2. 平成24年度当初予算案について
市原市の来年度当初予算案を見ると、税収は固定資産税と都市計画税が評価替えにより大幅に減少、法人市民税も景気低迷のあおりを受けて8.8%減少の見通しとなっている。一般会計の予算規模は831億1千万円と2年ぶりのマイナス予算となった。
しかし、限られた歳入を「安全・安心に暮らせるまち」「個性輝く活力に満ちたまち」「子育て・教育一番のまち」という3つの重点施策に「選択と集中」させ、さらに「東日本大震災を教訓とした危機管理の強化」という理念がしっかりと読み取れる予算編成なっており、その点は評価する。
しかし、気になる点がいくつかあったので、順次伺いたい。
(1) 東京電力株式会社による電気料金の値上げについて
今年に入り東京電力株式会社が契約電力50キロワット以上の「自由化部門」の企業に対し、4月より電気料金を17%値上げすると発表した。
この発表を受け佐久間市長は、船橋市・習志野市・千葉市との湾岸4市共同で東京電力株式会社に対し納得いく情報開示を求める旨の要望書を提出した。
予定通りに値上げされた場合、地域経済や市の予算執行に大きな影響を及ぼすのは必至である。
そこで、市ではこの電気料金値上げによる影響をどの程度と試算されているのか。そして、それに対しどのような対策が考えられているのか。お聞かせ願う。
(答弁)財政部 契約管財課
市全体への影響については、対象となる施設が下水道処理施設などのプラント設備をはじめ、学校や公民館など多岐にわたっており、全体での試算には時間を要している状況です。
本庁舎に限って申し上げますと、値上げ分にかかる電気料金はおよそ700万円となる見込みです。
また、ご指摘のように2月16日に千葉市・船橋市・習志野市・本市の4市で、さらなるコストダウンなどを東京電力に要望いたしました。
さらに、2月22日に千葉市長会、町村会において、緊急要望書を提出したところです。
電気料金が値上げされた場合の対策は、昨年にも増して、蛍光灯の間引き、エレベーターの停止、使用電力の可視化など、できる限りの節電対策を講じてまいりたいと考えています。
節電といえば昨年の夏、電力需給バランスの悪化によって電力使用制限令が発動されたことを受け、市原市役所節電行動計画が策定された。7月1日から9月9日の間の計画だが、この間どのくらいの節電効果があったのか。
(答弁)財政部 契約管財課
23年度の節電行動計画は、施設規模や業務内容に合わせた数値目標を定めて取り組みました。
25%以上の削減を目標とした本庁舎では、25.5%の削減をしました。
また、15%以上の削減を目標に取り組んだ福増クリーンセンターでは44%、臨海球技場では53.2%の削減を、5%以上の削減を目標とした松ヶ島終末処理場は29.8%、菊間終末処理場は12.9%の削減を達成いたしました。
この他の施設では、15%以上の削減を目標とし、18.8%の削減をしたところです。
このように、すべての施設で目標を達成することができました。
昨年の電気事業法による使用制限値15%を大きく上回っており、取り組みの成果が表れたと言える。
しかしどうしても足りないときは財政的な処理をするほかない。
市原市は、電力購入費の削減につながる競争入札による特定規模電気事業者PPSとの契約をH19年度から行っているが、入札に応じるPPSが少ないため、今のところ契約は公民館での1社に留まっている。今後電力の自由化を一層進めるよう、国に働きかける必要がある。
また、再生可能エネルギーをはじめとするエネルギー施策について、自治体が真剣に取り組まなければならない時期に来ていることも確かである。今後さらに本腰を入れて取り組まれるよう、要望する。
(2) 危機管理の強化について
H24年度予算案では、東日本大震災を教訓に危機管理体制を強化し、災害に強いまちづくりを進めるための事業として、総額約18億9700万円が計上されている。防火行政無線システム配備や消防救急無線配備、小中学校施設耐震対策など、災害対策に対し最優先で取り組まれることが予算にも反映されており、評価する。
しかし予算案からは、臨海部の企業災害に対するアプローチに関しては今一つ読みとることができない。
震災後一年を経過した今も、市民からは臨海部企業の危機管理や安全性に対する懸念の声が多く寄せられている。市民の間に企業災害に対する不安が根強く存在する以上、市はもう一歩踏み込んだ対策をとれないものだろうかと感じている。
今後はソフト面の対策が鍵になってくるが、これについては、これまでの議会でも、企業との情報交換を図りながら連携強化を進めていくという趣旨のご答弁があった。
では実際に、臨海部企業と市の間では震災以降どのような話し合いが持たれ、どのような合意がなされているのか。
また、現在改定中の千葉県石油コンビナート等防災計画では、地域との連携はどのような位置づけがされているのか。お聞かせ願う。
(答弁 総務部 防災課)
臨海部企業間との話し合いについては、石油化学を中心とする主要企業への聞き取りを実施したところ、企業側からも災害対応へのあり方や情報の共有化など、市との連携強化を図りたい旨を確認しています。今後、県・市・消防局・特定事業間での協議を持つなど、特別防災区域内の防災計画との整合性や連携強化に向けて、具体的な防災計画の構築に努めてまいりたいと考えています。
