1. 防災のための地域連携や災害時要援護者への配慮について
(1) 防災訓練について
・避難所訓練
先月、辰巳台西小学校と辰巳台東小学校を会場にして、恒例の避難所訓練が行われ、私も様子を拝見させていただきましたが、滞りなく進められる訓練にかえって違和感を覚えました。
まず、肝心の施設管理者である学校側は、避難前の施設の開錠と安全確認でほぼ役目は終了。避難する住民もあらかじめ町会ごとに決められていて、与えられたプログラムに従って整然と行動されていました。地域住民も障がい者団体の方たちも「お客様」という印象がどうしても拭えませんでした。
避難所へ集まること自体も大切な訓練の一つであるし、シートの上に座って話を聞いたりアルファ化米を食べることも決して無意味とは言いませんが、これではかえって住民に「避難所に行けば何とかなる」という意識を植え付けることにならないでしょうか。
大規模災害の場合、数日間は公助が機能しない場合が十分想定されます。従って、例えば防災倉庫の確認をしたり、町会ごとに何人が集まっているか、誰が来ていないかチェックや報告をしたり、体育館以外の教室などの利用場所の確認をするなど、もっと学校側を含めた地域が主体となる方法も考えられるのではないでしょうか。ご見解をお聞かせください。
(総務部 防災課)
今回の総合防災訓練の一環として行いました避難所訓練におきましては、自宅から町会等で定めている一時避難場所、そこから避難所までの避難経路の確認をいただくとともに、一時避難場所で構成員の安否確認等をする訓練を行ったところであります。
また、訓練会場となった辰巳台東小学校、西小学校におきましては、施設管理者となる学校の先生と共に、避難所となる体育館の開錠や目視による安全性の確認などを行っていただくとともに、避難所における生活や避難所運営のあり方等を体験していただく訓練を実施したところであります。
ご質問の地域が主体となった訓練につきましては、先に述べました訓練のほか、一例を申し上げますと、君塚・白金地区で自主防災組織が中心となりまして、地元と白金小学校との合同による訓練が実施されるなどしているところであり、市といたしましては、このような自主防災会等が中心となる取り組みを広めてまいりたいと考えております。
自主防災会等が中心の取り組みは成されているようですが、避難所訓練も工夫していただきたいと思います。
辰巳の方からは、「避難会場に入れなかったその他多数の住民にとっては、関係ないという意識になってしまった」という声も上がっていました。今年の訓練で得たこと、足りなかったことを、参加できなかった住民を含め、地域でどう共有していくのか、その手立てはあるのでしょうか。
先日、鈴木議員の今後の危機管理体制についての質問に対し、危機管理官は「住民の防災意識の低下が課題。自助・共助の意識をこれまで以上に高めることが必要」と強調されました。ぜひその方針のもとに、行政主体から地域主体の防災訓練へと転換を図っていただきたいと思います。
・野営訓練中止について
避難所訓練に関してもう1点、今年度は、これまで行われてきた市原市ボランティア連絡協議会による野営訓練(屋外でのテント設営、カレーの炊き出し、オイルランプ制作など)が取りやめとなりました。野営訓練は5年前から継続して行われており、今年度も地域の住民100名、障がい者50名、ボランティア50名の計200人の参加を予定し、ボランティアの募集までかけていたと伺っています。辰巳台地区町会も、直前までそのつもりでした。にもかかわらず、突然中止に至った理由をお聞かせください。
(総務部 防災課)
野営訓練につきましては、その実施主体であります市原市ボランティア連絡協議会より、改めて訓練内容等を検討したいので今回は見送りたい旨の申出があったことから、実施しなかったところであります。
断るに至るまで、様々な行き違いがあったのかもしれません。しかし、このままでいいのでしょうか。
現に、震度6強の想定では、避難者は約4万3千人。仮にすべての避難所の建物が無事でフルに使えると仮定しても、約3万人分しか確保されていません。野営訓練は必要ないのでしょうか。公助だけでは立ち往生してしまうことは、担当部局が一番よくわかっているはずです。
・千葉県災害対策コーディネーターについて
では少し質問の角度を変えます。「千葉県災害対策コーディネーター」という資格があります。平常時は地域で防災力向上に取組み、災害時には地域をリードして、行政関係機関との連絡調整役も担う、まさに地域防災の要です。
千葉県は、H15年度から民間団体に委託して災害対策コーディネーターの養成事業を展開しており、H24年度までに522名の公的な認証を受けたコーディネーターが誕生しています。
