平成23年度9月定例県議会意見書

発送電分離と送電の国有化を求める意見書(案)

3.11東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の大事故を契機に、わが国の電力供給体制に対する根本的見直しの機運が高まっている。
1951年に発電・送電・配電を一貫して電力会社が担う体制が確立して以来、90年代末から今世紀初めにかけて電力自由化が議論され、2000年に電気事業法の改正をみたが、ごく部分的に自由化がみとめられたのみである。自治体等での電気代節約で注目を浴びている特定規模電気事業者(PPS)であっても、電力会社に支払う送電線使用料が諸外国に比べて極端に高いため、全電力供給の1%強、自由化領域での1%強を占めるのみである。
しかし、今回の震災と原発事故で、地震に対する原発のリスクの大きさはもちろんのこと、巨大発電設備とりわけ原発を優先し、それに依存した電力供給のもろさも明らかとなった。これまでの電力料金の低減化のみに終始した議論ではなく、将来にわたる安全性と持続可能性を実現する電源供給体制の再構築は喫緊の課題となっている。
太陽光、風力、バイオマスなどの自然エネルギーの小規模電力を地域の特性に合わせてスマートグリッドでネットワークさせる分散型システムは、災害への対応としてもベターな選択であり、これまでの電力供給能力拡充の根拠とされた夏期ピーク時の最大電力消費量の抑制にもなる。さらに、地域の活性化、地球温暖化対策への効果も期待される。
自然エネルギーやスマートグリッド分野でのわが国の技術水準の高さは、世界的にも認められているところである。しかし、これまでの発送電一貫体制ではその技術力の活用も不十分なものにとどまっていた。自然エネルギーを普及させつつ、電力の安定供給を維持するためには、送電を切り離し、送電の公共性を重視した国有化を行うことで、発電事業に自然エネルギーを主軸にした新規参入を促す必要がある。安全と持続可能性を第一とした電気エネルギー供給の新たな制度設計を強く求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成23年 月 日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
経済産業大臣 あ て


再生可能エネルギー買取法の実効性を確保することを求める意見書(案)

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(「再生可能エネルギー買取法」)が、8月26日参議院本会議で全会一致で可決・成立した。福島第一原発の大事故により、原発に過剰に依存したエネルギー政策の見直しは国民的合意になりつつある。エネルギー利用・政策を持続可能なものへと大きく転換していくために、再生可能エネルギーを普及・拡大させる同法の成立は重要な里程標となることが期待される。
買取価格を「電源種・規模ごとによる設定」としたことで、地域ごとの適切なエネルギーの選択や促進が可能となった。その決定については第三者的な「調達価格等算定委員会」の設置と国会や他省庁の関与が定められるなど、評価される点も多い。しかし、電気料金への転嫁額(=賦課金)を1Kw/時あたり0.5円以内に収める事実上の上限が設定されることが予定されており、買い取り価格を安くするか、買い取る量を抑えることが必定となる。それでは再生エネルギー事業へのインセンティヴを大きく削ぐ結果となり、現在約2.9%に過ぎない再生エネルギーの大幅な普及にとってマイナスとなろう。軽減対象となる産業の具体的な線引きや軽減幅等重要な問題について政省令に委ねるものが多いなど、実効性については大いに危惧される。従って、来年7月の施行までに、再生可能エネルギー買取法の実効性を確保するために次の事項を求めるものである。

1 「脱原発」の実現にむけた再生可能エネルギーの導入目標を明示すること。
2 賦課金上限の設定によって効果を限定しないよう、投資回収が見込める適切な買取価格と期間を設定すること。
3 電力大量使用の産業向けの負担軽減措置により、制度効果が限定されないように慎重に対応すること。
4 買取義務や優先接続義務に関する例外規定により、制度の実効性が減ずることのないよう運用を指導すること。
5 再生可能エネルギーを導入しやすくするため諸制度を国の責任で早急かつ慎重に整えること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成23年 月 日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
経済産業大臣 あて


「除染特措法」を住民の健康を第一義としたものに見直すことを求める意見書(案)

