1. 子ども支援について
8月30日、国民の自民党への政治不信と改革への期待が一気に噴出し、民主党が圧倒的に勝利して、政権が交代しました。
新自由主義をかかげた小泉構造改革がはじまって10年近く、格差社会がすすみ、世界不況も拍車をかけて、あらゆるところにひずみがはっきりあらわれています。なかでも一番深刻なのが、雇用、そして、子どもです。
就学援助を受けざるを得ない、無保険で医者にかかれない、給食費が払えない、高校を中退せざるを得ない・・・そんな子どもの貧困が顕在化、深刻化しています。
児童虐待も増加の一途です。
民主党マニフェストも子ども支援の目玉に月2万6千円の子ども手当てと、高校教育の実質無料化をかかげています。
本市でも現在、次世代育成支援の後期行動計画を作成中ですが、今回は特に、支援を必要としている子どもに焦点をあてて、相談体制と支援のネットワークについてお伺いいたします。
(1)虐待等の要保護児童への支援について
○ 家庭児童相談員への相談業務延べ件数が平成15年には7639件だったのが平成20年には9349件となりました。今回の次世代育成支援の計画作りに当たってのニーズ調査でも、「虐待をしているかもしれないと思ったことがある」と答えた保護者が約30%となっています。
虐待の増加は全国的な傾向です。現場で支援に当たられる方が肌で感じておられる虐待増加の原因と、特徴についてお伺いいたします。
(答弁)
増加の原因は平成17年に施行された改正児童虐待防止法によりDVが子どもへの心理的虐待であると定義がみなおされたこと、社会における虐待への理解、関心が高まったこと、関係機関の連携がすすみ、連絡調整が頻繁に行われるようになったことがあげられる。
特徴としては親の精神的疾患、離婚、経済的不安、DV、子どもの抱える障害や、発達の遅れなど、これらの問題が複合化し、多くの関係機関が複合的に関わる必要のあるケースが増加していることもあげられる。
○ 次に要保護児童対策地域協議会についてうかがいます。
平成16年にできた児童虐待防止ネットワークが平成19年に要保護児童対策地域協議会となり、支援の必要な子どもをネットワークを組んで支えていこうというしくみになりました。
参加メンバーと協議会の役割、現在の状況はいかがでしょうか?
(答弁)
児童相談所、法務局、社協、町会長連合会等21の関係機関により組織されている。
代表者会議、実務者会議を開催し、関係機関や団体との連携強化しつつ、関係機関および団体との連携を強化しつつ、児童虐待や要保護児童の早期発見、未然防止をはかっている。
○ 各関係部署や関連組織の意識や情報の共有化についてお聞きします。代表者会議、実務者会議は人事の異動などでかかわる人が年々かわってきます。協議会の趣旨の共有化や実態を次の担当者に引き継いでいくことがなかなか難しいのではないでしょうか?
このような関連組織の意識や情報の共有化に対し、どのような対策をとっていかれるのか、お伺いします。
(答弁)
人事異動では前任から後任へきちんとした意識情報がつたえられて、事務事業にとどこおりが生じないように実施されていると認識している。
○ 児童虐待や育児不安の相談支援の体制についてですが、家庭児童相談室は現在ひとりの正職員と4人の相談員の5人体制です。新しいケースの相談は年間400件近くあり、連絡調整を含めて年間10000件近い相談業務延べ件数です。
相談員や職員の増員が必要と思いますが、ご見解をおきかせください。
(答弁)
相談体制の充実強化に努めてきたが、今後とも必要に応じ、計画的増員を関係部署と協議していきたい。
(主張)
個々のケースが年々重度化、複雑化してきています。個々のケースに対応すると同時に、全体を見渡しての方向作り、調整の強化がさらに必要と私は思います。
○ 相談をする部屋ですが、相談者のプライバシー、人権がまもれるような独立したつくりにすべきと考えますが、いかがでしょうか?
