1. 医療政策について
(1) 医療費の適正化に向けた取り組みについて
厚生労働省の統計によると、H23年度の国民医療費は38兆6千万円で、毎年3%以上の上昇を続けています。国民所得に占める医療費の割合も膨らみ続け、H22年は10.7%、30年前の倍の値です。
市原市では国民健康保険に約92,000人、3分の1の市民が加入している。今年度平均10%の保険料引き上げで約6億円の財源が確保されてもなお一般会計から約21億8千万円の法定外繰り入れが必要という状況です。
@ジェネリック医薬品推進の取り組みについて
今年度市は、国保事業特別会計の適正化対策として、保険料の引き上げやレセプト点検の推進などと並び、ジェネリック医薬品の普及促事業を方針に掲げました。これは被保険者に対し、「服用中の医薬品を仮にジェネリックに変えた場合これだけ減りますよ」という差額を郵送で通知し、ジェネリックへの変更を促すというもので、すでに後期高齢者医療広域連合では昨年度から先行して実施している事業です。
通知作成業務は千葉県国民健康保険団体連合会へ委託するとのことですが、事業の概要をお聞かせください。また、通知を受け取った市民からの問い合わせや要望などはどのように処理されるのか。あわせてお聞かせください。
(保健福祉部答弁)
送付対象者につきましては、16歳以上の被保険者で1ヶ月に14日分以上の調剤処方実績があり、200円以上の自己負担額の削減が見込まれる方でございます。
この事業は、千葉県国民健康保険団体連合会に通知書の作成を委託し、初年度となる平成25年度は、9月、12月、3月の年3回の送付を予定しております。
通知内容に関する被保険者からの問い合わせについては、各都道府県の国保連合会により構成されている公益法人である国民健康保険中央会が設置するコールセンターにおいて、対応してまいります。
検討は庁内でされたようですが、医療団体との連携はどのようにされたのでしょうか。
(保健福祉部答弁)
ご質問の内容は、市原市薬剤師会等との連携についてと思われますので、お答えいたします。
本事業を円滑に実施するためには、医療関係機関との連係が重要であると認識しております。このことから、市原市薬剤師会をはじめ、医師会及び歯科医師会に、通知内容を含めた事業内容に関する情報提供などを行い、実施に向けた環境整備を図ってきたところでございます。
今後につきましても、引き続き情報提供を行うなど、関係機関と連携を図ってまいります。
説明だけでなく、ぜひ積極的に連携をとっていただきたいと思います。
問い合わせなどはコールセンターで対応するとのことですが、先行している後期高齢者への差額通知では、苦情も含め直接薬局や医療機関の元に来ることが多いそうです。制度の主体者として、継続的な現場の実態の把握は必要です。
私は、差額通知事業は単に被保険者の調剤費の負担の軽減だけではなく、市民に対し「現在の医療制度を守るために、限られた財源を適切に活用しましょう」というメッセージを広く発信する足掛かりになるものと期待しています。
さらに、関連してつい一昨日廃案にはなりましたが、今国会に提出されていた生活保護法の改定案では、受給者に対しジェネリックの使用を原則化して、拒否すれば理由によっては指導の対象とする、という内容が盛り込まれていました。
私は生保受給者のみをやり玉に挙げるこの法案は納得できませんが、それはさておき、これに関しては前倒しですでに5月に厚労省保護課長から通知が発出されています。それによると、福祉事務所は受給者に対し制度の内容をリーフレット・電話・訪問などで周知徹底せよとか、薬局は先発医薬品を調剤した場合、その理由を記録・報告せよ、などと求めている上に、制度の把握や納得をしていない受給者とのトラブルも予想されていて、これは行政・薬局・受給者、三者ともに混乱する可能性が大きいと感じています。
生活保護受給者のジェネリック使用について、見解をお願いします。
(保健福祉部答弁)
ジェネリック医薬品の利用促進については、国においても推進を図っており、本市といたしましても、生活保護の開始時や保護世帯への訪問時に啓発用のチラシを配布するなど、利用の拡大を図っているところでございます。
薬局からも不安の声が上がっています。ぜひ情報共有・連携をして混乱のないようにお願いします。
A子ども医療費助成事業及びその他の小児医療対策について
市原市の子ども医療費助成事業の原型はS48年(40年前)、就学前児童の15日以上の入院に対する助成が始まり。当時は所得制限がありました。それ以来、何度も制度改定を繰り返しながら対象を広げていき、現在は所得制限なしで入院費・通院調剤費ともに中3まで、と大きく拡大しています。
H24年度の同助成事業の総額は8億8千200万円。一般会計のほぼ1%を占めるまでになりました。そのうち県の補助金の対象分を差し引いても6億円にものぼる非常に大規模な事業です。
ここで改めて確認したい。この助成事業は、どのような方針のもとでどのような効果を狙ってこれまで拡大されてきたのでしょうか。
