平成25年度 第1回市原市議会定例会

【個別質問】 小沢 みか 3月7日(木)

1. 平成25年度当初予算案について

1)予算編成の基本的な考え方について

25年度予算案の選択と集中政策

先行き不透明で大変厳しい状況の中で編成された平成25年度予算案だが、「より質の高いきめ細かな行政サービスの提供」と「規律ある財政運営の推進」を両立させるために、「選択と集中」の徹底を図ったとしています。
平成25年度は何を選択し、何に集中して取り組むかと言えば、開会初日の冒頭佐久間市長があいさつの中で述べられました。1点目は「防災体制の整備」としての市役所本庁舎耐震対策、2点目は「南市原の活性化」としての中房総国際芸術祭いちはらアートミックスの開催、3点目は「教育の質の向上」としての幼児期から中学校までの連携体制の整備。 以上3点が中心になるであろうと思われます。

そのための財源確保策として、新たな財源の創出や受益者負担の適正化による歳入の確保、行政改革の着実な実行、行政経営経費の一般財源配分額の一律3%削減などが示されました。

しかし、これら以外の財源確保策としては、選択して集中的に取り組む施策がある一方で、その分見直しあるいは圧縮を余儀なくされる政策分野も当然あると思われます。
この点はなかなかはっきりと表に出てこないところで、市民にも大変わかりづらい。そこで、改めてその点についての方針をお聞かせください。

答弁要旨 財政部長
平成25年度予算編成にあたりましては、事務事業全般について、緊急性や必要性、費用対効果、進捗状況等のあらゆる観点から検討し、25年度における成果達成を中心として、「選択と集中」の徹底により、重点施策の推進に努めたところであります。
その一方、市民満足度の向上や成果指標の達成などに留意しながら、創意工夫により事業の実施方法を変更したもの、見直しや廃止をしたものもございます。
具体例をあげますと、職員給与の適正化の推進による人件費の減、事業効果の再検証による負担金・補助金の見直し、LEDに代表される省エネ家電への切り替えによる電気料の削減など、行政改革の視点を踏まえた予算編成を行ったところであります。
今後も、事務事業の見直しを図り、効率的な財政運営に努めてまいります。

「あれかこれか」の時代へ

例えば、来年度が計画の最終年度となる「勇輝いちはら」の計画事業の予算化率を見ると、「資源循環型都市の構築」30.1%、「良好な就労環境の整備」22.2%、「効率的・効果的な行財政運営」39.9%。この数値が取り組み状況の全てとは言えませんが、一面を表しているともとれます。
人口減少時代へ突入し、右肩上がりの税収を見込めない時代にあって、今や自治体は「あれもこれも」の政策から「あれかこれか」の政策への転換を余儀なくされていると言われています。官民連携、協働のまちづくりの実現のためには、今後はこうした政策の優先順位を包み隠さず市民へ示すことで、理解と信頼を得ることが求められるのではないでしょうか。

2)事務事業の見直しについて

・扶助費の見直しについて

予算案の概要に示された2点のうち、ここでは特別支援教育就学奨励費について伺います。
これは、事前に伺ったところによると、学区外の特別支援学級への通学費、これを廃止するということであるが、この見直しの理由をお聞かせください。

答弁要旨 学校教育部長
かつては、特別支援学級は、小中学校すべてに設置されておらず各地区に拠点校として設置されており、学区外での通学を余儀なくされていたため、そこに通学する児童生徒に特別支援教育就学奨励費の中から遠距離通学費が給付されておりました。
しかしながら、現在は、どの小中学校でも特別支援学級が開設できることとなり、すべての児童生徒が学区の特別支援学級で学ぶことができるようになったことから、今回、遠距離通学費の補助金を見直しすることといたしました。

届け出制になって、希望すれば必ず学区内に設置できるようになったということは確かにとても大きいことで、大変うれしく思います。
しかし、学区内に特別支援学級があっても、学区外を選ぶ保護者がいるのはなぜか。保護者の気持ちを、ぜひ汲みとっていただきたいです。
特別支援学級の教育の質の格差は昔も今も非常に大きく、そのことが保護者や子供を翻弄しています。また、クラス内で様々な障害特性を持った子供がいるため、不安定になったり学校に行けなくなったりする子どもも珍しくありません。それらの理由で泣く泣く遠い学校を選んでいるのです。
当局にはまず、どんな子でも安心して地元の学校に通うことができるような教育環境を用意すること、それができない間は、就学奨励費を保証していただくよう、要望します。