8月26日、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下「除染特措法」)が成立した。特に線量の高い「除染特別地域」の除染は国が直轄で行い、それに準ずる「汚染状況重点調査地域」は、自治体が除染の主体となる等の役割分担を定め、除染に関わる費用は東京電力が負担することを明記するなどの踏み込んだ内容は一定の評価に値する。
しかしながら、完全施行が予定される来年1月を前に、住民の被曝低減という基本目的と除染の実効性において課題が多い。
まず、同法成立直後の8月27日に、放射能汚染された焼却灰を一般の最終処分場に埋め立て処分するための基準値が6月の暫定基準値8000ベクレル/Kgから一気に10万ベクレル/Kgまで引き上げられ、さらにそれ以上であっても埋設を認める方向となっていることである。被災現地である福島県をはじめとした東北各地のみならず、本県においてもきわめて高濃度の汚染が認められる焼却灰、汚泥が発生している。今後除染特措法に基づく除染作業にともない、全国各地に汚染土壌等の移動と高濃度汚染焼却灰等の発生が見込まれる。放射能の拡散と各地住民の二次、三次被曝を防止するために、焼却や埋設の規制値を根本的に見直すべきである。
また、9月27日、環境省は除染を必要とする地域を追加被曝量年5ミリシーベルト以上と位置づけた。「5ミリシーベルト以下なら、時間経過による減量や風雨による拡散で、政府目標の追加被ばく量の年間1ミリシーベルト以下になる」との安易な説明は、事故後半年以上汚染地域での生活を余儀なくされている住民に、今後さらなる被曝を強制することに他ならない。最低であっても内部被曝も含め追加被曝1ミリシーベルト/年以内にとどめることを目標にすべきである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成23年 月 日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
環境大臣 あて


八ッ場ダム事業の検証作業の抜本的なやり直しを求める意見書(案)

2009年政権交代後、前原元国交大臣の八ッ場ダム中止宣言を受け、国土交通省関東地方整備局はダム事業の検証作業を行い、今年9月13日「八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」において、利水及び治水面等で最も適した対策案であるとの検討結果を発表した。しかし、ダムの推進主体である国交省自らが検証主体であることから、「予断なき検証」とは到底なりえず、ダム事業存続のためのアリバイづくりの作業となっていることは、当初から指摘されてきた。科学的・客観的な検証が行われないままに出された検証結果を受け、関係1都5県知事はダム本体の早期着工を求めるなどダム推進の立場を改めて表明した。しかしながら、現地の鉄道及び県道・国道などの付帯工事はぜい弱な地質の問題から進捗が大幅に遅れ、川原湯新駅の用地買収の見通しも立っていない。また、水没予定の温泉街の地元住民等が移り住む代替地の造成についても、30メートルの超高盛土工事が難航している。地滑り多発地帯のダム湖周辺の危険性についても多くの地質学者から指摘されており、東日本大震災を経験した今、現地調査を踏まえての本格的な再検証が求められている。
今回の「検証」については、利水面では各利水予定者の参画予定水量をそのまま認め、富士川から導水するなど荒唐無稽な代替案と比較するなど「茶番劇」ともいえる内容である。治水面でも、八ッ場ダムの治水効果についての科学的な検証はされず、その効果を従前の数字より格段に大きくして八ッ場ダムに代わる治水対策費の費用が膨れ上がるようになっている。また、森林の生長による保水力の向上は無視され、実績流量とかけ離れた目標流量が設定されており、八ッ場ダム推進ありきの結論を導き出すための検証作業となっている。
このような欠陥だらけの「検証」によって、八ッ場ダム建設にゴーサインが出されることはあってはならない。以上のことから、政府において以下の項目に沿って検証作業の抜本的な見直しがはかられるよう強く要望する。

1 各利水予定者の過大な水需要予測と保有水源の過小評価を是正し、八ッ場ダム事業への参画の必要性の有無を厳しく検証すること。
2 暫定水利権を安定水利権に変えるため、現行の不合理な水利権許可制度の改善策を示すこと。
3 利根川における八ッ場ダムの治水効果を科学的に再検証すること。
4 森林の保水効果を正当に評価し、実績流量とかけ離れた過大な目標流量を是正すること。
5 八ッ場ダムができた場合に憂慮される代替地の安全性、地滑り等の災害誘発の危険性について、現地調査を踏まえた本格的な検証を行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成23年10月 日

千葉県議会議長

内閣総理大臣
国土交通大臣 あて