特に市原市は、市とNPO団体の共催でこの事業に積極的に取り組んでおり、市内だけでもH24年度までに68名、さらに今年度は2回開催のうち初回だけで99名もののコーディネーターが誕生しています。これは、まさに市原市の大きな財産と言っても過言ではありません。
そこで伺います。市は災害対策コーディネーターの方々と現在どのような連携体制をしいているのか。また今後の方針もお聞かせください。
(総務部 防災課)
この講座につきましては、千葉県が定める基準に基づく実習を含む講座であり、修了した方々につきましては、千葉県危機管理部長名で修了証を交付し、平時には地域において、防災知識の普及や意識の向上に努めていただくとともに、災害時には自主防災組織やボランティア等の関係者との連絡調整を担うことが期待されております。
災害対策コーディネーター養成講座を修了した方々が、自主防災組織等と共に災害時に力を発揮できるよう、本市としましても養成講座を開催したばかりでありますので、これから活用方策を検討してまいりたいと考えております。
私も何回か養成講座の現場にお邪魔させていただきましたが、障害者体験、街歩きによる防災マップと施設の確認、避難所運営訓練など、非常に専門性が高く、高度なスキルが身につく内容で、とても驚きました。
しかし、現在は行政との連携が不十分で、かつそのスキルが生かされる機会がないという実にもったいない状況です。
従って今回、避難所訓練でのボランティアとの連携の機会を逃したことは、返す返すも残念でなりません。今後は災害対策コーディネーターはじめ地域のボランティア団体や地元の人々ともっと歩み寄って、避難所訓練時はもとより、個々の役割と活動を再確認できるような実践的な場を積極的に設けていただきたいと思いますが、お考えをお聞かせください。
(総務部 防災課)
市では、水防訓練や土砂災害訓練、総合防災訓練など災害の事象に応じた訓練を、市民や自主防災組織、防災関係機関の皆様のご参加をいただいて実施しているところであります。
また、自主防災会等が主体となった各種訓練も実施しているところであり、そこへ職員を派遣し、訓練の指導等の支援を行っているところであります。
このような対応をしているところでありますが、ご質問のボランティア団体等をはじめとした地元の方々との協働も踏まえ、訓練の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
東日本大震災の際、名取市と市原市の絆を結んだのは、ボランティアがきっかけでした。大災害になればなるほど、ボランティアや地域の防災力が、減災のための大きな鍵を握ることは、過去の例から十分証明されています。ぜひ、連携されるよう要望します。
(2)避難所について
・福祉避難所について
福祉避難所について質問します。
高齢者のための福祉避難所については、今年3月に市原市高齢者福祉施設連絡協議会と協定が結ばました。保健福祉センターなども合わせ、地域防災計画では25か所が指定されています。
一方、私は2年前から議会質問等で、障がい者のための福祉避難所として市原特別支援学校を指定していただきたいと申し入れてきましたが、いまだに協議中と伺っています。
市原特別支援学校を福祉避難所に指定するにあたり、何が課題であるのか、その課題をクリアするためにどんなことが必要なのか、ご見解をお聞かせください。
(総務部 防災課)
ご質問の特別支援学校との協定につきましては、昨年から協議をしているところであり、今年度におきましても学校主催の「開かれた学校づくり委員会」のテーマの一つとしていただいておりますことから、この中で年間を通じて協定の締結について関係者を含めて検討したいという申出をいただいているところであり、市といたしましても職員を派遣してその委員会の中で、共に協議を進めているところであります。
市原特別支援学校では、保護者に対し今年7月にアンケートを実施しました。その結果、最大で9割の児童生徒とその家族の避難が見込まれました。物的支援・人的支援がどの段階でどの程度用意されるのか、といった学校側の懸念は理解できます。
また、市は福祉避難所をあくまでも二次的な避難所と位置づけていますが、「地域の避難場所では過ごせないことはもうわかっているのですから、最初から支援学校に避難したい」という保護者が35%にも上り、市の思惑と当事者の認識にズレがあることも明らかになっています。
東日本大震災後、県下でいち早く特別支援学校と協定を結んだいすみ市では、学校側の懸念がクリアされるまで両者の間で何度も何度も協議が重ねられたと伺っています。要は互いの信頼関係だと思います。
過去の災害では、多くの障害者が結果的に一時避難所を追い出されているのが現状。東日本大震災でのLPGタンク爆発火災事故の際も、一般避難所では過ごせず車中でしのいだ方もいらっしゃいました。