3)庁舎の耐震対策について

市役所本庁舎耐震対策については、1月の総合計画審議会でほぼ市側の意向に沿った内容の答申が出され、佐久間市長は、現在の敷地に防災棟を増築し、当面使用する現庁舎は耐震補強すること、旧住友ビルに庁舎機能の一部を移転することを表明されました。
この方針はそもそも、「いつ大きな地震が来るかわからない、もし明日起きたら」という一刻も猶予のならない状況を前提に緊急対策を先行させたものであるので、私もその原則に立ち返って、近々大地震が起きるという仮定で質問します。

不均衡な危機管理意識

震災から今日まですでに丸2年経過したが、これまで議会で指摘があったように、市は防災訓練の見直しなどのソフト面以外に、地震の揺れに対して今できる減災対策を、庁内の統制のもとで積極的に行った様子がありません。
また、平成24年度予算に計上されていた消防庁舎の耐震改修事業関連費が25年度は全く計上されておらず、現在改修事業は足踏み状態となっています。これは、これまでの質問でもあったように、消防局本部を防災棟に移し、一体的な危機管理機能を持たせるという可能性もあることから、これについては一定の理解をします。

しかし、緊急対策の名のもとに防災棟増築を急いでいるのに、一方では、すぐにでもできる減災対策は取られていません。災害対応の要とも言える消防局の機能確保もできていません。災害対策本部に至っては、昨日危機管理官は、「防災棟の建設まで待つ」と答弁されました。
どうものんびりしているというか、つじつまが合わないというか、これでは、急ぎたいというのは名ばかりで、やはり防災棟というハコモノ建築ありきなのかという印象を、市民に持たれても当然である。この点に関して、どうお考えでしょうか。

答弁要旨 総務部長
我々としても、大震災後、避難訓練、そして先日の災害対策本部設置訓練と、出来ることをやろうということで努力はしているところであります。その評価につきましては、色々なご意見があり、只今、いただいたような評価もあろうかと思います。
しかしながら、我々の基本的なスタンスとしましては、現在、出来ることは一生懸命やる、そして、出来ない部分、つまり現在の本庁舎では耐震性に劣っているということから、万全の対応が困難であると考えられますので、それについての対応は合わせて行なう。つまりそれぞれ切り離した形ではなくて双方ともに重要な対応であると、そのように考えて対応してまいりたいと考えております。

そもそも、何が優先されるか

そもそも市は、大地震が近々起きるとしたとき、防災棟の増築、現庁舎の減災、旧住友ビルへの機能移転のうち、何を最優先とするのか。お聞かせください。

答弁要旨 企画部長
ご質問の「防災棟増築」、「現庁舎の上層階不使用」、「旧住友ビルへの移転」のうち、旧住友ビルの再生につきましては、民間事業者のノウハウを活用した利活用を検討しているところでありますけれども、「防災棟増築」、「現庁舎の上層階不使用」と合わせて、緊急対策として、早急な対応に努めてまいりたいと考えております。
優先するということなんですが、これについては、市民の安全・安心の実現のため、防災の拠点をしっかりと整備することが、もっとも重要であると考えております。

今までのご説明や答弁を伺うと、市は防災棟の増築をしたいのか、五井駅西口を活性化したいのか、視点が緊急対策からどんどんずれてきているように思えて仕方ありません。
緊急対策という観点で考えると、まずは倒壊する恐れのある現庁舎からの市民や職員の人命確保。そのために、二重投資にならないよう配慮しつつそのレベルまでの耐震補強を行う。まずはここが出発点だと思います。そう考えれば、庁舎に残る職員の人数と配置くらいは、とっくに予測できているはずです。

