平成29年度 第2回市原市議会定例会

個別質門 森山かおる

1.市原市汚水処理整備構想について

人口減少や厳しい財政状況を踏まえて、老朽化した汚水施設が増大してきたことから、汚水処理はこれまでの新規整備から老朽化対策中心へと転換の時期を迎えています。このような中で、今後10年程度を目途に汚水処理のあり方を示した「持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想の見直しの推進」が国から通知されたことにより、千葉県の部分構想となる市原市汚水処理整備構想の見直しも行われました。

(1)個別処理区域における浄化槽の適正な維持管理について
① 法定検査の受検率の向上について
これにより市原市では、集合処理である公共下水道区域と農業集落排水区域を合わせて3,015ha減らし、個別処理である合併処理浄化槽区域に変更することで、汚水処理人口普及率を現在の77.2%からH36年度末には84.3%にする目標値を掲げておられます。
これを達成するためには、広報やPR活動を行って汲み取り便槽や単独浄化槽から合併処理浄化槽への転換を促し、設置補助制度を拡大して補助金を増額することになっています。確かに汲み取り便槽や単独浄化槽から合併処理浄化槽への転換が進むことで生活雑排水が処理されるようになれば、汚水処理人口普及率はあがります。しかし設置後の維持管理が適正に行われなければ、構想の目的である「公衆衛生の向上や生活環境の改善、公共用水域の水質保全」は図れず、単に合併浄化槽に転換するだけでは汚水処理人口普及率が上がったとはいえません。
適正な維持管理は浄化槽法により管理者に義務付けられていますが、市原市における水質検査受験率はH27年度の実績によると、使用開始3カ月経過後から5カ月以内に1回の7条検査の受検率は64.4%、年に1回の11条検査の受検率は13.5%という状況です。これは県の平均値を上回るものではありますが、千葉県の受検率は全国ワースト。決して喜べる数値ではありません。
合併浄化槽の維持管理や水質検査についての指導・助言は浄化槽法により、本来は県の管轄となっていることは承知しておりますが、個別処理区域を増やすにあたっては個人の管理が重要になってくることから、汚水処理構想の目的を達成するためには、今まで以上に受検率を上げるために行政が積極的に取り組まなければならないと考えますが、ご見解をお伺いします。

答弁 (環境部長)
法定検査の受検率の向上についてお答えいたします。
市では、生活排水による水質汚濁を防止するためには、法定検査の受検を含めた浄化槽の適正な維持管理が非常に重要であると考えております。
このことから、広報紙や町会回覧、市ホームページ、浄化槽清掃業許可業者の協力を得て浄化槽使用世帯へリーフレットを直接配布するなどの啓発を行っております。
今後も引き続き、浄化槽の適正な維持管理の必要性について、市民の理解が、より深まるよう、一層の啓発に努めてまいります。

補助金を出して設置したところで、その後の適正な管理が行われないというのでは補助金を出す意味がありません。定期的な保守点検や清掃をしていないから検査を受けないということも考えられるので、適正な管理(10条検査)が行われるような手立てを考えていただきたい。
汚水処理人口普及率を上げることは手段であり、目的である「公衆衛生の向上や生活環境の改善、公共用水域の水質保全」が図られるような取り組みをお願いします。

②集中浄化槽の維持管理について
一方で、適正な管理を行っている浄化槽も勿論あります。その中でも住民が管理組合を作っている集中浄化槽についてお伺いします。
現在市内には管理組合による集中浄化槽は11施設あり、このうち3施設はかねてより組合から公共下水道への引継ぎの要望があり市と調査協定を結んだことから、汚水処理構想の見直し後も集合処理のまま残したと伺っています。
残る8施設については見直しによって集合処理から個別処理になり、公共下水道区域から外されてしまいましたが、これらの施設を管理する組合の多くは、将来公共下水道につながると期待して待っており、これまで適正に管理を行っておられます。しかし施設の老朽化で修理費がかさみ、このまま施設を維持できるかどうか、将来に大きな不安を抱いているのです。

