平成27年度 第4回市原市議会定例会

代表質問 小沢みか

1.住宅施策の今後の方向性と取り組みについて
(1)立地適正化計画を起点とするまちづくりについて
・都市構造の転換と立地適正化計画
 本格的な人口減少と超高齢化社会の時代に入り、厳しい財政制約の中で自治体に現在求められているのは、人口構成やニーズの変化に合わせ適正な行財政運営の視点を加えた、持続可能な施策展開や都市構造への転換です。
こうした中、国は「都市再生特別措置法」の改正を行い、公共施設や行政サービスの最適化を図るとともに、高齢者や障害者などが移動しやすく健康で快適な生活が送れるよう、いわゆる「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の形成を推進しています。
そのための手段として市町村に求めているのが「立地適正化計画」の策定である。市では、H28年度中に医療・福祉・子育て・商業等の生活関連施設を配置する区域「都市機能誘導区域」を、また29年度中にその周辺に住まいを配置する区域「居住誘導区域」を選定する予定と伺っています。

・国の動きと狙い
 国は、この計画に位置付けられた施策や事業に対し社会資本整備交付金などを重点的に配分するなど、財政・税制・金融・規制、あらゆる方法で市町村の取り組みを強力に支援するとしています。
加えて、国自ら縦割りを排し、国交省はじめ財務省・文科省・経産省など関係10省庁による「コンパクトシティ形成支援チーム」の設置を昨年12月に閣議決定しました。今年9月には、市町村に対し支援の意向調査を行っていると聞いています。
これら一連の動きを見れば、国は、限られた財源をこれまでのように広くばら撒くのではなく、特定市町村へ集中的に投下し、その効果を周囲に波及させるという方針で、これは換言すれば、より頑張った自治体が評価され、支援を受け、活性化される仕組みである。市町村のセンスと本気度が問われる厳しい時代にあるともいえます

・市長のまちづくりにかける想いは
 そこで小出市長に伺います。市長は常々、「地域の特性を生かし、JR3駅周辺など地域拠点の活力づくりを推進する。公共交通ネットワークの維持・向上、全ての市民が安心・安全・快適に住み暮らせるまちづくりを行う」と述べられています。
では、市原市の今後の都市形成をどう立地適正化計画で具現化されるのか、同計画にかける想いをお聞かせください。

答弁(市長)
 「立地適正化計画」は、まちをコンパクトにし、都市機能等の集約を図ることで、市民が暮らしやすく、持続可能なまちの実現を図ろうとするものであり、今後の人口減少・超高齢社会に対応した本市のまちづくりを考える上で、非常に重要な計画であります。これまでの、拡大や成長を前提とした、従来のまちづくりの延長では、今後の課題に対応することは、不可能であります。
私は、先般、「立地適正化計画の策定」等、地域の個性を活かしたまちづくりに強力に取り組んでいる全国の自治体30市の1つとして「都市政策実践サミット」に参加してまいりました。

 そこで各首長の、「まちづくりにかける熱い思い」に触れ、私自身、改めて「市原ならではのまち」実現に向け、思いを強くしたところであります。
「市原ならではのまち」実現のためには、関係部局がまちづくりの方向性を共有することが必要不可欠であり、庁内においても横断的な推進体制を構築しなければ、成し得ないものであります。このため、「立地適正化計画」をまちづくりの中心施策に据え、JR3駅周辺への人口集積や、既存住宅団地の活性化を図ると共に、市街化調整区域につきましても地域の特性を活かせるよう、「土地利用方針」を策定し、市原市の都市構造全体を見直してまいりたいと考えております。

私はこれからの都市計画の「市」は「志」と書くんだという話を聞いて、なるほどその通りだと感じました。困難も多く非常に息の長い取り組みですが、市長に置かれてはぜひその強い志を貫かれ取り組んでいただきたいと思います。

・各種計画の策定で最も着目すべきは立地適正化計画
「社会保障・人口問題研究所」によれば、市原市の10年後の人口は2万人減の約26万1千人と厳しい数値が示されている。市では現在、新総合計画やまち・ひと・しごと創生総合戦略の策定に取り組んでいるところであるが、私は、「立地適正化計画」が市原市の将来人口を都市機能配置や土地利用の面から支えるものとして、両計画の中で重要な役割を担うものと捉えています。
また、わが市は、公共資産マネジメント推進計画、地域公共交通網形成計画、加えて医療・福祉分野においては地域包括ケアシステムの構築など、各部門の複数の重要な作業をほぼ同時進行で行わなければならないという状況にあります。
その中でも立地適正化計画は、まち・ひと・しごと創生総合戦略において、「ひと」と「しごと」を支える「まち」の部分を担うものです。