ところが、当初示された4つの案では、少なくともイメージ図や概算事業費は示されていたのに、防災棟案になったとたん、それすらもすっかり見えなくなってしまった。これまでの本会議の様々な質問に対しても、明確なご答弁はついに聞かれませんでした。頭の中に描く防災棟のカタチが、ここにいる議員も、市民も、みなそれぞれ全く違うものを思い描いている状態です。

市民への情報提供

市は、基本計画策定にあたり、途中経過を含め、今後どのように議会や市民に対し説明していくのか。そして計画はいつまでに作るのか。ご答弁ください。

答弁要旨 企画部長 
当然、防災棟増築の基本計画につきましては、市民を代表する議会のご意見をうかがいながら策定していくものと考えておりますけれども、市民への情報提供につきましては、適宜、ホームページあるいは広報いちはら等を通じて行ってまいりたいと考えております

見えないから批判もでるし、曖昧だから疑いたくなる。そういうものだと思います。
先日の特別委員会では、旧住友ビルの利活用計画について、様々な可能性を含めた中間報告がなされました。わかりやすい資料を出していただいたので、私も市民への説明に活用していますが、理解を得るのに非常に役立っていると実感しています。
今後もぜひ必要な情報を適切に提供していただきたい。そして、防災棟が単なるハコモノとしての防災拠点ではなく、市民の防災意識の拠点であり安心安全の象徴となるように、市民を巻き込んでいただくよう強く要望します。
また、忘れてはならないのは、防災棟も庁舎の一部であるということです。二重投資にならないように、将来のあるべき庁舎の姿も視野に入れながら取り組んでいただくよう重ねて要望します。
質問項目へ戻る

2. 障害者の勤労支援について

1) チャレンジ雇用について

チャレンジ雇用、市原市では

チャレンジ雇用とは、身体障害者に比べてなかなか雇用の進まない知的障害者や精神障害者を、市自らが非常勤職員として1~3年間雇用し、その後一般就労へとつなげる事業です。
市原市は、県内他自治体の中でも早くからこの事業に取り組んでおり、平成23年12月から知的障害者2名と就労支援員1名を雇用しています。

そこでまず、勤務時間や給与・業務内容などの具体的な事業の中身と、事業開始後一年以上経過した現在の評価や課題をお聞かせください。

答弁要旨 保健福祉部長
はじめに、勤務時間でございますが、月曜日から金曜日の週5日で、午前9時半から午後4時までとなっており、給与は、時給800円、月額にしますと約9万円でございます。
具体的な業務内容といたしましては、郵便物の仕分け、文書・資料整理、データ入力、文書発送準備など、庁内10課からの業務依頼があったところでございます。
次に、チャレンジ雇用の当事者の評価でございますが、事業開始から現在まで、4名を雇用しております。発注課からは、一生懸命な勤務態度とともに、業務の処理状況についても、一定の評価を得ているところでございます。なお、今回1名が、民間企業での「実習」を行なう予定となっておりますので、チャレンジ雇用の経験を活かして、一般就労に繋げることができればと期待しているところでございます。
そして、業務の選定方法及び課題についてでございますが、業務の選定につきましては、全庁的に業務の抽出を依頼し、担当課と協議を行い、進めているところです。
現状の課題といたしましては、継続して長期間に渡る業務の確保、これが難しい面もありますが、チャレンジ雇用従事者の能力などについて周知しながら、業務の拡大を図り、一般就労に向けて支援してまいりたいと考えております。

まず、時給800円で月給は約9万円ということですが、一般就労以外の福祉的就労のいわゆる「工賃」の平均月額がせいぜい15000円前後といわれている中、これだけの賃金を得て一般社会で働いたという経験は、次の就労の場への意欲に大きくつながることと思われます。当局の取り組みを大変評価しています。

・千葉県「チャレンジドオフィス千葉」

また、障害者雇用は決して本人のためだけではなく、雇用側にとっても大きなメリットをもたらすことは、実際に雇用をしている多くの事業者から報告されていることです。
千葉県がH18年にまとめた研究レポートでも、「縦割りではなく、県庁内各部局等が横断的に情報を共有し連携することで、単独の部署ではわずかな業務量でも、まとめることでより効率的に処理することが可能になり、多くの業務が抽出できた」と報告されています。
市原市でも、障害者とともに働くという認識をぜひもっと庁内全体で共有して、積極的に業務の切り出しを行うことで、双方にとっての職場環境の改善につなげていただきたいと思います。

