1. 地域包括ケアシステムにおける地域医療について
1)地域包括ケアネットワークの構築について
○地域医療・介護総合確保推進法の成立
「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法案(地域医療・介護総合確保推進法案)」が今月18日に可決成立しました。同法は、医療と介護の一体改革で地域包括ケアシステムを本格化させるものです。
また、H26年度診療報酬改定では、いわゆる2025年問題を見据えて、医療提供体制の再構築として医療機関の機能分化や在宅医療の充実、地域包括ケアシステムの構築を図ることを目的に据えています。
2000年の介護保険制度の導入時に匹敵するほどの大改革とも言われ、保険者である市町村には非常に大きな役割が課せられることにもなっていますが、果たして行政は、現状への危機感や改革へのモチベーションを十分持って、迅速に取り組んでいかれるのでしょうか。
○担当部署について・研究機関のアンケートより
そこで最初に、地域包括ケアシステムを担う担当部署について伺います。今後、医療を巻き込んだ地域包括ケアシステムの再構築という難題に対応するためには、もはや高齢者部門、と保健部門の連携というレベルではなく、総合的・専門的にあたる組織が必要と考えます。
これに関して、東大の高齢社会総合研究機構・医学部在宅医療学拠点が今年3月に出した自治体へのアンケート調査の報告があります。それによると、担当部署について、昨年12月時点で課・室・係の設置済みは13.2%、担当者配置は51.7%、いずれも存在しない(市原市はこれにあたる)が35.1%。すでに約7割にせまる自治体が何らかの担当を配置しています。因みに担当者の専門職種別で最も多かったのは保健師でした。
担当部署の設置について、当局のご見解をお聞かせください。
保健福祉部長
地域包括ケアシステムの構築においては、地域において、高齢者を取り巻く医療や介護、住まい、地域活動など、さまざまな関係機関により、包括的かつ継続的な支援を行うことが重要となります。
このため、次期介護保険事業計画の策定において、システム構築に向けた方向性を検討してまいりますが、その中で組織体制のあり方について、幅広く議論してまいりたいと考えております。
そもそも高齢者からすれば、ここまでは医療、ここからは介護と明確に分けられるものではありません。
これまで国県の範囲として市がなかなか踏み込んでこなかった医療の課題にあたるためにも、実質的に縦割りを排して、医療と介護の連携をしっかり進める体制を迅速に整えていただきたいと思います。
○地域ケア会議について
さらに苦言を述べさせていただければ、昨年度3月議会での地域包括ケアシステムに関する当局のご答弁の中で、地域ケア会議について、昨年度中は2月末までに計18回開催されたと伺いました。また、その目的についても「ケース検討を重ねることで、地域課題を明確にし、次期計画に反映させる」とご答弁されたように、 地域包括ケアシステムの実現のための基本ともいうべき会議です。
しかし、5か所の地域包括支援センターで年平均たった3回の開催。さらに事前に伺ったところ、市は報告を受けるのみで一度も参加せず、検証もしていないということで、これは包括に丸投げと言えば言いすぎでしょうか?
また先月、市医師会主催の宅医療勉強会に参加させていただいた際、医師から「地域包括ケア会議の事を今まで知らなかった。我々もぜひ参加させてほしい」という意見が出ていました。こういう事は、なかなか包括側から医師会には言いだせません。これは地域課題の抽出以前の問題で、ここをきちんとつなぐ事こそが、行政にしかできない役割のはずです。
○隙間をつなぐ支援を
現在、日本の医療制度の特徴であったフリーアクセスからの方向転換が議論される中で、冒頭述べたように実際に医療機関の機能の分化(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)が進められようとしています。細分化が進めば進むほど、その間に隙間ができるという事で、だからこそ行政のつなぐ力のあるなしが重要なのです。自治体間の医療格差は今後ここから生じるのではないかと思っています。
今年度から地域包括ケアネットワーク構築事業が新たに予算化されていますが、こちらも合わせて、ぜひ市の医師・歯科医師・薬剤師の三師会とのネットワークを強化し、活発に取り組まれるよう要望します。
2)在宅医療の推進について
○往診と在宅医療の違い
まず初めに共通理解として、往診と在宅医療の違いを確認したいと思います。