支援学校の多くの保護者も指定を待ち望んでいます。ぜひ誠意をもって協議を進めていただきたいと思います。
(3)要援護者対策について
・名簿作成について
現在までの要援護者リストの作成状況を伺ったところ、避難支援プランで定義されている要援護者のうち、高齢者、障がい者、外国人約39100人に対し照会をかけ、約2割の7800名から同意を受けたとのことでした。
(不同意9000人、未回答22300人)
そのうち、町会や自治会に個別計画策定を依頼し、名簿を共有しているのは3900名。照会をかけたうちの1割に過ぎません。
一方今年6月に災害対策基本法等の一部を改正する法律が施行され、要援護者(改正法では避難行動要支援者)の名簿の作成と地域の協力団体への提供が新たに義務付けられました。
そこで伺います。市原市では、同意を得られなかった残り8割もの要援護者の方々に今後どう対応するのか。また、名簿への掲載率を上げるための対策は何かお考えでしょうか。
(総務部 防災課)
ご質問の登録希望者以外の方への対応でございますが、「未回答者」と「希望の意思が不明」の方々につきましては、民生委員の皆様に平時の見守り活動の中でご確認をお願いするほか、市で個別に確認をしていくことを予定しております。
このような対応を予定しているところではございますが、現時点では、登録希望者約7千8百人のうち、所属町会の記載があった約3千8百人を対象に個別計画の策定を町会等にお願いしており、今後、所属町会が不明である約4千人の方々につきましても、順次、確認の上、依頼を考えておりますことから、「未回答者」等の方々への対応の時期につきましては、町会にお願いしております個別計画の策定状況を踏まえ、決定してまいりたいと考えております。
回答がない、あるいは同意しないのは、支援がいらないと考えているからではなく、避難支援プランの意図が当事者に十分伝わっていないからだと思います。民生委員等の協力を得て戸別訪問を行うと全くった結果が違って、7割から9割以上の同意が得られた自治体もあります。
また、そもそも個人情報保護条例が足かせとなって、本人同意が前提となっているのも大きな問題です。
そこで、原則すべての要援護者を拾えるように、新たに条例を制定した自治体もあります。例えば千葉市では、対象者の個人情報を、本人からの拒否の意思表示がない限り、平常時から自治会等に提供できる、という内容の条例の制定を進めています。
個別計画の策定も大事だが、私はまずは要援護者のリストの共有が先決だと思います。このままでは、市原市は残り8割の要援護者を見捨てますと言っているのと同じではないでしょうか。ぜひ何らかの手立てを考えていただきたいと思います。
・妊産婦や乳幼児について
最後に、妊産婦や乳幼児について伺います。
市内の対象者はおおむね妊産婦3500名・乳幼児13000名で、そのうちH24年10月の段階で名簿の同意を得たのは、4名のみと伺っています。今後の対策について、お考えをお聞かせください。
(総務部 防災課)
妊産婦や乳幼児につきましては、窓口等で災害時要援護者支援制度について、ご案内をしているところであります。
これらの方々の未登録が多い理由といたしましては、妊産婦につきましては、一定の期間で対応が必要なくなり、また、乳幼児につきましても、幼稚園や保育園に通っていたり、あるいは保護者と一緒の場合が多いため、登録を希望するというところまでには至っていないのではないかと推察しているところであります。
そのため、これらの方々につきましては、基本的には「家族も含めて、自分の身は自分で守る」という「自助」で対応していただけるものと考えておりますが、引き続き、制度の周知等を行いまして、必要な方に登録をしていただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。
妊産婦・乳幼児はその時々で対象者が変化しやすいので、同意を得るのは確かに現実的ではありません。従って、保健福祉部が持っているデータを共有する仕組みが必要であると同時に、対象世帯の防災意識を高める取り組みも非常に大事です。
ところが先般、ある子育てママの団体が、防災に関する「お出かけくん」を子連れで受講したいと申し込んだところ、そのような講座はできないとあっさりシャッターを下ろされたと伺いました。「市原市は子育て世帯に冷たい。せめて『今後取り入れるよう検討していきます』くらい言ってほしかった」と寂しそうにおっしゃっていました。せっかくの市民の意欲を削ぐような対応は、非常に残念です。繰り返しになりますが、「自助が大事」とおっしゃるならば、ぜひその方針に沿った対応を図っていただきたいと思います。
2. 療育について
(1)一般相談支援の体制について
・療育中の相談