・チャレンジ雇用の意義
また、行政自らが障害者を雇用するということにはまた別の大きな意義があります。
先ほどの県のレポートでも、障害のある人に対し当初は漠然とした違和感をもっていた県職員が、共に働くことで意識が変わったことが県庁全体にとっても大きな財産となりました、と報告されています。
障害者雇用によって蓄積されたノウハウを用いて、障害者を含めた市民へのサービス向上に直接生かすことができるということ、また、現場の情報を市民や事業者に積極的に発信することで、障害者雇用の理解と推進が図られること、とメリットは思った以上に大きいです。
当局には、HPなどのツールを生かして、庁内外にチャレンジ雇用の取り組みをもっと積極的にアピールしていただくよう要望します。

2) 障害者雇用の支援施策について

次は、チャレンジ雇用以外の「福祉から就労へ」の流れを推進するための取り組みについて伺います。法定雇用率の引き上げから雇用意欲の喚起へ
障害者雇用促進法で定められている障害者の雇用率が平成25年4月1日より引き上げられ、民間企業が1.8%から2.0%へ、国や地方公共団体が2.1%から2.3%へ、教育委員会が2.0%から2.2%へとなります。
国の一連の取り組みの強化によって、近年の障害者の就労状況は上向きの傾向にあると言われていますが、民間企業となるとやはり厳しい状況で、全国的にみると法定雇用率1.8%に対し実雇用率は1.65%で、達成企業の割合は約45%と半分も満たしていません。特に、従業員数が300人未満の中小企業の多くは障害者を雇用していません。
そこでお伺いします。市原市では、障害者を積極的に雇用するよう民間企業にインセンティブを持たせるような独自策がありますでしょうか。

答弁要旨 保健福祉部長
市では、障がい者福祉に係る関係機関で構成された障がい者自立支援協議会を設置しており、就労支援につきましては、ハローワークや企業、障がい者福祉団体等で構成された「就労支援ネットワーク」による連携の強化や、情報の共有により、障がい者雇用の拡大に努めております。

市内には、雇用義務がなくても、奨励金がなくても、障害者を雇用して社会貢献している小規模の事業主がいくつも存在します。
また、全国的にも珍しい新しい農業ビジネスモデルを用いて障害者雇用を展開している企業もあります。市原市の雇用のポテンシャルは考えている以上に大きいです。
障害者の職場は、大企業よりもむしろ住まいに近い地域に密着した家庭的な環境の方が適していると感じています。小さくても頑張っている地域の事業主、障害者雇用に積極的な地域の企業を何らかの形で応援する仕組みを作っていただきたくよう要望します。

障害者優先調達推進法

そこで次の質問だが、H25年4月から「障害者優先調達推進法」がスタートします。
この法律で、市は、物品等を優先的に障害者就労施設等から調達するよう努めること、毎年度その調達方針を作成するとともに当該年度の終了後に実績を公表すること、公契約については、競争参加資格を定めるに当たって法定障害者雇用率を満たしている事業者に配慮すること、などが示されています。
これに関して、市はどのように取り組まれるか、今後の方針をお聞かせください。

答弁要旨 保健福祉部長
現在、国では物品等の調達の推進に関する基本方針の策定の準備を進めているとのことでございますので、今後の対応につきましては、国の動向等を注視しながら、関係部署と協議してまいります。

小型家電リサイクル法

ここで提案があります。
「小型家電リサイクル法」という法律がやはり平成25年4月にスタートします。これまでその多くが廃棄されていた小型家電から貴重な金属を取り出し再資源化を進めるもので、第五条により市は使用済小型電子機器等を分別して収集し、認定再生事業者に引き渡すよう努めることと定められています。

そこで神奈川県では、「環境と福祉のクロスファンクション(かながわモデル)」と銘打ち、伊勢原市が県内第1号のモデル事業として、回収と再生の間に福祉事業所を介在させる取り組みを始めています。
家庭から出る対象機器を福祉作業所に搬入し、障害者が綺麗に分解・分別してリサイクル業者に売却、という仕組みです。
伊勢原市では、市役所や公民館にも回収ボックスを設置し、福祉を融合させた都市鉱山リサイクルの取り組みを市民にアピールしています。
市原市でもこのような取り組みをぜひ検討していただきたいが、いかがでしょうか。