従来行われている「往診」が、医師個人が急性期の患者の求めに応じて提供する医療であるのに対し、「在宅医療」とは、患者や病院から「入院医療」が終了した時点で依頼され、医療計画に基づく定期的な多職種によるチーム医療の提供を基本とするものです。行政の介入に絞って言えば、介入がないものが「往診」、あるものが「在宅医療」です。
○三師会の動きと要望
市の三師会それぞれにお話を伺うと、いずれも今後の在宅医療の需要の増加を見据えて、勉強会の開催や研究会の立ち上げなど各々取り組みを始められたところでした。
しかしその一方で、ある在宅部門担当の先生が、「医療と介護・福祉各専門主体の連携が必要と感じてはいるけれど、現在はお互いの顔がよく見えておらず、バラバラに活動している状況にある」とおっしゃっていました。この現状は、市として真摯に受け止めなければなりません。
○在宅医療構築のタイムスケジュール
今後、在宅医療を推進するためには、市が旗振り役となって、在宅医療の現状調査から始まって、地域ごとの課題の抽出、それに見合った社会資源の発掘や人財育成、市民への啓発、対応策の施策化や事業化など諸々のプロセスをこなさなければなりません。
市は今年度、事実上の「地域包括ケア計画」ともいうべき第7次市原市高齢者保健福祉計画(第6期介護保険事業計画)策定に取り組まれているところです。現在の計画は、重点目標として「医療との連携」とあるものの、その中身はせいぜい健診や予防接種にとどまっています。ここにどれだけ先ほど述べたような在宅医療の推進についての項目が反映されるか、また次期長期計画の中にどのように織り込まれていくのか、市の姿勢が問われるところです。
国が目安とする2025年まではわずか11年で、これはかなり急ピッチで本腰を入れて取り組まなければならないと思われますが、当局の今後の在宅医療推進の取り組みについてのご見解をお聞かせください。
保健福祉部長
今年度策定中の、次期介護保険事業計画においては、「医療と介護の連携」が、重要なテーマになるものと考えております。
一方、在宅医療の推進に関しましては、千葉県が平成25年5月に策定いたしました「千葉県保健医療計画」において、具体的な指標等の目標値を掲げ、県が中心となって取り組んでおります。
市といたしましては、在宅医療の問題について、千葉県とも連携し、スピード感をもって、取り組んでまいります。
○医療政策とは
医療政策に関しては、市町村はとかく「国や県の動向を見て」となりがちだが、私が最も言いたいのは制度の問題ではなく、意識の問題です。
今はもう単に病院を引っ張ってくるのが医療政策という時代ではありません。今ある地域資源、専門職、住民組織をどう活用するか、という市町村のまちづくりが、今後の医療政策そのものです。仮に地域全体を病院に見立てると、さしずめ病院長は市医師会で、医局長が在宅医療連携拠点の医師、そして病院事務局長が市の担当部局という事になるでしょうか。今後の市の意気込みとマネジメント力に期待したいと思います。
3)高齢者の救急医療について
○ 高齢の救急患者の特徴
高齢者の救急搬送の問題は、先の在宅医療の推進と密接に関連しています。
高齢の救急患者の特徴としては、まず有病率が高い、複数の病気にり患、内服薬の種類が多いなど、健康に関する情報が複雑。 重篤になりやすく、入院が長期化しやすい。そして、車を運転できる家族など移動手段のない場合が多く、救急車に頼らざるを得ない、などが挙げられます。
○
市の救急搬送の実態
そして、高齢者の救急搬送はうなぎ上りで増加しています。
市原市でも、搬送人員に占める65歳以上の高齢者の割合は、10年前の約27%から昨年度は約48%と、ほぼ半数を占めるまでになりました。人口にほとんど変化がない中で全搬送人員自体も39%増加していますが、 この増加分はほぼ高齢者の増加によるものと言えます。しかも、先ほど述べた高齢者の特徴によって、同じ救急搬送でもさらに手間と時間を要しているという厳しい実態があります。
○ 看取りについての国民や医師(セミナー)での意識
さて一方、政府による意識調査で、54%の人が自宅で最期を迎えたいと望んでいるという結果があります。昨年参加した県医師会主催のセミナーでも、会場にいた医師の9割以上が自宅での看取りを希望すると手を挙げていたのも、私にはちょっとした衝撃でした。
このように、在宅での看取りを希望する人は多いが、その一方で、救急車を要請したら最後、本人の意思にかかわらず全力で救命する医療にシフトされてしまうという事実は、意外に多くの方が自覚していないのではないでしょうか。
高齢者の救急医療をどう考えるか。終末期医療を、延命優先からQOLを重視した患者の自己決定権の尊重へと、市民の意識の転換も図らなければならないと思います。
○ 八王子市の例
ここで八王子市の例を挙げたいと思います。
八王子市では、H24年度に行政・各医療機関・介護施設・町会など、15団体・述べ147機関が連携する「八王子高齢者救急医療体制広域連絡会」を立ち上げました。