乳幼児に何らかの障がいが疑われたときに、市原市では一般的に市発達支援センターの療育相談室にかかります。その結果、「もう少し経過を見ましょう」とか、「サービス利用計画を立ててセンターの療育ルームに通いましょう」となったりします。
私がここで取り上げる「一般相談」というのは、そのような療育への入り口の相談ではなく、すでに何らかの支援を受けていたり、あるいはもう少し年齢が大きい障がい児に関する日常的な相談支援についてです。
まず伺います。すでに療育を受けている幼児の母親が、子どもの発達への不安や療育への迷い、生活上の困りごとなどをじっくり相談したいときは、どこが応えているのでしょうか。
(保健福祉部 発達支援センター)
発達支援センターを利用している保護者から、児童の発達への不安や迷い、生活上の困りごとなどに関する相談があった場合、療育ルームに通園している児童であれば担当の保育士、ことばの教室であれば担当の言語聴覚士、療育相談室であれば療育相談員が個々の保護者との面談などを通じて、必要なアドバイスを行っております。
もう少し具体的な事例で伺います。例えば、センターの療育ルームに通っている子供の母親が、「毎日一瞬も気の抜けない子育てに疲れきってしまった。たまには子どもと離れたい。でも、離れるのも不安だ」という相談をしたいときに、どのように応えているのでしょうか。
(保健福祉部 発達支援センター)
ご質問にもありました、ホッと一息つける一時預かりなどの福祉サービスの利用希望があった場合には、民間の事業所のサービスを利用するための手続きを案内するなど、必要な対応を行っております。
これらの相談には、先程ご答弁いたしましたとおり、担当の保育士や療育支援係の係長が対応しております。
私はその反対の話も伺っています。保育士に相談したものの、話を聞くだけで解決に結びつかず、そうこうしているうちに精神的に追い込まれて1か月以上療育に通えず子どもと引きこもるようになってしまった。幸い個人的なつてで、別の福祉事業所に子どもを預けることができ、ようやく精神的に安定したというお話を伺っています。これはほんの一例です。
・学齢の子どもの相談
では次に、学齢期の障害児や保護者が、生活上の困りごと、将来への不安、学校教育への不満などを相談したいときには、どこがその役割を果たしているのでしょうか。
(学校教育部 教育センター)
学齢期の保護者に対する療育相談については、教育センターにおいて、常時、保護者の子育てについての相談に応じられるよう特別支援教育相談員を配置しております。
特別支援教育相談員は専用電話での相談や面接相談を実施しております。
さらに、相談内容に応じて、特別支援教育担当の指導主事2名も対応しております。
また、必要に応じて、各学校や発達支援センター等の関係機関と連携を図り、相談体制の強化に努めております。
実際に、多くの保護者の認識は、「教育センターは、教育委員会の機関なので学校のことは相談しにくい。その他の相談も、普段身近な存在ではないので、よほど追い詰められないと相談しない」というのが正直なところです。
では例えば、学校に通いながら専門的な療育を受けたいという相談には、どう応えているのでしょうか。
(学校教育部 教育センター)
療育についての相談が教育センターによせられた場合の対応についてお答えいたします。
専門的な療育を受けたい保護者には、市内で千葉県障がい児等療育支援事業の委託を受けている事業所を、医療機関を希望する保護者には、千葉県リハビリテーションセンターを、より専門性の高い相談が必要な保護者には、子どもと親のサポートセンターを紹介するなど、きめ細かな対応に心がけております。
教育委員会としましては、子どもの発達の状態に応じたスムーズかつ適切な対応が図れるようそれぞれの関係機関との連携強化に努めてまいります。
・千葉県障害児等療育支援事業者について
先日、その千葉県障害児等療育支援事業を受託しているある法人にお話を伺ったところ、利用者がうなぎ上りに増えており、今年度8月時点ですでに昨年度1年間の利用者数に達してしまったということです。特に多いのは小学生で、中には万引きや放浪など、障害とは関連性がないと思われる事例も持ち込まれていて、もうキャパシティーが限界ということでした。
市外の民間事業者を頼るケースも増えており、その施設も常に空き待ちの状態。
先ほどの幼児期の問題、そして学齢期の問題。市原市の相談体制は、質・量ともに当事者のニーズにまだまだ応えていないと思わざるを得ないのですが、なかなか改善されません。これらの現状を市はどう認識しているのか。ご答弁ください。
(保健福祉部 発達支援センター)
本市における発達に不安がある児童に関する相談の体制につきましては、幼児期は発達支援センター、学齢期は教育センターが中心となり、連携を図りながら対応しているところであります。
