令和6年 第3回市原市議会定例会議 個別質問 森山かおる

1.障害者差別解消法における合理的配慮について 

障害者差別解消法は、障がいのある人への差別をなくすことで、障がいのある人もない人も共に生きる社会を作ることを目的として2016年4月に施行されました。障がいを理由とする「不当な差別的取り扱い」を禁止し、過重な負担を伴わない範囲で「合理的配慮の提供」を求めるもので、自治体には施行当初から義務づけられています。具体的には、公共施設のバリアフリー化、視覚・聴覚障がい者などへの窓口対応や相談体制など多岐にわたりますが、市の合理的配慮についての考え方は庁内でどのように共有されているのかお伺いします。


 

一番分かりやすいのがハード整備です。

例えば、いちはら歴史博物館のトイレでは、大人でもオムツ交換ができるユニバーサルベッドは設置されてはいるものの、駐車場から離れた奥にある体験館の中。設置していただいたことは有り難く思っていますが、利用者目線で考えると体験館には行かない人もいるでしょうし、駐車場に近い博物館内に設置してほしかったと思います。

現在進められている八幡駅西口複合施設や五井駅東口の開発を始め、今後新築やリニューアルされる公共施設においては、利用者目線に立って考えていただくようお願いします。

次に、 職員対応要領では、不当な差別的取扱いに当たり得る具体例として「障がいがあることを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む」とありますが、そのような扱いは研修を受けなくても分かることで、もう少し解釈を広げて考えていただきたいと思っています。

現状では、参加しやすい環境整備や呼びかけがないために参加を諦めている方もおられると思います。私も参加したい、参加できるんだと思ってもらえるような周知の在り方こそが、障がい者が求める合理的配慮です。 職員対応要領でも示されているように、障がい者が受ける制限は障がいそのものに起因するものではなく、社会における様々な障壁(バリア)と相対することによって生ずるもので、障害のない人を前提に作られた社会の作りや仕組みに原因があるという「社会モデル」を、職員の胸に落とし込めるような研修を行っていただきたいのですが、如何でしょうか。


 

 職員にとって研修が活かされるものにするためには、定期的な研修を設けることも考えられます。また、理解が浸透するような研修内容のブラッシュアップなどにも意を用いていただくようお願いします。

障害者差別解消法は2021年の改正により、今年4月1日からは民間事業者等に対しても「不当な差別的取り扱い」の禁止や「合理的配慮の提供」が義務化されました。

市のHPでは「車椅子を理由に飲食店の入店やアパートの契約を拒否する」「段差解消のためにスロープを渡す」等、具体的な事例を挙げて民間事業者に周知を促していますが、果たして周知だけで実践に結びつくでしょうか。私は市が腹を据えてリードしてほしいと思っています。

兵庫県明石市では、民間の商店や飲食店の点字メニュー作成、筆談ボードの導入、簡易スロープや手すりの設置などに対して、物品購入や工事費用を市が助成しています。商店街連合会の会長への働きかけからスタートし、開始から5年間で500件の制度利用があり、配慮するのが当然といったまちの空気が変わったことに加え、顧客が増えたという経済効果も生れています。障害者差別解消法の改正により、私たちが住むまちを暮らしやすくするために、民間事業者へ積極的に支援していただきたいのですが、見解を伺います。


 

合理的配慮は障がい者に限定したものだと捉えられがちですが、健常者も高齢になれば視力・聴力・脚力といった身体機能が低下するため、その対応は障がい者と重なります。

障がい者と高齢者を合わせた市場規模だと考えれば、合理的配慮の提供は民間事業者にとってはビジネスチャンスとも捉えられるのです。是非、その後押しをお願いします。

一方で、私は昨今、病気により気管切開を余儀なくされた方のサポートをする中で、情報収集や理解力・判断力は十分あるのに、声が出ないためにもどかしさを感じてられる場面に出合うことが度々ありました。例えば通院時にタクシーを呼ぼうと思っても、メール対応はしていない。気管切開の手術を受けた市内の基幹病院でも通院の予約変更は電話対応のみ。加入していた健康保険の手続きを行うにしても「まずはお電話ください」と通知が来る。このような対応を目の当たりにする度に、社会から見捨てられたという絶望的な気持ちに陥ってしまうのです。

このように民間事業者の合理的配慮の提供については、まだまだ課題は多く残されているため、市としては様々な障がいケースを想定して取組んでいただくようお願いします。

2.公園施設における人工芝のマイクロプラスチック流出防止対策について 

 海洋プラスチックごみは生態系を含めた海洋環境の悪化や景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業・観光への影響など様々な問題を引き起こしています。

2019年に開催されたG20大阪サミットにおいては、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染ゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提唱され、2021年5月時点で日本を含め87の国と地域で共有されています。

海洋プラスチックごみの中でも「マイクロプラスチック」と呼ばれる5mm未満の微細なプラスチックごみについては、海洋生態系への影響のみならず食物連鎖を通して人体への影響も懸念されているところです。