人は「まち」という基盤で暮らし、コミュニティを形成し、ライフステージに応じた様々な公的サービスを利用します。公共資産の再配置も公共交通施策も人口流入も産業振興も、まず市として、まちの拠点をどこにどう作るか、そしてどう育てていくのか、というデザインが描かれてこそ定まるものです。
従って私は、立地適正化計画を横並びの部門計画の一つではなく、起点として捉えたうえで、今後見直される各計画との連携を図っていただきたいと考えています。ご見解をお聞かせください。

答弁(企画部長)
 立地適正化計画は、新総合計画の土地利用の方向や、グランドデザインの形成に、大きな影響を与える計画であると認識しております。この取り組みにより、都市機能の集約化と、交通ネットワークの構築により、産業や福祉、医療、子育て、教育、住居、さらには公共施設など、市民生活を支える多くの分野の計画にも、相当の影響が出てくるものと予想されます。現在策定作業を進めております、新総合計画においては、計画群の総合化により、個別計画との連動や一体性を強化し、実効性の高い計画とすることとしております。

このため、新総合計画においては、立地適正化計画の策定を踏まえ、各個別計画について、それぞれの影響を十分精査し、本市のまちづくりの方向性と整合を欠くことのないよう、全庁的な取り組みを行ってまいります。
あわせて、今年度に策定予定の総合戦略におきましても、新総合計画の先行版として位置づけておりますことから、諸計画との連動を図ってまいります。

各々の作業を効率的・効果的に進めるために、適切な連携マネジメントをお願いします。

・データ共有のあり方と志あるまちづくり
 また、立地適正化計画の策定に当たっては、市内の拠点・地域ごとあるいは500メートル四方の町会単位レベルで様々な分析を行い、現状と将来の動向を把握するよう求められています。これらデータも各計画や施策に効果的に活用できるよう、共有のあり方もぜひ工夫していただきたい。
国勢調査のデータによれば、本市は1970年~2010年の40年間の間に、人口はほぼ倍になった一方で、市街地の面積は4倍にも広がっています。都市部でなく過疎地域でもない「普通の地域」が、まちづくり戦略の立案が最も難しいと言われていますが、ぜひ市民が夢と希望を持てるような都市デザインを描いていただくよう願っています。

(2)住宅セーフティネットの確保について
・市営住宅の需要と供給のアンバランスについて
 市原市では、平成18年に制定された住生活基本法を踏まえ、H22年3月に「市原市住生活基本計画」を策定しました。計画期間は今年度までとなっています。
そして同計画の基本方針の中の「生活を支える住まいづくり」の具体的施策として位置づけられているのが、「市原市市営住宅長寿命化計画」です。建物をできる限り長く有効に使い続ける「ストック重視」の観点から策定されたものです。
同長寿命化計画によれば、10年間の供給可能戸数の推計は、市営住宅と県営住宅合わせて約 1,700 戸。一方、需要の推計は10 年間で 700 戸。従って、募集対応は充分可能としています。
 しかし、直近の市営住宅の応募倍率は3ヶ年の平均で 19倍、最高倍率39倍と、実際は相変わらず狭き門です。
いみじくも長寿命化計画の中でも、「一概に公営住宅需要が満たされているとは判断が難しい」と記されています。ではこの推計と実態とのかい離の原因はどこにあるのか、また今後どのようにその解消を図られるのか、お聞かせください。

答弁(都市計画部長)
 住宅セーフティネットの基本は、市営住宅が担っているものと考えております。
このことから、市営住宅長寿命化計画は、入居者の居住の安定を長期にわたり確保することを目的に、策定をしております。
また、本計画におきましては、只今、議員からもお話がありましたとおり、計画10年間の中で、県営住宅を併せた空家募集戸数の推計値を約1,700戸としておりまして、同じく需要推計値の700戸を上回っていること、また、近年における募集倍率の傾向として、一部の新しい住宅で、高倍率なところはあるものの、全体としては若干ながら減少傾向が見られることなどから、空家募集の範囲で対応可能と考えております。
 しかしながら、これによって一概に公営住宅の需要が満たされているとも言いがたい面がございますことから、今後とも適切な入居者管理を続け、入居ニーズに対応していくとともに、将来の社会情勢の変化等に応じて柔軟に対応することで、長期にわたり、安心・安全な居住の確保ができるよう努めてまいります。

