令和8年 第1回市原市議会定例会 予算審査総括質疑・意見陳述 小沢みか
いちはら奏会 小沢美佳です。
会派を代表し、はじめに総括質疑を行います。
総括質疑
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質疑:企業投資を契機とした本市の都市戦略について
小出市長は今定例会における施政方針演説の冒頭、競走馬の新トレーニングセンターや企業のイノベーション拠点の整備について触れられました。
これらは本市にとって地域の活力を高める絶好の機会であり、私達も大いに期待を寄せるところであります。本件については、先の一般質問における御答弁でも、想定される波及効果(人口の増加・経済への好影響・ブランド力の向上)について述べておられましたが、私からはもう1歩深掘りして都市戦略の観点から伺います。
改めて、令和8年度からスタートする新たな総合計画の中で、これら大型プロジェクトをまちづくりにどのように位置づけていくのか。
つまり、地域経済への波及をはじめ、雇用創出、地域資源との連携、交通アクセス・住環境の向上など、市として都市政策の中でどのように展開されるのか、
市長のお考えをお聞かせください。 -
(市長)
大井競馬場の新トレーニングセンターと出光興産株式会社のイノベーションセンターといった大規模プロジェクトは、市内への移住定住や新たな雇用の場の創出など地域経済への波及効果をはじめ、本市の将来のまちづくりに大きな可能性をもたらすものと大いに期待をしております。
このことから、単に民間による整備計画として受け止めるのではなく、新たな総合計画のグランドデザイン実現を推進する重要な要素として、地域の付加価値を高め、魅力あるまちの創造に最大限活かせるよう、戦略的に取り組んでまいります。
このため、産業振興、交流人口の拡大、移住・定住の促進といった本市の施策と連動させるべく新たな「市原市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、取組の方向性を位置付けたところであり、横断的な施策連携の視点をもって進めてまいります。
この2つのプロジェクトに関しては、これまで私自身が企業の経営層と直接意見交換を重ね、本市の将来ビジョンや地域資源の活用、連携の方向性について丁寧にお伝えをしてまいりました。
こうした中、イノベーションセンターについては、全国に複数ある研究拠点を集約する場所として、本市にある千葉事業所が選ばれ、日本の産業を牽引する一大拠点が誕生することとなりました。
また、新トレーニングセンターについても、昨年来、事業者である東京都競馬株式会社との協議を重ねる中で、社長をはじめとする経営層に直接、私の考えをお伝えし、事業者においても、市と連携をして地域社会に貢献する施設としていく意向を確認したところであります。
今後、具体的な整備や事業の実施段階においても、これまで構築した関係性を基盤に、事業者との緊密な連携のもと、本市のまちづくりにしっかりと結び付けてまいります。
先日、地域で行われた勉強会において、イノベーション拠点の関係者から示唆に富むお話がありました。
現在、プロジェクトに携わる研究員の方々の多くが、居住地として近隣他市を選択されているという実態。そして、国内外から専門家を招き入れるにあたり、本市の飲食・宿泊・アクセスといった「都市機能の受け皿」に、まだ多くの伸びしろ、言い換えれば解決すべき課題があるという点です。
つまり、交流や定住促進といった効果が自動的に生まれる構造にはないという事です。
私達はこれを、本市がこの企業投資を真に地域の活力へと転換するために突きつけられた宿題であると捉えています。
これを解くことは、単に企業の利便性を高めるためだけではありません。
企業側が「市原市を選んで良かった」、従業員も「市原市に根を下ろしたい」と感じる環境を整えることは、取りも直さず、市民にとっても「住みやすく、心豊かなまち」になることと同義だからです。
トレーニングセンター整備は概ね8年後、イノベーション拠点は概ね2年後以降の稼働が想定されます。まさに新たな総合計画の計画期間内です。
この動きを単なる外部要因として受け止めるのではなく、本市の都市戦略の中に、市民の誇りとなる「都市の質」を高める施策として主体的に位置付けて頂きたいという思いで、確認させて頂きました。
以前、拠点まちづくりの取組において、民間の大学の構想が先行し、行政の政策が追随するように見受けられる場面がございました。
市が描くまちの方向性を明確に示し、その中に民間の活力を位置づけていく。こうした姿勢こそが、真の公民連携を発展させるものと確信しております。それでは、引き続いて今回の予算案全体を俯瞰し、意見の陳述をいたします。
市長並びに執行部におかれましては、分科会で申し上げた事項も合わせてご勘案いただきますよう、あらかじめ要望いたします。
意見陳述
11年前の問いかけより
