平成29年度 第1回市原市議会定例会
代表質問 小沢みか
先月、たまたま千葉大学で熊谷千葉市長のご講演をお聞きする機会がありました。「千葉市の目指す地方創生」というテーマで、重点戦略の筆頭に挙げられたのが、『ちば共創(競うのではなく、共に創る)都市圏構想』。東京でも地方でもない新しい価値観とライフスタイルの自立圏域を市原市や四街道市と共に創るというものでした。小出市長が昨年来様々な主体との連携に自ら足を運んで積極的に取り組まれている想いと重ねて、非常に明るい気持ちになりました。
また、昨年行われた「事務事業の総点検」も、行財政改革、職員の意識改革、市民自治の醸成の3点に大きく貢献する取り組みとして、私たちは大変評価をしています。
事業を始めるとき、あるいは施設を作るとき、何か市民のためという目的があって、事業や施設はその手段のはずだった。しかし、いつの間にか事業の運営や施設の維持自体が目的になってしまう。そんな逆転がまだまだ多いのではないでしょうか。
そうならないためにも、職員の皆さまには、常に「28万市民」という総体ではなく、目の前の市民一人ひとりから出発するという発想を持って、行政サービスにあたっていただきたい。
総合計画がスタートする来年度からがいよいよ小出市政の正念場となります。私たちも、襟を正して二元代表制の下でその使命をしっかりと果たしていきたいと思います。
1.総合計画について
(1)実行計画の果たす役割について
実行計画は、施策の成果や東京オリンピック・パラリンピックの動向も見据えて2019年度に見直し、その次は概ね2023年度前後に見直すとされています。つまり、現在示されている第1次実行計画に続き、第2次・第3次が控えているということになります。
基本構想では、2026年の市の姿を「市民誰もが夢を抱き、活躍できるまち」としていますが、その都市像の実現に向けて、各実行計画にそれぞれどのような役割を持たせるのか、実現までのストーリー(手順)をお聞かせください。
特に、第1次実行計画ではどんな課題を克服し、何を達成されたいのか。3年間で最低これだけはと市長がお考えになっている点についてお聞かせください。
答弁 市長
私は、市原市総合計画基本構想において、「ひと」と「地域」が主体となって、新たな未来を切り拓くまちづくりに挑戦することを掲げたところであり、その施策の方向性を基本計画でお示ししたところであります。
実行計画は、基本計画に掲げる施策の方向性に基づき、「変革と創造」の理念のもと、常に見直しを行いながら、目標達成に向けて取り 組む、3年間の具体的な事業を示すものであります。
第1次実行計画では、10年間の総合計画を着実に推進するため、人口減少克服への施策効果を早期に発現させ、好循環を生むことを主眼に、スピード感を持って取り組んでまいります。
その中では、東京オリンピック・パラリンピックの開催など、大きな時流をしっかりと捉え、ひとの活躍から新たな誇りを創生する展開につなげてまいります。
この流れを活かし、第2次以降の実行計画 では、好循環をより確かなものへと高めつつ、「変革と創造」により、時勢に適した事業を 生み出し、基本構想に掲げる「地域主体のまちづくり」の具現化に向けた取組を、順次展開 してまいります。
このような流れを踏まえ、第1次実行計画では、産業の強化による雇用創出や地域資源の活用による交流促進、結婚から子育て・教育への切れ目のない支援など、「市原市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げる施策に取り組んでまいります。
加えて、ひとの活躍と地域主体のまちづくりに向けた、市民活動への支援の強化や、学校と地域の連携、さらに、これらを支える安心・安全な都市機能の整備に向けた、救急医療体制の整備や、防災対策の強化、都市基盤の強靭化などを推進してまいります。この第1次実行計画の成果は、総合計画全体の成果を大きく左右するものであります。
総合計画のマネジメントシステムにおいて、市民の皆様とともに成果を検証し、「変革と 創造」による進化を加えながら、目標実現に 向けて取り組んでまいります。
スタートダッシュで前のめりになって転んでしまったら、潔く退く。トライ&エラーを認める勇気がこれからは必要であると思います。
