2006年の全国信用情報センターの調べによると消費者金融の利用者は1年間で、1600万人に上るとのことです。主婦を含めた国内の就業者数約8000万人のうち、5分の1に当たる市井の人々が消費者金融を利用した計算になります。うち多重債務者は230万人。一人当たりの平均借入残高は200万円を越えています。
自殺者が2006年は約32000人。そのうち、4分の1の約8千人が借金を苦にしての自殺です。
多重債務に陥る原因として、事業の失敗、収入減、連帯保証人になったため、などの理由があげられます。
このように多重債務問題は全国的な社会問題となっています。多重債務問題の解決を目指して昨年暮れに貸金業法が改正、出資法の上限の29.2%と利息制限法の上限の15〜20%の間のいわゆるグレーゾーンといわれる灰色金利を撤廃し、利息制限法に一本化されました。
19年4月に多重債務問題改善プログラムを政府が策定、金融庁は地方自治体職員用相談マニュアルを作成し、自治体に相談窓口の設置、整備強化を打ち出すなど、国・自治体・関係者が一体となって実行していくことを求めています。
多重債務に陥ると執拗な取立てによって正常な判断力を失い、何も考えられなくなり、うつ状態になる、そして、自殺の道しか考えられなくなるといいます。まずは、今苦しみぬいて、自殺の一歩手前にある方に、「死ななくて良い、解決策がある」という情報を伝え、相談にのることが、必要です。
とりわけ、相談者にとって身近な自治体の役割が、注目されています。市町村が多重債務対策に取り組むことで、当事者の自殺、犯罪、家庭崩壊等を回避するのみでなく、自治体にとっても税や保険料の滞納の解消等につながるというメリットがあります。
先駆的に取り組んでいる鹿児島県奄美市では、法律の専門家と連携し、税金滞納者や生活保護を受けている方に呼びかけて、ヤミ金融等で必要以上に払いすぎている場合に法的措置をとったりすることで、1年半で2億円を回収、その一部を税金にあてています。90%解決されているとのことです。ほかの滋賀県野洲市、岐阜県や長野県も先駆的取り組みをしていることで知られています。
千葉県庁内でも多重債務問題対策本部を立ち上げて本格的対策に乗り出すことになりました。
市原市では、消費生活センターを設置し、対応しています。
2005年の相談は119件、06年は142件。増えています。
多重債務問題も扱う消費者相談にあたる担当者は嘱託の方4名。
そこでうかがいます。
- 住民から多重債務問題に関する相談があった場合、どのような対応をしていますか?
- 解決方法として任意整理・特定調停・個人再生・破産等を検討したり、助言したりしていますか?解決方法の検討・助言に際しては利息制限法の上限金利(15〜20%)を超える金利貸付の残高を利息制限法の上限金利で計算しなおす、いわゆる「引きなおし計算」を行うアドバイスをしていますか?
- 多重債務問題の相談に際して、他の部局と連携ははかっていますか?連携している部署について教えてください。福祉関連の(生活保護、DV対策、児童福祉等)担当部局、国民健康保険担当部局、納税担当部局、公営住宅賃貸徴収等の担当部局、その他部局についていかがでしょうか?
- 自治体が主催しての借金に関する消費者教育を行っていますか?それは年何回、学校教育年何回ですか?講師は専門家ですか?自治体職員ですか?
- 市のホームページでは消費生活センターで相談を受け付けているとの記載は現在はありませんが、パンフレットの配布など含めて相談窓口をどのようにして知らせていますか?
- 消費生活センターの市の職員は2005年度は正規職員4人でしたが、06年3人、現在は2人と日々雇用の方1人のことです。消費生活に関わる問題が複雑化している昨今、今後の対応など考えるとぜひ補充が必要と思いますが、どのようなお考えですか?
(再質問)
先日、多重債務問題に取り組む宇都宮健児弁護士に具体的な市の取り組みについて話をうかがう機会がありました。
- 市町村の取り組みとして、相談窓口に来た方に弁護士会を紹介するときに、電話番号を教えるだけでなく、弁護士会まで同行することがポイントとのことでした。弁護士に相談するのは敷居が高く、せっかく相談窓口まで来ても、弁護士に実際に相談する人は少ないとのことです。多重債務は専門機関に相談することで必ず解決できることを伝えて、確実につなげていくことが大切です。「同行」について今後ぜひ実行していただきたいのですが、いかがですか?
- 多重債務に苦しんでおられる方の8割は、解決できることを知らないまま、返済を続けておられます。給食費や、税金、保険料を滞納しておられる方、また生活保護を受けていらっしゃる方の中に多重債務が原因と思われる方が少なくないとのことです。その方たちと直接触れて、多重債務問題に気付く可能性が高いのは学校や教育委員会、納税、国保の担当者、市営住宅、福祉などの市職員です。多重債務を抱えている市民の存在に気付き、いち早く弁護士などの専門職につなぎ、解決につなげることができる市職員の養成が急がれます。まずは多重債務問題に関する対応の仕方を共有する必要があります。今年の7月に金融庁からマニュアルのDVDが各市町村に配られたとのことです。まずはそれを活用して関係部局が対応の仕方について学ぶ必要があると思いますが、いかがでしょうか?
- 各関係部局が集まって連絡会議を開く必要性があると思いますが、いかがでしょうか?
- 職員の増員について、職員の補充を早急に図る必要があると思われますが、いかがですか?すくなくても従来の4人に戻す必要があるとおもいますが、いかがでしょうか?
(再々質問)
私は今回ぜひとも、多重債務対策を市原市で確立していただきたいと思っております。
9月8日の朝日新聞夕刊に「予算ゼロの多重債務者対策」の記事があり、岐阜県の多重債務者対策が紹介されていました。
相談会、広報、窓口設置、関係者との連絡とメニューは一見平凡。担当者は女性の職員ひとり。それなのに、金融庁会議や自殺対策のシンポジウムに招かれるといいます。
たとえば、庁内対策会議は税や公営住宅、国民健康保険課10数課が関わっているが、形だけの課長会議は開かない、税や家賃の滞納者には督促だけでなく、「相談窓口がありますよ」と伝える。宣伝は市町村広報誌やミニコミ誌にたのむなど、小さな工夫で、昨年度は以前の倍近い1135件に増えました。
市原市の自殺者は昨年は64人とのこと。その中の何割かの方はおそらくは多重債務に苦しんでおられた方でしょうし、また、表に出てくるのは氷山の一角です。自殺防止キャンペーンを張る一方で、多重債務の対策の側からの具体的アプローチを願います。
また、多重債務が解消することで、生活保護や税金等の滞納が解決する方も少なからずおられるはずです。
市の役割は大きく2つ。
ひとつは掘り起こして、相談窓口につなげること。
もうひとつは相談に来た方を弁護士会などの専門機関に確実につなげることです。どちらも足元からできることです。
掘り起こしとしては、市のホームページに相談窓口を載せてくれるよう以前私が要望したことに早速に対応していただき、ありがとうございます。
さらに
「五井の消費生活センターに相談窓口があること」を明記したチラシ等を市役所の関係の課や、支所などにぜひ置いてほしいと思いますがいかがでしょうか?
(答弁)
- 同行については、相談者の意向に十分配慮し、柔軟な対応をこころがけていく。
- 各関係部署との連絡会議や連携をこれまで以上に強化していく。
- 対策マニュアルのDVDは相談員の心構えや態度に関する内容であるので、それらを活用していく。
- 増員についてはこれまで以上に取り組んでいく。