09年5月スタートが予定されている裁判員制度は、年末には「裁判員候補者」への通知も送られる手はずになっている。ネットでもたびたび学習会を行ってきたが、千葉県弁護士会の立松彰弁護士は、「被告人の権利を侵害する恐れがある」と懸念する。

 

えん罪、誤判がさらに増える?
 
現在日本の刑事裁判では有罪率は99.5%と異例な高さである。当然えん罪や誤判も多い。そんな中で死刑や無期求刑にあたる重大事件を、素人である裁判員が参加して3~5日で処理することはあまりに危険。

「こうはんぜんてつづき」の問題
 
漢字で書くと「公判前手続き」。公判が行われる前に裁判官、検察官、弁護人が出席し、非公開でそれぞれの主張と証拠を整理し争点をあらかじめ絞りこむ作業のことである。裁判員に「わかりやすく」するために、事件の背景を示す膨大な状況や証拠などを、事前に取捨選択、簡略化し、朗読できる分量に絞り込まれる。公判時に新たな証拠を提出することも禁じられ、最終日は裁判所の閉廷の5時には結審するために、裁判と求刑、判決のシナリオがあらかじめ裁判官によって作られてしまう可能性も高くなる。

心理的負担・守秘義務
身柄を拘束された被告との接見や証拠検証が不十分なまま、裁判員が、有罪無罪や、量刑を決めさせられるのは心理的に負担である。おまけに裁判の経過については守秘義務として生涯口外してはいけないことになっている。罰則、罰金まである。(米国の陪審員制度では、裁判終了後は口外してもいい)
     

重大刑事事件より民事裁判にこそ参加したい
市民が司法に参加することを促すのが目的なら、重大犯罪を扱う刑法より、むしろ政策的な判断を問う民事の裁判に市民が参加していく方が先ではないだろうか?(また裁判員制度の前に、死刑制度の是非を論じるべき、という声もある)

拙速な裁判員制度の開始には反対!
社民党、共産党は8月に「実施延期」を表明。民主党小澤代表も同趣旨の見解を発表。じわじわと世論は、拙速な裁判員制度の開始に反対の意を唱え始めている。学習会を重ね、市民ネットもあまりに課題の多い裁判員制度には反対し、延期、見直しを求めていくとの結論に達し、9月県議会には廃止・延期をもとめる意見書も提出した。

(代表 山本友子)

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