まずは顔の見える関係づくりから始まって、救急搬送上の課題などについて共通認識を持ち、それぞれの立場で取り組める事項の確認やローカルルール作りなど、安心で適切な救急搬送体制の確保に非常に有効に機能しているとのお話を伺っています。
注目すべき取り組みの一つに、「もしも」の際、救急隊員に服用中の薬やかかりつけ医、連絡先などの情報を迅速に提供するための「救急医療情報キット」30万枚の配布があります。
市原市でも、安心生活見守り支援事業で同様のキット「みまもりくん」が現在約350か所に配布されていますが、八王子の取り組みで特徴的な点の一つは、医療情報の中に看取りに関する項目が設けられていること。もう一つは、このキットを高齢者施設にも配布しているという点です。
実は、個人に限らず高齢者施設からの救急要請で、施設の職員が傷病者の情報をほとんど把握しておらず搬送に手間取りました、などのトラブルは市原市でも決して珍しくありません。八王子市の場合、このような課題が協議会の中で出された結果が、情報キット事業に反映されているのです。
また、情報を記入する際、ご本人やご家族、施設職員、かかりつけ医が互いに話し合うことで、終末期医療についての意識が醸成される効果を狙っているとのお話にも、大変感銘を受けました。
市原市でも、高齢者の救急医療体制について、ぜひこのようなネットワークを構築し、具体的な対応策につなげていっていただきたいのですが、ご見解をお聞かせください。
保健福祉部長
今後、医療・介護等の関係機関の連携が益々重要となっていくと考えておりますので、連携のあり方については、先進市等も参考にしながら、研究してまいりたいと考えています。
市原市の自宅あるいは介護施設での看取り率は、H24年の値で24.7%。今後、在宅医療体制や市民の意識の変化によっては、救急車を呼ばずにかかりつけ医を呼ぶという選択肢も増えるかもしれません。
確かに非常にデリケートで難しい問題もはらんではいますが、仮に現在の医療体制を継続すれば、2030年には医療資源が現在の1.4倍必要との試算も出ています。個人の生き方の尊重と安心できる医療体制の確保、この二つの視点に立って、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
2.子ども子育て支援について
1) 子ども・子育て支援事業計画について
○ 子ども子育て支援新制度の動き
H24年に成立したいわゆる子ども子育て関連3法に基づく「子ども子育て支援新制度」が、消費税率の引き上げによる財源の一部を得て、来年4月から本格施行されます。
新制度では、市が実施主体として地域のニーズを把握し支援事業計画を策定することとされ、市原市でも昨年10月の約4500名から得たニーズ調査の結果と私立幼稚園の動向を踏まえて、来年度から5か年にわたる計画を策定中です。
今後「いちはらっ子の子育ち支援会議」での審議を経て9月には施設・事業の設備や運営などの基準についての条例案の上程も控え、急ピッチで策定作業が進められていることと思います。
この制度は非常に広範囲かつ複雑で、日本の保育制度の大改革と言っても過言ではありませんが、政府も相変わらず情報を小出しにしてギリギリになってボンと出すというやり方で、担当職員のご苦労も察するに余りあるものがあります。
しかし、本格施行まであと9か月と迫った現在でも、保護者はもちろん施設関係者でさえその内容が未だにわからないという声もあることから、何点か質問させていただきます。
○
子ども子育て会議について
その前に、いちはらっこの子育ち支援会議について。これは市のHPでも定義されているように、子育て当事者の意見を支援事業計画へ反映させ、地域の子どもや家庭の実情を踏まえた施策を展開するために、非常に重要な役割を果たす会議体です。
しかし、実際に開催されたのは昨年度9月と3月の2回のみで、3月の議事録は先週やっと公開されました。このペースで、この広範囲かつ複雑な制度に関する議論と周知が尽くせるのでしょうか。
例えば市川市は、昨年度7月から3月までの9か月間で計6回の会議を持ち、条例に係る細かな基準まで丁寧に議論されています。他にもHPで検索すれば各市町村との違いは歴然で、これでは市原市の子ども子育て会議は名ばかりだと言われても仕方がありません。まず冒頭、当局には苦言を呈したいと思います。
○ 施設整備方針とその見通しについて
さて先般、待機児童解消のための施設整備方針に関し、特定教育・保育施設に関しては、私立幼稚園の認定こども園化の優先と、待機児童の多い3歳未満児対象の民間認可保育所の新設をもって補完する旨の説明がありましたが、それは事業計画のごく一部にすぎません。
