先の国会において格差社会云々が論議され、政府は「格差の拡大は高齢社会の進展と単身者世帯の増加による見かけ上のもの」などという答弁をしています。確かに一因はあるかもしれませんが、暮らしという現場から見た時にやはり労働面の格差、所得の格差、貧困家庭の増加などの格差の拡大現象が実際に起きているのを感じます。
戦後行われた諸改革の効果と、まれに見る高度経済成長が相まって所得の平等な再分配が行われ、中流階層が多く出現しました。しかし1980年代後期のバブル期から所得の分配が不平等化に向かい、現在も徐々に進行しているといわれています。このような格差社会の進行ということについて、市長はどのように捉えどのようにお考えでしょうか。お聞かせください。
市原市ではどうなのかということですが、一例を挙げますと児童扶養手当の申請者数が平成15,16,17年の推移を見ますと、2118人、2195人、2219人と増加してきています。母子家庭の増加ということも原因しているようですが、所得格差の一面をあらわしているのではないでしょうか。
また平等な社会の要因として税の徴収方法、社会保障制度が大きく関係してきますが、最近の動きとして税率のフラット化、福祉サービスの自己負担の増大など平等性から後退するような方向に社会は動いています。
地方分権の中で地方の裁量権も増してきているわけですが、これら格差社会への動きに対して地方自治体として、どのような姿勢と対策を持って向かうべきとお考えですか。お聞かせください。
次に臨海部のコンビナート等の安全についてお伺いします。
4月のコスモ石油の爆発事故に続き、5月には大日本インキ化学の爆発事故がありました。幸いにして2件とも人身事故にまでは至りませんでしたが、一歩状況が変わっていたら大変な事故につながったとも聞いております。事故原因の報告を読みますと、安全点検に問題がなかったのか、点検制度やその内容について注目する必要があるのではと考えます。
高圧ガス関連は県の管理ですが、臨海部の石油タンクなど危険物の大部分は消防法により本市の管理責任になるわけで、広域な範囲と多くの対象物を抱えその責任は重大です。また古い設備は40年を経過し、老朽化の問題もあるわけです。
行政が立ち入り検査を実施していますが、実質的な検査は事業所が外部委託をするか、事業所によって自主検査をしています。この検査が例えば定期修理などの期間は緩和されていないか、検査が甘くなっていないか、企業は本来コスト主義、経済優先になりがちなことから、安全対策が後回しになっていないかなどが心配されます。
前消防庁長官石井隆一氏はその著書の中で、「かつて日本は諸外国に比べて産業災害の発生は一桁少なかった。しかし、いまや安全神話は崩れつつある。欧米はシステムエンジニアがリスク分析をして安全システムの設計を行ってきたのに対して、日本は勤勉で改善意欲の高い優秀な現場作業員によって<安全対策>を講じてきた。その安全システムが崩れつつあるのだ」と指摘し、7つの理由をあげています。(1)長期的リスクを軽視するトップの増加(2)世代交代と安全ノウハウの継承の断絶(3)人員削減(4)防災投資の削減(5)アウトソーシングの弊害(6)企業等合併に伴う課題(7)自動化、省力化の盲点、の7点です。
実際、現場で働く企業の方にお聞きすると、どれも思い当たることという答えが返ってきます。その対策としてはトップの意識改革が大前提であり、実態ときちんと向かい合い、一つひとつ解決していくことが必要といわれています。
まずは行政として今回の事故をどうとらえているのでしょうか。また上記の問題指摘に対しての見解と、検査体制の確立を含む課題ををどのように考えていくのかご見解をお聞かせください。
市長は臨海部企業との関係をさまざまな面で強化しようと進めていらっしゃいますが、市民の安全の確保ということを最優先に考え、企業への対応を求めるべきと思いますがご見解をお聞かせください。