貧困の問題が社会のさまざまな場面で表面化してきています。失業や病気での困窮。家を失ってホームレスとなった人々の増加。児童虐待、後を絶たない自殺者も貧困が大きな原因となっています。うっかり足を滑らせたら、すぐさまどん底の生活にまで転げ落ちてしまう。今の日本は、「すべり台社会」になっているのではと湯浅誠さんも述べていますが、誰しもがそうなるかもしれない危険を抱えているといっていいでしょう。
すべり落ちるのを救い受け止めるのがセーフティーネットなわけですが、いわゆる社会保障の仕組みがほころんできています。セーフティーネットは三層構造を持っていて、雇用のネット、社会保険のネット、公的扶助のネットといわれています。社会保障の再構築は国レベルの最優先の課題になっていますが、残念ながらまだまだ具体的な検討にも入っていない状況です。
しかしながら人々の暮らしの状況はひっ迫してきており、現場である自治体では、扶助費の増加や窓口への相談者・申請者の増加となって表れています。セーフティーネットづくりは自治体にとっても喫緊の課題であることからいくつか質問いたします。
(1)市民活動を支える資金提供の仕組みづくりについて
1回目の質問資料によりますと保護世帯・保護人数の増加がやはり著しく、平成17年時には2022世帯、2786人だったのが23年1月時で2815世帯、3652人と3割から4割近い増加となっています。
まずは、これらの増加の原因をどのようにとらえていらっしゃるでしょうか。また保護世帯の状況分析についてもお聞かせください。
また、自立支援プログラムとして就労支援に取り組んでいるわけですが、この成果はどう評価されているでしょうか。また、今後の自立支援プログラムについても併せてお聞かせください。
(1回目の答弁要旨)
23年1月現在、被保護者世帯のうち、高齢者世帯が1367世帯で、全被保護者世帯の48.8%と約半分を占めている。高齢化の進行で無年金の人が長引く不況のもとで働くことができないまま、生活保護に至っている。また、傷病者世帯、障害者世帯も合わせると全体の約9割に達している。自立できる要因が少ないことから受給期間が長期化する原因になっている。
就労支援については就労を開始した人が14名、保護廃止が5世帯。23年度は就労支援員を2名とする。
2回目の質問先日釧路市の福祉事務所の方からお話を聞く機会がありました。釧路市は全国でも一番、生活保護を受けている人が多い市です。その釧路で取り組まれている自立支援プログラムは普通の生活保護政策の常識とは全く違ったもので聞いていてまさに目から鱗の気分でした。
自立支援というと生活保護の廃止を目的にしがちですが、釧路市のプログラムは自立的な生活・・・つまり社会生活で人とのかかわりとか、朝しっかり起きて、時間も居場所もあってというような生活上の「溜め」をつくることをしていきます。それをしながら就労にも結び付けていくという道筋をとっているわけです。
特徴はそのプログラムに地域のNPOや介護施設など多くの団体が関わってボランティア活動の受け皿になっています。
まだまだ試行錯誤の連続といった状況のようですが、生活保護の本来的な姿ではないでしょうか。是非、これらの考え方を学び、取り組みを考えたらと思いますが見解をお聞かせ下さい。
(2回目の答弁要旨)
釧路市の事例を調査・研究していく。
(2)第二のセーフティーネットへの取り組みの現状と課題について
1回目の質問仕事を失ったために住宅等で困っている人への貸し付けや、就職支援を行う、第二のセーフティーネットといわれる仕組みが2009年の10月に開始されました。仕組みが複雑でなかなかわかりにくいのですが、「総合支援資金貸付」「臨時特例つなぎ資金貸付」というのを、社会福祉協議会が委託を受けて行っています。
この制度を利用した方は21年度は120件、今年度はすでにその倍と増えており、これまで社会福祉協議会が扱っていた生活福祉資金を大きく上回っています。私がうかがった時も窓口には次々と申請や相談の方が見えていました。
問題はこの制度は貸付ですので6 か月後から返却が始まるのですが、仕事が決まる人がほとんどいないために、返却ができないという状況が起きてきていることです。これは国の制度ですが、多分このままでは7割が焦げ付くのではと、先日のテレビ報道でも取り上げていました。
国の制度であり県社協が審査にあたりますが、市の社協も対応に追われており、今のままではこの制度の本来の目的である、就労に繋げるような結果にはなっていません。これらの状況をどのように捉えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせください。
(1回目の答弁要旨)
22年度は1月までに総合支援資金が303件、住宅手当は227件。総合支援資金の貸し付けに対して全国社協は、対象要件や貸付基準の明確化など、制度の見直しを要望した。住宅手当の利用者には期間中に就労ができるよう対応を図っていく。
2回目の質問これも生活保護と同じような問題を抱えています。ただ、お金を貸し付けるだけではだめだということ。また、いまのように生活保護に行くまでのつなぎ資金化しているのもおかしい。
就労に結びつける手立てがもう少し考えられないのか。(「自立支援」は自治事務として自治体の責務となっている。)
(2回目の答弁要旨)
市は住宅手当を担当している。総合支援資金は住居のない人が住居を確保するために必要。両制度は密接な関係にあることから、社会福祉協議会と連携強化を図っていく。