11年前、本市が現在の総合計画の策定に着手する直前の頃、私は本会議で、人口減少社会において本市がどのような方向性に立つのかについて質問いたしました。
つまり、人口減少を食い止めるという考えから政策誘導を行うのか、それとも人口減少社会を前提として地域の質を高めていくのか、どちらなのか、という問いであります。
当時の答弁は「双方に取り組む」というものでした。
そして今、本市は新たな総合計画のスタートという節目を迎えています。
この間、本市の政策は、人口減少を前提とした行政運営へと確実に移行してきました。
かつての重厚長大な拡大路線を追うのではなく、人口減少という現実に真摯に向き合い、縮みながらも着実に富を生み、それを市民生活へと還元していく。
目指すべきは、機能的でありながらも、歴史や文化の香りを感じさせる、品格ある都市への転換です。
そのためにも、本市の行政運営そのものを根底から見直していくことが求められます。
デジタル化の推進について
そこでまず、デジタル化の推進について申し上げます。
令和8年度は、本市のDXを次のステージへと推し進める体制づくりに取り組まれます。
副市長をCIOに位置づけCIO補佐官を新設されることや、市民の声を体系的に集約・分析し、政策形成へと反映させる体制を目指した組織機構改革には、私達も大いに期待を寄せるものであります。
事業レベルでも、デジタル化による市民サービスの向上について、令和8年度はマイナンバーカードを活用したタクシー運賃助成、マイナ救急、スマホ市役所、コンタクトセンターの導入など、行政運営の基盤を整える取組が積極的に進められます。
一方で、私達は日頃、保育や介護などサービスを提供する現場の方々から、市に対する申請や報告などの手続きが依然として紙中心であり、デジタル化が十分に進んでいないという声を度々伺って参りました。改善は図られてきましたが、本来であれば、こうした現場の負担について行政自らがいち早く気付き、
市民サービスの利便性向上だけでなく「支える人を支えるDX」という視点も、今後の取組の中で意識されるよう要望いたします。
ロジックモデルについて
次に、ロジックモデルの活用について申し上げます。
新たな総合計画・実行計画では、ロジックモデルが導入されました。政策の目的や成果を体系的に整理しようとする取組として、たいへん評価をしております。
一方で、ロジックモデルを実際の政策運営に生かしていくためには、単に計画書の中で「目的・取組・成果」の関係を整理するだけでは不十分です。
分科会でも申し上げましたが、現在のロジックは、事業の取組内容を示す指標と、最終的に目指す成果との間に大きな乖離があり、因果関係が見えづらい構造になっております。
事業成果がより明確に把握できる指標の設定や、政策の改善につながる評価の仕組みの構築に努めるよう要望いたします。
スクラップについて
また、政策評価の実効性を高めるためには「何を始めるのか」という議論と同時に、「何を見直すのか」「何を終えるのか」という議論も必要になります。
以前本市では「スクラップアンドビルド」あるいは「ビルドアンドスクラップ」という言葉が頻繁に使われていた時期がありましたが、昨今、その言葉は影を潜めております。
一方で本市は令和8年度よりDXの取組を強力に推し進めるとされています。
その背景には、今後職員数が十分に確保できなくなるという構造的な課題があります。
こうした状況を踏まえれば、DXの推進と同様に、既存事業の見直しや整理、すなわちスクラップについても、改めて真剣に議論していく必要があるのではないでしょうか。
自治体の施策は時間の経過とともに積み上がっていく傾向にあります。政策評価を通じて事業の見直しを行う仕組みの構築については、今後も重要なテーマとして取り組んでいただくようお願い申し上げます。
都市部門
拠点まちづくり政策について
次に、拠点まちづくり政策について申し上げます。
本市はこれまでJR3駅のエリアごとに住民参加による議論を積み重ね、令和3年には「拠点まちづくりビジョン」が策定されました。
ビジョンでは拠点を、核となる施設や機能を備えたエリアとして位置付け、市が公共性の高い事業を担うという考え方が示されておりました。
しかしこのほど明らかにされた八幡宿編の計画骨子案では、公民連携や地域活動の方向性は示されている一方で、行政の役割が見えにくくなっていると感じています。
長年の住民参加を経てなお、市の整備内容、工程、評価が判然としない計画であるとすれば、市民の理解を得ることは困難であると指摘せざるを得ません。
「拠点まちづくり基本計画」八幡宿編・姉ヶ崎編の策定に当たっては、まず拠点まちづくり政策全体の考え方を改めて整理した上で、行政としての責任と方向性を明確に示すよう要望いたします。
公共資産マネジメント・手順について
次に、公共資産マネジメントに関して申し上げます。
本市では令和8年度も公共施設の再配置や遊休資産の活用について様々な取組が進められます。
