住民ありきの施策決定、そして対マスコミ戦略が必要である。
南市原が将来にわたって市原市の財産や文化となるよう、私たちも関心を持って見守りたい。

(4) 小規模学級特認校整備事業について

少子化の波は市原市にも例外なく押し寄せ、市内の児童数はここ10年で約2000人減少している。学校数に変動はないことから多くの学校が小規模化しており、平成24年度に全学年が20名以下となる学校は加茂地区をのぞいて5校、一方で増加見込みの学校は4校と、児童数のアンバランスも課題となっている。
そこで市では、児童の平成25年度より、小規模学級特認校モデル事業を小規模校である国府小学校と海上小学校において開始するとして、来年度予算案に啓発費10万円を計上している。

小規模学級特認校制度は、20名以下の学級で外国語学習や農業学習など学校独自の教育を行うもので、児童は市内全域から募集する。

 この制度がうまく機能するためには地元の理解と協力が絶対条件である。当局ではPTAや地域住民に対し説明会を開いたとのことだが、ここではどんな意見が交わされたのか、お聞かせ願う。

答弁 学校教育部 学校教育課
昨年11月に実施した地元説明会では、児童数が増えるという期待感、学校や地域が活性化されるのではとの意見が出されています。
また、児童が遠距離通学に耐えられるのか、学区外から通学する児童が適応できるのか、学校が特色を打ち出すための教育が通常のカリキュラム内でできるのか、などの質問が出されました。

公の教育課程の中でどれだけ独自性を打ち出せるか?指導者の確保は?そもそも、市内の保護者の中に、居住地から離れた学校に通わせてまで特色のある教育を受けさせたいというニーズがどの程度あるのか?
この制度にはまだまだ不透明な点が多く見受けられる。

しかしながら市原市は、県内他自治体に先駆けた小学校全クラス35人学級の実現に表れているように、「子育て・教育一番のまち」に向かって取り組んでいる。
この小規模学級特認校整備事業も、わが市ならではの積極的な取り組みとして捉えている。これから地域の意見を取り入れ、試行錯誤しながらこの制度を磨き上げることで、学校小規模化や児童数格差に少しでも歯止めがかかることを期待している。

ただ、これらの目的はあくまでも行政の政策上の都合である。
本来、教育は子供一人一人のためのものである。特認学校区の児童やその保護者が、「この学校を選んでよかった」と思えるような取り組みを期待している。

3. 高齢者支援について

(1) 地域包括支援センターについて

地域包括支援センターは、平成18年の誕生以来、高齢者が住み慣れた地域でできる限り自立した生活を送るための支援を行ってきた。
現在は地域住民への認知度や信頼性も高まりつつあり、高齢者地域福祉の中核的な機関となっている。

現在市内に6か所ある地域包括支援センターのうち、市直営センターが請け負ってきた国分寺台圏域の業務が委託されるとのことであるが、そのことによって、直営センターが今まで担ってきた、他の5か所のセンターに対するバックアップあるいはコントロールタワーの役割は、今後どのように担保されるのか。

答弁 保健福祉部 高齢者支援課
市では委託後も引き続き介護保険の保険者としての役割を担うため、バックアップ体制としては、定期的に開催している「地域包括支援センター連絡会議」を活用して、情報の共有化や職員の資質向上を図ってまいります。
また、困難事例の解決やケアマネージャー支援、家族介護者支援などの業務において、各センターと連携を図ってまいります。一方、コントロールタワーの役割としましては、業務委託に伴う指導・監督をはじめ、センターの業務内容などを協議する「市原市地域包括支援センター運営協議会」の運営など、引き続き市の責務として取り組んでまいります。

会議の中で、何をどのように協議していくかが肝心ではないか。
行政と直結している現在の直営センターならではの基幹的な役割を今後も確実に果たせるような体制づくりを要望する。

また、地域包括支援センターからは、現在要支援・要介護状態になる前の元気向上高齢者に対する業務量が増え続けており、このままでは要支援者に対する業務にも支障をきたしかねないという声が寄せられている。
例えば、介護予防ケアマネジメント事業では、元気向上高齢者一人一人に対し、電話がけや訪問などのアプローチをし、介護予防ケアプランを詳細に作成し、介護予防事業参加後の評価コメントの記入も行っている。しかし、元気向上プログラムの委託事業者は、これらの記入項目をほとんど参考にしていないとのことである。また、各種介護予防教室も、他機関の事業と重複しているものが多く見受けられる。
本来はこれらの業務をきめ細かく行うことが理想ではあるが、限られた予算・人員のなかでとてもそこまでは手が回らないという現状がある。
地域包括支援センター事業が始まってから6年目に入ったこの時期、改めてセンターが行っている業務を見直し、仕事量に対してスタッフが足りているか、センターの事業のやり方を整理する必要がないか、など検討すべきではないか。当局のお考えや対策をお聞かせ願う。

