「社会保障と税の共通番号制」の拙速な導入に反対する意見書(案)
政府は6月30日、「社会保障・税番号大綱」を公表した。それによると、2015年1月以降に国民一人一人に、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野での共通番号(マイナンバー)を割り振り、可能な分野から利用を開始するとしている。
本制度の特徴として、「主として給付のための番号としての制度設計」があげられ、「医療・介護等サービスの質の向上」「事務・手続きの簡素化」「災害時での活用」などのメリットがうたわれてはいる。
しかしながら、当初導入費用として6000億円が見込まれ、さらにシステムのメンテナンス・ランニングコストも含め多額の税投入が予想されている。また「住基ネット」導入の際にもみられた多大の手間を行政に押しつけて、それに見合うだけの効果が本当にあるのか、「大綱」においても明確にはされていない。そもそも、本制度もその一環である「税と社会保障の一体改革」の議論において、これまでの社会保障費削減の見直しが根本的に行われていない。いくら正確な「本人特定」がなされても、社会保障給付のあり様が明らかにならなければ、給付の改善は不可能である。
また、共通番号は様々な情報と「連携」するものとして、個人情報の検索・集積の可能性を高めるものである。また各人への「付番」に関しては「目で見て確認できる番号であること」として、ICカードの所持・提示が求められることとなり、個人情報の流出と悪用の危険性は飛躍的に高まることも懸念される。「大綱」に「既に諸外国の多くで導入されているものである」としてあげられている他国の導入例をみても、「なりすまし犯罪」の多発をはじめとして決してメリットのみではないこと、また制度運用の具体面における我が国のそれとの大きな差異も多々認められる。
共通番号制による費用対効果、メリットとデメリットの検討や国民への情報提供が不十分な状況で、制度導入を急ぐべきではない。
今後、共通番号制が不可欠であるのかどうかの議論を深め、慎重な判断を求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年 月 日
千葉県議会議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
財務大臣
経済産業大臣 あて
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