平成27年度 第2回市原市議会定例会

代表質問 小沢みか

1.小出市政の経営理念について
市長が目指す「新たな時代のまちづくり」について

・自治体の課題は「人口減少」ではない

政府は、人口減少・超高齢化社会という日本がかつて直面したことのない大きな課題に対し、2060年に1億人程度の人口を確保するとして、H26年に「まちひとしごと創生法」を制定した。この流れを受け、本市でも5か年間の市原版総合戦略を策定しているところです。

し かし、そもそも1億人が日本の適正人口であるという根拠はどこにあるのか、私は甚だ疑問に感じています。自治体にとっては、人口減少自体が課題なのではな く、人口や人口構造の変化、ライフスタイルの変化、グローバル化、地方分権化など、さまざまな社会構造の変化の時代に、どう対応していくかが課題なので す。

小出市長は所信表明の中で、このように力強い決意を述べられています。「市原市における様々な課題は、拡大や成長を前提とした従来のま ちづくりの延長では到底対応できるものではない。新たな発想を持って、直ちに対策を講じなければ手遅れになります。「市原力」を生かした新たな価値を生み 出すまちづくり、新たな時代のまちづくりを進める」変わりゆく時代の先を見据え、いかに固定概念を捨て柔軟に方向転換できるか、私は小出市長の経営手腕に 大いに期待しています。

・総花的な所信表明

しかし、市長は先の所信表明において、行政改 革、経済産業・観光振興、保健医療福祉、防災危機管理、子育て・教育と、多岐にわたる分野で思いを述べられたが、正直「ここがこれまでと違う」というメッ セージをあまり受け取ることができなかった。ある意味総花的になってしまうのも理解はするが、今ここで市民に新しい道の方向性を明確に発信せずに、この難 局を市民との協働の元で乗り切ることは決してできないと思う。

・市長の考える「新たな時代のまちづくり」とは

(質問)
そこで改めて小出市長に伺います。市長がお考えになる「新たな時代のまち」とは、具体的に何を意味し、これまでと何が違うのか。またその実現のために、最も優先すべき政策は何か。そして、市長が見据えておられる未来の市原市の姿は、何年後なのか。以上3点について、ご答弁ください。

(答弁) 市長
これからは、過去50年の市政の延長では通用しない時代であり、人口減少・少子高齢社会への対策を第一に考え、持続可能なまちづくりへと変えていかなけれ ばなりません。そのためには、人口減少等に起因する様々な課題への対応を早急に行うとともに、人口の維持・増加につながる施策についても、しっかりと取り 組んでまいります。
次に、まちづくりの実現に何を優先するかについてですが、まずは、行財政改革をスピード感を持って、確実に実行し、健全財政と強固な財政基盤の確立を目指してまいります。これにより、市原版総合戦略や次期総合計画の実効性を確保してまいりたいと考えております。
最後に、まちづくりの未来をどの位見据えているかについてですが、中・短期的には、実効性の確保という観点から、次期総合計画の期間や5か年を期間とする市原版総合戦略を視野に入れ、今後明確にしてまいります。

暮らしの土台を支えるシステム作りを

市 長が所信表明でおっしゃった「拡大や成長を前提としない」市政運営に、GDPを物差しとするような物質的な豊かさの追求はナンセンスである。そうではな く、たとえば、OECDが提唱しているような、人とのつながりの豊かさや環境の豊かさといった新しい価値観での「豊かさ」を、ぜひ市民に明確に提示してい ただきたい。

そう考えれば、「新たな時代のまちづくり」は、決して奇をてらった新規施策が必要とは限らない。たとえば世代間が支え合い、高齢者支援や子育て支援に繋がるような仕組みを地道につくることが、そのまま市原らしい新しいまちづくりにつながるのではないかと思います。

・「小さな行政」について

もう一点、新しいまちづくりを進めるための基本政策である行財政改革に関連して伺います。

小 出市長は、事務事業の全面的な見直しや老朽化する公共資産対策、中長期にわたる財政収支の改善など、時には市民に痛みを伴う改革をも辞さないと決意してお られる。それに対して私たち議会側も、確かな見極めの目と合意形成のスキルがより一層求められると覚悟しなければならないと思っています。

(質問)
そこで、これら改革を進める上で、市長の基本的なお考えを確認させていただきたい。
行政のスリム化を徹底的に追求し、「小さな行政」を目指していくのか。あるいはスリム化は最小限にして、改革で得た余力を必要な政策実施に振り向けていくのか。またその判断を支える経営理念は何か。お答えください。

