平成18年度 第1回市原市議会定例会 3月2日(木)
市議会レポート【代表質問】桑田なお子
議席1番 桑田尚子です。
市民ネットワークを代表して質問いたします。
質問に先立ちまして、3月をもって退職、あるいは職場を変わられる皆様が、これまで市原市と市民のためにお働きくださったことに、深く感謝いたします。これからも健康に気をつけ、地域など新しい持ち場で、今までの知識や経験を生かしご活躍されますよう、お祈りいたします。
それでは質問に入ります。
1.市長の所信表明について
時代は中央集権から地方分権へと流れが変わろうとしており、自立した都市づくりが求められています。民間に任せられるものは民間にという考えの一環として指定管理者制度も導入されました。が、人の意識は、なかなか変わらないものです。「市役所は大きなサービス産業であり、市民は大切なお客様である」と市長も常々いわれますが、職員の中には、まだまだ「お上」の意識が抜けきらず、対応が間違った時にもすぐに謝罪の言葉が出ない職員がまだいる、という市民の声も耳にします。更なる市民サービスの向上をめざしていただきたくお願いします。
少子高齢社会は、年金受給者ばかり増え、経済活動が停滞し、若年層の減少で年金制度も破綻する、など、マイナスの話ばかりが言いはやされていますが、一人あたりの生産性を高め、労働人口を増やし高齢者の扶養負担を引き下げれば人口減少によって豊かさが減っていく事はないともいわれています。たとえそうであるとしても、高齢者の力を最大限に地域に還元してもらい、また、若者にとって魅力ある街づくりを目指すことによって、市原らしい活力ある街づくりを目指すことは可能であると思います。
市長の表現が30万人の「中核都市」から「自立都市」に変わりました。市長の中でどのような変化があったのかお聞かせください。
市原は広く公共交通が整備されていません。高齢者や障害者になり、車の運転が出来なくなると、「陸の孤島」になってしまいます。市原を離れる方の多くが交通の不便さをあげられています。総合計画の中では2015年までに交通空白地帯の解消を目標としていますが、現在の進捗状況をお聞かせください。
現在は「都市間競争の時代」と言われます。市長も市原の経済的発展をめざし、産業誘致に力を入れておられます。もとより産業の振興は大切です。しかし、政策が産業振興に偏ると、生活弱者に対する対策がどうしても後回しにされます。
勝ち負けを強調しすぎる社会はとかく「しんどい」ものとなります。市原は温暖な気候と広い土地に恵まれています。ここで、ゆったり、じっくりまちづくりをするということも、市原らしさではないかと思います。
今や日本全国どこの町も似たような風景になってしまったといわれていますが、市原の街の特徴は何であると考えておられるでしょうか、お聞かせください。
私達市民ネットにとっても関心の高い、子どもの福祉・教育に対し、かなりの新規事業が盛り込まれスポットライトが当っていることを心強く思います。例を挙げますと、今回 発達支援センターが課に昇格し更なる充実が期待されますし、読書指導員も6人から11人に増やされました。
年次計画をしっかりと立てて、さらに拡充していくことこそ大切と考えます。市長の見解をお聞かせください。
2.平成18年度予算について
格差社会が広がり、二極化が進んでいるといわれます。民生費の扶助費のうちの生活保護世帯の対策費も 平成17年度44億円、平成18年度49億円へと増えています。
高齢者も増え福祉施策など、今まで遅れていた分野を充実させていくため民生費は必要ですが、一方では、土木費として区画整理や上下水道整備など、進めていかなければならない事業もあると思います。限られた予算の中でどうすり合せていくのか、難しいところです。
平成14年度までは土木費が民生費を上回っていたわけですが、どのようにバランスを取っていかれるのか見解をお聞かせください。
組織機構の見直しで「徴収第3班」が「徴収特別対策室」となりました。納税は義務とはいってもなかなか市原市の徴税率が上がらず、県下でも33市中21位(平成16年度決算)という状況です。
滞納対策はこれまでも、様々なされてきましたが、今回こうして名称を改め、新たな対策班を設置することで徴税率をどこまで上げる目標となっているのでしょうか?