(答弁)
プライバシー、人権が確保しづらい状況は原状として認めている。早期実現に向けて協議していく。
(主張)
現在の相談室では静かな環境が確保されているとはいえません。悩みに悩んで相談してこられる利用者のプライバシーをぜひ確保していただきたいと思います。
○ 現在市原市には子育て支援員162人が、こんにちは赤ちゃん事業や地域の子育て支援など活躍しておられます。しかし、こんにちは赤ちゃん事業で4ヶ月児の家庭訪問をしてもなかなか家庭のなかのことはわかりづらいし、虐待があるのかまでは見えないとお聞きします。
育児不安解消や虐待防止の視点での子育て支援員の研修会を市の主催で開催して、ケア体制の強化をはかると効果的なのではと思いますが、見解をお聞かせください。
(答弁)
支援員の資質向上に向けて協議会の方と協議し、検討していく。民生委員、町会の方といった関係機関が連携、協働し、未然防止に取り組んでいくのが適切と考えている。
(2)障がい児への支援について
平成16年に三和に発達支援センターが設置され、平成19年から特別支援教育がはじまりました。特別支援教育連携協議会がつくられ、障がい児に対してもネットワークを組んで支援していこうという体制がととのいつつあります。
○ 特別支援教育連携協議会についてですが、参加メンバーと協議会の役割、現在の状況についてお聞かせください。
(答弁)
医者、障がい児の保護者団体の長、発達支援センター所長など13名の各関係機関の長で構成されている。
役割は各関係機関の調整をはかること。
本年度は3回の開催予定。リーフレットやポスターの作成、活用方法の検討。
○ そもそも障がい児への支援のなかで、乳幼児から幼稚園、保育園、学校、卒業後と生涯にわたっての継続した支援体制をいかに作っていくかがいちばんの課題といわれています。
サポートファイルについてうかがいます。
障がい、なかでも特に発達障がいのあるお子さんの保護者のなやみのひとつとして、各ライフステージにおいて関係する機関が変わるごとに、これまで受けてきた支援の内容、お子さんの特徴などをはじめから説明しなくてはならず、また説明した内容が十分に伝わらず、支援に反映されないということがありました。
サポートファイルはそういった悩みを少しでも解消するため、保護者がお子さんのプロフィールや発達支援センター、学校などで受けた支援内容などをつづり、関係機関に提示することで、お子さんが乳幼児期、学齢期、青年・成人期の各ライフステージをとおして一貫したよりよい支援が受けられるようにするためのものです。
3月の予算委員会でサポートファイルの作成にとりかかることになったという答弁をいただいておりますが、進捗状況はいかかでしょうか?
(答弁)
保健福祉部、子育て支援部、学校教育部で構成されている市原市発達障がい児支援事務連絡会議において現在就学前の乳幼児を対象に作成中。
特別支援教育連携協議会でも導入を検討している。
○ これはいつまでにつくる予定でしょうか?
(答弁)
就学前はある程度たたき台ができている。それをもとに教育センターの特別支援教育連携協議会で小学校から上の段階についてたたいている。できれば来年早々とりくみたい。これからタイムテーブルをしっかりつくっていきたい。
(要望)
国は平成20年に「発達障がい等支援特別支援教育推進事業」を打ち出しました。グランドモデル地域として県内では流山市、富里市が指定され、サポートファイル作成に取り組んでいます。10地区の推進地域も指定されています。
5年間の事業なので、市原市もぜひ手を上げたり、積極的に情報を収集して、一日も早く作成するように強く要望します。
○ 特別支援教育の相談支援体制について
教育センターでの特別支援教育の相談支援は昨年から2名体制となりましたが、特別支援教育がはじまって、電話や面談による相談件数がかなり増えています。
担当者を増やして、相談支援体制をさらに強化すべきですが、ご見解をお聞かせください。
(答弁)
専属は現在2名だが、これからかなり増えてくると思うので、人員については調整を検討していく。
○ 各小中学校に年々特別支援学級が増設されています。いただいた資料をもとに、平成17年度と21年度を比べてみますと、20学級から46学級へと大幅に増えています。
子どもの数も153人から230人へとこちらもかなり増えています。担当者を増やすべきです。いまいちどお考えをお聞かせください。
(答弁)
関係部局と協議する。
(3)不登校等、教育全般にかかわる相談支援体制について
○ 現在はどのような相談支援体制なのでしょうか?