相談にあたりましては、担当の職員が適切に対応できるように努めているところでありますが、今回、議員よりニーズに応えきれない旨のご指摘がありましたので、今後も適切なアドバイスや支援を行うと共に、必要とされるサービスの利用に結びつけられるよう、職員のスキルアップなどに努めてまいりたいと考えております。
・ワンストップ相談窓口を
幼児期は発達支援センター、学齢期は教育センターと分けられるのも問題ではないでしょうか。
前回議会でも取り上げましたが、待機児童解消を目指して横浜市が設置した保育コンシェルジュというサービスがあります。保育に関するあらゆる相談に乗り、必要な支援を適切なタイミングで案内する、ワンストップの相談窓口です。
市原市にも、障がい児に関するそんな窓口がほしいという切実な声を、多くの保護者から伺っています。そこから地域のあらゆる支援につなげてもらえたり、例えば「3歳ならオムツの給付制度がある」「地域でこんな親の会がこんな活動をしている」などのタイムリーな福祉情報。子どもの世話でまったく身動きが取れず、孤立しがちな家族は、こんな支援が何よりもありがたいです。ぜひ、ワンストップ窓口を身近な場所に設けることを検討していただきたいと思います。
(2) 発達支援センターの役割について
・母子通園について
療育ルーム(いわゆるスマイル)の母子通園クラスについて伺います。保育所や幼稚園に通う前の2、3歳児、あるいは保育所や幼稚園に通えない就学前の重度の肢体不自由児が対象で、*日常生活上の基本的な動作の習得、*社会集団への適応を目的として、子どもと保護者のペア数組で集団指導を受けるという療育形態をとっています。
先日母子通園クラスの様子を見させていただきましたが、ちょうどお昼の時間で、保護者が作ってきたお弁当を、子どもの様子を常に気にしながら、あるいは一生懸命食べさせながらお昼をとっていました。センターの方の説明では、食事の時間も療育の一環ということでしたが、私には家庭で食事をとるのと何ら変わらない風景に思えてなりませんでした。
このように保護者が常にぴったり子どもについている状態は、逆に子どもにとって社会集団への適応訓練の妨げになると思うのですが、ご見解をお聞かせください。
(保健福祉部 発達支援センター)
療育ルームの母子通園クラスにつきましては、相談後における初期の療育の場であり、保護者も児童の発達の状態を把握出来ていない段階での支援となります。
このため、まずは児童との関わり方を指導し、社会適応の基礎となる、良好な親子関係を築いていただくことが非常に重要でありますことから、母子通園の形体をとっております。
発達障がい児は親子関係ができていないという認識なのでしょうか。多くの母親は反応の乏しいわが子でも、朝から晩まで必死の思いで向き合っています。何をもって関係ができていないと判断されているのでしょうか。
例えば療育ルームの通い始めなど、子どもの状態によっては母子通園もあるかもしれません。しかし保育所や幼稚園、あるいは学校という次の社会集団のステップを視野に入れれば、基本的に療育は母子分離を目指すのが基本ではないでしょうか。
市原市の療育体制は、マザーズホームが開所したS52年以来、発達支援センターになっても、そのまま36年間ずっと母子通園というやり方を継続してきました。
この体制を改めてほしいというのは、ここにかかわった家族たちの積年の願いであり、その声は行政側にも何度も届いているはずです。ぜひご見解をお聞かせください。
(保健福祉部 発達支援センター)
療育ルーム母子通園クラスにつきましては、先程もご答弁いたしましたが、母子通園クラスの基本的な考え方として、児童の発達はもちろんのこと、親の我が子に対する愛情と、子の親への愛着といった親子関係を育み、子育てを楽しむことが出来るよう支援することを大きな柱にすえております。
このため、完全に母子分離した療育体制に切り替えることは、この考え方に反することでもありますので、体制を変更せずに実施しております。
なお、年長児については就学に向けた支援として分離の経験が重要となることは認識しておりますので、日々の療育の中で保護者から一定時間、分離する機会を増やすなどの対応を行っております。
例えば、母子通園クラスには、こんな決まりがあります。
兄弟がいる場合、その子は連れてきてはならないので、保育園などに預ける必要があります。逆に言うと、兄弟の預け先が見つからなければ療育には通えません。
また、兄弟ともに障害児という場合(決して珍しくない)、上の子には母親がついて、下の子にはおばあちゃんがついて療育を受ける。あるいは、母親一人が上の子と下の子を交互に連れてきます。
こんな理不尽で不自然なことを、当たり前のようにさせているのです。なぜそこまでして親子マンツーマン体制にこだわるのか。これは、家庭環境やひいては子どもの育ちにとって、好ましい状態なのでしょうか?