(子育て支援部 答弁)
本事業につきましては、昭和40年代に各自治体において始まったものであり、当初の主な目的としましては、子どもの健康維持であったと伺っております。
乳幼児は感染症などの病気にかかりやすく、重篤化しやすいため、保護者の経済事情に関わらず早期受診できるようにする必要があるということで、全国的に制度が広まってきました。
厚生労働省の統計によりますと、0歳の乳児1,000人のうち5歳までに亡くなる人数(乳幼児死亡率)が、昭和35年の30.7人から昭和50年には10.0人となっており、この制度もその改善に寄与しているものと思われます。
本市におきましても昭和48年4月から開始していることから、第一としては、これらのことを目的としていたと思われます。
その後、社会経済状況は大きく変化し、平成2年には、合計特殊出生率が過去最低となった、いわゆる「1.57ショック」があり、少子化による危機がクローズアップされました。本事業につきましても、少子化対策として、育児に係る経済的負担の軽減が主な目的となってきました。
内閣府の調査によりますと、少子化対策として、医療費補助等を含む経済的支援が一番多かったこともあり、各自治体とも、子育て世代の要望に応える形で、年齢制限の拡大や現物給付化などを実施してきました。
本市におきましても、開始時点では0歳児から就学前の15日以上の入院のみということでしたが、現在では中学3年生までの入院、通院、調剤など全てについて助成の対象としたところでございます。
子育て世代からのニーズが大きいのは十分承知しています。佐久間市長はそれに応えるべく、10年前から常に県の補助金対象に上乗せして子そだて一番のまちを目指してこられました。私も親の一人として大変ありがたく感じています。しかし8億を超える大規模事業だからこそ、効果検証の結果を定量的な分析のもとに示すべきではないでしょうか。
というのも、この事業はデメリットも大きいとも言われているからです。
例えば、助成事業が拡大されてから明らかに軽症の子どもの夜間診療が増えて、医師や看護師がまるで育児相談員状態になっている、という医師の嘆き。また、転んで擦りむいただけなのにレントゲンを撮られた、以前より明らかに検査が増えた、という母親の声。さらに言えば、先ほど質問したジェネリックの差額通知も、医療費負担のない被保険者は対象外。医療費適正化へのインセンティブも働きません。
保護者の受診モラルの低下による小児救急医療の疲弊や、過剰医療による医療費の増加を課題として対策を講じている一方で、医療費助成の拡大をすることに私は正直矛盾を感じています。
この点について、当局の見解をお聞かせください。
(子育て支援部)
これらの因果関係を特定することは、非常に困難であると思っております。
一つの事例としてお答えさせていただきますけれども、本市の2次救急における夜間や休日の患者数の推移を見ますと、平成21年度の13,500人余りをピークに、毎年減少し、昨年は12,300人になっています。また、市の急病センターの内科の診療実績を見ますと、ここ4年、概ね1万人前後で推移しており、24年度におきましては、0歳〜14歳までの受診者数が前年を下回っているというような結果もあります。
しかしながら、保護者意識といたしましては、自己負担がほとんど無いといったことから、ちょっとしたことでも受診しようということは、確かにあると考えております。
市としましては、検証ということもありますが、子育て支援という中で、保護者の要望に応える形で拡充を行ってきたことでもありますので、基本的には、継続して参りたいと考えております。
ただ、別の視点で、「ばらまきではないか」とか、また、「財政負担が大きくないか」とか、といった議論も一部ございます。私どもといたしましても、今回の子ども子育て新制度を契機に、また改めて施策を再検討するなかで、こういった事業についても、ある程度の見直し、その他議論を進めなければならないと考えております。
例えれば、効き目が強い薬は、副作用も強いもの。患者がほしがるからと言って次々と処方すれば、かえって健康を損ねることもあります。
小児医療に関しては、例えば#8000番や「健康・医療相談ダイヤル24」などの電話相談や、保健センターなどでのサービスを有効に活用して、子育て中の親の不安を軽くすること。そして「地域医療教室」という大変すばらしい取り組みが昨年度から始まったので、そうした市民への健康教育をもっと充実させて適正な受診を促す。そんな地道な施策を徹底して行うことが大事。いくら医療費が無料でも、地域医療が疲弊していざという時に満足な医療を受けられなくなっては意味がありません。
本来医療は、全国どの市町村に住んでいても同じ水準で受けられなければなりません。現在のように、医療費助成事業が子育て世帯獲得のための自治体間の競争の中に置かれている状況は、どこか歪んでいるような気がしてなりません。