また、県では、石油コンビナート等防災計画等の見直しを進めているところであり、災害時の関係機関相互の連携を図り、効率的な災害対応や情報の共有・受伝達、企業の社員はもとより、隣接事業者及び住居避難の必要性の有無や地域への広報活動など、特別防災区域における防災対策の強化を整備することとしています。
H24年度4月より、新たに市長直属の部長級職員として配置される危機管理監は、専門的な立場で庁内の総合調整を担うとのことである。
その立場を大いに活かして、国や県、近隣自治体との関係調整のみならず、企業とのパイプ役としての任務も大いに期待している。
臨海部企業に対しては、普段から行政や市民と交わり信頼関係を築くような仕掛けを構築することで、市民の不安解消にもつなげるよう、当局の積極的な取り組みを要望する。
では次に、
耐震対策について伺う。
本庁舎耐震対策事業として新規に515万円が計上されているが、これは具体的に何を検討するための予算か。
(答弁 企画部 企画調整課)
市役所本庁舎については、利用者の安全と災害時における復旧・復興の拠点としての機能確保を図るため、庁内の「検討会議」において検討作業を進めていまして、これまでに、庁舎の構造上の問題点や機能上の問題点とともに、求められる機能などについて整理を行ってきました。
今後は、建て替えや移転等を含めた具体的な手法についての比較・検証が必要になることから、コンサルタント業者等への外部委託により、専門的なノウハウを活用しながら、判断材料となる資料作成等を行う予定です。
では、
庁内では、震災以来これまでにどのような検討の場が設けられ、そこでは実際にどんな話し合いがなされたのか。
(答弁 企画部 企画調整課)
まず、詳細な意見聴取等が必要であろうという考えから、「検討会議」のもと、関係課の職員によって構成する作業部会を、「防災・建築」、「機能・環境」、「計画・執務」の三つの小部会に分け開催してまいりました。
また同時に、広く情報を募る必要がある、という考えから、「検討会議」等の委員構成に含んでいない主管課、あるいは行政委員会などによる会議、さらには窓口機能を持つ部署による会議を開催するとともに、「全職員アンケート」等も行いました。
これらの情報について、作業部会を「全体会議」という形で3回開催しながら、事実関係を精査・検証したうえで、「検討会議」への報告をしたところです。
具体的な内容については、主要なものでは、耐震性能や設備の問題点として、「軸耐力補強工事を実施したことにより、『IS値0.6相当』の機能は確保したものの、耐震性能を向上させるものではないことから、現時点においてもIS値が低い」、あるいは「エレベーターが老朽化しており、停止してしまうことがある」、「現庁舎は、構造基準はもとより、排煙設備など現行の建築基準法には適合していない」などの現状が確認されました。
その他の情報については、未成熟で今後の検証も必要であることからこの場での公開は差し控えますが、現在の本庁舎が深刻な問題を抱えていることが明らかになってまいりました。
早急に具体的な対応策について検討することが必要であるという判断を行い、外部委託を活用し検証を進めていくということです。
私がこの問いかけをした理由は、市の顔でもある本庁舎が今後どうなっていくのか、大勢の市民がかたずを飲んで見守っているからである。
建て替えはやむなしなのか、また建て替えるとすればどこにするのか?いろいろな憶測が飛び交っていて、市民ネットにも問い合わせが多く寄せられている。
しかし、これだけ大きな事業でありながら、市からの積極的な情報開示はなかった。
旧イトーヨーカドー市原店の譲り受けの突然の公表と同様に、この本庁舎耐震対策事業も、このまま議会や市民の関与がないままことが進められ、突然公表されるのではないかと、大変危惧している。
このようなやり方に対し、市民からも、「市原市のいう協働は、結局のところ行政側に都合のいい協働でしない」という声が数多く寄せられている。果たしてこれでいいのだろうか。
施策決定の過程で市民に情報を開示し市民を巻き込んで議論を尽くすことは、確かに混乱や困難をともなう可能性があるが、これが本来の市民自治への第一歩である。
当局にはぜひその壁を乗り越えていただくよう、強く要望する。
(3) アートフェスティバル事業について
市制施行50周年に向け、来年度はいよいよ本格的な準備に入るということで、アートフェスティバル事業に6010万円の予算が計上されており、観光振興課には新たに推進室が設置されることになっている。
この6010万円は今後立ち上げられる実行委員会への補助金と伺っているが、このアートフェスティバル事業の中身が今一つはっきりしない。
例えば、予算案の概要の説明には、地域住民・市民団体、アーティスト、企業、サポーター、そして行政がアートを媒介にしてミックスするイメージが描かれているが、どのような協働事業を考えているのか、ご答弁願う。
(答弁 経済部 観光振興課)
この事業では、若手を中心とする国内外のアーティスト、住民、企業、千葉県内や首都圏の大学、行政等が連携し、協働しながらプロジェクトを展開する予定です。
具体的には、次代を担う国内外のアーティストが制作活動や生活の場の一つとして地域に入り、コミュニティーの一員として地域の方々との協働による新しい市原の魅力を創出していくものです。