(答弁) 市長
行財政改革の大きな2つの取組として、行政のスリム化に代表されるような量的な改革、これと市民サービス向上といった質的な改革があり、私は、この2つの取組をバランス良く進めることが、市民本位の行政改革につながると考えております。

  このことは、民間企業において、商品やサービスの品質を向上するとともに、コストダウンを実現して新たな価値を創造するといった経営の考え方と同じであ り、私は、「目に見える改革」、「スピード感のある改革」、そして何よりも「市民の皆さまが成果を実感できる改革」を進めてまいります。

少し極端な例で、なかなか二者択一というわけにはいかないということも承知で、あえて質問させていただきました。

「量的改革と質的改革のバランス」を図るということですが、特に量的改革の意味するところが職員の定数管理や民間活力の導入だとすれば、行政組織がどこまで担うのかということは、今後重要なテーマになってくると思います。
人口減少社会や厳しい財政状況からすれば、「小さな行政」は時代の要請でもあるし、今や公共サービスの担い手は住民、企業、NPOと多様化しています。し かし、特に子育て・教育・福祉といった分野では、単にコスト削減・サービス向上・効率だけでは片付けられない部分が絶対的にあるのも事実で、ここの線引き をどう判断するかは、行政トップの理念に大きく関わってくると思います。

小出市長の経営感覚とは、決して効率を追求するという意味ではなく、あくまでも市民に寄り添うというバランス感覚も含めたものと理解して、今後の市民本位の行政運営に期待しています。

・新総合計画について

・策定期間について

小出市長は所信表明において「今後の新たなまちづくりの羅針盤となる「新総合計画」の策定に早急に着手する」と述べられ、当局ではすでに様々なデータを蓄積されているところです。

計画策定に関しては、その過程の中で、市民参画をどう図っていくのかという質問は、前回の本会議でさせていただきました。

そ のお答えとしては、「改定市原市総合計画の策定時には、市民会議を立ち上げるなど、市民が主体的に関わった。そのことが、その後の協働のまちづくりの推進 につながったという認識を踏まえて、今後望ましい市民参加のあり方について検討する」と、これが前回の質問に対するご答弁でした。

現在、中 高生が参加する「いちはら未来ワークショップ」という千葉大学との協働事業の募集も開始され、今後様々な市民参画に着手されるものと大いに期待していると ころです。アンケート調査やパブリックコメントなどのように間接的な参加だけでなく、このような直接参加できる手法をぜひ工夫して積極的に取り入れていた だきたいと思います。

(質問)
そのために、私はやはり一定の策定期間は必要だろうと思っています。改定市原市総合計画の策定時は、市民参画を十分に図った結果、市長就任から計画完成まで約1年半の期間を要した。策定期間について、当局ではどのようにお考えでしょうか。

(答弁) 企画部長
現 段階における想定といたしましては、今年度において、市民会議や中学・高校生会議などを開催し、幅広い世代の方々からのご意見をいただくとともに、有識者 や議会の皆さまからのご意見をいただき、将来都市像やまちづくりの方向性などを示す基本構想の策定に取り組んでまいりたいと考えております。また、来年度 は、基本構想の策定状況を踏まえた上で、各施策分野における個別計画の策定と十分な整合を図りながら、基本計画及び実施計画に相当する部分の策定に取り組 んでまいりたいと考えております。

具体的なスケジュールにつきましては、市民参画や議会のご意見の反映などを考慮し、平成29年度から新総合計画がスタートを切れることを目標に、策定方針の中でとりまとめてまいりたいと考えております。

(要望)
市民参画を図る際にお願いしたいのは、市民にとって厳しい内容のデータもぜひさらけ出していただきたい。そうすることで市民と対等な関係に立たなければ、 真の協働はあり得ない。今後公共資産マネジメントの推進にも大きく影響すると思われるので、この点しっかりと留意されるよう重ねて要望します。

・職員参画について

(質問)
次の質問に移ります。昨年度より、新総合計画策定に向け、若手職員による庁内プロジェクトチームが立ち上げられ、研究活動を行っているとお聞きしています。プロジェクトチームの活動を今後具体的にどのように計画に反映させていくのか。お答えください。