19人以下の小規模保育や5人以下の家庭的保育などの地域型保育施設、これは先の本会議でも部長が「多様なニーズにこたえる役割を果たす」と述べていらっしゃいましたが、こちらの新制度における意置づけも、気になるところです。
また、そもそも行政サービスに関する市民アンケートは「あれば嬉しい」という感覚で丸が付けられる傾向にあり、実際に休日保育のように、ふたを開けたら利用人数との乖離が激しかったという事が往々にして起こります。今回、暫定値をどう補正されているのでしょうか。
さらに、ニーズ調査の暫定値で3歳未満児の受け入れ必要数は1,422名。一方、私立幼稚園の空きが1,805名。数値だけ見れば、市内23の私立幼稚園のほとんどが3号認定を含めた認定こども園に移行すれば待機児童問題は解決するでありますが、実現の可能性ははっきり言って未知数です。
そこで、改めて地域型保育施設を含めた整備方針と、補正の考え方や補正後の量の見込み、私立幼稚園の認定こども園化の今後の見通しについてのご見解を、合わせてお聞かせください。
子育て支援部長
子ども・子育て支援事業計画のうち、最初に「地域型保育事業の整備方針」について、お答えいたします。
地域型保育事業は、地域における多様なニーズにきめ細かく対応でき、比較的短期間に安価な経費で整備することができる有用な事業でありますことから、ニーズ調査の分析を踏まえ「子ども・子育て支援事業計画」の策定作業の中で検討してまいります。
次に、量の見込みについてでございますが、今回暫定値としてお示しした数値につきましては、国の「作業の手引き」に基づき算定し、育児休業の取得の有無を考慮せず、現段階で就労等を希望するすべての保護者の保育の利用希望を合計したもので、いわば量の最大値であると考えております。
このため、計画期間中の各年度における実際の保育ニーズとの間に差が生じることが見込まれます。
国では地域の実情を勘案し、地方版子ども・子育て会議の意見を聞いたうえで、これを補正することが可能である旨、通知がございました。
このことから、現在、本市においては、育児休業を取得中の保護者の取り扱いを含め、より現実的な量の見込みとなるよう、補正方法を検討しているところです。
次に、私立幼稚園の認定こども園への移行についてでございますが、市が独自に本年3月に行なった私立幼稚園の認定こども園化に対する意向調査では、23園中、4園が認定こども園への移行を希望しておりました。
この度、国において私立幼稚園が認定こども園への移行に踏み切るかどうかの重要な判断材料の一つとなる、運営費の基準となる公定価格が示されました。
このことから現在、認定こども園への移行の希望調査を行なうとともに、認定こども園への移行が円滑に進むよう、6月20日にすべての私立幼稚園を対象とした説明会を開催したところであり、今後も相談に応じるなど支援してまいります。
市が方針に掲げる私立幼稚園の3号認定を含む認定こども園化は、現時点では非常にハードルが高い。
事実、多くの園が初年度はこれまで通り私学助成対象の枠のままでの様子見です。それだけに、新制度の蚊帳の外になることへの不安を抱く園関係者の声も多く聞かれます。当局には、園側としっかり意見交換し、課題や不安を十分受け止めたうえで計画を立てていただきたいと思います。
また、地域型保育施設についても、これまで認可外保育所や保育ママが果たしてきた歴史や役割を踏まえて、説明会もこれからだと伺っていますが、こちらも蚊帳の外にならないよう十分な配慮をお願いします。
そして、9月には施設運営等様々な基準が条例で定められることになりますが、例えば同じ市原市の2歳児が、保育所の子供、認定こども園の子供、地域型保育の子供、また住んでいる地域によっても、保育の質の差が生じることがないよう慎重にご検討いただきたいと思います。
○ 保育ニーズのピークについて
次に、保育ニーズのピークについて伺う。今後さらに少子化が進行するとされている中で、国の待機児童加速化プランでは、ピークは3年後と推定されています。仮にこの通りだとすれば、5年間の事業計画の期間中に早くも保育ニーズは下降線をたどるということもあり得ます。
では、市原市の保育ニーズのピークはいつごろと予測しているのか。また、ピークを過ぎた後の中長期的な方針はどのようなものか、お聞かせください。
子育て支援部長
先程、申し上げましたとおり、「量の見込み」につきましては、現在検討しているところであります。
併せまして、ピークについても課題を整理して計画案とともにお示しいたします。
次に、ピークを過ぎた後の対応ということでございますが、子どもの総数については、減少傾向にあるのではないかと言えるのではないかと思っております。