このほか、地域資源や地域住民の活動、アーティストの想像力を活用し、空き家等の建物再生、サイクリングなどのスポーツとの連携、お土産や食の開発など様々な取り組みについて、現在検討を進めています。
これらの取り組みを通して、継続的な地域活性化の礎を築き、さらなる50年に向けた地域づくりの展望を切り開いていきたいと考えています。
昨年の11月23日から12月4日まで南市原において「アート漫遊いちはら」が開催された。私も開催期間中に現地を訪れ、美しい里山と、地元の皆さんが一つになり主役となった活動と温かいもてなしに触れることができ、南市原独特の癒しの魅力を再確認した。
ところで、「アート漫遊いちはら」はアートフェスティバルへの布石と位置づけられており、この事業に対する総括は気になるところである。
そこで、「アート漫遊いちはら」による交流人口の増加や経済効果の分析結果、また今後に向けた課題をお示しいただきたい。
さらにそれを受け、アートフェスティバルの交流人口の増加や経済効果はどの程度を見込んでいるのか、ご答弁願う。
(答弁 経済部 観光振興課)
「アート漫遊いちはら」は、ふるさと雇用再生特別基金事業を活用して、社団法人市原市観光協会に観光交流ゾーン活性化事業として業務委託しました。
来場者数については、9000名以上が訪れたとの報告を受けています。
経済効果ですが、今回の委託事業では具体的な数値化を行っておりませんが、小湊鉄道株式会社からの聞き取りによると、昨年10月までの乗降客は東日本大震災による観光業の落ち込みで前年を下回っておりましたが、11月、12月は前年を上回る乗降客であったとの報告を受けておりますので、経済効果は大きいものであったと考えています。
今後の課題ですが、協力団体との意見交換会でも指摘されましたが、事前周知のタイミングや方法の検証や、効果的な情報発信が必要であると考えています。
次に、アートフェスティバルついて申し上げます。
来場者数ですが、先進事例であります新潟県十日町市の大地の芸術祭は50日間で38万人、瀬戸内国際芸術祭は105日間で94万人の来場者数を記録しました。
本市も先進事例等を参考に適切な来場者数の目標を定めてまいりたいと考えています。
また、定住人口の拡大については、現時点での数値目標は定めていませんが、お越しいただいた方々に市原の魅力を知っていただき、リピーターとなり、さらには将来住んでみたいと思っていただくことで、定住人口増につなげていきたいと考えています。
次に、経済波及効果ですが、現在本事業の計画を策定する中で、適正な来場者数の目標設定に基づき、試算を行っているところです。
併せて開催終了後に実績評価として、実来場者数に基づいて民間調査機関による検証も行ってまいりたいと考えています。
一過性に終わらせないために、思いを持った人材の確保と住民ありきの施策決定、そして対マスコミ戦略が必要である。
南市原が将来にわたって市原市の財産や文化となるよう、私たちも関心を持って見守りたい。
(4) 小規模学級特認校整備維事業について
少子化の波は市原市にも例外なく押し寄せ、市内の児童数はここ10年で約2000人減少している。学校数に変動はないことから多くの学校が小規模化しており、平成24年度に全学年が20名以下となる学校は加茂地区をのぞいて5校、一方で増加見込みの学校は4校と、児童数のアンバランスも課題となっている。
そこで市では、児童の平成25年度より、小規模学級特認校モデル事業を小規模校である国府小学校と海上小学校において開始するとして、来年度予算案に啓発費10万円を計上している。
小規模学級特認校制度は、20名以下の学級で外国語学習や農業学習など学校独自の教育を行うもので、児童は市内全域から募集する。
この制度がうまく機能するためには地元の理解と協力が絶対条件である。当局ではPTAや地域住民に対し説明会を開いたとのことだが、ここではどんな意見が交わされたのか、お聞かせ願う。
(答弁 学校教育部 学校教育課)
昨年11月に実施した地元説明会では、児童数が増えるという期待感、学校や地域が活性化されるのではとの意見が出されています。
また、児童が遠距離通学に耐えられるのか、学区外から通学する児童が適応できるのか、学校が特色を打ち出すための教育が通常のカリキュラム内でできるのか、などの質問が出されました。
公の教育課程の中でどれだけ独自性を打ち出せるか?指導者の確保は?そもそも、市内の保護者の中に、居住地から離れた学校に通わせてまで特色のある教育を受けさせたいというニーズがどの程度あるのか?
この制度にはまだまだ不透明な点が多く見受けられる。
しかしながら市原市は、県内他自治体に先駆けた小学校全クラス35人学級の実現に表れているように、「子育て・教育一番のまち」に向かって取り組んでいる。
この小規模学級特認校整備事業も、わが市ならではの積極的な取り組みとして捉えている。これから地域の意見を取り入れ、試行錯誤しながらこの制度を磨き上げることで、学校小規模化や児童数格差に少しでも歯止めがかかることを期待している。
ただ、これらの目的はあくまでも行政の政策上の都合である。
本来、教育は子供一人一人のためのものである。特認学校区の児童やその保護者が、「この学校を選んでよかった」と思えるような取り組みを期待している。