また市原市は、子育て支援全体を見渡せば、この後も質問する喫緊の課題がたくさん残されています。先週「子ども貧困対策法」が国会で成立したばかりなので、深刻な児童虐待も多く、対策が必要です。
どんな子育て一番のまちにしていくのか、というしっかりとした分析と戦略をもって、限りある財源を少しでも効果的に適切に配分してください。
(2) 災害時の医療体制について
県からの要請
私は地域保健医療協議会の委員を拝命していますが、先の会議で、事務局から新たに災害時の医療体制についての提案がありました。H24年11月に県から降りて来た要請によると、市は災害時に「救護本部」を設置し、その指揮調整は新たに選任する「地域災害医療コーディネーター」が担うこと。ついては市は協議機関を設置してそれらについて検討せよ、という内容でした。
そこで確認ですが、災害時の医療に関して、これまで市ではどのような取り組みをされてきたのか、まずはお聞かせください。
(保健福祉部 答弁)
本市の、災害時医療に関するこれまでの取り組みについて、お答えいたします。
現在、災害が発生した際の医療体制につきましては、市原市地域防災計画の中の「医療・救護計画」に基づき、対応することとなっております。
また、災害時における医療救護活動等を円滑に実施するため、市原市医師会や、歯科医師会、薬剤師会等と協定を締結しているところでございます。
なお、地域防災計画では、医療救護活動は救護所等において行うとされていることから、「救護所の医療活動マニュアル」を策定いたしまして、救護所が設置された場合には、協定に基づき、医師等の派遣を要請し、救護所において傷病者に対する応急的な措置等を行うなど、対応について定めております。
昨年度2月に修正された地域防災計画のなかでは、医療救護は数ある部門のうちの一つとしてしか位置づけられていません。
具体的には、地域の医療団体との協定の締結、災害時10ヶ所(公民館・コミュセン)などへの救護所の設置、救護班や医療救護班の要請や連絡調整は災対本部長、医薬品の調達は薬剤師会。外部の応援要請は市長が行います。そして事務局は健康福祉部。以上で、あとは医療従事者による判断や医療活動マニュアルに委ねられていて他の分野に比べて非常にあっさりしているし、実際にこれ以上はほとんど決まっていないようです。
冒頭述べたように、県からの要請が来たばかりでやっと動き出したという段階なので無理もないのは理解できますが、逆にあの震災から2年以上もたつのにまだ、という不安も抑えきれません。この点は、地域保健医療協議会の委員である複数のドクターからも、厳しい意見が相次いでいました。
例えば、災害時特有の症状(クラッシュシンドローム、大やけど、四肢欠損など)に対応できる施設は市内にどの程度あるのか?透析は何人対応できるか?大災害の混乱の中、市内の医療施設の被害状況や活動状況などの情報収集をどのように行い、伝達するのか?医療搬送や医療物資の供給ニーズに応えるために、道路など交通網の被害状況をどう把握し、情報提供するのか?医療施設へのライフラインの確保はできているのか?万が一それが途絶えた場合、どう対応するのか?人手や医療資源が不足した時、現場からどのようなルートで応援要請をあげるのか?何も決まっていません。
災害時医療救護は、命に直結すると同時に、大変幅広い部署との密接な連携が特に必要な分野です。全体を把握する部署がもっと積極的にかかわってイニシアチブをとらないと話が進まない部分が多いのではないでしょうか。災害時医療対策についてのお考えと関係性について、危機管理官のご見解をお聞かせください。
(危機管理官 答弁)
地域防災計画における災害時医療の位置づけについて、お答えします。
議員ご指摘のとおり、昨年11月に千葉県から災害時医療体制の整備についてという要請の通知がありました。
この中で、東日本大震災の中で明らかになった課題等を踏まえ、千葉県では災害時の医療体制の充実・強化に向けた取り組みを図ることとし、同様の対応が市にも要請されたところであります。
これを受けまして、今回の地域防災計画では、「千葉県の災害医療体制の整備に基づき、市の医療救護対策本部の機能強化を図るものとする」と位置づけたところであります。
なお、現在、保健福祉部を中心に、今回の11月の通知、さらには今年に入って保健所からの要請を受けたということを受けまして、本市の災害医療体制のあり方等について、検討を進めておりますので、今後、明確になった段階で、改めて地域防災計画における位置づけについて、具体的な施策を記述してまいりたいと考えております。
現在地域防災計画では、この部分についてはいわば県の指示待ちの未完成の状態。
今後協議会で一つ一つ対策がとられることと思いますが、実質的な要となる災害医療コーディネーターは、あくまでも医師であって行政側の立場ではありません。いざという時に災害対策本部との連携がちぐはぐにならないように、早急に地域防災計画の中での位置づけを明確にして、医療救護対策を充実させていただきたい。市民の大切な命を守るために、よろしくお願いしたいと思います。