しかし、保育ニーズという観点では、今後の社会経済状況等にもよりますが、特に、3歳未満児につきましては、人口減に単純に比例するものではないものと考えております。
したがいまして、このような視点も踏まえて、量の見込み、そのピークについて、検討しているところであります。
○ 公立幼稚園について
中長期的な視点でもう1点言えば、約3割もの定員割れが続いている公立幼稚園の在り方も気になるところです。今後、統廃合や認定こども園への移行、民間への委託などの可能性が考えられますが、私立幼稚園や保育所との競合関係もあり、難しい判断である。しかし、幼保小連携教育を推進する上で、公立の存在意義は決して小さくはありませんから、少なくとも、財政の観点だけで安易に統廃合や民営化を進めることは避けていただきたいと思います。
今後教育委員会と子育て支援部双方で、十分協議をしていただきたいと思います。
○ 特別な支援が必要な児童(障がい児・養育支援児)への支援について
次に、特別な支援が必要な児童・特に障がい児への支援について伺います。
昨年度の障がい児の受け入れ人数は、私立幼稚園11園で27名、公立保育所は11園で45名でした。私立幼稚園の認定こども園化に伴い、1号認定の障がい児の受け入れが十分確保されるのか、保証はどこにもありません。
当然ながら、障がい児も一般施策の対象である。私は、どんな障がいを持つ幼児も地域での幼児教育や保育を安心して受けられることがまず基本にあって、その上で必要に応じて特別な配慮や発達支援が提供される重層的な支援体制が必要であると考えています。
支援事業計画では特別な支援が必要な児童への支援については任意記載事項とされているだけに、市の方向性は非常に気になるところです。新制度のもとで、障がい児への就学前教育・保育の量と質をどう担保されるのでしょうか。
例えば、認定こども園事業者への利用者のあっせん・要請で、市はどこまで踏み込むのか、保育の必要性の認定の際、障がい児の取扱への配慮はされるのか、公立幼稚園での受け入れの可能性はあるのか、職員の加配は必要十分にされるのかなど、障がい児への支援を支援事業計画へ反映することについてのご見解と、具体的な支援策があればお聞かせください。
子育て支援部長
まず、認定こども園事業者への利用者のあっせん・要請についてでございますが、保育の必要性が無い場合については、申請者の希望、施設の状況等に基づく利用調整を行い、利用可能な施設を斡旋することになります。
保育の必要性のある場合には、利用調整、斡旋に加え施設に対し、利用の要請を行い、その利用の確保をすることになります。
次に、保育の必要性の認定についてでございますが、子ども・子育て支援法では、保護者の申請を受けた市町村が客観的な基準に基づき、保育の必要性の認定を行うとともに、優先度についても同時に定め、利用調整を行うものとしております。
この場合の優先利用について、国の子ども・子育て会議の中でも議論され、「障がいを有する場合」についても例示されましたところでございますので、この方向で調整しております。
議員ご指摘の障がい児への教育・保育の量の質をどう担保するかについてでございますが、新制度では国や地域を挙げて社会全体で子ども子育てを支援する支え合いの仕組みを構築することが趣旨とされておりますので、障がいの有る無しに関わらず、全ての子どもが公平・公正の原則の下、支援が受けられる体制の整備に努めてまいります。
障がい児が新制度から排除されることが無いよう、くれぐれも十分な配慮をお願いします。
○ 支援事業計画は「幼保連携型認定こども園移行計画」ではない
母親の社会進出に伴って、認定こども園への移行は時代の流れなのかもしれません。決して否定はしませんが、例えば保護者の生活様式や預かる時間などがバラバラで体制が散漫になる、多様な事業者が参入しやすいため保育が産業化する、など様々な問題が取りざたされています。
市原市の事業計画が、安上がりで臨時的・短期的な待機児童解消策、あるいは単なる「認定こども園移行計画」に終わらないよう、「いちはらっ子すくすく条例」の理念に法り、中長期的な視点に立って慎重に検討していただきたいと思います。
2)児童虐待防止対策について
○ 厳しい家庭児童相談室の実態
児童虐待防止法及び児童福祉法の改正によって、H17年から家庭児童相談が市町村の業務となりました。 以降、親の精神疾患、離婚、経済的不安、DV,子どもの障がいなど、問題の複合化で、継続のケースは現在約年600件にも上っています。
また、新規の件数も、虐待だけでも一昨年度の164件から昨年度は243件と一気に1.5倍に跳ね上がりました。果たしてこのままでいいのでしょうか。
家庭児童相談室の日常業務のおおよその実態は、通常室長と嘱託の家庭児童相談員3名が、新規の電話相談一日5〜10件・継続合わせて約20件を受け、かつ調査、ケースワーク、家庭訪問、アフターフォロー、関係機関との会議と、大変シビアな業務をこなされています。