先月末の新聞記事によると、房総半島沖の深海には年間推定2万8千トンものマイクロプラスチックが沈んでおり、この海域には1950年代以降、56万7千トンのマイクロプラスチックが蓄積されているとの報告もありました。

 2020年度には京都大学の研究室を発祥とする、科学技術の力で環境問題に取組む(株)ピリカが、国内の川や湖、海水域120地点を調査したところ、112地点でマイクロプラスチックが採取され、その分析結果によると日本から毎年140トンものマイクロプラスチックが流出しており、そのうち20%が人工芝由来であることが特定されています。

 流出のメカニズムは、経年劣化により破断・摩耗した人工芝片や、人工芝を安定させ弾力性やすべりの抵抗性を高めるために埋められたゴムチップなどの充填材(廃棄タイヤが使われている場合もある)が、雨水とともに流れて側溝や集水マスに落ち込み、下水道や河川に流出するというものです。また、人工芝片は大気中にも舞い、吸い込むことで人体に被害が出る恐れもあります。

環境省では昨年9月、人工芝から出るマイクロプラスチック流出抑制対策について、施設管理者向けのお知らせと施設利用者向けのポスターを作成し、適切な管理や使用時の注意を促しています。

そこで伺います。市では野球場1面、サッカー場2面、フットサルコート3面、テニスコート27面に人工芝を設置していますが、施設からのマイクロプラスチック流出について、対策の現状をお伺いします

2021年に公益財団法人日本スポーツ施設協会が「人工芝グラウンドにおけるマイクロプラスチック流出抑制に関するガイドライン」を作成し、こまめな清掃や側溝・集水マスなど排水溝へのフィルター設置などの適切な管理を促しています。

自治体においては流出の実態調査を委託し、大阪府では2023年に多摩市では今年3月に流出抑制対策のためのガイドラインを作成しています。

大阪府の調査では、ロングパイル人工芝は年間1%前後の損耗、砂入り人工芝は年間2〜3%前後の損耗があることがわかり、損耗量は経過年数および使用頻度に比例することも明らかになりました。充塡材のゴムチップについては、設置後8年以上経過したグラウンドの調査で、50%程度が移動(消失)している恐れが示唆されています。

また、多摩市の調査では、人工芝設置後5年経過時点のテニスコート4面の損耗量は合計42kg、1面当り10.5kgという推計値でした。

本市では5年以上経過した人工芝施設は半数以上を占めており、これまでに流出したマイクロプラスチックは相当な量だと推測できます。

曲がりなりにもSDGs未来都市を標榜する本市が、この問題に目を伏せる訳にはいかないはずです。 本市でも実態調査を行ってガイドラインを作成するなど、マイクロプラスチック流出防止対策の強化が必要だと考えますが、見解を伺います。


側溝や集水マスなど排水溝へのフィルター設置、大気中に舞うマイクロプラスチックの飛散を抑制する防護ネットは、工事を必要とせずできるもので、早急な対応をお願いします。

人工芝を設置した施設のうち、前回の張り替えから20年近く経過している施設もあります。臨海球場の外野は25年、八幡球技場は19年、御影台テニスコート2面は29年経過しており、これら施設の張り替え時期も間近に迫ってきていると推測いたします。

人工芝はテニスコート1面で約20トン、サッカーグラウンド1面で約300トンにも及ぶため、張り替えに際してはできるだけ産業廃棄物を生み出さないためにリサイクルできるもの、或いはもっと踏み込んでプラスチック製品を使用しないということを考える必要があると思っています。

欧州ではマイクロプラスチックの販売や、マイクロプラスチックが意図的に添加され、使用時にマイクロプラスチックを放出する製品の販売を禁止する規則が採択され、8年後には販売が禁止される見込みです。アメリカではボストン市やカリフォルニア州で、都市公園のみならず住宅地において人工芝の設置を禁止する規制や法案が採択されました。

このような状況下で外国企業では100%リサイクル可能な人工芝や、天然ヤシやココナッツを用いた天然素材の充塡材の開発が進んでおり、国内企業でもサトウキビ由来のバイオポリエチレンを主素材とした人工芝や、茶殻・やしがら等を配合した天然素材の充塡材が開発されています。そこで、今後、人工芝の張り替えの際には、リサイクルが可能な製品を選定する、或いは維持費用がかかっても環境負荷を勘案してマイクロプラスチックを生み出さない天然芝や充塡材の選定を検討して然るべきだと考えますが、見解を伺います。


私たちが生活の利便性の追求から、プラスチック製品を大量生産・大量消費してきた結果、環境に悪影響を及ぼす原因を作ってきました。その行動を見直さなければ更なる環境破壊を招くことになります。環境を守るための取組みには例え費用が係るとしても、SDGs未来都市として、覚悟をもって取組んでいただくよう要望します。