2. 乳幼児期における子育ち・子育て支援について
(1)保育所(園)・幼稚園における子育ち環境について
市内の就学前児童数はH25年4月時点で13,147人。近年、毎年200〜300人位ずつ減っており、10年前より約2000人近く減少しています。それにもかかわらず、保育所への入所児童数は10年前より約11%増加してH25年度4月時点で2,285名。
国は、H29年度までの待機児童解消をめざし、緊急プロジェクトの「待機児童解消加速化プラン」を示しています。市原市でも待機児童は増え続けており、H25年4月時点で86名と伺っています。
そこで新たに民間の保育園が来年度島野に、そしてH27年度には五井・市原地区にも開設する予定ということで、保育施設の量の充実を図られることは大変ありがたく思っています。
しかし現在ハコはあっても保育士が足りないために子供を受け入れられないという状況で、特に民間の保育園では保育士の確保に大変苦労しているようです。この上またハコが増えたらいったいどうなるのか、ということが大変危惧されています。
この点に関しては、どのような対策が考えられていますか。
(子育て支援部)
保育士の不足についてでございますが、待機児童の多い自治体を対象とした厚生労働省の調査によりますと、保育士が不足しているとの回答が、76%あったとのことでございます。
本市におきましても、保育士が確保できれば、受け入れ枠の拡大が可能だというケースも生じております。
この要因としましては、保育士の待遇が、ほかの職業に比べて悪く、このことが、離職者の増加を招いていると言われております。
統計調査では、保育士の平均給与は、月21.4万円で、全職種平均の月32.6万円と比べて10万円以上も低いという結果もあります。
また、保育士の資格はあるが、現在、保育士として働いていない潜在保育士は、全国で約60万人いると推計されていますが、「条件に合う求人がない」「就職に不安がある」などの理由から、再就職までには至っていない状況にあると思われます。
市といたしましては、私立保育園で勤務する保育士の給与改善の措置や、保育士養成施設からの実習生や学生等の保育ボランティアを積極的に受け入れ、保育士を志す若い世代の支援を行っているところでございます。
資格を持っていても働かない保育士も多いとは思いますが、一方で市内の優秀な保育士が次々と近隣市に流れているという話を多くの保育関係者から伺っています。
手元の資料で、私立保育園に対する市単独の負担金額を、児童一人あたりの月額に換算して県内他市と比較したところ、市原市は最も低い金額でした。例えば、H23年度実績で千葉市は22,264円、木更津市17,526円、船橋市36,475円ですが、市原市は3,717円。
諸条件により一概には比較できないかもしれませんが、この差は、例えば保育士の加配、諸手当や研修、施設の補修など、つまり保育の質の差と無関係ではないと考えられます。ここにしっかり予算をつけていかないと、今後も保育士の確保は難しいのではないでしょうか。
保育士という観点からもう1点取り上げます。
昨年度4月2日時点での公立の保育所採用の正職保育士は187名。そして、正職と合わせた保育士の23%(約57名)を臨時保育士が占めています。
臨時職員は地方公務員法第22条に基づいた規定により、任用は最長12ヶ月までで、引き続き同じ人を任用する場合、「雇い止め空白期間」を設けるという手段がとられています。この空白期間は自治体によって1日、1週間、半年間などまちまちですが、市原市の場合は1ヶ月とされています。
以前は臨時保育士の業務は育休、病休、一時預かりなどの特別保育が主でしたが、近年の障害児の急激な増加に伴って、障害児保育の担い手としての需要が増えています。
ちなみにH25年度で11ヶ所計45名の障害児が入所しています。
担当臨時保育士は、不安定な身分でありながら背負わされる責任は重いうえ、研修の機会も十分に保障されず、1か月の空白期間中はまた別の臨時職員がこれにあたり、パズルのようなつぎはぎ人事。そんな中で翻弄されるのは当の障害児やその家族です。
障害児はただでさえデリケートで、より慎重な保育が求められます。今の状況を改善していただきたいのですが、当局の見解をお聞かせください。
(子育て支援部)
障がい児保育につきましては、「市原市障害児保育実施要綱」に基づき、保育所において集団保育を行うことにより、障害児の福祉の増進を図ることを目的としております。
このことから、障がい児の保育は、他の児童と同様にクラスを担任する正規職員の管理下において、実施しております。その上で、当該クラス担任を補助する臨時職員を追加配置することで、安全対策に十分配慮しているところでございます。
また、議員ご指摘のとおり最長12ヶ月の雇用を行っておりますが、保育所の場合、年度でのクラス替えということもあり、基本的には年間を通して1人の保育士が継続して保育にあたっていると理解しております。