公営住宅の入居資格がありながら申し込みをしても抽選で落選し続ければ、それは住宅セーフティネットとしての役割を十分に果たしているとはいえません。その一方で、倍率がゼロの物件もある。公営住宅の供給のあり方にひずみが生じているのは明らかです。

・市営住宅長寿命化計画と立地適正化計画等・公共資産マネジメントとの整合性
長寿命化計画は、現在の市営住宅ストックの維持管理コストを平準化し、建て替えスパンの長期化を目指すもので、もちろんそれは必要な視点である。しかし現在、市営住宅の約40%が市街化調整区域内にあるが、生活弱者・移動困難者の住まいとして長寿命化に値する立地かどうか。立地適正化計画においては、居住誘導区域へ住宅を円滑に誘導するため、住宅施策とコンパクトシティの形成に向けた取り組みの連携が必要とされている。

例えば空き家対策では、中古住宅・リフォーム市場の活性化や空き家の活用方針などの検討にあたり、事業者と適切に連携を行うこと。また、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの高齢者向け住宅を居住誘導区域内に誘導することにより、医療・福祉施設へのアクセス改善を図ることなども求められている。
また、公共資産マネジメントは、資産の維持管理に加え活用のあり方を見直すことによって住民サービスの最適化を図るという考えに立っている。こうした新たな動きを考慮すれば、「立地適正化計画」及び「公共資産マネジメント」との整合性が図られるよう長寿命化計画を見直す必要があると思われるが、ご見解をお聞かせ願う。

答弁(都市計画部長)
 国の都市計画運用指針では、立地適正化計画と住宅施策との連携を図ることが求められており、例えば、その具体策といたしまして、居住誘導区域外に存する公営住宅を除却し、居住誘導区域内に再建する場合等の移転、除却費等の助成措置もありますことから、将来的に、市営住宅を再編する場合におきましては、この立地適正化計画や、その十分なる活用や、公共資産マネジメントとも整合を図りながら、最適な立地について検討してまいります。

長寿命化計画は29年度までを区切りとして見直しを図るとしています。その際にはぜひ柔軟な対応を求めます。

・包括的な住宅支援施策について
市内の相対的貧困世帯は、相対的貧困率16.1%で単純計算すると、約1万9千世帯にものぼる。高齢者世帯、ひとり親世帯、外国人、非正規労働者など、住宅困窮世帯は今後ますます増加すると見込まれている。
また、独立や結婚に必要な住宅コストを負担できない若者も増えているが、市内でこうした世帯のための低家賃ストックを担ってきた社宅は、今や次々と消滅している。
市原市の公営住宅のストックは約2.6%と、千葉県平均5.4%・全国平均6.2%と比較してもかなり低い値である一方で、民間は約25.3%と千葉県内では高い値を示している。
従って今後は、現在の入居ニーズや将来の社会情勢の変化に対応する公営住宅のあり方の検討を含め、住宅の直接供給、家賃補助、民間との役割分担なども踏まえた重層的な住宅セーフティネットを構築することが必要ではないかと考える。ご見解をお聞かせ願う。

答弁(都市計画部長)
住宅セーフティネットの構築につきましては、特にその根幹を成します市営住宅において、新たに住宅を建設することは、財政的にも非常に厳しい状況にございますことから、社会経済情勢や住宅困窮者の動向の変化等に応じた、多面的な対応が必要であると考えております。
従いまして、今後は、福祉施策や労働施策などとも十分に連携しながら、そのあり方について検討してまいります。

現在の住生活基本計画(全国計画)は、今年度がちょうど見直し期間に当たる。国土交通省は、サ高住について市町村が関与する仕組みを計画の中に位置づけ、さらに、高齢者や子育て世帯などに向けた民間賃貸住宅整備についても盛り込む方針です。
執行部に置かれては、何よりも居住の安定こそが暮らしの出発点であることを念頭に、社会状況に応じた柔軟な住宅施策に取り組んでいただくよう要望します。