何故せめて臨機応変に対応できないのかと思いながらも、多くの母親たちは、ここ以外に頼るところがないからと、泣く泣く従っているのです。
・児童発達支援センター
私は、今が改革のチャンスだと思っています。
というのも、今回の児童福祉法の改正で、新たに「児童発達支援センター」という施設の整備が規定されました。地域の児童発達支援の中核を担う施設という位置づけで、整備量のイメージは、障害福祉圏域に1,2か所・おおむね10万人規模に1か所以上とされています。
ところが、現在までに県内で24か所が指定を受けている中で、市原市発達支援センターは給食の提供ができないという理由で、未だに指定を受けていない状態です。
28万都市に一つもないという訳にはいかないでしょうから、今後指定を受けるべく検討されることと思います。
そこで、この機会にぜひ、給食の提供はもちろん、母子分離の件や(1)で提言させていただいたワンストップの相談窓口なども含めて、発達支援センターの体制を抜本的に見直していただきたいのですが、いかがでしょうか。
(保健福祉部 発達支援センター)
発達に不安のある児童に対する本市の相談、療育体制につきましては、現在、発達支援センターが関係機関と連携を図りながら、中心的な役割を果たしているところであります。
児童発達支援センターの指定につきましては、給食の提供という課題がございますが、ご質問にありました項目も含め、より適切な支援を行うための体制が図れるよう、他市の対応の状況なども参考としながら、調査・検討してまいりたいと思います。
ぜひ、今後協議会を立ち上げるなどして具体的に検討を進めていただきたいと思います。身近な地域で安心して療育が受けられるよう、当事者の立場に立った体制づくりを切にお願いします。
3. 公共施設における農薬や殺虫剤等の使用について
・薬剤防除の基本的な考え方(法的な根拠、IPM)
害虫の防除のために、日本では様々な農薬や殺虫剤が何の違和感もなく日常的に使用されています。
それらの反復暴露による人体や環境への影響については、化学物質過敏症で苦しむ患者さんの訴えなどによって近年ようやく注目され始めてきたところで、国からは、害虫防除の基本的な考え方について、いくつか指針等が示されています。
これらはいずれも総合的病害虫管理(Integrated Pest Management:IPM)という考え方が基本にあります。要するに、害虫の全滅を求めないで、あくまで人に害のないレベルで良しとする、そして薬剤散布ありきではなく、早期発見で枝切りなどの物理的な防除を優先する、記録を管理するなど、様々な方法を総合的に組み合わせて、極力人体や環境にリスクを与えないように配慮する、というものです。
そこで私は、市原市の公共施設において農薬や殺虫剤を使用する際に、これらの国のマニュアルを順守しているのか、職員や市民へのマニュアルの啓発等を行っているのか、などについて、昨年の12月議会で質問したが、今回再度取り上げたいと思います。
項目を保育所や学校とその他の公共施設とに分けたのは、特に薬剤に対する感受性の高い子供に対する対策は急務であり、徹底しなければならないと考えるからです。
(1)保育所や学校における使用について
・庭の樹木への農薬散布について
まず、庭の樹木については、前回伺ったところ、保育所・学校いずれも、見回りや物理的防除を行っているとのことで、定期散布ではないのは評価するが、以下の3点について確認します。
1.有機リン系のスミチオンMEP(フェニトロチオン)やディプテレックスDEP(トリクロルホン)が使用されています。
2.子どもが施設にいる時間帯に散布しているケースが目立つ。
3.三角コーン・立て看板など子どもにもわかりやすい立ち入り制限表示を行っていません。
これらの点について、今後の取り組みをお聞かせください。
(子育て支援部 保育課)
はじめに、薬剤についてですが、これまで、広範囲の害虫に優れた防除効果が得られますことから、ディプテレックスという薬剤を使用しておりました。
しかし、ディプテレックスが平成25年2月に農薬登録が失効し、また、平成25年4月に、国から「住宅地等における農薬使用について」が通知され、改めて、自治体が行う病害虫防除にあたって遵守事項の徹底を求められました。
このことを踏まえ、児童の安全性等を考え、現在、国の「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」にあります、人への影響が低く、飛散等による被害の発生のないBT剤などの生物農薬、あるいは、殺虫効果はあるが農薬ではない薬剤の使用を検討しているところでございます。
次に、散布時間につきましては、児童が昼寝をしている時間や、土曜日の夕方に実施し、散布の際には窓を閉めたり、付近に遊具がある場合は、散布終了後水で流すなどの安全対策を講じていたところでございます。
しかしながら、安全対策に万全を期するためにも、児童に直接影響のないよう、原則として、日曜日に実施してまいりたいと考えております。
最後に、薬剤散布箇所への立ち入り制限につきましては、これまで具体的な措置を講じてまいりませんでしたが、使用する薬剤や散布方法などを考慮した上で、必要に応じ、三角コーン等による立ち入り制限範囲の設定等により、散布時や散布後に、農薬使用者以外の者が散布区域に立ち入らないようにしてまいりたいと考えております。