また、平成18年度は特に差し押さえ後の換価処分を積極的に進めるとありますが、前年度実績と18年度の目標をお聞かせください。
国で進めているところの三位一体改革は、大雑把に言いますと市原市では約12億円の削減があり、所得譲与税として約20億円が入り約8億円のプラスに働いたと聞いております。国では景気が回復の傾向にあるとの発表を繰り返しておりますが、一般市民には、なかなかその恩恵が実感できないのが実情です。非正規雇用は若者だけでなく、その上の世代にまで広がりを見せ始めており、中高年男性の自殺も相変わらず高い数値で推移しております。そんな中での、一休みのような景気回復で、この度の予算編成は昨年より1.3%増え787億2千万円が計上されましたが、市税収入は8年連続減少となってしまいました。本市も極力歳出をカットし、庁舎内の毎日行っていた清掃を週3回に減らし、広報「いちはら」の発行を月3回から2回にするなど、ささやかな経費削減を行うなどの努力がされております。
それでも、市民の目から見ると売るに売れない塩漬け土地や何年も放置されている建設途中の道は「無駄遣い」に見えることもあります。当初の計画・見通しが甘かったのか、原因は色々あると思いますが、これらについて見解をお聞かせください。
3.市民参加のまちづくりについて
この度、住民主体による市原市地域福祉計画の案が出されました。
平成16年10月に市民意識調査を行い、平成17年1月に地域福祉計画策定委員会の設置、その後地域会議、地域座談会を開き延べ2000人が参加したと聞いています。実質共に市民参加による計画ができたことは高く評価するものです。会議の度に参加し支えた事務局の市職員の労苦に敬意を表するものです。これからが正念場です。これをどう実行していくのか、真価が問われるところです。
この「地域福祉計画」の中から2点お聞きします。
1点目、この計画書の実行は市民の自主性にゆだねられ、市民には義務はありません。しかし実のあるものにしていくには、今後、行政はどのように働きかけ推進していかれるのか、見解をお聞かせください。
2点目、みんなで協力し合い、地域社会づくりをすすめる場合には、この話し合いの輪に入ってこなかった人・輪に入れなかった人、町会・自治会などに加入していない人たちにどう周知していくのかも課題だと思います。周知の方法などお考えのことがありましたらお聞かせください。
昨年は、多くの市民参画のもとで「改訂市原市総合計画」が策定され、また、一昨年の平成16年10月に市民自ら行動する事のできる「市民まちづくり事業」が提案されました。
その後の7地区の取組状況をお聞かせください。
次に、市民との協働、パートナーシップについて伺います。
市民との協働は、それぞれが自立していてこそ意味があります。市民活動自身も充分に活動のノウハウを身につけ、持続可能な活動ができる基盤を作ることが必要と考えます。しかし、現状ではその大部分の「まちづくり」を担っているのは町会・自治会、その組織を母体として生まれたNPOを含む団体となっています。
「行政」から見た協働は「行政だけでは十分なサービスを提供できないから町会、自治会等の組織に力を借りて、安上がりの行政執行を行える」面があります。そのことが「市民」にとっては「市民活動が役所の下請け的な役割になってしまう」という不満になり、また「NPO法人格をとったのだから行政が補助金を出すべきだ」という依存的な声になったりします。他方、自立的な活動をしようとするNPO団体からは、「市民活動が、行政からの委託事業を受けることにより、本来の目的を失ってしまう」という危惧の声になります。
この度、「市原市協働によるまちづくりルールへの提言書」の案が出されました。
本来、協働とは個別の政策に関する策定過程や実施過程における手法の一つであり、市民と行政の関係の基本は「協働」ではなく、「行政は市民の信託によって成立する」ことです。市民が主権者であり、自治体の長・議会は市民の代表であり、職員・行政機構は市民の「代行機構」です。しかしながら現在使われている「協働」は読んで言葉の如く協力しましょうとの意味になっています。
そこで改めて「協働」を問い直すために、何点か伺います。
1. 現在、市民課の「NPO・ボランティア推進室」と「まちづくり課」の二つの窓口がありますが、これを一本化するお考えはないでしょうか?また、「市民活動の相談・協働サポート窓口」との関係もわかりにくいものとなっています。市民にわかりやすく統合整理する必要を感じますが、いかがでしょうか?