2.全ての子どもの学習環境の整備について
(1)
全国学力・学習状況調査について
・全国学力・学習状況調査に対する私見
 初めに誤解のないように、私個人は以前から同調査の必要性や有効性には疑問を持っている立場だということを申し上げる。パーパーテストで計れる「学力」とは、子どもの多様な個性や無限の可能性の中のほんの一部であると思っています。
しかし、去る10月27日の教育委員会定例会における同調査の報告を傍聴して、私なりに非常に引っかかるところがありました。「現場の先生は頑張っている。数値化された結果に教育現場が振り回されるのは、かえってマイナス。しかしそうならないためにも、結果に対する検証はきちんと行ってほしい」と、そんな想いで今回質問に取り上げることにしました。

・第10回教育委員会定例会より
同調査の結果は既にご承知のように、小・中学校共にどの教科も平均正答率が全国・あるいは県平均以下で、年度比較においても状況は好転せず、さらに学習環境や生活習慣の状況も芳しいものではありませんでした。それに対し教育委員会が打ち出された対策は、「ゲームやスマホなどに費やす時間を減らして学習時間を増やすよう啓発する」「復讐する習慣をつける」「思ったことや考えたことをノートに記述する指導」「自分の考えを説明する活動を積極的に取り入れる」「読書・新聞を読む習慣を推奨する」などであった。調査などせずとも現場では十分わかりきっていることばかりです。

・過去の議会答弁より・「子どもの問題」とは
 第1回目の調査が行われたH19年度からの議会答弁を追うと、その対策にほとんど変化が感じられません。確かに、昨年度の「日本の言の葉 音読・朗読集」や「言語能力向上ワークシート」などは独自の素晴らしい取り組みで、今後も地道に取り組んでいただきたいと思います。しかし、根本的な解決策は、もっと別のところにあるのではないでしょうか。そして、当局側もそのことを充分認識しているはずです。
H25年12月議会で、同様に学力が低い原因はとの質問に、「子どもたちの問題と、それから教員の指導力の問題と双方ある。家庭・保護者・地域の協力を得ながら、子どもたちの学力向上を図っていきたい」と答えられています。
教員側の指導力に関する対策についてはさておき、もう一つの「子どもたちの問題」とは、つまり家庭の問題ということになろうかと思いますが、こちらに対する支援策は具体的にどのように取り組まれてきたのか、というところが見えてきません。

例えば、いわゆる「ふたこぶラクダ型」と言われる学力の二極化、学校間格差の固定化、学力の階層差。これらはほとんど公には語られませんが、市原市に厳然と存在する問題です。この部分に目をつぶることなくきちんと分析しアプローチしていかなければ、子どもたちの学力向上は図られないのではないでしょうか。

この点について当局のお考えと方針をお聞かせください。

答弁(学校教育部長)
 児童生徒が確かな学力を身に付けるためには、家庭での基本的な生活習慣を整えることが大切な要素であると認識しております。教育委員会では、家庭に対し「早寝、早起き、朝ごはん」や「ノーテレビ、ノーゲームデー」を実践できるよう啓発してきたところであります。
 さらに、本市と県教育委員会で作成した、「学校から発信する家庭教育支援プログラム」を、学校だよりや学年だよりで取り上げられたり、学級懇談会の資料としてもちいたりして、家庭学習の習慣化や家庭教育の改善の一助として活用してまいりました。

 くわえまして、全国学力学習状況調査の結果から、市原市では、全国平均を下回っている児童生徒の割合が多い状況が見られます。そして、それらの児童生徒は、基礎的な部分でのつまずきが多いと考えられます。

その対策として、これまで基礎学力向上のため学習教材の活用や、児童生徒にきめ細かく指導することが必要であるという認識のもと、少人数学級指導推進事業、学級補助員や県の事業である学習サポーターの活用などを図ってきたところです。
しかしながら、まだ課題が見られることから、今後、さらに学力向上を図るための、効果的な支援に努めてまいります。
私の質問の意味があまり伝わっていなかったようですが・・・。

平成25年度の全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した研究によれば、 家庭の社会経済的背景(SES) が高い児童生徒の方が、各教科の平均正答率が高いという結果が明らかとなっています。「親の監督不行届、しつけ不足」というような個々の家庭の問題に矮小化せず、市全体の課題と捉えて対策を図る必要があるという認識から、次の質問に移ります。