また、敢えてもう1点申し上げると、市民が活躍するための基礎固めとして、まずは3年間、市民と行政との信頼関係をしっかりと構築すること。そのために徹底した情報公開と丁寧な対話を積極的に進めるよう、改めて要望します。
(2)財政フレームについて
基本計画に歳出フレームを示さない理由について
市民自治の流れの中で、限られた財源を真に市民に有益な施策へ振り向けるためには、市民とともに将来の財政動向を踏まえ、検証しながら投資計画を立てなければなりません。実行計画は「予算との連動」を大きな特徴としていることからも、総合計画で財政フレームを示すことは非常に重要です。
しかし、基本計画案の財政フレームを見ると、歳入の部のみで、歳出の部が示されていません。先ほど申し上げた主旨からいえば、人件費・扶助費・公債費などの義務的経費や投資的経費など、歳出の大まかな見通しを示すのは当然だと思いますが、なぜ示されていないのでしょうか。
答弁 (企画部)
財政フレームは、基本計画における施策の実効性を確保するため、行財政改革や施策展開による効果を見据えながら、現時点において、一定の条件の下、計画期間内に活用可能な財源を見通したものでございます。
基本計画は、このフレームの範囲内において実施可能な施策を掲げているものであり、実行計画も同様に、フレームを逸脱しない範囲において事業を選択しているものでございます。
このように財政フレームは、計画策定における枠組みを示すものであり、身の丈に合った計画行政を担保するものであるため、予算規模として歳入分のみをお示ししております。この財政フレームにつきましては、社会経済情勢や国の制度改革などに大きく左右されますことから、毎年度において見直しを行い、実行計画に反映してまいります。
また、予算と連動する実行計画におきましては、平成29年度当初予算とセットでお示ししており、計画期間3ヵ年分の歳出に係る総事業費を明示させていただきました。
市民との対話を重視し策定した総合計画は、単なる政策集ではなく、市民と行政による様々な政策合意と形成手続のシステム化がなされ、周到に実行されてこそ総合計画であると認識をしております。
このような観点から、変革と創造の基本理念のもと、2019年度までに計画・予算・改革の一体化を図る新たなマネジメントシステムの構築を目指すこととしており、実行計画の財政フレームのあり方や見直しについて、今後の運用の中で、十分検討してまいります。
人口の展望値で見通しを立てることについて
総合計画の財政フレームは、昨年10月に公表された「長期財政収支見通し」を下敷きにしていることと思いますが、この長期財政収支見通しは、昨年度(H27年10月版)の見通しから大幅にずれています。例えば、H36年度の値で見ると、収支差がマイナス68億からマイナス21億へと3倍もの差額が生じています。
その大きな要因の一つは、12月議会でもご答弁があったように、計算の拠り所である人口が、前回の推計値から今回は展望値に変更されているということにあります。
以前、特別委員会の中で事業計画を立てる際の人口の考え方について質問した際、「ソフト事業は展望値、ハード事業は推計値を基にする」とのお答えでした。これについてはリスクを極力回避するためと理解をしましたが、そうであれば、ハードを含むすべての事業を行う上で最も基礎となる予算・特に歳入について、展望値を基に見通しを立てるのはそれこそリスクが大きいのではないでしょうか。このあたりの考え方についてご答弁をお願いします。
答弁 (企画部)
昨年10月に公表いたしました財政見通しにつきましては、今後10年間の基本計画を策定する上での財政フレームを意識した中で、推計を行ったものでございます。
したがいまして、各種施策効果を反映させ、期待的な要素を含めたものとし、人口についても人口ビジョンにおける展望値を用いたところであり、見通しの中ではその旨を推計の前提条件としてお示ししたところでございます。
今後は、中長期的な推計にあたっては、人口に加え経済成長などさまざまな条件があることから、上限値、下限値あるいは中間値などの推計を行い、これをお示しすることなども一つの案として検討してまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、この収支見通しの試算は、定期的な見直しを行い推計期間の延伸をしていくこととしておりますので、ご指摘の点にも留意し、工夫してまいりたいと考えております。