障がい児保育の実施にあたりましては、保育士を始め臨時職員等が、障がい児のことをより理解することが重要ですので、毎年、専門家を講師に招いて研修会を行うなど、職員のスキルアップを図っているところでございます。
また、児童の送迎時における保護者とのコミュニケーションにも配慮しており、保育状況などで気が付いた点を、細やかに説明するよう努めているところであります。
幼い子供にとって、担任と補助の区別がつくはずもなく、一番身近に接してくれる保育士がその子にとっての担任。私の経験からも、親子が最も信頼し、相談できる相手は、いつも付き添ってくれる補助の先生でした。
保育所の障害児も保育に欠ける条件は健常児と何ら変わるものではなく、ましてや臨時的に発生する保育ではありません。せめて、障害児保育にあたる臨時保育士へのバックアップ体制をとる、空白期間を配慮するなど、できる限り子どもも親も安心できる保育環境を用意していただきたいと思います。
次に、障害児の幼稚園への受け入れについてお聞きします。
一歳半健診や発達支援センターなどでの早期発見・早期療育への市の取り組みの推進と相まって、親のわが子に対する障害の受容も、昔に比べ少しずつではあるが確実に進んでいます。1、2歳ごろから療育施設に通って支援を受けてきた子どもが4歳になって、近くの公立幼稚園で近所の子ども達との集団の触れ合いの中で成長してほしいと思う気持ちは、健常児の親と何ら変わることはありません。
ところが半世紀前から今日まで、いまだに市原市の公立幼稚園では障害児の受け入れが進んでいません。これはどのような理由によるものなのでしょうか。
(学校教育部 答弁)
本市では、幼稚園への入園希望者数が急増した時代に、私立幼稚園が中心となって、受入れ対応を図ってきた事情や、その後に幼児数の減少が見込まれたため、公立幼稚園のあり方や統廃合等が検討されてきた、という経緯がございます。
このため、従来から公立幼稚園に先行して、障がい児受入れの実績があった私立幼稚園を、補助制度により支援する形態とし、公立幼稚園は事業を拡大してこなかったものでございます。
公立幼稚園に入園できなかった障害児の親は、次に受け入れてくれる私立幼稚園を必死で探します。しかしそこでも障害児枠はごく限られているので、そこにも入れなかった場合、母親は仕方なく働きに出て子どもを保育所に入れる。このような理不尽な状態から、これ以上目をそらしてはいけません。
保育所の入所希望者が増える一方で、幼稚園では年々園児が減少しており、子ども子育て支援新制度との絡みで、今、公立幼稚園の在り方が大きな岐路に立たされています。その点は今後「公立幼稚園の在り方検討会」でも協議が進められることと思いますが、たとえどんな形になろうとも、障害がある子も受け入れるのは当たり前という方針をこの際明確に打ち出していただきたいと思います。ご見解をお聞かせください。
(教育総務部 答弁)
本市の公立幼稚園につきましては、平成27年4月に予定されている子ども・子育て支援新制度の本格施行に向け、そのあり方が問われているものと認識しております。
このため、障がい児の受入れにつきましても、これまでの経緯等を踏まえまして、新制度への対応と併せ、検討してまいります。
千葉県には、H19年施行の『障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例』があります。また、同じくH19年、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこととなりました。また、「いちはらっこすくすく条例」でも、こどもの権利を最大限尊重し地域全体で守り育てること、学校は集団の中での遊びや学習を通して発達段階に応じた指導に積極的に取り組むこととしています。さらに先週国会で、障害を理由とした差別的な扱いを禁止する『障害者差別解消推進法』が成立しました。
このように、法的に次々と共生社会への整備が進められる中にあって、少なくとも公の施設が障害児を排除する場であってはならないと思います。幼いころからの障害児との触れ合いは、将来の共生社会を担う健常児たちにとっても大切なことです。「集団生活ができる幼児」でなければ入園資格を与えられないという規則も、ぜひ廃止していただきたいと思います。
(2) 地域の保育資源の活用について
例えば認可保育所へ申し込んだが入所できなかった保護者に対し、当局では現在どのようにフォローしているのでしょうか。
(子育て支援部)
地域の保育資源の活用について、お答えいたします。
保育所への入所申込みをいただいたにもかかわらず、入所審査の結果、やむなく入所できなかった児童のご家庭に対しましては、引き続き認可保育所の入所情報の提供、家庭的保育や認可外保育施設のご案内などを行っているところでございます。
また、お申込みをいただきました年度内は、あらためて申請を要することなく、翌月以降の入所審査会において継続して入所審査を実施しているところでございます。