私はH23年12月の本会議で家庭児童相談室の体制の強化を訴えましたが、昨年度から1名正職員が加配されたものの、あくまでも事務担当であって、相談支援業務は相変わらず嘱託職員4名と室長が担当していると伺っています。
○ 中央児相の資料より
市原市を管轄する中央児童相談所によるH24年度の統計によると、市原市からの受付件数は250件で、管轄内10市で最も多い数値です。そして特に注目したい点は、その10市の中で、相談員として教員や保育士・保健師・社会福祉士などの資格を持つ正職員を配置していないのは、市原市だけだということです。
そこで再度、家庭児童相談員の体制の強化を要望するものである。具体的に専門職の正規職員を加配することについて、当局のご見解を伺います。
子育て支援部
家庭児童相談室につきましては、これまで、制度改正や相談件数の増加等に伴い、嘱託相談員の増員、専任正職員の配置など、体制強化に努めてまいりました。
また、平成23年度には、指揮命令系統を明確化し、より迅速な対応が図れるよう、子ども福祉課の課内室として位置づけたところでございます。
さらに、平成25年度からは、事務執行の効率化、体制強化の一環といたしまして正職1名の増員を図り、正職を2名とし、教員や保育士等の資格を有する嘱託相談員4名と併せて6名体制としたところでございます。
しかしながら、家庭相談業務につきましては、昨今、核家族化、コミュニティの崩壊、経済不況等の世相が加わって、身体的、精神的、社会的、経済的等の要因が複雑に絡み合っているケースも多く、児童虐待まで至れば、かけがえのない命が失われることにも繋がります。
児童虐待につきましては、特別な家庭の問題という認識で取り組むのではなく、どの家庭でも起こり得るものとして捉える必要があると考えております。
このため、家庭児童相談室について、相談業務はもちろん、児童虐待の発生予防という観点も更に強く持ちまして、職員配置も含めた組織強化について、関係部局と協議して参ります。
重大事件があってからでは遅いです。重ねて体制の強化を要望します。
○ 相談スペースの環境整備や未然防止の取り組みについて
また、相談スペースについても十分検討していただきたいと思います。
現在防災庁舎について基本設計に取り掛かっているところです。
相談者側のプライバシーへの配慮は言うまでもありませんが、逆に暴力団まがいの相談者に脅されたり凄まれたりすることも決して珍しくないといいます。
もしもの時にも対応可能な、相談者と職員双方が安心できる環境整備をぜひ工夫していただきたいと思います。これは要望にとどめます。
また、児童虐待を未然に防ぐ取り組みの一つとして、新制度の地域子ども子育て支援事業の中に、例えば養育支援訪問事業や子育て短期支援事業などが位置付けられると思います。
ぜひこちらも事業計画に反映していただくよう要望します。
○ 厚木市の男児監禁遺棄致死事件から
厚木市の男児監禁遺棄致死事件では、例えば3歳半健診の未受診、児童手当の現況届未提出、水道料金未納など、多くのサインが見逃され、行政の縦割りや体制の薄さ、個人情報保護の壁など、改めて行政サービスの問題点が浮き彫りとなりました。しかし、いくら体制を整えても、子どもは救えません。勇気をもって一歩踏み込む「おせっかい」が、行政にも私たちにも求められていると感じた次第です。
3.中房総国際芸術祭いちはらアートミックスについて
これに関しては特別委員会でも質疑応答を行ったところであり、また本会議でもこれまで多くの会派から質問されたところです。「アート」という非常に個人の主観に頼る概念の持つあいまいさが、評価をよりいっそう難しくしているとも言えるのではないでしょうか。
アートミックスは、南市原という限定された地域の単年度の事業ではなく、市全域に対し将来にわたり影響を及ぼす可能性のある施策であるので、私からも改めて何点か伺いたいと思います。
○ 温度差について
市民ネットには、芸術祭開催前から始まって閉会後も、地元の方、サポーター、参加を断られた方、また敢えて参加しなかった方、それこそハマって何十回も訪れた方、まったく関心がなかった方、様々な市民からの感想や意見が寄せられています。参加した方や訪れた方からは「大変面白かった」「素晴らしい出会いと体験に恵まれた」「市原市の魅力を再発見できた」など好意的な意見が多くを占めましたが、その一方で、残念ながら参加しなかった市民との温度差がこれほど目立った事業も珍しかったのではないでしょうか。
そしてその温度差は、住んでいる地域に依るところももちろんありますが、地元の間や市職員の間でさえも、甚だ顕著であったと私は感じています。
