2月に母が亡くなりました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症して5年、72歳でした。
10万人にひとりという難病でしたが、母の場合恵まれたことがいくつかありました。まず、気心知れた健康な父が介護したこと、そして地域の在宅支援体制が整っていたこと。
居宅介護支援、訪問看護、在宅医療の三者が一体となって在宅での療養を支えてくれました。中でも全国でもさきがけて専門で在宅医療を始めたNクリニックから、訪問診療の範囲内に実家があったことは何より幸運でした。
最期は自宅で父がひとりで看取りましたが、私たち家族に孤立感はありませんでした。昔はあたりまえだった自宅で死を迎えることのぜいたくさが身にしみました。
この4月から政府は在宅医療を手掛ける診療所が増えるように診療報酬を改定。家族、とくに女性の肩にかかってきがちな在宅での療養に関する問題はまだまだ山積みです。けれどもギリギリの選択を迫られる中「家でやっていきましょう」とひょうひょうと言って下さった鹿児島のN医師にどんなに勇気づけられたことか、「在宅医がひとりでも増えて欲しい」と祈らずにいられません。