答弁要旨 環境部長
「市原市一般廃棄物処理基本計画」に基づきまして、今、実施に向けた検討を進めて考えているところであります。
この中で、モデル事業として先行して取り組んでいる自治体等の実例を参考としながら、障がい者の就労機会創出の可能性も含め、関係部署と連携し、検討してまいりたいと考えております。

体・分別作業は普通なら根を上げる非常に根気のいる作業ですが、逆に知的障害者、特に自閉症の方にはとても適していて、特別支援学校つるまい風の丘分校でも実習に取り入れており、近年様々な福祉事業所の間に取り組みが広がっています。
手作業の分別によって、より高純度の資源としてリサイクル業者に引き渡すことができ、福祉事業所側は自主生産事業のほかに安定した収入源を得られ、そして何より障害者自身が資源循環の重要な担い手となる素晴らしい取り組みです。
障害者優先調達推進法、小型家電リサイクル法 この二つの法律を契機に、障害者の社会参加を進める具体的な取り組みを始めるよう、要望します。

3. 学齢期の子どもの貧困について

・子供の貧困から貧困の連鎖へ

H22年の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子どもの貧困率は15.7%。この値はほぼ毎年上昇を続けており、今や6~7人に一人の子どもが経済的に困窮していると言われています。また、生活保護世帯の子どもは、生涯獲得賃金が中卒で2000万円、高卒では4000万円とも言われています。
子どもの貧困の放置は、未来の生活保護世帯の増大につながるという観点から、今回、子供の貧困、特に教育現場における対策について質問します。

・就学援助 市原市の現状

学校教育法第19条は「経済的理由によって,就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては,市町村は,必要な援助を与えなければならない」と定めています。これがいわゆる就学援助と言われる制度です。
就学援助の対象となるのは、生活保護を受けている家庭の子どもあるいは保護基準内の家庭の子どもを対象とする要保護者と、それに準じる程度に生活が困窮していると市の教育委員会が認める準要保護者の二通りがあります。

市原市の要保護者はH24年12月時点で261人、全児童生徒数に占める割合は約1.2%。一方、準用保護者はH24年12月時点で2,427人。全児童生徒数に占める割合は11.0%。
両方を合わせると、就学援助を受けている子供は12.2%。35人学級一クラスでおよそ4人の子どもが教育費の援助を受けています。

・財源と認定基準の自治体間格差

現在、要保護者に対しては国の補助金が当てられていますが、準要保護者に関しては、法改正により、H18年度から税源が特定財源から一般財源へ移譲され、市の単独負担となりました。
受給認定基準も各市町村の裁量に任されていることから、就学援助制度は自治体間でかなり格差が見受けられます。そもそも、就学援助の認定率は、自治体ごとに数%から40%近くまでと大きな開きがありますが、これは貧困層が多い地域ほど認定率が高いのではなく、自治体の取り組みの差によるものであるといわれています。

・保護者への周知など、制度利用の利便性は

そこでまず、市原市では、この制度が必要とされるすべての家庭に適切に利用されているか、という観点から質問します。
小中学生の保護者に対するこの制度の周知の方法を事前に伺ったところ、子どもを通じて全ての家庭へ年1回案内書を配布し、市のHPにも掲載しているということでありましたが、その他にこの制度を必要としている家庭が漏れなく申請できるような配慮は何かされていますか。

答弁要旨 学校教育部長
現在、教育委員会では、就学援助の申請方法等をお知らせするためのパンフレットを、各学校を通じて全ての家庭に配付しておるところです。
また、日本語をよく分からない方々のために、パンフレットにひらがなのルビを付けたり、申請手続きをわかりやすくするために家族構成の記入例を添付したり、更に、電話での就学相談窓口を設置したりするなど、就学援助の相談や申請がよりし易くなるよう工夫しておるところです。
今後も、申請書類の提出先を学校外に広げるなど、就学援助を必要とする家庭が、もれなく申請できるよう、その環境づくりに努めてまいります。