ある組合では老朽化に伴って年々機器の故障が増えてきており、劣化した管路に砂が入り込み沈砂の汲み上げ回数が増えてくるなど、維持管理費が増してきたのに対して、世帯数は宅地開発時の計画の半分まで落ち込んだため負担金を値上げして対応しています。また将来公共下水道に移管できるようにと整備費をコツコツ積み立ててきたが、それさえも機器の修理費に費やさねばならない状況に迫られています。
他の組合も同様で、施設の長期計画を立てて維持管理費を抑えるためにできる限りの努力をしながらも、大修繕に備えて貯めてきた積立金が年々かさむ修理費で目減りし、更にこの先世帯数の減少が進めば1世帯当たりの負担は増え続け、いつまで適正な管理が続けられるかと大きな課題に直面している所もあります。
このように集中浄化槽の維持管理は個人が設置する浄化槽と違って、世帯数の減少に大きく左右されるという問題があり、今後適正な管理ができなくなれば、大量の汚水が処理されないまま放流されることになりかねません。
個別処理区域の集中浄化槽における維持管理の状況について、どこまで把握されておられるのか、お伺いします。

答弁 (環境部長)
集中浄化槽における維持管理でございますけれども、51人槽以上の合併処理浄化槽の維持管理状況につきましては、施設の管理者から千葉県に報告がなされております。
一方、市では、水質汚濁防止法の規定に基づき、201人槽以上の浄化槽について、設置届出を受理しておりますことから、現在、個別処理区域において、8施設の集中浄化槽の設置を確認しております。
また、このうち、1日当たりの平均排水量が30㎥以上の7施設については、年に1度、立入検査を行い、排水基準を遵守していることを確認しているところでございます。

懸命に努力して維持管理を行ってきた組合の資金が枯渇してしまう前に、まず現地に赴いて組合の実情を聞き、一緒に知恵を絞って考えていただきたい。
この件の対応については、また、この後にお聞きすることにします。

(2)集合処理と個別処理における住民間の公平性について
個人が設置している合併浄化槽はS63年に一気に普及し、古いもので現在30年を経過しています。汚水処理整備構想の最終目標年度はH46年で、個別処理は今回の見直しより2.1%減%となっていることから、9割以上の区域ではこの先20年間は個別処理ということになります。その先の見直しは未定です。
従って最低でも50年間は合併浄化槽を維持していくことになりますが、浄化槽の躯体の耐用年数は30年~50年、ブロワ―やポンプなどの機器耐用年数は7~15年ともいわれており、修理や交換の費用も必要になってきます。加えて保守点検、清掃、電気代、法定検査の費用もかかり、個別処理では住民に多くの負担が求められることになります。
そもそも集合処理と個別処理の区域選別は事業費の経済比較を基本として設定されているが、これは行政の都合であり市民の立場に立った費用比較もなくてはならないと思います。
そこで、集合処理と個別処理における住民間の公平性について、料金のシミュレーションが必要だと思いますが、ご見解お伺いします。

答弁 (上下水道部長)
市原市汚水処理整備構想につきましては、人口減少や厳しい財政状況に加え、今後は、新規整備から既存施設の老朽化対策に重点が移行するなどの状況を踏まえ、本市の将来を見据えた抜本的な見直しを図ったものであり、本年3月に千葉県全県域汚水適正処理構想が決定したことを受け、市構想が確定したところであります。
市構想における各処理区域の設定につきましては、千葉県から示された市町村作業マニュアルに基づき、土地利用状況や地域特性を勘案した上で、それぞれの処理手法による建設費や維持管理費などトータルコストを比較検討し、10年概成の時間軸を考慮した整備可能な範囲を位置付けたものであります。
ご質問のありました、住民間の公平性にかかわる料金のシミュレーションでございますが、集合処理・個別処理それぞれにおける住民の皆様の負担につきましては、所有している土地面積や家族構成などにより、個別に異なるものでありますことから、一概に負担の公平性について比較することは難しいものと考えております。

様々な条件でのシミュレーションを求めているわけではありません。
例えば佐倉市では、個別処理に変更された区域住民に対して理解を得るために、一般的な費用例として敷地面積50坪・単独浄化槽からの転換をモデルにして、公共下水道を使用する際の設置費(受益者分担金と接続工事費)、合併浄化槽を使用する際の設置費を汚水処理整備構想に載せています。ここに参考例として修理や交換の費用を載せるなどして、市民が納得できるような費用比較を示していただきたい。
また佐倉市では、維持管理費についても市の平均使用水量(20㎥/月)を用いて下水道使用料と浄化槽点検費用を比較し、浄化槽の方が高くつくことから補助金を出しています。
しかし市原市の現在の補助制度では、汲み取り便槽や単独浄化槽から合併浄化槽への転換、新たに合併浄化槽を設置する場合に限られています。個別処理区域に変更するのであれば、公平性の観点から維持管理費についても補助制度の検討が必要になってくると考えますが、ご見解をお伺いします。