昨日田尻議員の質問にもあった横浜市の「保育コンシェルジュ」、「待機児童解消加速化プラン」の中でも大変評価されていますが、このような総合相談支援体制は、とても有効な施策。
保育所への入所を希望する母親の事情をよく聞くと、実はそのほかの保育サービスを組み合わせることで十分間に合うことが多いとか、実は育児の閉塞感から解放されたいから働きに出るという母親が、決して珍しくはないというお話を多くの保育関係者の方から伺っています。「子供を預けたい」と言う保護者の言葉の裏に隠された本音に、行政が本当に支援すべき課題があるような気がします。
「待機児童解消加速化プラン」では、保育ニーズのピークをH29年度としている。基本的に少子化が進めば将来は減少に転ずることが予想され、施設の整備も一定のリスクを伴います。
乳幼児期の子育て支援は、保育所や幼稚園以外にも様々なメニューがあります。家庭的保育や子育て支援センターなどの地域子育て支援拠点事業や一時預かり、ファミリーサポートセンター、子育て支援員といった個別施策。これらの保育資源を活かせば、施設の数に頼らずに市民ニーズに応えることも可能なのではないでしょうか。
新実施計画や子ども・子育て支援事業計画など、今後策定される計画には、ぜひ保育コンシェルジュのような利用者支援事業を重要施策として位置づけていただきたいと思います。この点についてご見解をお聞かせください。
(子育て支援部)
横浜市の保育コンシェルジュにつきましては、待機者と保育施設のマッチングに止まらず、保護者の多様なニーズに合った保育サービスの紹介など、保護者の立場に立った対応が大きな成果を生んだものと伺いました。
このような横浜市の例から、ソフト面でのきめ細やかな保護者への相談体制も、待機児童対策として、非常に効果が高いことを認識したところでございます。
本市といたしましても、子ども・子育て支援新制度を実施する中で、保育コンシェルジュ制度等の相談体制の構築につきまして、検討してまいります。
それから、子ども子育て支援新制度では、待機児童の解消や保育・教育の総合的な支援などが注目されていますが、私は決して忘れてはならないのがアウトリーチ(出張)支援だと思います。拠点型も大事ですが、外に出られず孤立している家庭にこそ深刻な課題があり、支援の手が必要です。
市原市には、子育て支援員という素晴らしい組織があるのでこれをもっと有効に活用してほしい。
それからもう1点、子育て真最中の親自身もまた、地域の保育資源であることを忘れてはなりません。子育てをもっと楽しみたい、子育てをしながら社会とつながりたいという若い母親たちが、市原市でも子育て支援活動を活発に行っています。
そんな若い世代の情報源や仲間づくりのツールとして、今やインターネットは欠かせない存在です。
藤沢市では、NPO法人との協働事業により、「子育て情報プラットホーム運営事業」として、子育てポータルサイトや「子育てメールふじさわ」を提供しています。ポータルサイトでは、行政の枠にとらわれず民間を含めた地域全体の子育て情報を、年齢・状況・目的別に探せるようになっています。また、子育てメールは、子どもの生年月日や地域を登録すると、利用者に合わせた情報がタイムリーに届くという仕組みです。
市原市でも、行政が発信したい情報だけではなく、利用者が知りたい情報がほしいという若い母親たちからの子育て支援サイトへの改善要望が上がっています。昨年度から当局でもその声を受けて検討を行っていたようですが、取り組み状況はいかがでしょうか。
議員ご指摘のように情報発信をすることは、非常に重要であると考えております。
(子育て支援部 答弁)
これまでの取り組みとしましては、広報いちはらや町会を通じた回覧など、いわゆる紙ベースでの広報が多かったわけですが、やはり若い世代の方については、インターネットによる情報発信が非常に重要ではないかと考えております。
市としましても、ウェブサイト上での、子育てに関する情報をまとめたり、目的の情報に至るまでの方法を工夫したり、また、携帯電話サイトを開設したりしてまいりましたが、現状としては、本市からの情報が中心となっているところであります。
したがいまして、例えば松戸市におきましては、「マツドア」というようなポータルサイトを開設しております。また、先程、議員からご紹介のありました藤沢市の例もございます。
本市としましても、インターネットが一番身近な情報入手の手段であるということもございますので、現在、これに対してできる限りの情報を集めたり、あるいは、市としても情報を提供するというような形でのまとめ方を検討しているところでございます。
ネットの活用は、外出が困難な家庭への支援として、アウトリーチを補完する施策にもなると思います。ぜひ検討を進めてください。
3. 中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックスについて
他芸術祭との差別化
