平成23年12月定例県議会意見書
労働者派遣法改正案の修正に反対し、雇用環境の抜本的改善を 求める意見書(案)
報道によると、政府・民主党は、昨年の通常国会に提出されて以来、1年半余りに及び継続審議の状態に置かれている「労働者派遣法改正案」を大幅に修正し、今回の臨時国会での成立を目指しているとのことである。
1985年の「労働者派遣法」成立以後、1999年の「派遣労働の原則自由化」そして2003年の製造業への拡大によって、まずは若年層に、そして全労働年齢層に不安定な「派遣労働」の形態が拡大していった。2008年秋のリーマン・ショックの際の「派遣切り」の横行で、仕事どころか住居をも失う大量の失業者を生み出し、「年越し派遣村」の出現など、「派遣」という働かせられ方が社会的大問題となったことは記憶に新しい。
2009年の「政権交代」により政権の座についた民主・社民・国民新党の三党合意で「労働者を保護する方向」での労働者派遣法の改正案が策定されたことは当然である。しかし、今回の大幅修正によって、法案の最重要の柱である「製造業派遣」と「登録型派遣」の原則禁止が削除されることをはじめ、「みなし雇用」規定の3年先送りなど大幅に後退した内容となる。これでは不安定な雇用環境の現状を追認するだけになりかねない。
本年6月現在、派遣労働者は全国で約122万人、そのうち製造業が約9万人、登録型が約20万人とされている。現行案が成立するならば、約30万人近い派遣労働者が保護の対象となるはずであり、それは不安定雇用全体の労働環境改善の大きな一里塚となることが期待されていたのである。
東日本大震災による社会の混乱の中で、首切りをはじめ最初に雇用上の犠牲者となったのは派遣労働者たちであった。復興のための財源を議論するのであれば、まずは国民全体の雇用と就業を安定させることによって、中長期的な税収の確保が進められなければならないはずである。
政府においては、労働者派遣法の大幅改悪を取りやめ、まずは現行案のままでの成立を目指し、雇用環境全体の抜本的改善に取り組むべきことを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年 月 日
千葉県議会議長
内閣総理大臣
経済産業大臣 あて
「社会保障と税の共通番号制」の拙速な導入に反対する意見書(案)
政府は6月30日、「社会保障・税番号大綱」を公表した。それによると、2015年1月以降に国民一人一人に、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野での共通番号(マイナンバー)を割り振り、可能な分野から利用を開始するとしている。
本制度の特徴として、「主として給付のための番号としての制度設計」があげられ、「医療・介護等サービスの質の向上」「事務・手続きの簡素化」「災害時での活用」などのメリットがうたわれてはいる。
しかしながら、当初導入費用として6000億円が見込まれ、さらにシステムのメンテナンス・ランニングコストも含め多額の税投入が予想されている。また「住基ネット」導入の際にもみられた多大の手間を行政に押しつけて、それに見合うだけの効果が本当にあるのか、「大綱」においても明確にはされていない。そもそも、本制度もその一環である「税と社会保障の一体改革」の議論において、これまでの社会保障費削減の見直しが根本的に行われていない。いくら正確な「本人特定」がなされても、社会保障給付のあり様が明らかにならなければ、給付の改善は不可能である。
また、共通番号は様々な情報と「連携」するものとして、個人情報の検索・集積の可能性を高めるものである。また各人への「付番」に関しては「目で見て確認できる番号であること」として、ICカードの所持・提示が求められることとなり、個人情報の流出と悪用の危険性は飛躍的に高まることも懸念される。「大綱」に「既に諸外国の多くで導入されているものである」としてあげられている他国の導入例をみても、「なりすまし犯罪」の多発をはじめとして決してメリットのみではないこと、また制度運用の具体面における我が国のそれとの大きな差異も多々認められる。
共通番号制による費用対効果、メリットとデメリットの検討や国民への情報提供が不十分な状況で、制度導入を急ぐべきではない。
今後、共通番号制が不可欠であるのかどうかの議論を深め、慎重な判断を求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年 月 日
千葉県議会議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
財務大臣
経済産業大臣 あて
拙速なTPP協議参加に反対し、慎重な議論を求める意見書(案)
11月11日、野田首相は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加に向けて関係国と協議に入るとの方針を表明した。 すでに農業をはじめ各界から懸念・反対の声が上がり、本県も含め多くの県議会・市町村議会において反対の意見書が採択されているように、TPP参加は、農林水産分野のみならず、国民生活のあらゆる分野に大きな影響を及ぼす懸念がある。
さらに、正式に交渉参加した後の脱退はきわめて困難であるとされる点、外国企業の利益が国内法よりも優先される「ISD条項」の問題なども夙に指摘されているところである。
さらに24もの分野にわたる交渉内容そのものについては、ほとんど情報提供がなされていない。とりわけ、12月2日、アメリカ通商代表部のカトラー代表補 が強調したように、「非関税障壁」の撤廃が議論の焦点となることが確実視されている。食品の安全、雇用・労働環境、医療・健康、さらには安全保障の局面までがTPPの影響を被る危険性があると予測されているが、その詳細な予測については国民は何一つ知らされていない状況である。
すでに米韓はじめアメリカ主導の様々なFTA(自由貿易協定)において、失業者の増大、遺伝子組み換え表示の撤廃など参加国の国民生活への悪影響は多々報告されている。
政府においては、拙速に交渉参加することなく、主権者である国民への情報公開を徹底し、TPP参加の是非を国会内外で慎重に議論することを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年 月 日
千葉県議会議長
内閣総理大臣
経済産業大臣
農林水産大臣