財政フレームの歳入と歳出の考え方について
基本計画の財政フレームの歳入を見ると、一般会計総額900億円維持のために、10年間で主に市税24億などが減った分を、譲与税・交付金・交付税、または国・県支出金を増やして帳尻をあわせているように見えます。しかし、確実に人口が減少する状況下で、実際に900億円維持は可能なのか、ご見解をお聞かせください。
答弁 (企画部)
まず、市税の減少と国県支出金についてでございます。財政フレームにおいては、生産年齢人口の減少に伴う市税収入の減少を見込んでおります。
一方、国県支出金は、社会保障関連経費や建設事業費等に対する国・県からの支出金であります。増加分の主な要因といたしましては、高齢化等の影響による扶助費の増大に伴う国県支出金の増加を見込んだものであります。
従いまして、この両者は互いに人口動向という点では相関関係にあるものの、調整できる性質ではないものでございます。基本計画でお示しいたしました財政フレーム毎年度一般会計900億円程度の維持についてでございます。
この財政フレームは、人口27万人の維持と交流人口500万人の目標実現に向けた好循環による政策効果を見込むとともに、「変革と創造」の基本理念のもと、定期的な見直しと行財政改革により強固な財政基盤を確立し、時代の変化を見据えた新たな施策を創出し続ける「常に進化する計画」の運用によって維持されるものと推計したところでございます。
このことから、新たなマネジメントシステムにおいて、財政フレームにつきましても、十分精査し、計画の着実な実行に努めてまいります。
それは現在の財政制度に則って見込んでいるだけ。国の人口全体が減る中で、地方財政全体のパイも縮小します。
次に、本当は基本計画の財政フレームをベースに質問したいのですが、歳出のフレームが示されていないので、「長期財政収支見通し」の数値を基に伺います。
歳出の部を見ると、10年間で扶助費が55億、繰り出し金が31億増額の一方で、普通建設事業費が29億円減額されています。そこで伺いますが、この間の建設事業費のシミュレーションの根拠となった事業にはどんなものがあるのか。うち公共施設保全経費は、どの程度を見込んでいるのかでしょうか。
答弁 (財政部)
長期財政収支見通しは、刻々と変化する景気動向や、議員のご指摘もありましたが、毎年度の税制改正や社会保障制度の見直しなどから、その推計は困難な点があるため、一定の仮定に基づき機械的に推計を行っております。
ご質問の、普通建設事業につきましては、平成 29年度以降の総合計画が策定中という状況から、継続事業など推計時点で確定している事業費はこれを反映し、そのほか、策定済の橋りょうなど各種インフラ資産の長寿命化計画については計画額を、毎年経常的に実施する区画整理事業等については、近年の平均額を積み上げ推計しているところであります。
また、公共施設保全のための経費をどれだけ見込んでいるかにつきましては、市営住宅の長寿命化計画に掲げる額を除いては特段、現時点で含めておりません。
公共資産マネジメントに係る経費を見込まないことについて
昨年3月に策定済みの公共資産マネジメント推進計画では、今後10年間に築30年を超える老朽化施設の改修時期が集中し、更新費用は40年間で最もピークを迎えるとしています。ハコモノのピークは2025年度、インフラのピークは2021年度。いずれも総合計画期間内です。この重大なプロジェクトを、なぜ財政収支見通し、もっと言えば財政フレームに連動させないのですか。
答弁 (財政部)
昨年3月策定の、市原市公共資産マネジメント推進計画では、本市の公共施設の建設年度と耐用年数を考慮した機械的な算定では、更新費用が今後10年間でピークを迎えるとしております。
しかしながら、本市の財政状況から現状のままでの更新が困難であることから、推進計画では、公共施設の総量縮減や予防保全によるトータルコストの縮減を図ることなどを展開していくこととしております。
現在、これらの実現に向けた公共資産再配置基本方針などを策定中であり、これらを踏まえた事業費の規模が不透明であることから、財政見通しの中では計上しなかったところでございます。
なお、この点につきましては、長期財政収支見通しの中で、今後の見通しのリスクとしてお示しをしたところでございます。
