平成29年度 第4回市原市議会定例会 個別質問 森山かおる

個別質問 森山かおる

1.医療的ケアを必要とする障がい児者とその家族への支援について

医療技術の進歩により、かつては病院でしかできなかった医療ケアを家庭でも行えるようになってきました。その内容は経管栄養、導尿、痰の吸引、薬の管理などがあり、昨今では人工呼吸器をつけた障がい児者が在宅で暮らせるまでになってきましたが、その在宅生活を支えるためには、医療的ケアが必要な障がい児者だけでなく、介護を担う家族への支援も含めて考えなければならないと思っています。

市では「いちはら障がい者福祉共生プラン」の策定に向けて、先般アンケートによる実態調査を実施されました。ここで十分な支援に結びつくような調査をしていただきたかったのですが、このアンケート調査は障がい児者全般に対して無作為抽出で実施されたために、とりわけ家族の負担が大きい医療的ケアが必要な障がい児者の実態が浮かび上がってきません。
例えば、人工呼吸器をつけているなど常時ケアが必要な障がい児のいる家庭では、障がい児の兄弟の幼稚園や保育所の送り迎えに困っている状況があります。

ある方は市に相談したところファミリー・サポート・センターを紹介されたそうですが、料金は1時間700円。毎日送迎に使うとなると、ひと月に3万円ほどかかってしまうため、高額でとても払えないということでした。
そこで祖母に人工呼吸器の扱い方や喀痰吸引を習得してもらって、現在は片道30分かけて毎日来てもらい、ケアを任せている間に母親が幼稚園へ送迎されている。家族でなんとかやり繰りして在宅生活を送っておられますが、誰かが体調を崩せばたちまち成り立たないという状況です。

頼れる親族が近くにいない家庭では、てんかん発作を頻繁に起こすため目が離せなかったが、やむを得ず家に置いて、兄弟を幼稚園まで送迎せざるを得なかった、という声も聴いています。
また、医療的ケアを行うのは母親というケースが多く、複数のケアが必要な場合は、数時間ごとの経管栄養や導尿、痰が溜まればその都度吸引、褥瘡を防ぐための体位変換は夜中でも3時間おきに行うなど、精神的・体力的に厳しい状況に置かれています。

休息するために短期入所を利用したいと思っても、市原市には夜間にナースが常駐している施設がないため、ケアの内容によっては利用できません。

市内に受け皿がないために、千葉リハビリテーションセンターの短期入所を利用しようとしても、もうここは一杯で余程の事情がない限り受け入れてもらえず、保護者は休息も取れずに、ひっ迫した状況にあります。
「いちはら障がい者福祉共生プラン」の策定にむけては、このような実態を把握するための調査が必要ではないでしょうか。

千葉市では、在宅の重度心身障がい児者と介護をしている家族を対象に、医療的ケア等に関するアンケート調査を行っています。
市原市においても千葉市と同様に、医療的ケア児者に特化したアンケート調査を実施し、実態を把握したうえで医療的ケアを必要としている家庭への支援を行う必要があると考えますが、ご見解をお伺いします。

(答弁 保健福祉部長)
医療的ケアを必要とする障がい児・者とその家族への支援について、お答えいたします。

常時、医療的ケアを必要とする障がい児・者につきましては、ご本人だけでなく、ご家族など介護者へのケアも重要であると考えております。

市では、こうした介護者の負担軽減を図るため、重度障がい者の短期入所を受け入れた施設に対し、人件費の補助を行う事業を実施しておりますが、現在のところ、すべてのニーズにお応えできている状況にはございません。

現在、市では、障がい福祉施策にかかる個別計画といたまして、「いちはら障がい者福祉共生プラン」の策定を進めております。

このプランの中で、児童福祉法の一部改正に基づき、「障がい児福祉計画」を一体的に策定することとしております。

障がい児福祉計画の策定にあたりましては、国の基本指針において、医療的ケア児が適切な支援を受けられるように、平成30年度末までに、関係機関による協議の場を設置することが求められており、本市におきましても、保健、医療、保育、教育等の関係機関による、協議の場を設置していく予定であります。

医療的ケアを必要とする障がい児等への包括的な支援策については、この協議の場において検討を進めることとなりますが、その前提として、障がい当事者や介護者の抱える課題やニーズを把握することが重要となりますので、議員からご提案のありましたアンケート調査等については、実施に向け、検討してまいりたいと考えております。