答弁 (環境部長)
公平性の観点から、或いは料金のシミュレーションが難しいという状況にございまして、この状況下におきまして、補助制度の設置の検討というものも難しいと考えております。

今のご答弁は公平性の観点ということでお聞きしたので、お答えにくかったのではないかと思いますが、適正な汚水処理を図るために全国や千葉県下でも維持管理費補助制度を設けている自治体はありますので、参考にして考えていただきたいと思います。
市税の滞納がなく法定検査を受けているなどの一定の条件を設けた上で維持管理費補助制度を設けている自治体は増えつつあります。その中でも福井市では、下水道使用料相当額と合併浄化槽の清掃、保守点検、法定検査の費用との差額を計算し下水道使用料金の方が安い場合に補助金を出しています。こういった考えは、行政が市民の立場に立って考えているということが市民に伝わってきます。
私が申し上げたいのは、単に補助金を出してほしいということではありません。是非、行政の思いが伝わるように、公平に考えているという所を示していただきたいと思います。

先ほど集中浄化槽の状況把握について伺いましたが、その対応についてお聞きします。
集中浄化槽における維持管理については先ほど指摘した通り、老朽化対策と世帯数の減少に大きく左右され、今後適正な管理ができなくなれば大量の汚水が処理されないまま放流されかねないという大きな問題があります。そこで集中浄化槽の維持管理費についても、補助制度の検討が必要だと考えますが、ご見解をお伺いします。

答弁 (環境部長)
集中浄化槽につきましては、その特殊性もありますことから、維持管理費に対する新たな補助制度につきまして、関係部署とともに、必要性を含め、調査研究してまいりたいと考えております。

老朽化、人口減少という集中浄化槽の問題は、汚水処理整備構想の縮図ともいえます。他自治体が行っている補助金制度を参考にして、前向きに取り組んでいただくようお願いします。

2.広報戦略について
(1) 市民と情報を共有できる広報について
市原市においては昨年度からシティプロモーション推進室を設置し、プロモーションビデオの作成、ホームページのリニューアル、今月からはフェイスブックに公式ページを開設して、市の魅力やイベントなどの情報発信を行っておられ、時代に合った広報戦略に取り組まれています。
このようなSNSを使っての発信は市外からも市原市の情報を得ることができます。しかし、移住を促進するために魅力や情報を発信することも必要ですが、それ以上に今市原市に住んでいる市民へ必要な情報を伝えることが重要だと考えます。市民の満足度こそが市の魅力につながるのではないでしょうか。
そのためにはパソコンやタブレットを使える人に限定される情報の発信よりも、このようなアイテムを持っている人にも持っていない人にも市の情報を届けることができる広報いちはらのあり方を見直す必要があると思います。
H27年の市民意識調査によると、広報いちはらを「よく読む」「ときどき読む」を合わせると、76.4%の人が広報いちはらを利用していることがわかります。一方で「市の必要な情報を入手できていると思うか」との質問に対しては「そう思う」「どちらかというとそう思う」を合わせて34.3%となっており、広報いちはらでは必要な情報が入手しにくいことが浮かび上がってきます。

<広報いちはらの見直し>
私は以前、現在のタブロイド版から保存がしやすいA4版化にして情報を充実させることと、発行回数を1回にして新聞折り込みではなく全戸配布することを要望し、議会で質問しました。
その時のご答弁では「A4版化や発行回数のあり方も視野に入れ、調査・検討を進めているところである。また配布方法については全戸配布に結びつくような新たな方法について、他自治体の事例などを調査し、広報戦略の一貫として市民の誰もが広報いちはらを読んでいただけるよう、費用対効果に十分留意しながら市民目線での工夫を検討していきたい」ということでした。
あれから1年半が過ぎましたが、総合計画の第1次実行計画によると広報いちはらの発行回数は現状のまま今後3年間推進、広報いちはら見直し事業は今後3年間も検討が続くことになっています。
これまでにどのような調査や検討をされたのか、また今後どのような検討をされるのか、お伺いします。

答弁 (企画部長)
広報紙の見直しについて、お答えいたします。
市民に必要な情報を的確に届けるための広報いちはらの発行方法等の見直しにつきましては、昨年度、実行計画の策定に併せて検討いたしました。
はじめに、現在のタブロイド版、月2回の発行からA4版化し、月1回の発行とすることにつきましては、A4版化することで、市民が保管しやすくなるというメリットと写真やイラストを多用し、見やすい紙面が作成できるのではないかとの観点から、他市の状況や業者に対し費用等の調査を行いました。
その結果、発行回数を月1回にすることにより、市民へタイムリーに情報発信するという面では、これまでよりも劣ること、現行のタブロイド版8ページ月2回を、A4版40ページ1回にした場合には、全体の情報量も減少してしまうこと、また、制作及び印刷費用も高くなってしまうこと等が判明いたしました。

