24年度2月定例県議会 意見書

秘密保全法案(仮称)の国会提出中止を求める意見書(案)

報道によると、野田内閣は今通常国会に、昨年8月の「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」による「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」に基づき、「秘密保全法案」(仮称)を提出し成立を目指すとのことである。
上記「報告書」を見る限り、本法案は以下のような問題点を有するものと懸念される。
・「国の安全(防衛)」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」の3分野を対象に、「国の存立にとって重要なもの」を「特別秘密」に指定し、規制の対象とするとされるが、その概念が曖昧かつ広範であり、指定するのは各行政機関である。解釈次第では、本来国民が知るべき情報が国民の目から隠されてしまう危険性が極めて大きい。
・規制対象となる行為として、漏洩行為の独立教唆、扇動行為、共謀行為に加え、新たに「特定取得行為」と称する秘密探知行為についても独立教唆、扇動行為、共謀行為を処罰しようとしており、現今の多様なメディアによる取材行為が処罰対象となりかねない。さらに、国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体のみならず、一定の場合の民間事業者・大学に対しての取材も対象となるなど、国民の「知る権利」は大きく制限される事態が危惧される。
そもそも、例としてあげられている尖閣諸島沖中国船追突映像流出など、想定される「秘密」なるものも、国家公務員法等の現行法制でも十分に対応できるものであると考えられ、新たな法制化、いわんや懲役10年以内という「厳罰化」の必要性は何ら示されてはいないのである。
主権者である国民の間での秘密保全法制についての議論が十分になされていない現状で、憲法で保障されている「知る権利」を侵害する内容を早急に立法化することは認められるものではない。本法案の国会提出を中止するよう、強く求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年 月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
総務大臣   あ て
法務大臣


消費税増税を柱とした「社会保障・税一体改革」の抜本的 見直しを求める意見書(案)

政府・与党社会保障改革本部は「社会保障・税一体改革素案」を決定し、今通常国会において関連法案の成立を目指すとされている。
本来民主党政権の「一体改革」は、2009年マニフェストに示された「最低保障年金」を初めとする年金制度の抜本的改革を目指すものであったはずである。しかし、1月6日に決定された「素案」においては、肝心の抜本改革案は示されず、「国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む」とされただけである。マスコミの報道でも、消費税増税のみが喧伝されているところである。
2014年4月1日より8%、2015年10月1日より10%に引き上げる予定の消費税は、単一税率で軽減税率は導入されないため、逆進性となる。第一生命経済研究所の試算によれば、所得の低い世帯ほど負担が重くなることが明白となっている。政府は、給付つき税額控除を2015年以降「共通番号制」を活用して実施するとし、それまでは「簡素な給付措置」を行う方針とされているが、そのための財源については明示されてはいない。そもそも、この5%の増収分の使途も、1%分のみが医療、介護、年金、子育ての充実に使われる試算となっており、4%分は現行制度の維持のための財源となる。基礎年金国庫負担分の財源不足を年金交付国債の発行でまかない、その償還は2年後からの消費税増収分を充てるという2012年度予算案にもその一端が見て取れる。
一方、個人所得課税の再配分機能強化策は納税者の0.1%を対象に、税収増の見込みは400億円という規模でしかない。所得格差の拡大が続く中、所得税の財源調達機能と所得再配分機能の本格的強化が必要であろう。
政府にあっては、社会保障制度のグランド・デザインを明示し中長期の財政展望を示した上で、財源の安定化と財政の健全化の方途を国民に問うべきである。安易かつ拙速な消費税増税に頼りすぎ、他の主要税の改革を先送りしつつ、歳出の無駄の徹底的な洗い出しも不十分な今回の「一体改革」は、抜本的見直しをするよう強く要望するものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年  月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
財務大臣
厚生労働大臣  あ て
内閣官房長官
社会保障・税一体改革担当大臣


(仮称)原発事故被曝者援護法の制定を求める意見書(案)