千葉市のアンケート調査結果では、介護者である家族の負担がいかに大きいかを物語っています。

医療的ケアを行う主な介護者は「母親のみ」が94%。その年齢は40代が47%、50代以上が39%。介護継続年数は26年以上が23%、次いで6~10年、16~20年が共に20%。
短期入所を利用するなどして、介護者が丸一日介護から離れることができた直近の日については、一番多いのが「一年以上前」が27%、次いで「介護を始めてから休めていない」が22%となっており、約50%が1年以上介護から丸1日離れられるような休息がとれていません。
介護者の67%が月に1回は短期入所の利用を希望していますが、医療的ケアに対応できる施設が少ないために、数カ月に1回の利用しか叶わないという状況です。このように介護から離れることができる時間が短いために、7割以上が将来に不安を抱え、そのうちの1割はこの先介護を続けること自体が困難だと感じていると調査結果では報告されています。

千葉市では、できる限り医療的ケアのある対象者に配布するために、障がい者団体、療育センター、市内と近隣市にある特別支援学校や通所事業所にも働きかけて配布を依頼したそうです。

医療的ケアに特化したアンケート調査を実施して、保健福祉、教育、医療の連携を図り、ケアを必要とする障がい児者とその家族への支援策を整備していただくようお願いします。

障がい児者の中でも、医療的ケアが必要な方は一握りにしかすぎませんが、施策に反映させるためには実態調査の他に、きめ細かくニーズや課題を話し合える場も必要だと考えます。

先ほどのご答弁で、医療的ケアに関する協議の場をもつということであったので、ひとつ提案させていただきたいと思います。

市川市の自立支援協議会には、3つの部会の下に9つの下部組織があり、その一つに重度心身障害児者サポート会議というものがあります。

参加されている保護者の方に話を伺うと、このサポート会議は今から約10年前に医療的ケアが必要なお子さんの学校卒業後の受け皿がなかったことから、その状況を知ってもらおうと、保護者が特別支援学校の先生方と勉強会を開いたのが始まりでした。

その後、社会福祉法人、保健師、発達支援センター、行政職員なども加わり、現在では約15名が毎月1回集まって主に医療的ケアが必要な障がい児者の受け皿を広げる活動をされています。

こうした活動から、それまでは市内になかったナースが医療的ケアを行う短期入所施設を今年4月に立ち上げ、人工呼吸器をつけた方の受け入れも進めているところだと伺っています。
市川市では部会やサポート会議などの下部組織には、自立支援協議会の委員以外の方も数多く参加しているため幅広い意見交換になり、自主的に課題に対して解決策を講じた事例を聞き、私はこのようなボトムアップの仕組みが必要だと感じました。
市原市においても、障がい者支援協議会だけでは汲み上げにくい医療的ケアに関するニーズや課題を話し合い、幅広く意見交換ができる仕組みを作っていただきたいと思いますが、ご見解をお伺いします。

(答弁 保健福祉部長)
市では、障害者総合支援法に基づき、障がい当事者や医療、就労、教育など各分野の関係者により構成する「市原市障がい者支援協議会」を設置しております。

この協議会には、相談支援、権利擁護、サービス支援、就労支援、子ども支援の5部会が設置されており、地域における障がい者への支援体制に関する課題等の情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、その対応方策や体制整備について、活発な意見交換が行われております。その活動の一例を申し上げますと、平成27年度には協議会の委員主導により、相談支援部会の下部組織として、市内の各相談支援事業所で組織された「銀杏の杜(いちょうのもり)」が結成され、就労に関わる事業所が参画するなど、相談支援のニーズに対応する取り組みに広がりを見せております。

障がい者支援では、当事者の心身の状態や生活環境により、さまざまなニーズが存在することから、関係機関や民間事業所、当事者会などによる自発的な活動により、支援の輪が広がっていく体制作りが必要であると考えております。

ご質問の医療的ケアを必要とする障がい児・者をとりまく課題を話し合い、幅広く意見交換できる仕組みづくりにつきましては、先ほどお答え致しました関係機関による協議の場づくりを進める中で、支援協議会においても併せて議論を深めていただきながら、当事者のニーズを捉えられる体制となるよう、検討してまいります。