他の自治体では、数か国の外国語の案内書を用意していたり、希望調査票を全家庭に配布して希望の有無を全員必ず提出してもらうことにより、漏れなく確認しているところもあります。
市原市でも、このようなきめ細かな対策とっていただいて、保護者への周知と制度利用の利便性の向上を図るよう、要望します。

・市原市の準要保護者認定の問題

 次に、認定基準に関して質問する。
市原市では、今年度になって、申請したが認められなかった子ども、つまり否決者数が突出して増えました。近年は十数名から三十数名の間を推移しており、因みに前年は18人であったが、今年度は101人が否決されています。 市原市では教育委員会が独自に定めた就学援助実施事務取扱要領により、認定の世帯所得基準を国の基準を参酌して生活保護の1.3倍未満の者と定めています。
しかし、今年度から市原市就学援助実施要項、並びに事務取扱要領を改定し、今まで準要保護者の該当要件に含まれていた児童扶養手当の受給者等が外されました。否決者の急激な増加はこのためであると伺っています。
なぜこのような制度改正を行ったのでしょうか。

答弁要旨 学校教育部長
改正の理由といたしましては、申請手続きの簡略化を図り、申請を容易にすること、また受給者の所得の均衡を図ることで、より適正な扶助を目指すためのものであります。

結果的に50人の子どもが、これまで受けてきた援助を受けられなくなったと伺っています。さらに、これまで実費で全額支給されていた修学旅行費も、市の来年度の予算案で見直され、国の補助額に相当する限度額に抑えられています。
市の財政がひっ迫する中、そのしわ寄せは、声を挙げられない立場の弱い子どもに向けられています。これは、子育て一番を掲げる市の基本理念に完全に反しているのではないでしょうか。

・生活扶助基準の見直しによる影響

そして、さらに追い打ちをかけるように、政府の来年度予算案で、今年の8月から生活扶助基準額を引き下げることが決定されました。それに伴って先月19日、厚生労働省から「生活扶助基準の見直しに伴い他制度に生じる影響について」という資料が公表されました。
それによると、「25年度当初に要保護者として就学支援を受けていた者で、引き続き、特に困窮していると市町村が認めた世帯については、生活保護基準の見直しによる影響を受けないよう、要保護者としての国庫補助申請を認める取扱いとする。」とあります。

 ここで当局に確認したいのですが、この政府の方針を受け、今後市原市の要保護者への影響はどうなるのか、お聞かせください。

答弁要旨 学校教育部長
生活扶助規準が見直された場合、基準額引き下げ等の余波を受けて、これまで受給していた修学旅行費や給食費等の就学援助を受けられなくなる児童生徒が出ることが懸念されております。
しかしながら、このような事態が生じた場合でも、市の就学援助の支給対象者となることで、これまで同様の支援を受けることができるものと考えております。

 では次に準要保護者について伺います。同様の厚労省の資料では、「準要保護者については、国の取組を説明の上、その趣旨を理解した上で各自治体において判断して頂くよう依頼」とされています。要するに、こちらは丸ごと各自治体の判断に委ねられたわけですが、では市原市はどう対応するのか、当局の方針をお聞かせください。

答弁要旨 学校教育部長 
文部科学大臣は、先に「就学援助の支給水準が引き下がることがないよう仕組みを考えたい」と述べ、生活保護減額に連動し就学援助を受けられなくなる子が出ないような対策をとる考えを明らかにしております。
教育委員会といたしましては、今後の国や他市の動向を注視し、判断してまいりたいと考えております。

・準用保護者の問題

要保護者の場合は、少なくとも生活保護法に守られており、ケースワーカーによる支援も受けられるが、準要保護者やそのボーダーライン上の家庭の子どもたちはその後ろ盾もなく、さらに深刻な状況に直面しています。今回の政府の方針は、「子どもの貧困対策に対して国は責任を負わない」と宣言しているようなもので、血も涙もないと言わざるを得ません。
自治体にとっても非常に苦しいところだが、こういう時にこそ、子育て一番の市の姿勢が問われます。