(学校教育部 教育施設課)
はじめに、農薬の使用につきましては、児童生徒等への健康被害が生じないよう、国の「住宅地等における農薬使用について」及び千葉県教育委員会が定めた「学校におけるシックハウス症候群・化学物質過敏症対応マニュアル」に則った散布に努めているところであります。
現在、薬剤については、有機リン系の薬剤から、一般家庭でも使用されているピレスロイド系の薬剤への切り替えを進めており、今後も、人体への影響や害虫への即効性など、さまざまな角度から使用薬剤について検討してまいります。
次に、散布の時間帯につきましては、授業や部活動等により、児童・生徒がいなくなる時間がほとんどないことから、学校現場と連携を密にし、児童・生徒の安全確保に万全を期しているところであります。
次に、薬剤散布箇所への立ち入り制限につきましては、散布後は、実施業者の指示する期間、樹木等に近づかないよう指導を徹底しているところであり、今後、三角コーンの設置等による立ち入り制限の強化を図ってまいります。
農水省・環境省の通知「住宅地等における農薬使用について」のなかで、「『万が一にも子どもが農薬を浴びることが無いよう』、散布の時間帯に最大限配慮するとともに、子どもの保護者への通知を図ること」としています。H19年の前回の通知よりさらに子供への配慮を強く求める内容です。
八千代市は農薬散布を止めて約7年になるが、野鳥がたくさん訪れるようになったそうです。生態系が成立し、生物的防除につながっている例。市原市も、ぜひ努力していただきたいと思います。
・施設内(保育所)での殺虫剤散布について
次に施設内での殺虫剤散布についてだが、学校では行っていないので、保育所について伺います。
保育所では、調理室・手洗い等に有機リン系のスミチオンを散布、さらに、はいはいする乳児や幼児が過ごす場である保育室にはピレスロイド系のスミスリンが散布されています。
以前、この点について指摘したところ、「薬剤を使用せずに駆除を行うことは困難」というお答えでした。
しかし、他市の取り組みの例では、事前にトラップ(罠)による生息調査を行ったうえで、保育室への薬剤散布を止め、ベイト剤(ホウ酸主成分、ジェル状、コーキング剤)に変更したり、調理室には有機リン系の使用は止める、など可能な限りの改善を行っています。
厚労省による「建築物における維持管理マニュアル」に法り、少しでも安全な方法に切り替えるよう工夫できないのか、ご答弁をお願いします。
(子育て支援部 保育課)
保育所施設内における害虫駆除についてでございますが、市では、これまで、進入場所の閉鎖などの対策をとりましても、施設内のすべてに対応することは難しく、わずかな生息場所や潜伏場所を見落とすことがあるため、範囲を限定して、薬剤の噴霧により行ってきたところです。
しかし、保育所は、乳幼児が日々を過ごす場であり、子どもたちの体に影響を及ぼすことに対しては、特に配慮が必要であります。
昨年の議員のご指摘もございましたことから、他市での取り組みを調査するとともに、駆除の専門家の意見も聞き、検討してまいりました。
その結果、国の「建築物における維持管理マニュアル」にあります「総合的有害生物管理(IPM)の手法を試験的に取り入れ、粘着シートなどのトラップや有効成分に害虫が好むえさを配合し、摂食させて殺虫するベイト剤を使用し、その効果を検証してまいりたいと考えております。
・エコチル調査
冒頭申し上げたように、幼い子供ほど化学物質の影響は大きいと言われている。環境省では、H23年から16年間の予定でエコチル(エコロジーチルドレン)調査という10万組規模の大規模かつ長期的なコーホート(集団追跡)調査を行っている。これは、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露などの環境因子が、子どもの成長に大きな影響を与えている」という仮説に立ったものである。
子どもの健康に関わることは特に予防原則の立場に立つことが大事。こうした国の動きも踏まえて、市も成り行きを見守るのではなく、速やかに改善していただきたいと思います。
(2)その他の公共施設における取り組みと一元的な管理体制について
・街路樹
まず、街路樹に関して伺います。
昨年いただいた資料によると、H23年度では17回農薬散布が行われていました。近隣住民への周知、立て看板による注意喚起、作業中の写真記録の義務付けなど、すでに配慮されている点もありました。しかし、管理委託の仕様書には、わざわざ害虫にはディプテレックスを1000倍希釈で散布せよと明記されていることからも、薬剤防除ありきという点は否めませんでした。
これまでに改善した点があればお聞かせください。
(土木部 道路維持課)
街路樹の害虫駆除の方法といたしまして、昨年度までは、定期的な農薬散布を基本として実施してまいりました。
しかしながら、農薬飛散を原因とする住民への健康被害を防止する観点から、関係省庁の通達等を遵守するとともに、環境省の「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」に従い、今年度より業務委託仕様書の見直しを行い、対応しております。