今回開催されるいちはらアートミックスのように、自治体が中心となって地域の生活圏や風景の中で繰り広げる形式の芸術祭は、観光による地域おこしのうちの一つの大きな流れとして、日本では2000年代から全国各地に波及していったと言われています。
今年も、瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレ、中之条ビエンナーレ、神戸ビエンナーレなど、あちらこちらで芸術祭が開催されます。
このような状況の中で、いちはらアートミックスは他の自治体の芸術祭とどう差別化を図っていくのか。市独自の魅力をどのようにアピールしていくのか。その点をお聞かせください。
(経済部 答弁)
いちはらアート×ミックス事業を計画するに当たりまして、本市の特徴や財産を踏まえたうえで、整理したことは、次の3点です。
一つには、北部の臨海部には工業地帯がある一方、南部地域には、緩やか丘陵や山間地が広がり、豊かな自然の風景が残る里山がある。
そして両地帯の間の内陸部には、都心や市外等に通勤する人たちのベッドタウンが広がっているという地理的な状況。
二つには、少子高齢化に伴う過疎の問題を含め、市原は、日本のどこの市町村にもありそうな課題を同様に持っている、いわば日本の縮図とも例えられる市であるということ。
三つには、東京から約1時間という場所にありながら、豊な自然の残る里山があり、養老渓谷があって、そこをレトロ感あふれる小湊鉄道が走っている。
地域のコミュニティは、まだまだ元気であり、言うなれば、忘れられてきた日本の原形が色濃く残っている首都圏のオアシスともいえる、多くの魅力や可能性を持った市であるということです。
これらのことを踏まえ、いちはらアート×ミックスの特筆すべき点を挙げますと、まず、アーティストと市民との協働のもと、市内に眠るあらゆる資源を活用しながら進める、地域の課題解決型まちづくりプロジェクトであるということです。
このことは、日本の郊外都市の新しい地域づくりのモデルとなる取組みであると考えております。
もう1点は、いちはらアート×ミックスの中核を担うのが、将来有望な40歳前後のアーティストであり、地域の方々を巻き込みながら、長期にわたり市原の活性化に関わっていただけるということです。
このような、地域に根ざした継続的なアーティストの活動が、いちはらアート×ミックスで生まれる様々な財産を、市原に定着させてくれるものと期待しております。
北川氏の言葉を借りれば、「市原市を一言で言うと、どこにでもある、当たり前の市」。その中からいかにきらりと光る市原の強みを見つけ出し、磨き上げるかが成功のカギを握っている。差別化という視点を常に意識して戦略を立ててください。
その特徴の一つである、休日に気軽に立ち寄れるという点について。市原鶴舞IC付近の渋滞問題が県議会や市議会で指摘されています。例えばせっかく首都圏から1時間で鶴舞に来ることができても、そこから会場まで2、3時間かかってしまえばまったく意味がありません。交通対策にはくれぐれも配慮してください。
・地域産業の振興
次に、アートミックスで最も重要なキーワードの一つは、食とされています。現在、実行委員会の中の食と農部会では、地元の食材を新たな名品として磨き上げ提供するために、さまざまな検討がされていることと思いますが、進捗状況はいかがでしょうか。
(経済部 答弁)
食と農という話の中で、私どもの実行委員会の中にも、食と農部会という実行委員会があって、その中で、一方では、商工会議所を中心におみやげものの開発、それから、農協等の力を借りまして、いわゆる、食という部分、レストラン等の開設というものを検討しているところでございます。
ひとつ、現在の進捗状況の中でいきますと、いちはら名産品の開発というところの進捗でございますが、その点について、ご紹介させていただければと思いますが、リデザインプロジェクトという形で、仮称をつけてございますけども、この事業でございますけども、市内の事業所等が取り扱う商品に、アーティストによるパッケージデザインを施し、新たな市原の名産品として販売しようとするものでございます。
プロジェクト事務局は、市内商業の事情に精通している、市原商工会議所が担当しており、進捗状況につきましては、今年3月、商工会議所の会員等を対象とした説明会を開催し、18事業所が参加し、これまでに、12事業所から、41品目の商品が提案されております。
しかしながら、現在は、商工会議所と市が連携し、さらに魅力のある商品の掘り起こしにも、努めているところでございます。
今後は、対象商品の絞り込みやデザイン化などを進め、来年3月のアート×ミックス開催に合わせて販売開始ができるよう、プロジェクトを進めてまいりたいと考えております。
今リデザインプロジェクトのお話がありましたが、対象事業所約2000件のうち、説明会に見えたのが18事業所、さらに応募したのが12事業所と伺って、ちょっとびっくりしました。このチャンスに我も我もと殺到したのではと想像した私が甘いのかもしれませんが、それにしてもさみしい限りです。