答弁 保健福祉部 高齢者支援課 地域包括支援センターでは、介護予防ケアマネジメント業務のほか、総合相談や権利擁護業務、家族介護者やケアマネージャーの支援業務などが義務付けられており、様々な支援・相談業務を行っています。
また、相談件数の増加とともに、解決困難なケースも増えており、業務内容も多様化、複雑化してきています。このため、市では、「地域包括支援センター連絡会議」を定期的に開催して、困難事例などの情報共有や検証を行い、センター職員の資質向上に努めておりますが、今後は業務内容の改善などに関する協議も行ってまいりたいと考えています。

会議の見直しだけではなく、現場に足を運ぶことも大事である。
持ち出しが多いうえに過重な業務によって地域包括支援センターが倒れてしまっては元も子もない。当局にはぜひ業務内容を改善していただくよう要望する。

(2) 成年後見支援センターについて

物事を判断する能力が十分でない高齢者の権利や財産を守る仕組みとしては、民法を基本とする成年後見制度がある。
しかし、この制度は精神上の障害がある方のためのもので、家庭裁判所への申し立てが必要であり、選挙権を失う場合がある、また利用者負担が発生するなど、決して気軽に利用できる制度ではない。
そこで、成年後見制度を必要とするほどではないものの、判断力が低下したために日常生活が不安な方が気軽に利用できる仕組みとして、「日常生活自立支援事業」がある。

専門員や支援員が面接あるいは訪問し、行政窓口での手続きや福祉サービスの契約、通帳のお金の出し入れや郵便物の確認など、高齢者が一人になっても地域で安心して日常生活を送れるよう、サポートを行うものである。
県内では、千葉県社会福祉協議会による千葉県後見支援センターを中心に、各地域の社会福祉協議会により、計18か所の成年後見支援センターがこの事業を行っている。

 ところが、県内の高齢者保健福祉圏域のなかでは、市原圏域だけ成年後見支援センターが設置されておらず、代わりに県の後見支援センターが担っている状況である。
このことに対し、当局ではどのような認識でおられるのか、お聞かせ願う。

答弁 保健福祉部 高齢者支援課
このサービスを利用する際の初期相談は各市町村の社会福祉協議会が窓口となっています。その後の訪問調査や支援計画の作成および契約等は、ご指摘のように県内18か所に設置されております後見支援センターが担当しています。
市原市社会福祉協議会において、直接、日常生活自立支援事業を実施することについては、同協議会において、単独実施に向けた検討を進めていくと伺っております。市としましては、今後同協議会や関係機関と協議してまいりたいと考えています。

社会福祉協議会の事業計画の中には、確かに「日常生活自立支援事業については市単独実施に向け環境整備を行う」と定められている。市はこれに対してもっと積極的にかかわる必要があるのではないか。
サービスの利用者数はH22年度の統計では、広域後見支援センターのまつどは46人、きみつ43人、さくら75人、さんむ15人。これに対し、市原市(県後見支援センター)は6名。これは、他の広域後見支援センターと比較しても圧倒的に少ない数値である。他の広域後見支援センターと比較しても圧倒的に少ない数値であり、相談したくても相談する場所が市内にないという弊害が、数値にも表れている。
認知症高齢者や障がいを抱えた高齢者数は、地域移行が進められる中で今後ますます増加していくことが予想される。身近な地域でサービスが受けられるような体制整備が急がれる。
先ほどの問題にも共通して言えることであるが、地域包括支援センターにしろ、社会福祉協議会にしろ、委託が進むことによって、かえって行政が地域住民の声に耳を傾ける機会が希薄化しているのではないかという印象を抱いている。
行政はもっと現場に足を向け、委託先に対して広い視野を持ってアドバイスする、スーパーバイザーとしての役割を認識する必要があるのではないか。
丸投げと言われないような取り組みを要望する。

4. 災害時要援護者支援について

高齢者、障害者、難病患者、乳幼児や妊婦、外国人といった、災害時に1人での避難が難しい方々、すなわち災害時要援護者に対して、避難支援体制の在り方を定めた避難支援プラン全体計画が1月5日に本市でも策定され、次はいよいよ個別計画の策定の段階に入った。
要援護者一人一人に対し、誰が支援してどこにどのように避難させるかなどを定めるために、市内の65歳以上の高齢者や障がい者など、要援護者の登録申請がすでに始まっている。

今後、市は申請された情報をもとに「災害時要援護者リスト」を作成し、6月ごろをめどに各町会や自治会組織に提供。提供された町会・自治会が個別プランを定めるという流れになっている。

そこで伺う。災害時要援護者の情報は個人情報であるため、その取扱いには十分な配慮を必要とするのは当然のことであるが、具体的にどのような対策をとるのか。また、要援護者一人一人に対し 避難支援者をどのようにして定めるのか。