(答弁) 企画部長
プ ロジェクトチームの成果を活かすことについてお答えいたします。庁内職員によるプロジェクトチームにつきましては、若手を中心とする38名の多様な職種の 職員の参画により、5つのチームを編成し、昨年8月から、子育てや働く世代、高齢者、コミュニティ、地域資源、こういったものなどをテーマに、研究を重ね ているところでございます。各チームでは、有識者や地域の方々、学生との意見交換を行うなど、市役所職員以外の方々からご意見を積極的に取り入れながら精 力的に活動をしております。既存の枠にとらわれない新たな施策の立案に取り組んでおります。

これらの活動成果につきましては、新総合計画の策定に限らず、市原版総合戦略を含めた新たな施策展開に当たっての基礎資料として十分活かしてまいりたいと考えております。

意欲ある職員の自由な発想が生かされ、さらにモチベーションが高まることで、今後小出市政の運営の大きな機動力となることを期待しています。
私は、総合計画策定には、市民参画に加えて、学識参画、職員参画の三つの参画がバランスよく充分に図られることが必要だと思っています。
学識参画については、今回千葉大学や慶応大学にご協力いただけるということで、たいへん心強い限りです。
しかし、私は市原市がこれから最も取り組まなければならないのは、実は職員参画ではないかと近頃感じているところです。先ほどプロジェクトチームに関する質問をさせていただいた理由は、そんなところにあります。

市長が目指す市原の未来図をできるだけ多くの職員がしっかり共有して、その実現のためにどう取り組んでいくかを自分事として考え話し合う。職員の意識改革にもつながるし、そのようにオール行政で策定された計画ならば、市民の共感もまた多く得られるのではないでしょうか。

(質問)
そこで伺います。当局では、計画策定のプロセスの中で、職員が主体的に参加するためにどのような方法を検討されているのでしょうか。

答弁) 企画部長
新総合計画を実効性あるものにしていくためには、全ての職員が自ら計画の策定に参画し、庁内全体の意識改革を促していくことが重要であります。

 そこで、策定に当たりましては、部門横断的な本部体制を敷き、全庁一丸となった取り組みを推進してまいります。
 このような取り組みを通じて、職員が共に汗をかきながら、互いの力を出し尽くし、総合力を発揮できるよう、努めてまいります。

計 画策定を丸投げしてしまった結果、自治体名をすげ変えればどこでも通用するような「国籍不明」の総合計画が全国に散見していることも事実です。今後の市原 市の目指す方向をまずは「自力」で、徹底的に議論することが必要。その点ぜひ留意していただいて、市原の数値で語る計画、職員や市民の想いが語られる、手 作りの総合計画となることを期待しています。

・新総合計画策定の在り方について

ところ で、そもそも総合計画は、地方自治法において、その基本部分である「基本構想」について議会の議決を経ることが義務付けられていたが、国の地方分権改革の 下、H23年に地方自治法の改正によって策定義務がなくなり、策定そのものの必要性や議会の議決を経るかどうかは、市の独自の判断に委ねられることとなっ ています。

(質問)
そこで私は、市原市もこの際、総合計画の策定根拠や議会の関与をどのように図るのかなど、総合計画に関する総合的なルールを明確に定める必要があるのではないかと考えます。

その点を当局ではどのように検討されているのか。お聞かせください

※ 答弁 (企画部長) ただいま、議員のほうからお話がございましたように、策定根拠については、地方自治法から消えております。これにより基本構想の法的な策定根拠はなくなり、策定や議会の議決を経るかどうかについては、各市町村の判断に委ねられることとなってございます。
 しかしながら、総合計画は、行政だけでなく、議会や市民の皆様とともに構築するまちづくりの羅針盤でございます。目指すべきまちの姿を描く基本構想につきましては、引き続き、議会の議決を得て策定していく必要があるものと認識しております。

現在、議会の皆様との総意のもとで総合計画が策定されますよう、根拠条例の制定につきましても検討しているところでございますので、所要の準備が整いましたら、改めてご提案申し上げたいと考えております。

※ 要望  総合計画は行政運営の最上位の指針であって、最重要文書の一つです。部門別の計画に法的根拠があって、最上位計画にはないというのもちぐはぐな話です。ぜひ条例化を検討していただきたいと思います。

その際、議会の関与をどの範囲までとするのか(基本構想までか、もう一歩踏み込むのか)というテーマや、市民との協働策定を担保するためにも、市民参加の必要性や手法の規定なども鋭意検討していただくよう要望します。