・貧困の連鎖を断ち切ることが重要

子どもの貧困は、児童虐待や不登校、問題行動など、様々な問題とつながっているといわれています。また、今後の扶助費の増加を食い止めるためにも、子どもの貧困対策をしっかりと行って、貧困の連鎖を断ち切ることが重要です。
子どもに対する援助は、市原市の未来への投資です。財政難を理由に子どもへの給付を渋り、子どもの貧困を放置することのないよう、国ができない分は市がしっかりと対策をとっていただくよう要望します。

4. 公共施設の中長期的な維持管理と更新について

・市原市のインフラ状況

市原市では、このほど橋梁に関しての長寿命化計画が示されました。従来の対症療法的な維持管理ではなく、予防保全型で計画的な維持管理へ移行することによって、今後50年間にかかる工事費が551億円も抑えられるという試算が示されたのは、非常に驚きでした。国土交通省の長寿命化修繕計画策定事業に基づく計画とことですが、国の誘導政策の前に、こういうことはもっと早く独自に着手できなかったものかとも感じています。
橋梁に限らず、道路や上下水道などインフラ関連は、市民の日常生活ひいては災害に強いまちづくりのために最も重要であることから、これらの長寿命化を含めた長期的なマネジメントの必要性は言うまでもありませんが、ここでは、学校や庁舎、市営住宅、公民館、図書館などのいわゆるハコモノの対策について伺います。
これに関しては、先週の代表質問をはじめ、過去にも何度か議会で取り上げられていますが、対策に着手するのはまさに今、待ったなし、という思いから、今回私からも先進自治体の例を挙げて質問したいと思います。

秦野市の挑戦

神奈川県秦野市は、この問題にいち早く危機感を持ち、先進的な取り組みをしている自治体のうちの一つです。平成20年、庁内に公共施設の再配置を推進する担当部署を設置し、ハコモノの在り方を抜本的に見直しました。
所管の枠を超えて、すべてのハコモノの基本情報、利用・コスト状況、老朽化状況等のデータを集め、将来的な維持・更新コストも試算し、課題を分析した結果を白書にまとめ、すべて市民に公開。高齢化と人口減少が進行する社会にあっては、長寿命化だけではすべてを維持するのは不可能と判断し、市民の理解を求めながら、今後40年かけて更新の対象となるハコモノの面積を31.3%削減するという数値目標を掲げた方針を策定しました。

 実は市原市は、昨年1月に行われた建設技術協会主催の研修会で、この秦野市の担当職員の志村氏を講師として、公共施設の更新問題についての講演会を開いています。
当然、市原市も同様の危機感を持ってのことと思われますが、講演の内容を受けてどのようにこの問題をとらえているか、また、現在までに取り組まれたことがあれば合わせてお聞かせください。

答弁要旨 企画部長
公共施設につきましては、昭和40年代以降の高度成長期に作られたものが多く、本市のみならず、全国的に見ても、その老朽化対策は大きな課題となっております。
ご紹介のありました勉強会でございますが、これについては、技術系の職員を中心に、建設技術協会の主催により、開催されたと伺っております。
その中で、秦野市の公共施設再配置の取り組みや、佐倉市の既存公共施設の有効活用のあり方など、それぞれの取り組みについて、当該市役所の職員から説明を受けたとのことであり、参加した職員からは、とても有意義な場だと、というふうになったと聞いております。
本市といたしても、こうしたこれらの取り組みを参考に、中長期的な観点から、より計画的な対応を図る必要があるものと考えております。

・市原市の人口動態

ハコモノは市民一人ひとりにとって大切な財産であるが、これらの維持管理更新も、その多くが市民一人一人の税金によって支えられています。そこで、市原市の人口推移とハコモノの延べ床面積の関係について調べました。少々数値が多くなりますが、ご容赦ください。
2011年の4月時点の人口は27万9千人。そのうち経済活動に大きく影響を与える15歳から64歳までのいわゆる生産年齢人口は、18万4千人。
この生産年齢人口が20年後にはどうなるのか。推計では、14万6千人と、2割も減少するということでした。そしてこれは、1980年、今からおよそ30年前と同じ値でした。
要するに、少々乱暴な結論かもしれませんが、人口動態から推測すると、20年後の市原市は、今から30年前の市原市の状況に近いということになります。

