H26年度決算審査 意見陳述

市民ネットワークを代表して、平成26年度市原市一般・特別・企業各会計決算に対する意見の陳述を行います。

国・市の社会経済情勢
H26年度の経済動向は、内閣府によれば「緩やかな回復基調にある」とされていましたが、4月からの消費税率5%から8%への引き上げに伴う駆け込み需要の反動、輸入物価の上昇、さらに物価の上昇に家庭の所得が追い付かないことなどの要因により、個人消費は思うように上向かなかった。H26年12月の「緊急経済対策」によるテコ入れも、このような背景によるものです。

しかしながら、全体的に大企業を中心に企業業績は上向いているとされており、消費税率の引き上げ分も手伝って、千葉県の26年度決算見込みでは、県税収入は前年度比6.6%増加したとされています。

一方で本市の市税収入は逆にH25年度よりも2億9000万円減の476億2000万円。これは当初予算額の485億5000万円と比較しても、およそ9億円という近年まれに見る減額決算でした。これは、わが市が他自治体と比べても、さらにかつてないほど予測が難しく、かつ厳しい社会経済状況に立たされているということを表しています。

産業振興について
本市はこれまで臨海部企業の発展に支えられてきました。しかし、石油化学産業に代表されるこれら企業群は、国内の景気動向のみならず、グローバル経済の急速な進行とともに、為替相場や、原油価格など海外の景気動向によっても大きく影響を受けやすい。これが市の経済の先行きを不透明にさせる大きな要因であることは否めません。

執行部におかれては、臨海部企業に対し、単なる誘致や操業への補助ではなく、産業構造の再編に対応できるような支援のありかたをさらに検討すると同時に、地域に密着した独自産業の創出にこれまで以上に取り組むことで、足腰の強い地域経済による安定的な市政運営を目指していただきたい。

広報のあり方について
また、H26年度は、消費税率のアップや東日本大震災復興基本法に基づく均等割り額の引き上げなど、国民に増税の負担感が重くのしかかった年度でもありました。

H29年度には更なる消費税率の引き上げが予定されており、均等割り額の引き上げはH35年まで続きます。政府のみならず、地方自治体には、住民から財源を付託された責任があり、その使い道に対しては一層の説明責任が求められます。これら増税分の使途に関しては、市民の負担感の軽減や協働のまちづくりのためにも、対象施策に広く溶け込ませるのではなく、市民が納得できるようなインフォメーションをお願いしたい。

インフォメーションについてさらに付け加えれば、当特別委員会の審議において、例えば、中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス、合併処理浄化槽の普及や点検、成年後見制度、就農者の確保・育成、住宅の耐震改修、生涯学習センターの活用など、様々な事業の課題として、周知不足が挙げられていました。

まちづくりが行政主導で行われていた頃は、従来の「お知らせ型」の広報が機能していましたが、今や市民がまちづくりの主体となることを目指す中で、市民の理解と協力無しでは市政運営は進まない時代です。自治体広報は、そのための市民とのコミュニケーション手段と位置づけ、そのあり方については、さらに検証を重ね、戦略的に取り組んでいただくよう要望します。

防災庁舎建設事業・コンストラクションマネジメント方式の活用に関連して
防災庁舎建設事業では、先進的な取り組みと言えるコンストラクションマネジメント方式を採用されました。公共性・透明性が厳しく求められる公共工事において、設計・施工発注を一括して行うデザインビルド方式の欠点を補う意味も含め、コンストラクションマネジメント方式をぜひ適正かつ有効に機能させていただきたい。

さらに付け加えれば、今後は、ありとあらゆる行政分野の施策・事業において、計画策定に始まり、執行、管理、評価、各々の段階でアウトソーシングが進められることが予想されます。それらを有効に機能させるためには、庁内における専門性の充実を図ることが一層求められます。技術職員・専門職員の確保、スキルの維持・向上を図り、行政側のマネジメント能力を高めるよう望みます。

住宅費について
次に住宅費について申し上げます。
市内には、約2600名のひとり親、約15000名の一人暮らしの高齢者の方がいらっしゃると推定されています。また、相対的貧困率を16.1%とすると、相対的貧困世帯は約2万世帯。そのうち、生活保護の住宅扶助を受けている約4000世帯を除くと、ざっと16000世帯が、住宅に困っている可能性がある世帯と言えます。

住宅費の決算額2億1400万は、土木費91億9900万円のわずか2%だが、住宅はセーフティネットのかなめである。空き家対策も含め、住宅政策に関しては重要課題として総合的な取り組みをお願いしたい。

中房総国際芸術祭いちはらアートミックス事業に関連して

最後に、中房総国際芸術祭いちはらアートミックス事業に関連して申し上げます。

同事業は、地域の活性化に向け、地方都市が抱える諸問題をアートの力で解決する「課題解決型芸術祭」として、H26年3月21日から5月11日までの52日間の会期で開催されました。

「首都圏のオアシス市原」「晴れたら市原に行こう」という印象的なキャッチフレーズが表していたように、私たちは南市原が、首都圏の人々にとって「思い立ったときにいつでも行きたくなる」「訪れるたびに変わらない魅力に癒される」それでいて「何かしら新しい発見がある」いつまでもそんな地域であってほしいと思っています。

しかし、そんな地域の魅力を掘り起し磨き上げる手段として、現代アートに対し、どこまで限りある財源を投入するのか。費用対効果に関しては、シビアに検討されなければなりません。

今後この事業を継続させるのであれば、当特別委員会でも述べられていたように、中房総全体に広域化し、県も巻き込んで強力に推し進めることが必要と考えますが、市原市にその旗振り役を担う余力があるのか。それともその分の予算と人的資源を新たな地域活性化策に振り向けるのか。執行部には人的・経済的体力の消耗に終わることのないよう、綿密な検証と冷静な判断を求めるものです。

かつてない形での人口構造の変化を伴う急速な人口減少が予想されています。さらなる税収の減少のみならず、地域活力の低下や公共施設の老朽化など、多くの課題を抱えながら、新しい社会に適応した自治体経営へと、大きく転換を図らなければなりません。

従って今後も、行財政改革を着実に実行し、政策・経常を問わない「選択と集中」が市政運営に一段と求められます。そのためには、目標達成のための指標設定と同様に、事業廃止の判断のための基準・指標を定めることも必要かもしれません。

経営的な視点で費用対効果を見極め、一定規模のプロジェクトでも撤退・廃止の英断を下すことも辞さず、行財政改革を着実に進めていただきたい。

まとめ

以上種々申し上げましたが、H26年度は見通しが極めて不透明な中での予算編成でありながらも、決算においてはおおむね第4次実施計画に沿った施策展開と財政運営に努められていたと判断し、市民ネットワークはH26年度一般・特別・企業各会計決算について、認定します。

厳しい財政状況ではありますが、今後も市民との信頼関係の構築に一層努め、効率的・効果的な市政運営に取り組んでいただくことを要望し、意見の陳述とします。

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