4億円以上もの公金が拠出された事業であり、さらにその陰で出費に泣いた事業者も少なからず存在する以上、もし仮に一部の人々の自己満足や自己啓発が精一杯で終わってしまうのであれば、到底看過することはできません。その意味で、閉会直後からのアフターフォローが非常に重要な意味を持つと思っています。
○ 財産を育てるための3年間の継続計画は
昨年の本会議で石井前経済部長から、次のようなご答弁がありました。「今後、継続して事業を展開していくごとに、ハード、ソフト両面にわたり、本市の活性化につながる新たな財産が蓄積されていくものと考えております」
それでは、その生まれた「新たな財産」をどう生かしていくのか。
すでに閉会から50日以上経過していますが、未だに私たちにはほとんどアフターフォローの動きが見えてきません。会期中から閉会直後にかけての慌ただしい担当組織の変更、そして本来ならばHPなどにイベントの成果や市民参加の様子、継続に向けての動きなどが賑やかにアップされて然るべきですが、市HPのトップページからは早々とバナーも消え、余韻にさえ浸ることができない状況に、不満の声もチラホラ聞こえ出しています。
アートミックスの52日間の事業はあくまでも手段であり、決して本来の目的ではないということは、これまで何回も繰り返されてきたことで、私がここで改めて述べるまでもありません。
市長は、先日代表質問のご答弁の中で、「まちづくりの種をまき、着実に芽を出した」とおっしゃいましたが、せっかく出た芽・大切な市の財産は、まだひょろひょろとしたか弱いものです。これにしっかりと光をあて、水を与え、様子を見ながら適切に肥料を与えていく、そしてある程度育った苗が3年後にさらに一段階飛躍する植え替えの時期を迎える。そういう事ではないでしょうか。
今後ワークショップやミニイベントの開催案があるというお話は伺っていますが、これらは未確定でその中身は関係者や市民には伝わっていません。
ソフト面のサポーターの組織づくりの他に、ハード面では旧里見小や旧月出小などいくつかの施設ではアーティストから継続の要望が出されています。これらの財産を、予算面を含め、具体的に今後どう支援していくのか。また、次回開催までの3年間の取り組みが見通せるような事業継続方針や継続計画を議会や市民に対し早急に示していただきたいのですが、いかがでしょうか。
経済部長
芸術祭の報告書につきましては、現在、作業に着手しておりますが、10月の実行委員会に報告していく予定であり、その後、次回の開催に向け、計画を策定してまいります。
また、閉校した小学校を活用した取組みの方針につきましては、今後、活動の継続を希望している作家から活動計画の詳細を聞くとともに、教育委員会との協議を進め、予算面も含め、利活用方針を定めてまいります。
なお、作成いたしました報告書や、次回の芸術祭の計画につきましては、実行委員会に報告後、速やかに、芸術祭のホームページなどでお知らせしてまいりたいと考えております。
○アフターフォローで今すぐできること
サポーター組織や施設の活用についての個々具体的なレベルの話はこれからの検討を待たなければならないかもしれません。しかし、イベントとアフターフォローを合わせた3年間の一サイクルがいわゆる「アートミックス事業」のはずで、それが開催ごとにコイル状に広がっていく。そう考えれば、大まかな継続計画は開催前からあってしかるべきだし、そのほかにも今すぐにでも手を付けられることもあると私は思います。
例えば瀬戸内国際芸術祭2013では、閉会したその月・11 月には、速やかにすべての島で自治会等との意見交換会や島民へのアンケート調査が行われました。新潟市の水と土の芸術祭は、ディレクターや参加アーティストなどの関係者をはじめ、有識者や市民が一堂に会したシンポジウムを開き、議事録を全文公開しています。
「鉄は熱いうちに打て」ではありませんが、せっかく芸術祭で盛り上がった人々のエネルギーが、、このまま半年もたてばフェードアウトしてしまうことを、私は大変危惧しています。先ほど述べた温度差を埋めるためにも、正しい評価につなげるためにも、参加の有無に依らない様々な立場の市民がアートミックスの残像が鮮明なうちに振り返って、次につなげるための建設的な意見交換ができるような具体的な仕掛けが早急に必要と考えるが、ご見解をお聞かせください。
経済部長
事業を検証するうえで、市民から広く意見を聞くことは、重要なことだと認識しております。
現在、菜の花プレーヤーズの方々に、アンケート調査を実施しておりますが、今後は、作家や地域の方々、ボランティアの皆さんの声を聞き、話し合っていく予定でございます。
また、ホームページなどを活用し、広く市民の声を聞き、集約した意見を参考にして、次回の計画づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