次に、配布方法については、現在の新聞折込から、業者による個別配布に切り替えることも検討いたしましたが、個別配布は、比較的市域の面積が狭い市町村ではメリットが認められるものの、本市のように広域の面積を有する場合、発行日に合わせて全戸配布するには、かなりの時間や人員を確保する必要があること、どの家が空き家かどうかの判定が困難であり、無駄が生じる恐れがあることなどにより、費用の面で現状よりも、かなりの負担増が生じることになることが判明いたしました。
そこで、庁内関係部署とも協議をした結果として、費用対効果の面で、当面はタブロイド版月2回の発行と新聞折込での配布という形態を維持する中で、写真やイラストなどの活用による紙面の充実や、新聞購読をしていない市民への配布方法の拡大を検討することとしたところであります。
なお、第1次実行計画に掲げた広報紙の見直しにつきましては、計画期間3年間を「検討」という表記となっておりますが、これは、現状をそのままにして検討を継続するという意味ではなく、編集方法の見直しや写真の活用策など、できるところから常に見直しを図っていく考えで、A4版化や配布方法の改善についても、検討を重ねていく意味とご理解をお願いいたします。

前回の答弁でもそうでしたが、今回も費用対効果という言葉を使っておられるが、納税者である市民に市の情報を届けることは義務だと思います。戸別配布によって市が自ら情報を届けようとする姿勢が必要ではないでしょうか。
何をもって費用対効果とするのか。月に一回の発行でA4版化することで高くつく、配送業者による全戸配布は新聞折り込みに比べると費用は高くとおっしゃっていますが、要は市民が必要とする情報をどれだけ紙面に織り込んだものを届けられるのか、私は、広報いちはらの内容こそが費用対効果に求められるのではないかと思います。

<お知らせ型からの脱却>
全国の優れた自治体広報紙には、学びの情報があります。例えば防災意識を高めるために熊本地震の被災状況や復興の様子を載せたり、共生社会の実現に向けて障がい者の仕事や生活状況について記載しています。また人口減少や財政の厳しさという市にとってマイナスなイメージとなる記事も、ページを割いて包み隠さず記載しています。こうした情報の蓄積があってこそ、市の様々な計画や取り組みを深く理解することができ、市民力の発揮につながるものと思います。
今年度、10年後の市原市の姿を描いた総合計画が策定されました。この総合計画が絵に描いた餅に終わらないためには、行政と共に考え協力し合える市民力を発揮してもらわなければなりません。そのためには、これまでのお知らせ型から脱却して、学びある紙面で市民と情報を共有できる広報紙にしていただきたいと思いますが、ご見解をお伺いします。

答弁 (企画部長)
広報紙のあり方につきましては、単なるお知らせ型ではなく、市が直面している課題などを的確に発信し、今後の方向性を示すなど、市民と情報の共有が図れる紙面づくりを目指す必要があるとの思いは、我々も議員と同じでございます。
そこで、本年度の広報編集方針では、「市民の皆様が市政をより身近に感じ、理解や関心を深めるとともに、市政への参画意識を高めていくこと」を基本的な考え方としております。
具体的な方法としましては、今後10年間の市の羅針盤となる総合計画について理解を深めてもらうために、実行計画に計上された主要事業の実施状況や本市の政策課題などを、分かりやすい表現でタイムリーに発信してまいります。
また、市民活動や市に寄せられた市民の疑問などを広く取り上げ、紙面上で紹介することにより、市民の皆様が主体性をもって市政に参画しているという意識が醸成されるような、広報紙づくりに取り組んでまいります。
さらに、本年度から、市民特派員制度の創設を予定するなど、より市民目線での情報発信ができる体制の整備を進めてまいります。
なお、今年度は、広報紙のあり方やシティプロモーションの実施方法などの今後の方向性を示す「広報戦略プラン」を策定する予定でありますので、その中で、市民と情報を共有できる広報紙にすべく、検討してまいりたいと考えております。

今の答弁をお聞きして、何を伝えたかではなく何が伝わったか、そういった所に市民目線で取り組んでいきたいという思いはしっかり受け止めましたので、是非、誰もが読みたくなるような広報いちはらにしていただくようお願いします。