2. 「協働によるまちづくりを実現していくための提言」に「協働のいちはら まちづくり会議」の設置が書かれています。「市民が主体」とありますが「市民」とはどのようなメンバーを想定されているのかお聞かせください。また、市役所各課に「協働」担当職員を配置するとありますが、本当にそんな職員が必要なのでしょうか、かえってわかりにくくなるのではないでしょうか?
3. 市民活動団体が課題としてあげているのは「人材不足」「情報不足」「資金不足」の3つだといわれています。その内の「人材」の育成に対して市民向けの講座や研修を開催していく必要があると認識されておられるようですが、見解をお聞かせください。
4. また「情報不足」は市民活動の拠点となる市民活動センターの充実で解消されると考えますが、市民活動センターの活性化についての方針などありましたら、お聞かせください。
5. 「資金不足」に対して市川市では市税の1%を活動団体に寄付できるという選択肢を作りました。本市も市川のような制度を導入する意図があるかどうか、お聞かせください。
以上5点お聞かせください。
4.第4次市原市高齢者保健福祉計画について
介護保険制度も6年目を迎え、介護の社会化も浸透して来ました。その結果、眠っていたニーズを掘り起こし、介護保険の国・市町村負担も予想を超えて膨らんできて、多くの課題も見えてきました。
昨年は介護保険の大幅な見直しが行われ、介護予防重視型に移行し、新たなサービスメニューも提示されました。しかし住み慣れた地域での生活を支援するという地域密着型サービスは、通いを基本として必要に応じて短期間宿泊できる小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護など、いずれもこれまでより人手を必要とする事業です。ケアの質の確保、また、それで果たして経営が成り立つのか不安です。国では施設整備を37%に抑えるとの方向を打ち出しています。今後更なる在宅福祉の充実が求められていますが、これらは全て市町村の責務になっています。
そこで3点伺いますが、
1点目、地域密着型サービスである小規模多機能型居宅介護事業の必要数をどれくらいと見込んでおられるのか、今後、地域包括支援センターの整備をどのように進めていかれるのか、お聞かせください。
2点目、今回の計画書の冒頭、基本的な考え方のところに「誰もが、生涯にわたってその人らしく、生きがいをもって暮らせる ともに支えあう福祉社会の実現のため、市原市地域福祉計画との連携を図る」とありますが、具体的にはどのような連携を想定しておられるのか、お聞かせください。
3点目、今回の見直し案をみて、名称は変わってもサービス事業の中身はほとんど変わらないのではないか、という印象を受けました。内容に変化があるのか、サービスの低下がないのか、利用者にとっては何より気になるところです。もしも介護保険内で対応できないところが生ずるのなら、市単独事業ででも不足を補う必要があると思いますが、サービス内容が後退するのがあるのか、お伺いします。
5.改訂市原市環境基本計画について
平成9年度版の市原市環境基本計画は、いわば理念条例というべき内容でした。今回の改訂版はそれを一歩前進させた、分かりやすく具体的なものになっていると評価します。
また、上位計画である総合計画との繋がりも明確であり、目標値や市民事業者の行動指針も記されており、後は実行するのみとなっております。
さらに、この計画を実効性あるものにするため環境基本計画推進委員会を立ち上げ一体的に推進するための協議を行うとの事であり、大いに期待するものです。
この環境基本計画について3点お伺いします。
分野別の目標・指標・施策の方向について伺います。
市原市は妙香の廃棄物埋立跡地や菊間の硫酸ピッチなどの「負の遺産」を抱えています。中でも土壌汚染は何年か経ってから水質に影響を与えます。環境基本計画書では地下水の水質汚濁に係わる環境基準の達成率が平成15年100%で目標値も100%になっています。これでは将来出てくる水質の問題に踏み込んでいるとは思えません。これらの負の遺産対策をどのようにされていくのでしょうか、これらは県の管轄でもありますが、今後の取組みと現在の進捗状況をお聞かせください。