(2)家庭教育支援のあり方について
・国や県による家庭教育支援の推進
 以前から「地域の子どもは地域で育てる」などと言われてはいますが、都市化や核家族化、地縁的つながりの希薄化など、家庭や地域社会の教育力の低下に歯止めがかかる様子はありません。
文科省は家庭教育支援の必要性の高まりを受け、子育てサポーターや保健師、民生委員など地域の人材による「家庭教育支援チーム」を設置することにより、孤立しがちな保護者や仕事で忙しい保護者などに対する支援を行うよう、自治体に求めています。
また、県教育委員会では、家庭教育支援を教育振興基本計画に位置づけ、市町村相談員及び子育てサポーターリーダーの養成などの事業を展開しています。

・スクールソーシャルワーカー(SSW)について
 そして何よりも家庭教育支援の要とされるスクールソーシャルワーカーは、今年2月に起きた川崎市の中学生の痛ましい事件によって、改めてその必要性が認識されることになりました。
スクールカウンセラーはあくまでも相談者個人に対する臨床心理からのアプローチです。それに対しSSWは、地域や家庭に出向いて行政や福祉など関係機関とつながりながら、子どもを取り巻く環境の改善に包括的に働きかけるものです。
現在、SSWは南房総教育事務所の管轄内でわずか1名、君津市の小学校に配置されています。このような「拠点校派遣型」は全国でも類を見ない配置形態だそうですが、一人が抱える担当区域があまりにも広域で、現場の教員にもあまり認知されず、現状では充分に活用されていません。
SSWの活用は、現場の教師の負担を軽くすることにもつながります。SSWの役割やメリットなどについて教育現場への周知を図り、県に対し体制の充実を求める必要があると思いますが、ご見解をお聞かせください。

答弁(学校教育部長)
 スクールソーシャルワーカーの今年度の活用状況は、市原市を含めた南房総教育事務所管内で80件の事案に関わっております。
また、アドバイザーとして、市内小中学校の長欠・不登校対策会議やスクールカウンセラーアシスタント連絡協議会にも参加しております。
 次に、訪問相談担当教員については、市原市内において訪問相談・電話対応等、283件の事案に関わっております。これらの事業は、児童生徒を取り巻く環境の改善に向けて、重要な役割を担っていると認識しておりますことから、各種会議や研修会を通じ、教職員への周知に努めるとともに、県に対し、増員の働きかけを行ってまいります。

千葉県独自の制度として、不登校訪問相談担当教員が市内の中学校に1名配置されていますが、昨年度の訪問支援は延べ695件にも上ったそうで、訪問支援に対するニーズの高さが伺えます。四街道市のように市独自でSSWを配置している自治体もありますが、まずは現場のSSWに対する共通認識や県に対する働きかけを積極的に行っていただきたい。

・市原市生涯学習推進プラン(08~15)と社会教育委員会議からの提言
 市原市生涯学習プランでは、基本目標の一つに「家庭の教育力を高める学習の推進」を掲げています。生涯学習というと、高齢者の自己実現や生きがいのための学習という印象が強いが、学校も家庭も生涯学習の範疇であり、学校を含む市全体を生涯学習のキャンパスと捉えるという視点を忘れてはならないと思います。
また、H22年10月に社会教育委員会議から、市原市の家庭教育支援のあり方について、10項目に及ぶ提言が出されました。アンケート調査による分析を行い、市に対し現行の事業の見直しと再編成による更に一歩踏み込んだ支援が必要であると促しています。
 そこで、市原市における今後の家庭教育支援の展開について、改めて教育長のお考えをお聞かせください。

答弁(教育長)
 共働き世帯やひとり親世帯の増加などの家族形態の変化や、地域社会のつながりの希薄化などを背景に、家庭における教育力の低下が指摘されております。
 本市におきましては、家庭教育はすべての教育の原点である認識のもと、子育て中の保護者等への家庭教育情報の提供や、保護者や学校との綿密な連携、PTA・地域団体との連携による子育て支援に係る学習の機会及び場の提供により家庭教育の支援を図ってきているところでございます。
 私は、本市の次代を担う子どもたちを育成するためには、教育委員会のみならず、福祉や子育てなど庁内の関係部局と連携し、家庭教育の一層の充実を図ることが必要であると認識しております。