市原市の障がい者支援協議会には、障がい者団体の代表者も参加されていますが、一つの者団体には障がい程度が違う方がいて、それぞれの状況によって課題やニーズも違ってきます。代表者以外に別の方が出席したり、協議会には入っていない方も参加することで、より現場の声が汲み上げられるのではないかと思います。 人と人をつなぐのも行政の役割。顔の見える関係づくりを設定して、医療的ケアに関する意見交換が幅広くできるような協議の場をもっていただくよう、お願いします。

2.「インクルーシブ教育システム」の構築について
〇H25年の学校教育法施行令の改正により就学先はどのように変化したか

H18年に国連総会で採択された「障害者の権利条約」において、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みとして「インクルーシブ教育システム」の理念が提唱されました。ここでは、障害を理由に教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」の提供が必要とされている。

これを受けてH25年に学校教育法施行令の改正が行われ、障害のある児童生徒の就学先の決定については、一定の障害のある児童生徒は原則として特別支援学校に就学するというこれまでの考え方を改め、市町村の教育委員会が、個々の児童生徒について、障がいの状態や教育上必要な支援の内容、教育の体制の整備状況、保護者及び専門家の意見等を勘案して、総合的な観点から就学先を決定することが求められることになりました。

このような法の改正後、市原市の就学先の状況はどのように変化してきたのでしょうか。

(答弁 学校教育部長)
平成25年の学校教育法施行令の一部改正により、就学先決定については、十分に情報提供を行うとともに、本人や保護者の意見を最大限尊重し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成することを原則として、就学先を決定するように変わりました。

本市では、法が改正される以前より、きめ細かな就学相談を行い、保護者の意見を伺うとともに、合意形成を行いながら、就学先を決定しております。
このことから本市においては、法律の改正による、就学の状況に、大きな変化は見られておりません。

〇学校の受け入れ体制は?支援補助員は足りているのか
では、学校の受け入れ体制は、整っているのでしょうか。
地域の学校に通っていても、支援学級に閉じ込められていてはインクルーシブ教育とはいえません。児童生徒の状況にもよるが、通常学級で障がいのない子どもと共に学び合うためには、支援を必要とする子どももいます。

市原市では障がいをもつ児童生徒の学校生活上の介助や学習活動上の支援をするために学級補助員、特別支援学級補助員を配置されています。その配置については「特別な教育的支援を必要とする児童生徒にかかわる支援会議」で判断されることになっていますが、適切な配置にむけてどのように取り組んでこられたのか、お伺いします。

(答弁 学校教育部長)
学級補助員及び特別支援学級指導補助員の配置についてお答えいたします。

学級補助員及び特別支援学級指導補助員は、介助や支援が必要な児童生徒が在籍し、学級運営上、人的 支援が必要とされる学級に配置することにより、支援体制の充実を図ることを目的としております。

各補助員の配置につきましては、教育委員会が学校からの要望を受け、児童生徒の実態調査等を行います。
その結果を基に、医師や臨床心理士等を委員とする「市原市特別な教育的支援を必要とする児童生徒に係る支援会議」において、補助員の配置の必要性について総合的に判断しております。

今後も、各学校の実態や学級の状況に応じた支援体制の整備を努めてまいります。

私は以前の議会質問で、特別支援学級補助員を増やしてほしいと要望したことがあります。その時のご答弁では「現状に即した配置がなされるよう努める」ということでした。しかし、支援補助員が少ないために、こんなことが起きています。

あるお子さんの事例。小学校の支援学級に入学され、1年生から4年生までは体育・音楽・道徳の授業を、支援補助員に付き添ってもらって通常学級で学んでいたが、5年生からは支援学級の児童が増えたため、卒業までの2年間は通常学級での授業をほとんど受けられなくなってしまった。

その理由は付き添える先生や支援補助員が足りないということでした。
要するに、お子さんの状況が別段変わったわけでもないのに、体制上の理由で共に学ぶ場を失ったという問題が起きています。

そもそも支援補助員が1学級に1名という現状では、通常学級に付き添うことが想定されていないと言わざるを得ません。
支援補助員が少なく、学校の体制が整っていないことは、合理的配慮に欠けるのではないでしょうか。インクルーシブ教育を進める上で、合理的配慮に対してどのように取り組まれるのか、ご見解をお伺いします

(答弁 学校教育部長)
合理的配慮について、お答えいたします。

近年、共生社会形成に向けて、インクルーシブ教育システムの考え方が高まり、一人一人の子どもに応じた学びやすい環境を作っていくことが求められております。

このような中、市教育委員会におきましても、各園や各学校でインクルーシブ教育システムの構築を図り、どの子も学習活動に参加している実感や達成感を持ち、生きる力を身につけていけるような環境整備に努めているところです。
これらを進める上での合理的配慮につきましては、子どもの実態を把握し、本人や保護者との丁寧な話し合いによる合意形成に基づき、取組むことが重要であると考えております。