アートミックスの内容や趣旨を、これまでどのように市内の事業者へ伝えてきたのか。アートミックスにかかわることによって、こんな可能性がある、こんなメリットがあると事業者に思わせるようなアピールがまだまだ足りないのではないでしょうか。これは事業者に限らず、市民に対しても同様だと思います。
リデザインプロジェクトは地域の産業振興につながる大事な事業。魅力的な名産品の誕生を期待しているので、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
また、これに関してもう1点、私なりの思いを申し上げたいと思います。
昨年訪れた大地の芸術祭で、十日町市の福祉サービス事業所が販売するおからのカリントウがとても売れ行きがいいと聞き、私も思わず購入しました。味の良さはもちろん、女性受けするおしゃれなパッケージでお土産にとても喜ばれました。
今回のリデザインプロジェクトでは、応募してこられた12団体のうち、2団体が福祉事業所だと伺っている。原則商工会議所の会員が対象という中で、福祉事業所にも声をかけていただけたことを大変うれしく思っています。
大地の芸術祭では、そこかしこに海外からいらした方を数多く見かけました。日本の田舎の風景が国際色豊かな芸術祭の特徴をより際立たせていたのが、とても印象的でした。
私は、それと同様に、いちはらアートミックスでは、大勢の障害者がそこかしこに見られるようなイベントであってほしいと願っています。今回のリデザインプロジェクトに限らず、様々な障害者団体が様々な形で積極的に参画し、また障害者自身が楽しんでいる、そんな姿を想像しています。
市原市は、障害があってもこんなに生き生きと暮らせるまちであるという福祉都市のイメージアップにもつながるのではないでしょうか。ぜひそんなことも青写真に加えていただきたいと思います。
最後に、市原市民自身を観光客ととらえた場合の戦略について伺います。市民がより楽しみ、何度でも訪れたくなるようなイベントにするために、どのようなお考えがあるかお聞かせください。
(経済部答弁)
市民の方々が何度でも訪れてみたくなるようなアート×ミックスの展開ということですけれども、この議会の中でも今までどういう風に市民に説明してきたのか、これからどのように展開していくのかという質問をいただきました。
特に南部地域の人たちにつきましては、各団体ごとに、説明をしてきましたけれども、まず、5月22日には、加茂公民館を会場に、町会長や市民活動団体、観光関連事業者など約50名にお集まりいただき、トータル的な説明をさせていただきました。この他、町会長会議などでも説明を行いました。
そして、7月3日にキックオフの会議を開催する予定です。と同時に7月1日からボランティアの募集を行います。ボランティアの募集については、ホームページやフェイスブック、ツイッターなどを活用しながら、ボランティアの募集を行います。
これから市民の方々が、その中で、参加をしていただきながら、自分たちが作った芸術作品や地域の資源を、首都圏からお見えになる皆さんにぜひ教えたいなど、そういう形の中で、皆さんは通っていただけるようになれば、より一層、アート×ミックスが盛り上がっていくのではないかと考えております。
高度成長期から、地域振興のてこ入れ策として日本各地でさまざまな博覧会の開催やテーマパークの建設などが繰り返されてきました。しかし、経済状況の悪化とともにそれらのほとんどが廃れ、成功例はごくごく一部にとどまっています。
そのなかでもっとも成功した例が、東京ディズニーランドであることは言うまでもありません。西のディズニーランドと言われて華々しくオープンしたが今一つ盛り上がりに欠けるユニバーサルスタジオジャパンと一体どこが違うのか。
それは、最も楽しんでいるのが地元の人たち自身です。ここが大阪と一番大きく違う点だと言われている。ディズニーランドは、年間パスポートを一番持っているのは浦安市民だそうです。ディズニーランドをとても誇りに思っているので、親せきや知り合いを呼んで何度でも一緒に出掛けて案内をする。つまり、浦安市民が最大の観光客であり、同時にスタッフ(キャスト 共演者)でもあるということ。私は、この点をいちはらアートミックスでも大いに学ぶべきだと思います。
外からの集客ばかりに目を向けるのではなく、里山に描く壮大な物語をまず市原市民が楽しむ、そこに付加価値をつける、それによってよそからも人が来る、そんないい循環が生まれているイベントが、結局地域に生き残っていくのではないでしょうか。
パスポートの料金設定など、具体的な仕掛けも考えられると思う。部長のご見解を伺いたいぜひそう言った視点で取り組んでいただきたいと思います。
(経済部答弁)
市民の人たちが、観光として、アート×ミックスに訪れていただくということですけれども、一方で、首都圏でのPRを行っています。市民の人たちが、市原で輝いていることをやっているんだということを意識してもらい、外からのお客様を呼び込んだときに、ご案内していただけるよう、努めてまいりたいと思います。