○公共施設マネジメントに関連付けて・幅広い意見聴取を
少し話がそれますが、現在市原市をはじめ多くの自治体で取り組まれている公共資産マネジメント。この講演会に以前私が参加した際に印象に残ったことの一つに、施設の評価につながる住民アンケートを取る際は、利用者だけでなくそれ以外の住民からの意見も広く集めなければ正しい評価は得られない、とのお話がありました。
アートミックスも同様に、満足度の高かった参加者だけではなく、なぜ参加できなかったのか、知っていながらなぜ行かなかったのか、途中で帰ったという方の話も複数伺っていますが、そんな意見も拾い上げることで、次につなげるための課題がより鮮明になると思います。そのような点にもぜひ配慮していただきたいと思います。
○ 報告集に関して・資金の流れについて
そして今後、とりまとめ中のアンケートなどをもとに記録集や報告集を作成する予定と伺っています。
作成に当たっては、岡目八目という言葉がありますが、ぜひ客観的で冷静な目での状況分析をお願いします。
さらに言えば、資金の流れについて。パスポート・個別入場券・イベント入場・リミックス商品・飲食・ガイドブック。これらの売り上げが各々どのくらいでどう分配されたのか。総合ディレクター委託費や作品制作委託費についてはどうか。当初の予算より6000万円以上増えた事業費は一体何に使われたのか。収益は今後どう活用するのか、なども是非つまびらかにしていただきたいと思います。
これらを含め、客観的な分析に基づいたいわゆる報告書などの作成と市民への公開についてのご見解とその時期について、ご答弁ください。
経済部長
作品やアーティストを紹介する「記録集」につきましては、10月頃に完成する見込みであり、その後、市民等への販売を予定しております。
また、報告書につきましては、客観的な分析を行いながら作成し、来場者数、パスポートの売り上げ、来場者アンケート結果、収支報告書等を掲載し、同じく10月頃の完成を予定しております。
完成後は、速やかにホームページ等で公開したいと考えております。
○何を持って成功とするか
佐久間市長は3年後の芸術祭の開催を表明されていますが、アートミックスは入込予想人数20万人の半分以下の8万7千人という結果に終わり、俗にいう興行収入で評価すれば決して成功したとは言えません。
しかしこの数値も、最初の予測を10万人とでもしておけば、まずまず成功とも言えてしまうという、非常に曖昧なものです。
ではこの事業の失敗と成功の線引きは一体どこにあるのか。どういう姿が成功の姿なのか。市民にはますます分かりにくくなっています。
例えば交流人口や定住人口の増加、地域資源の発掘、にぎわいの創出、地域のきずなと誇りの醸成など、これまで当局は様々な表現をされてきましたが、いずれも雲をつかむような話で多くの市民からの理解は到底得られません。次回も同様に国庫補助や寄付金などを受けられる保証もなく、今後どの程度税金が投入されるのかが不明なままこの事業を継続するのであれば、アウトカムともいうべき評価の基準、そして見極めの時期について、市民に納得できるよう示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
経済部長
アート×ミックスは、南市原のまちづくりに向け、アートを媒介にし、地域の活性化を図ることを目指しておりますが、費用対効果については、できる限り、わかりやすく説明することが重要になりますので、芸術祭の評価基準につきましては、次回の計画策定の中で、検討してまいりたいと考えております。
また、見極めの時期につきましては、次回の開催予定が3年後になりますことから、その都度、実施効果を検証し、評価のうえ判断していくものと考えております。
いずれにしろ、「祭り」はまだ終わっていません。したがって現時点での評価は下せませんが、次回までの3年間の取り組み・ここの動きがほとんど見えないまま再び大がかりなだけの一過性のイベントを開催するようであれば、その時は市民ネットは反対せざるを得ないと考えています。
今回は総合ディレクターの北側フラム氏の存在があまりにも大きく、プロデューサーであるはずの市の采配がほとんど表に見えなかったのも残念です。
市民が主体となり、そこで繋がった人々の関係や作品自体を維持してこそ、真に「現代アートによる町おこし」と呼ぶことができると確信しています。
最後にご見解があればお聞かせください。
経済部長
今回は、まちづくりの一環としたアート作品を媒介とした課題解決型の芸術祭を実施してまいりました。
今回、いろいろな諸課題もございます。事業を継承していく上で、次期計画の中で、検討してまいりたいと考えております。