巨大地震・津波と原発の過酷事故が複合増幅した福島原発震災が発生して9カ月が経過した現在、頻発する余震の中で、福島原発事故の現状は、東京電力の発表でも依然として毎時7000万ベクレルの放射性物質の放出が続き、高レベル汚染水が滞留する状況が続いている。
福島原発事故直後、放射性物質の放出についての正確な情報が、政府からも東京電力からも基礎自治体・住民に全く提供されなかった。そのため、適時・適切な避難措置がとられず、住民の避難が遅れ、放射性物質の拡散方向を知らないまま避難した住民は、多量の放射線被曝をこうむった。
特に、政府は、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を、原子力災害対策特別措置法による防災基本計画に基づき、仮試算した拡散予測図形を関係自治体に知らせることになっているにもかかわらず公表しなかった。これは、災害対策基本法第3条に規定された国の責務に反する措置として、その違法性が国会でも指摘されている。
原子力安全・保安院の試算によると、福島第一原発1~3号機から大気中への放射性物質の放出量は、半減期約30年のセシウム137で広島原爆の約168倍に相当する1万5000テラベクレルという膨大な量である。日本原子力研究開発機構の試算では、3月21日から4月30日までの海への放射性物質の放出量は、1.5京ベクレルを超えると公表している。
今、放射性物質の広がりによって、福島県内はもとより、東日本の広域において住民は長期の低線量被曝、汚染食品による内部被曝の不安にさらされており、住民の生存権を保障するため、住民の健康管理・被曝量低減に対する対応の強化が強く求められている。
よって、次の事項を実現するよう強く要望する。

福島原発事故による住民の健康管理については、国の責任において、特例法として(仮称)原発事故被曝者援護法を制定し、被曝者健康手帳の交付及び定期通院・医療行為の無償化、社会保障などを法的に保障すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年  月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
厚生労働大臣  あ て


原子炉等規制法改正案の見直しを求める意見書(案)

政府は今年1月31日、「原子炉等規制法改正案」をはじめ原子力規制関連法を閣議決定し、今国会での成立、4月1日よりの施行を目指している。福島第一原子力発電所の大事故を受けて、新たな規制の仕組みを定めたものであるが、以下のような問題点が見受けられる。

1)これまで法律で定められていなかった原子炉の寿命を「使用前検査に合格した日から起算して40年」としたが、「20年以内の延長」を認める例外規定が最初から盛り込まれ、さらに検査合格から37年を超えている原発は、同法「施行日から起算して3年間の猶予期間」を認めているため、40年を超えても延長手続きが可能となっている。期限を区切る意味が失われるだけではなく、プラント全体の老朽化はもとより、とりわけ原子炉圧力容器の脆弱化を考慮すれば、当初の設計寿命の「30年」を期限とし、その厳格な適用が当然と考えられる。

2)福島原発事故のような過酷事故対策を事業者に義務付け、既存の原子力発電所については、常に最新の安全技術や知識を反映させるよう事業者に義務付ける(バックフィット制度)がようやく盛り込まれた。しかし、福島原発の大事故は、安全確保策の限界を露呈させた事態であった。原発の過酷事故への万全の対策は原子力からの撤退であり、その明確なビジョンの下での限定的な安全確保策に過ぎないことを明示すべきである。この義務づけによって、現在停止中の原発の運転再開が認められることになってはならない。

国においては原子力発電からの撤退の見取り図を早急に示し、必要な政策をとることを第一に求めるものである。そして、上記の「40年廃炉」の見直しの厳格化、そしてバックフィット制度を理由とした安易な運転再開を認めないことを強く要望するものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年  月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
原子力行政担当大臣  あ て


米軍再編見直しに伴う普天間基地固定化に反対する意見書(案)

今年2月8日、日米外務・防衛当局の審議官級協議において、06年に合意された「在日米軍再編ロードマップ」見直しが明記された。「パッケージ」とされてきた普天間飛行場の移設とグアム移転を切り離し、約8千名の在沖縄米海兵隊のグアム移転計画のうち、約4700名を先行移転する。一方、辺野古への移設計画は堅持し、嘉手納基地以南にある普天間以外の5施設・区域の返還も分離して先行させることが主たる内容となっている。「アジア太平洋域を最優先」とするオバマ政権の新軍事戦略のための、あくまでもアメリカの都合を優先した「見直し」に他ならない。
沖縄県民の反対の意志が強く、膠着している辺野古への移設は事実上棚上げ・先延ばしされるため、普天間基地の当面の固定化が懸念されている。事実、米側は普天間の使用継続を前提に、補修工事費の負担を日本に要求している。墜落等の事故を繰り返し、騒音や低周波の影響も懸念されている垂直離着陸輸送機MVオスプレイの普天間配備も今夏以降に迫っているところである。海兵隊グアム移転にも貴重な日本の税金が多額に費やされる上に、危険な普天間基地固定化のためにも投入されることは許されることではない。
昨年末、オバマ大統領はオーストラリアへの海兵隊2500名の常駐を発表した。海兵隊移転に伴うグアムの基地機能強化も含め、これまで喧伝されてきた在沖海兵隊の「抑止力」はすでに過去のものとなりつつある。国においては、沖縄県民の真の「負担軽減」のため、普天間固定化の理由付けとされている「辺野古移設案」の白紙撤回と普天間基地も含めた6施設・区域の早急な撤去・返還を決断し、米側との交渉に臨むよう強く求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成24年  月  日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
外務大臣   あ て
総務大臣