議員ご指摘の事例につきましては、すべての要望には、対応できませんでしたが、学校のできる範囲での対応は、図っていたところでございます。
今後も、教育委員会と学校現場がさらなる連携を図り、 子どもたちにとって望ましい教育環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

市の教育大綱では、インクルーシブ教育システムの構築に向けて、教育内容や方法の改善充実を図ることで、すべての子どもたちが能力や可能性を最大限に伸ばせる環境づくりを進める、としています。私はここで最も重要なのは人員の確保だと思っています。

文科省でも、障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合の「合理的配慮」の提供として、教員、支援員等の確保をあげています。

支援学級の児童が通常学級で学ぶ機会を失ったことは、通常学級の児童から障がいを理解する機会を奪ったということでもあります。

そのことを重く受け止めて、支援補助員の確保に努めていただくよう要望します。

〇居住地校交流 市からの積極的なアプローチを

インクルーシブ教育システム構築では、学校間連携として特別支援学校との交流や共同学習の推進が掲げられています。その取り組みとして特別支援学校に在籍している児童生徒が、居住地の小中学校等において行う「居住地校交流」があります。

居住地校交流は、特別支援学校に通学している児童生徒の保護者から申請を受けて進めることになっているが、申請数は横ばいで、居住地校の様子が分からないために、今一つ足を踏み出せない保護者もおられます。

県ではマニュアルを作成して居住地校交流を進めていこうとしているところですが、保護者や児童生徒の不安を取り除くためには、居住地校からの情報発信が必要だと考えます。

そこで、特別支援学校に在籍する児童生徒や保護者が、居住地校交流に関心をもてるように、居住地校から学校の様子を知らせるなど、積極的にアプローチをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(答弁 学校教育部長)
居住地校からの情報発信について、お答えいたします。

本市に在住し、県立特別支援学校に在籍している児童生徒は、本人や保護者の希望により、居住地の小中学校で交流しております。
居住地校での交流を実施するにあたっては、支援学校と居住地の小中学校間で、活動内容や時間、回数、配慮事項など、事前の打ち合わせを十分に行っております。
また、市内の各小中学校におきましては、町内回覧やホームページを通じて、学校行事などの情報を広く発信しているところでございます。
教育委員会といたしましては、今後、希望する保護者に対して、居住地の各小中学校の学校の様子、行事予定など、関係する支援学校と連絡を図り、情報が伝わるよう努めてまいりたいと考えております。

特別支援学校への通学はスクールバスや自家用車を使うために、登下校時に姿を見かけることがほとんどありません。それゆえ保護者は、子どもが地域から埋もれた存在になっていると感じています。

たとえ県立の特別支援学校に通学していても、市原の子ども。

障がいがなければ市原市立の小中学校に通うはずであった児童生徒という思いをもって、積極的に関わっていただきたいと思います。

〇最後に

インクルーシブ教育が目指すものは共生社会の実現であり、そのスタートは障がい児と共に過ごすことに他ならないと思っています。
災害時の避難所で周りの理解が得られないために、車中で宿泊せざるを得ない障がい児者がいたことは、大災害の度に報道されています日頃から接する機会がなければ理解することは難しいでしょう。
私の息子は知的・身体共に重度の障害を持っていますが、かつて住んでいた大阪では地域の小中学校に通学していました。支援補助員に付き添ってもらって多くの授業を通常学級で過ごし、支えてくれる友達が一杯できました。

その友達がどんなふうに成長したでしょうか。
中学校を卒業して市原市に転居した1年後に東日本大震災が起こりました。

その時に、こんなメールが届いた。「森山君は大丈夫か」「お母さん、水、乾電池、足りてる?送るよ」。わずか16歳の友達からのメールを見て、涙が流れました。
共に過ごした時間は、離れてからも息子とつながっていることを、嬉しく思うと共に、改めて教育の意義、その深さを感じました。

一緒に学んだ子どもたちが大人になった時に、確実に社会は変わります。それはどんな啓発や道徳の授業を行うよりも、はるかに効果があると私は確信しています。

心のバリアフリーを育める教育体制を構築していただくようお願いして、質問を終わらせていただきます。