しかし近年の取組を俯瞰いたしますと、八幡宿駅西口周辺の公共施設の跡地活用や辰巳台地区学校施設等更新事業の事例に見られるように、個別の事業が先行し、まちづくりの議論が後追いになる場面が散見されます。
個別事業の積み上げではなく、まずエリア全体の構造を見据えた上で土地利用の考え方を整理し、必要な施設整備を検討していく必要があると考えます。
公共資産マネジメント・遊休資産の活用について
また遊休資産の活用については「この資産は売却していく」「このエリアは将来の公共利用のために確保する」といった、都市戦略としての意思が必ずしも明確に示されていないように感じています。
民間活用を進めること自体はたいへん重要です。
しかし、これまでの各サウンディングの結果からも伺えるように、行政としてエリアの方向性や土地利用の考え方を示し投資環境を整えない限り、民間からは低廉な貸付条件や解体費用の市負担などを前提とした提案が多くなってしまうのは自明の理です。
公民連携を進めていくためには、行政が住民の意志を踏まえた上で、あらかじめエリアの方向性を明確に示し、投資・規制・合意形成の前提条件を整えることが必要ではないでしょうか。
今後は都市政策と公共資産マネジメントをより一体的に捉えながら、戦略的な活用を進めていただくよう要望いたします。
子育て支援施設に見る「縮充」の具現化について
また、本市では公共資産マネジメントの取組において「縮充」という言葉を掲げております。人口減少社会の中で、縮小しながらも行政サービスの質を高めていくという考え方について、全く異論はございません。
しかし、その「縮充」とは具体的に何を指すのかという点については、まだ十分に整理されていないようにも感じます。
「縮充」とは、既存の制度やサービスのあり方そのものを見直す契機とすることに本来の意味があるのではないでしょうか。
例えば本市は「もっと、ぎゅっと、こどもと。いちはら」というキャッチフレーズを掲げておりますが、こうした理念を実際の制度設計やサービスの運用の中でどのように具現化していくのでしょうか。
八幡宿駅西口では、複合施設の整備と併せて認定こども園の更新が行われました。本来は、通園児やその家庭だけでなく、子育て支援センターや子ども誰でも通園制度の一般型の設置、医療的ケア児の受入体制の整備など、地域に開かれた子育て支援機能について改めて設計し直す好機でもあったはずです。
また子ども未来館においても、1階には子育て支援機能、2階にはネウボラや地域支援室などの公共機能が配置されていますが、利用者が多い土日祝日や夕方の時間帯に2階が利用できないなど、施設の目的と実際の運用の間にギャップがあるように感じています。
今後は各施設の運用を不断に見直しながら、行政サービスの質の向上につなげていただくよう要望いたします。
交通政策について
次に、交通政策について申し上げます。
公共交通の課題を単なる交通手段としてではなく「移動の困難」から生じる生活課題として捉え直し、その困難さが高齢者や障がい者など福祉的課題を抱える方々に集中しているという認識のもと、施策を検討されている点を大変評価しております。
とりわけ、福祉タクシー事業をアップデートさせ、対象者を明確にしたタクシー運賃助成事業を先行的に実施する取組は、移動困難者への支援として意義ある一歩であると受け止めています。
令和8年度には新たな地域公共交通計画が策定される予定ですが、福祉施策との接続をはじめとする分野横断的な視点から、効率的かつ効果的な施策展開に繋がることを大いに期待しております。
外国人との共生・キーパーソンの活用について
次に、外国人との共生について申し上げます。
近年、本市においても在留外国人の人数は着実に増えており、今後もその傾向は続いていくものと考えられます。
言葉や文化の異なる方々と地域の中でどのように共に暮らしていくのか、多文化共生の推進は新たな総合計画の中でも重要な課題であると受け止めています。
生活情報の提供や相談体制の整備、地域交流の機会の創出に加え、トラブルや困りごとにも適切に対応できるよう、情報収集や支援体制の強化により一層意を注ぐよう要望いたします。
なお、分科会の中では、キーパーソンの発掘が徐々に進み、福祉総合相談センターにおける相談業務に寄与されているケースもあるとのお話を伺い、心強く感じました。
このような部局を横断した取組を、今後も様々な施策の中で一層進めていただくことを期待しております。
教育理念について
次に、教育の理念について一言申し上げます。
市長の施政方針演説では、加茂学園における「放課後学習支援事業」について、加茂地区の活性化に向けたプロジェクトの一環であるとの説明がございました。
もちろん地域と学校が連携し、地域の魅力や活力につなげること自体は望ましいことです。しかし、分科会でも申し上げましたが、教育は本来、地域活性化の手段として位置付けられるものではなく、子どもたちの学びや成長を第一に据えるべきものです。
本市ではこれまでも、教育施策が地域振興や交流人口の拡大と結び付けて語られる場面が見受けられてきましたが、その度に私達は違和感を覚えてきました。