今後、「新総合計画」を策定する中で、本市の家庭教育施策についてお示ししてまいります。

(3)貧困の状況にある子どもの教育に関する支援について
就学援助の認定基準の厳格化

現在16.3%と言われる子どもの相対的貧困率を、仮に市原市内の17歳以下の人口約42000人に適用した場合、約6800人に上る。そのうち、生活保護世帯の子どもは、460人で6.8%。従って残り93.2%・約6300人が貧困ライン以下かつ生活保護を受けていない子ども、ということになります。経済的理由によって就学が困難な児童生徒に対しては就学援助制度がある。現在35人学級1クラスでおよそ4人強の子どもが該当しているが、国や市の財政難によってこの制度が徐々に厳しいものになってきています。
特に今年度は、市独自の就学援助実施事務取扱要領で定める就学援助の準要保護認定の世帯所得基準が、これまでの生活保護基準1.3倍未満から1.2倍未満へと引き下げられました。予算ベースでは約800万円カットされ、全認定者数は昨年度の約3000名から今年度約2500名と、500名も減少している。また、申請したにもかかわらず否決される人数も年々増加し、今年度は3年前の倍以上の246名が否決されています。聖域なき財政削減の結果であろうが、財政難のしわ寄せがこんな形でダイレクトに貧困の状況にある子どもの学習環境に及んでしまっていいのでしょうか。以前、就学援助の基準引き下げの可能性について質問した際、当局から「国の動向を見て判断する」というようなご答弁でしたが、国や他市の動向ではなく、弱い立場にある子供たちの方をしっかりと向いて対応していただきたいと思います。ご見解をお聞かせください。

答弁(学校教育部)
今年度、準要保護世帯に対する就学援助の基準について、財政状況等を踏まえ、引き下げを行ったところでございますが、今後も、県内他市同様の水準を確保し、子どもたちの学習環境の維持に努めてまいりたいと思います。
 

基準の引き下げによって、修学旅行や部活動などの参加を断念せざるを得ない子どもが出るのかと思うと胸が痛む。このことが具体的にどのような影響を各世帯に与えるか、きちんと実態把握を行っていただきたい。

・教育格差を放置してはならない
市内の生活保護世帯の子どもたちの今年度の高校進学率は91.2%。県全体の平均98.6%と比較して低いことに加え、定時制・通信性への進学の割合が約3割も占めてのこの値です。そして、大学に進学した生徒はゼロでした。
子どもの貧困は、児童虐待や不登校などさまざまな問題行動とつながっているということは、近年様々なデータから明らかになっています。また先日公表された日本財団の推計では、貧困家庭の子どもの教育格差の放置によって、1学年あたり2兆9億円の経済損失が生じるとしています。財政難を理由に子どもの教育格差を広げることのないよう、市原市の未来への投資をしっかり行っていただくよう要望します。

・総合教育会議と市長の役割

H26年に制定された子どもの貧困対策の推進に関する法律では,自治体にも調査及び研究その他の施策についての責務や努力義務などが謳われています。
また市原市では、今年4月1日から施行された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」に基づき、11月20日に第1回目の総合教育会議が開かれました。市長の補助執行のもと教育委員会においてプロジェクトチームも立ち上げられ、今後教育に関する大綱の策定が進められるところです。これを機会に、貧困状況にある子どもの学習環境について、教育と子育て・福祉分野の横断的な体制がいっそう強固に図られることを期待しています。
そこで改めて小出市長に伺います。既存の生活保護や生活困窮者対策だけではなく,改めて子供の貧困という課題にフォーカスを当てた施策の再編あるいは新たな施策,関係部署間の連携を図るよう努められ、教育委員会の大綱や新総合計画に位置付けることが必要と考えますが、ご見解をお聞かせください。

答弁(市長)
 子どもたちの将来が、生まれ育った環境によって左右されず、健やかに育ち教育を受けることは、子どもの当然の権利であり、私の願うところでもあります。今日の社会では、親が子育てを担うという自己責任論ではなく、家庭、地域、市も担い手であるとの意識を持って、貧困に向き合うべきと考えます。
 このことから、関係部署間の十分な連携のもと、本市の児童生徒の「基礎学力の定着を図る取組」や「地域力・市民力を活かした学習支援」を横断的かつ包括的に推進し、新総合計画や教育に関する大綱に位置付けてまいります。
 

今回の質問通告の逆をたどれば、貧困の状況にある子どもへの学習環境の整備が家庭教育支援の中の重点施策であり、家庭教育支援の推進が市原市の子どもたちの学力の底上げにもつながると考えられます。市原市の子どもの将来が、生まれ育った環境に左右されることなく、貧困が世代を超えて連鎖しない社会の実現を期待しています。