・市原市のハコモノの床面積の推移

一方、30年前の市内のハコモノはどのくらいであったか。市有建築物耐震改修促進計画対象建築物から拾った数値によると、当時市は延べ床面積で約34万平方メートルのハコモノを所有していた。それが今では約67万平方メートルと当時の約2倍に膨れ上がっています。
ということは、今後新規の建設がないと仮定しても、20年後の市原市民は、1980年時の市民の2倍のハコモノを支えなければならない運命にあるということになります。
さらに、今あるハコモノのうちの54%、半数以上が30年前に建築されています。その割合は20年後には80%に跳ね上がります。
市原市も他人ごとではなく、維持補修費用・更新費用が一度に重くのしかかり、ハコモノを維持できなくなる時期がこのままでは確実にやってくる。

・総合計画への位置づけを

秦野市は、担当部署を設置して取り組み始めてから公共施設再配置計画の策定に至るまでに3年かかりました。市原市も検討を先送りすることなく、この問題が重症化する前に速やかに手を打たなければなりません。

 ちょうど、平成17年度から11年間を計画期間とする改定市原市総合計画の目標年度まであと残り3年。次期計画を見据えた基礎調査を始める時期でもあります。総合計画へ位置づけるためにも、今がまさに戦略的な公共施設マネジメントに着手するタイミングと思いますが、当局のご見解をお聞かせください。

答弁要旨 企画部長
では、現実施計画「勇輝いちはら」において、「公共施設改修方針策定事業」を実施計画事業として位置づけるなど、すでに、取り組みを始めているところであります。
今後とも、先進自治体の事例を参考としながら、財政負担の平準化、施設の安全性の確保、あるいは市民が利用しやすい施設の維持などの観点を踏まえて、総合計画や、あるいは予算計上の際に一元的に検討をして、公共施設の改修・建て替え・統廃合等を含めて、計画的に進めてまいりたいというふうに考えております。

人口減少社会

改定市原市総合計画では、最終年度の27年には人口30万人との想定のもと、その実現を目指して施策を展開してきました。
今年は市制施行50周年という節目の年に当たり、圏央道の開通、いちはらアートミックスの開催など、市原市にとって明るい話題が続く。これを契機に、人々の交流が活発化し、定住人口の増加につながることを期待したいところであるし、そうなるように進めていくのはもちろんです。

しかし、全国的な人口減少社会の到来は、人口白書でも1970年代から予測されており、事実その通りに推移している中で、冷静に現実を見つめると、今後国が大胆な人口政策を打ち出さない限り、市原市だけが突出して増加するとは考えにくいと思われます。
因みに、ハコモノ31.3%削減を掲げた秦野市の志村氏による計算式(一人あたりのハコモノ面積や実質歳入額を用いる)から弾いた市原市の削減目標値は33.2%。秦野市より深刻な値が出ました。
この問題に目をつぶり、自分たちの便利さや豊かさを求めて結論を先送りして未来に負担を押し付けるようなことは、行政や議会の責任において、決してあってはなりません。

削減によるメリットも

縮小というとネガティブな意味にとられがちですが、これまでの発想や慣例を脱ぎ捨て、民間の知見・ノウハウ・資金を活用することで、新しい公共の場、豊かなコミュニケーションの場を生んでいる例もたくさんあります。
例えば、秦野市では中学校の体育館と公民館の複合化をはじめ、空きスペースがあった保健福祉センター内に郵便局を誘致したり、保育園跡地を障害者福祉施設に賃貸して民営化したり、施設の移転で余裕ができた市役所跡地をコンビニに賃貸したりしています。
このような公民連携の新しい発想は、まさに背水の陣だからこそ生み出されるともいえます。
これまでハコモノ整備が最大の行政サービスであると行政・市民の双方が錯覚してきました。しかし、これからは、現状を包み隠さずしっかり市民に伝え、相互理解を得る中で、ハコモノをどう維持するかではなく、行政サービスをどう維持し向上させていくか、行政、議会、市民、民間、皆で知恵を出し合っていかなければいけません。
行政の勇気ある取り組みを期待し、応援したいと思います。