(答弁)
スクールカウンセラーを全中学校に配置している。
教育センターで電話相談、教育相談コーナーを設け、子どものさまざまな悩み事の解消につとめている。
○ 教育センターでの相談件数は平成20年は述べ806人。相談内容は年々複雑化しています。こちらも相談にあたる人を増やし、支援体制の強化が必要です。ご見解をお聞かせください。
(答弁)
関係部局と協議していく。
(4)子ども達をまるごと支えていくネットワークの構築について
次年度の予算要望書を9月はじめにださなければいけないこともあって、この夏は県、市の子ども関連の部署や教育委員会、出先機関にかなり広範に現状と課題をうかがいました。
そのなかであらためてくっきりと浮かび上がってきたのが、子どもの置かれている環境の厳しさです。
地域で子どもを育てていく力が弱くなり、親の力も低下しています。
子ども達がおかれている環境の厳しさに国も自治体も動き出しています。
平成21年度に子ども若者育成支援推進法ができて、0歳から30代後半までの子どもと若者をまるごと支えていく仕組みづくりが始まりました。
市原市では青少年指導センターで昨年よりモデル事業として若者支援のためのユースアドバイザー養成講座を設け、いちはやく取り組んでおられるときいております。
ニート、ひきこもりなど問題は高年齢化しています。
また、要保護児童対策地域協議会、特別支援教育連携協議会といったネットワークの体制がすすみつつあります。
最前線で相談支援に当たっている方々は「子どもはつねにいちばんの被害者」というあたたかいまなざしで奮闘しておられますが、人を増やし、相談体制、ネットワークの体制をさらにさらに確立していくことを求めます。
今後はさらに子育て支援部、教育委員会、学校、保健福祉部、指導センター、・・・教育、福祉、保健医療、雇用と広い視野で子どもをまるごと支えていくネットワークの構築が必要です。
○ 子どものまるごとの支援をぜひ実現していただきたいと思います。子ども若者相談支援センターを設置し、大きな相談窓口をもうけ、年齢にあったところにていねいにつないだり、うけついでいくコーディネーターが求められます。
子ども若者相談支援センターの設置についてお考えをお聞かせください。
(答弁)
平成20年、内閣府が実施提案した「地域における若者支援のモデル事業」に参画しているが、年齢を問わず、さまざまな相談があり、多くの期間の連携が必要と考えさせられている。
子ども・若者育成支援推進法が今年7月成立し、今後、子ども・若者相談支援センター、子ども・若者に関するワンストップの相談窓口設置が必要とされている。
学校教育法、児童福祉法、雇用対策法関係分野の相談など多岐にわたるので、全庁的協議が必要と考えている。自治体の計画作りは努力義務となっているが、国の動きを注視していく。
(主張)
子ども若者支援推進法もまだ、できたばかりです。今のモデル事業をぜひ発展させていただきたいと思います。
○ 最後に、現在策定中の次世代育成支援後期行動計画の中に、要保護児童対策地域協議会、特別支援教育連携協議会といったネットワークの体制を強化し、支援の必要なお子さんをしっかり支えていくことを重要課題として、十分にとりいれていただきたいのですが、お考えをお聞かせください。
(答弁)
次世代計画の反映についてはニーズ調査や、国の制度改正、法改正をふくめて、検討を積み重ねている。要望の趣旨をふまえて実行的施策体系のとりまとめをはかっていく。
(主張)とくに今回は支援にあたる人を増やしてほしいと重ねて、質問してまいりました。
行政改革で人を増やすことはむずかしいといいますが、それでも子どもたちへの支援体制の強化はまさにいまなすべきことです。
子どもの育ちを支えるのはまわりの大人たちです。よろしくお願いいたします。