具体的な改善点といたしましては、定期的な農薬散布の方法から、毛虫等の害虫が発生した箇所を剪定駆除する事を基本とし、極力、農薬の使用を抑える対応としたところであります。
実は改訂した仕様書を読ませていただいたが、お手本にしたいくらいよくできていました。
真摯に対応してくださったことは非常にありがたいし、実際に薬剤使用量を大幅に減らすことができたということで、とても嬉しく思います。感謝申し上げます。
・本庁舎(室内)
では次に本庁舎について伺います。
昨年12月の質問の段階では、例えば建物内ではジクロルボス(中国製冷凍餃子の中毒事件)とフェニトロチオン(スミチオン)の混合剤を年2回、定期散布していました。ご答弁では「建築物環境衛生維持管理要領に基づいて適正な使用に努める」とのことでしたが、具体的な改善点をお聞かせください。
(総務部 総務課)
本庁舎における、建物内外の害虫駆除につきましては、これまで定期的な薬剤散布を実施してまいりましたが、今年度から、屋外の庭園管理に関しては、定期散布をやめ、害虫の生息状況を目視調査により確認した上で、害虫の発生が認められた場合に限り、発生箇所への部分的な散布をしております。
今後におきましても、薬剤の使用を極力控え、人に対する健康に十分配慮し、適切な手法を用いた害虫駆除を行ってまいりたいと考えております。
屋外は改善していただいたようですが、庁舎内は変わらず。前回の答弁でも、ゴキブリがかなりの数生息しているとのこと。
もともと、IPMは、薬剤で繰り返し害虫駆除を続けると、薬剤が効かない虫が出現するという現象への対応策として考え出されたものだそうである。本庁舎のゴキブリはすでに薬剤耐性が強化されたいわゆるスーパーゴキブリに進化しているのかもしれない。
・IPMと職場環境の見直し
単純に殺虫剤を使うなと言っている訳ではなく、状況をよく観察して、まずはどこまで害虫を減らせば実害を防げるのか、どこにどんな対策を組み合わせれば効果的なのか、きちんと検証して実施してほしいと言っている。駆除業者に伺ったところ、薬剤の一律定期散布と経済的にそれほど変わらないということであった。先ほどの街路樹管理のように仕様書を見直して、IPMに積極的に取り組む業者に委託することを検討していただきたい。
また、そもそも害虫が多く出没するような職場環境が問題。もっとも基本的な対処法は、繁殖場所や食べ物を与えない、つまり、職場の整理整頓、確実な残飯処理、水気をなくす。これが一番ということも、申し添えたいと思います。
・公民館、コミュニティーセンター
次に、公民館やコミュニティーセンターなども不特定多数の市民が訪れる施設ですが、こちらは指定管理者による再委託によって害虫防除が行われています。
コミュニティーセンターは、3か月ごとに生息調査をして全く散布なし、というお手本のような施設が1か所あって逆にびっくりしました。
ここで特に指摘したい点は、ほとんどの施設で、どうせ休館日に実施するからと、周知をしていなかったということです。
「建築物における維持管理マニュアル」に示されているIPMの手順によると、「薬剤を使用する場合は事前に利用者の了解を得て実施し、処理前後少なくとも3日間はその啓示を行う」とあります。私が実際に化学物質過敏症の患者さんに伺った話では、施設に行った際に具合が悪くなったので尋ねてみたら、案の定前日に薬剤の散布をしていたということがあったそうです。
ぜひ、指定管理者への指導をお願いしたいと思います。
・一元管理体制を
以上のように、各々の管理部門、あるいは指定管理者によって、物理的防除を優先しているか、生息調査を行った上での使用か、薬剤の種類に配慮しているか、散布の方法や住民への周知は適切か、などの取り組みの実態は、相変わらずバラバラ。
私は、その大きな理由は、薬剤の使用についての統一した判断基準が示されていないということにあると思います。
やはり、昨年の議会でも提言させていただいたように、全体を一括して管理・指導する体制が必要なのではないでしょうか。例えば、千葉市や佐倉市のように、薬剤使用に関する基本指針やマニュアルを策定し、使用状況一覧表を作成、公表している自治体も増えてきています。
前回の質問の際、環境部から「各施設管理者の責任で適正に使用している」とのお答えがありましたが、そもそも状況も把握していないのになぜ適正と言えるのでしょうか、大いに疑問です。ぜひ取り組んでいただきたいのですが、如何でしょうか。
(環境部 環境管理課)
農薬の使用につきましては、この6月に、環境部が窓口となり、農薬使用者等に対する指導や注意喚起を庁内関係部署に通知し、市の施設における農薬の適正使用を徹底したところです。
また、住宅地での農薬使用には注意を要することから、本年5月に、住宅地等の農薬散布について、リーフレットを町会回覧し、市民への啓発を図りました。
各施設におきましては、先ほどの各部の答弁にもありましたとおり、管理者の責任において、国からの通知やマニュアル等に沿って、農薬は適正に使用されており、今後とも改善に努めながら使用していくものと考えております。