残土・産廃問題に関しては国の法改正に待たなければならないことも多いわけですが、これ以上違法な残土処分場を作らせないためにも遊休農地の活用の問題、緑の保全そして残土の適正な処理など、県行政の分野であるところも多いのですが、市としてもきっぱりとした見解を持って環境保全に取り組んでいかなければなりません。今回残土条例の見直しとありますが、具体的な見直し内容をお聞かせください。
「環境にやさしいライフスタイルの実践」に掲げられている環境教育や環境学習の対象者は誰を想定しておられるのでしょうか、是非とも子どもたちに教室の中ではなく、体験として森や里山で遊ぶ環境学習を行っていただきたいと思います。
自然に恵まれた南部の子どもたちはホタルやカブトムシに接する機会はあると思いますが、団地に住む子どもたちはその機会がなかなかありません。学校教育の視点から見解をお聞かせください。
6.子育て支援について
子供を生み育てることが困難な社会では、若い世代はこどもを産めません。「子育てはつらい、損ばかりする」と思わないような社会づくりが子育て支援には欠かせません。
それと夫が子育てに参加するには、職場で残業をしなくてもよい働き方が求められています。遅蒔きながら、企業が子育て支援策として勤務時間を短縮できる制度などをようやく導入し始めました(日本経済新聞2006年2月26日付け)が、本来ならば、社会全体でゆとりのある生活が出来、家族と一緒に夕食がとれるようになるのが理想です。しかしながら、そうではない現実があるのが今の世の中です。
現在、多彩な子育て支援のメニューがあり充実していることで知られるカナダでは、子育て支援に1ドル惜しめば、後に学校中退や失業、薬物中毒など、さまざまな社会的問題が生じて、結局7ドルのツケを支払うことになる、という研究が1980年代初頭に発表され、その考え方に基づいて、子育て支援の充実が積極的に図られるようになったとのことです。
また、「子育て中の母親こそやさしく労わらなければならない」との考えの元で、夫の子育て参加も当り前に行われ、親子が自由に集える場の提供がなされ、子育て中の母親が孤立する状況など考えられないとのことです。初めて親になる人に対しては「参加者中心型の親講座」も行われているそうです。親になるために講座を受けたり、研修を受けたりするなど、古い世代にとっては信じられないことかもしれませんが、今の核家族化が進行した日本にあっては、こうした親になるための教育と訓練の場が本当に必要とされています。家庭の子育て力の低下が深刻になっていますが、批判するだけでは、途方にくれるばかりの深刻な子育て現場は改善されません。
わが国でも、東京都、浜松市、宮崎市、山口市などでは、公民館や保健センターでこうした講座が、すでに実施されています。市原市次世代育成支援行動計画の中には子育て支援員活動や家庭・地域に開かれた幼稚園・保育所、子育て支援センターの相談窓口の設置があげられています。
そこで質問です。さらに、もうひとつ、保育付きの「親講座」もまた必要と考えます。見解をお聞かせください。
次に、次年度予算でファミリーサポートセンターの会員組織設立の予算が組まれているのは評価しますが、どこの自治体でも支援希望者は多くても支援にまわる提供会員が少ないと聞いております。市原市では支援提供者確保のために、どのような対策を考えておられるのか、お聞かせください。
最後に、公民館等で行われる「子育て会」について伺います。
各コミュニティセンターや公民館などで、社会福祉協議会、子育て支援員や民生委員、町会役員による子育て教室がひらかれています。ボランティアと言っても子育て支援員は市長から委嘱を請けて子育て支援活動を担っている制度ボランティアです。この「子育て会」はいずれも皆さんの善意で成り立っていて、それぞれの地域に応じ週1回のところから、また必要に迫られ週に3回のところもあります。週3回の地域ではボランティアの範疇を越え、これからも継続させていくには、何らかの支援をしていかなくては長続きしないのではないかと危惧しています。
是非とも当事者である支援員の声を聞いて支援していくべきと、考えますが見解をお聞かせください。