さらに、今後進められる辰巳台地区学校施設等更新事業においても、公共資産マネジメントの視点が先行し、教育の理念や教育的効果についての議論が後追いになるのではないかとの危惧を抱いております。
教育の目的や価値が他の政策目的の中に埋もれてしまうことのないよう、改めて教育の理念を大切にしながら施策の推進に当たっていただくよう申し上げます。
財政規律について
次に、財政運営について申し上げます。
令和8年度当初予算案は、市制施行以来、初めて2,000億円を超える規模となりました。
人口減少社会の中にあっても、将来を見据えた投資を進める姿勢は理解するものであります。
一方で、分科会での審査において、今後しばらくの間プライマリーバランスがマイナスとなるとの懸念も生じました。本市の財政運営をどのように持続可能な形で保っていくのかについては、市民にとっても大きな関心事項であります。
本市が、実質公債費比率や将来負担比率について国の示す基準の二分の一とする独自基準を設けることにより、より財政規律を意識した運営が行われることは評価に値します。
一方で、本市は今後、拠点整備・公共施設やインフラの更新など、多額の財政負担を伴う事業が想定されています。長期財政収支見通しは作成されていますが、この見通しは基本的に現時点で確定している事業を前提としているものです。
確定事業だけではなく、個々の政策判断が将来の財政にどのような影響を及ぼすのかについて、今後は市民にも分かりやすく示されるよう要望いたします。
将来世代への責任という視点を常に意識した財政運営が求められていることを、改めて申し上げたいと思います。
職員の不祥事について
行政運営の信頼性という観点から、組織の健全性についても一言申し上げます。
近年、本市では職員による不祥事が相次いでおり、市民の行政に対する信頼を損なう事態となっていることは、大変遺憾であります。
不祥事が発生した際の個別対応はもちろん重要ですが、それと同時に、組織としてどのように再発防止を図り、健全な組織風土を維持していくのかという視点が不可欠であることは言うまでもありません。
市民の信頼を回復するためにも、組織管理のあり方を改めて点検し、行政組織としての信頼性を早急に立て直していくことを強く求めます。
懸念事項・環境行政
環境行政について申し上げます。
ゴミ処理手数料適正化・プラスチック資源一括回収に係るごみ処理体制の構築におきましては、その進め方や制度設計のあり方について、承服しかねる点がございます。
市民生活に直接影響を及ぼす制度変更である以上、より丁寧な議論と合意形成が必要であったのではないでしょうか。
その他環境行政に関しましては、市内で無許可残土の埋め立てに伴う重大事案が複数発生しております。
措置命令や刑事事件にまで発展する事案はごく一部で、盛土等により暮らしを脅かされている市民からの訴えは、昔から途切れることはありません。
ここで私達が最も問いたいのは、市民からの意見や訴えに向き合う職員や組織の姿勢です。市民のまなざしは、そこへ鋭く注がれています。
法令の枠組みの中で対応できることに限界がある事は承知しておりますが、地域住民の声に真摯に耳を傾け、当事者意識を持って対応することが求められています。
そうした日々の積み重ねこそが、環境行政に対する市民の信頼につながるものと申し添えます。
その他評価すべき事業
今回の予算案には評価すべき点も多々ございます。
市民生活を支える様々な事業の中でも、
・町会活動を支援するための「町会運営支援プロボノ事業」の創設や、
・フリースクール運営補助金の大幅増額、
・小中学校の就学援助費の拡充、
・企業主導型保育施設の利用世帯への補助制度の創設、
・児童発達支援に関しては新たに心理士2名を採用し、専門医の助言のもと初めて基本方針の策定に取り組まれること、
これらについて、特に敬意を表するものであります。
結びに
このように、本予算案には課題を感じる施策や進め方に疑問を持つ事業も見受けられる一方で、新たな総合計画のもと、ウェルビーイングの視点を踏まえ、人口減少社会の中でまちの持続性を確保していくための取組や、市民生活を支える基盤整備については、一定の方向性が示されているものと受け止めています。
以上申し述べた点について、今後の市政運営の中で十分に検討を重ねていただくことを期待し、いちはら奏会は令和8年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、賛成の立場を表明いたします。
市原市役所のクレドには、次のような言葉があります。
「市民ニーズの本質を捉え、その先にあるものを想像する」
「できない理由より、できる方法を見つける。」
人口減少社会の都市経営が問われる今、こうした姿勢こそが、市政運営の根底に貫かれるべきであると確信しております。
本市が未来の市民にも誇れる都市であり続けるよう、議会としての責任を自覚しながら今後も議論を深めていくことを申し添え、意見の陳述といたします。