答弁 総務部 防災課
町会や各自治会組織にお願いしていく中で、個人情報の取り扱いについては、各名簿の紛失や漏えいが発生しないように適切な保管と管理をしていただくとともに、併せて避難支援活動以外の目的には使用しないこと等、情報保護の観点を十分に説明し、「災害時要援護者リスト受領兼誓約書」を提出していただきます。 また、個別計画の策定につきましては、町会や自治会組織への説明用として作成しています本制度の概要説明書、災害時要援護者・避難支援の手引き、手続きの流れ、個別計画の記入例などにより制度の内容や記入の仕方などについて説明してまいります。
町会にとりましては非常に大変な作業となりますが、要援護者と話し合いながら、人命を守る減災対策の一環として、避難支援者を決めていきたいと考えています。

今回、実際に要援護者として登録申請用紙が送られてきた家の方から、「支援してもらいたい気持ちは十分あるのだが、町会がどの程度個人情報を管理できるのか不安が残る。今回は登録申請をあきらめます」という声が多く聞かれた。
また、町会側からも、個人情報リストを渡されても、役員が変わることもあり実際どうして良いのかわからず、非常に戸惑っているというお話も伺っている。
町会によっては、この避難支援プラン作成のために新たに町会規定を作成したところもあるが、取り組みの温度差は大きいものと思われる。

やはり、ここは町会に過重な負担がかからないよう、また、要援護者の情報保護に関する不安解消のためにも、市が支援プランの取り扱いについてのガイドラインを示し、町会の相談に応じるなどのサポート体制を、もっとしっかり取る必要があるのではないだろうか。
私は、この避難支援の個人プラン作成を通じて、災害時だけでなく、日常の声かけや見守りといった共助の体制が醸成されることを期待している。
そのためにも、支援を希望する要援護者が安心して登録申請できるよう、市がしっかりと情報管理のサポートをしていただくよう要望する。

5. 障がい者の就労・雇用支援について

(1) チャレンジ雇用について

時間不足で今回は質問できませんでした。

(2) 農業分野の雇用対策について

農業や園芸と障がい者の関わりは、これまで福祉分野の中で園芸療法・園芸福祉として積極的に図られてきた。
屋外で土に触れながら植物の栽培や動物の飼育などの作業を行うことは、心身のリハビリ効果や生きがいをもたらすと言われている。
実際に、特別支援学校では昔から授業カリキュラムに占める農作業の割合は大きく、つるまい風の丘分校でも、園芸技術科において農作業実習が重点的に行われている。
一方、農業分野では、高齢化に伴う労働力不足の問題が深刻化しており、それに起因して市原市内でも耕作放棄地が年々増加している。
農林業センサスによると、市原市の農業就業人口のうち65歳以上の占める割合は10年前の42%からH22年は75%へ。経営耕地面積に対する耕作放棄地の占める割合は10年前の18%からH22年は41%という現状である。
こうした農業分野側の課題に対し、障がい者が特別支援教育のなかでせっかく培ってきた農作業スキルを、うまくかみ合わせることができないものかと感じている。

私は先日、市原市近隣で知的障がい者を積極的に雇用し、耕作放棄地を借り上げ次々と農地に再生している農業法人を視察した。農業が持つ社会貢献・地域貢献の大きな可能性を、改めて実感したところである。

そこで提案だが、市内の耕作放棄地の地権者あるいは人手不足に悩む農家の情報や要望を市が吸い上げ、このような意欲ある農業法人との仲介をすることで、各々が抱える課題の解決につなぐことはできないものだろうか。お聞かせ願う。

答弁 経済部 農林業振興課
平成21年12月の改正農地法の施行以来、農業に参入する企業が増加しています。
最近では、金融機関においても、農業と商工業の連携作業や6次産業化の推進を支援する研修会等を積極的に進めていると聞いています。
そこで、市では金融機関と勉強会を開催し、企業側の動向などの情報収集に努めるとともに、農業に積極的に取り組もうと考えている農業法人や担い手に対し、障がい者の雇用の場を含めた耕作放棄地の有効活用の事例の紹介や、市が委嘱する農地流動化推進委員による農地の斡旋などに取り組んでいるところです。

これまで、障がい者の一般就労の場はどうしても製造業やサービス業などに偏りがちであったが、農業分野へ就労は今後新しい流れの一つになるものと思われる。
障がい者の雇用や荒廃農地の再生は、効率的な新しい農業技術の導入や若い新規就農者の積極的な雇用育成とともに、これまでの既成概念を打ち破り広い視野に立った戦略を伴わなければ成り立たない。
障がい者と農業従事者との連携は、障がい者の自立支援の拡大と地域の農業全体の活性化につながると確信している。
市原市に新たな農業のビジネスモデルが根付くよう、当局の積極的な支援を要望する。