一般財源がリーマンショック直前と比べ50億近くも減少し(H29予548億、H20決592億)、扶助費は一貫して増加し続ける状況で、辻褄合わせで投資的経費の削減を行っています。この見通しでは市民の理解が得られないのではないしょうか。
H29年度予算案でも、すでに普通建設事業費が長期財政見通しの数値よりも9億以上も上方修正されています。たった3ヶ月でこんなにブレるのであれば、財政収支見通しを公表する意味はどこにあるでしょうか。
要するに私が言いたのは、厳しい現実をつまびらかにし、誠意をもって市民に説明する姿勢に欠けているのではないか、ということです。実行計画の原動力である「ひとの活躍」を引き出せるかどうか、先に申し上げた信頼関係の構築の根本にかかわる問題です。
市長も「新たな総合計画においては、現実を直視し、身の丈に合った目標を定めていくことがまず必要である」と述べられました。身の丈にあった計画かどうか、市民とともにチェックし早期に改善していくためにも、取り繕うことのない財政予測とわかりやすい情報開示に努められるよう求めます。
(3)若い女性の転出超過を抑制するための施策について
転出超過の実態を近隣自治体との比較数値で見る
昨日も質問がありましたが、私はそれを引き取って更に細かい分析を基にお聞きしたいと思います。
基本計画素案では、27万人維持のために、20~30代の若い女性について、現状推計よりも毎年70人程度ずつ転出超過を縮減する必要があるとしています。因みに、3年前2014年で347名、一昨年2015年は300名、昨年2016年で199名転出超過しています。
当局ではもちろん把握済みと思いますが、京葉8市並びに袖ヶ浦・木更津の10市で比較すると、20~30代の女性転出超過人数のダントツ1位が市原市で199 人。2 位は八千代市64人、3位 千葉市16人で、他は全て転入超過です。
ところが、一方で意外なデータもあります。20~30代女性の転出率(転出数 ÷ 同人口)は市原市が最も低いのです(7.3%)。
市原市は転出する割合が低いのに、結果的には転出超過人数が多い。ということは、転出超過の主な原因は、転出が多いためではなく、転入が少ないことにあります。もっと言えば、市原市は市外の若い女性から移住先として選ばれていないという状況が浮かび上がります。
そこで伺います。当局では若い女性の転出超過の原因が転出ではなく転入にあるということについて、どう考察されているのでしょうか。
答弁 (企画部)
昨年度策定いたしました人口ビジョンによる転入者アンケートなどによりますと、転入のきっかとして、約5~6割が「仕事の都合」と回答しており、また、転入者が「市原市を選んだ理由」でも、「職場や学校に近いから」と回答した人の割合が多い状況にございました。このことから、女性の転入が少ない理由として、女性を取り巻く就労環境の影響が大きいものと推察しております。
本市の臨海部を中心とした2次産業では、男性の多い職場環境であり、女性の就業割合は極めて少ないこと、また、女性の就業割合が比較的高い第三次産業の事業所が、本市では近年、減少傾向にあることが主な要因であると分析をしております。
さらに、東京に近く一定程度の都市的利便性、豊かな自然環境と文化など、本市に関する様々な情報の発信が、不足しており、工業都市としてのイメージが強すぎるため、都内居住等の20代、30代の女性には、選んでいただけていないものと推察しております。このため、基本計画においては、これらに対応する施策の展開を図り、女性に選ばれるまちづくりを目指していく考えでございます。
この課題解決につながる施策展開が基本計画から今一つ伝わってこないのが気になります。
例えば、昨年女性議員の会こすもす俱楽部で提案させていただいた、公共交通の利便性の確保や、駅周辺のイメージ刷新などが、まさに変革と創造に資する効果的な戦略だと思いますが、総合計画ではどのように具現化されていくのでしょうか。
答弁 (企画部)
市原市議会女性議員の会 こすもす倶楽部の皆様から、昨年7月、女性の視点から捉えた多くの御提言をいただきました。女性を対象としたアンケートなどから導き出された、大変貴重な御意見と受け止めており、基本計画への反映について、十分検討させていただきました。
まず、交通利便性の向上についてでございますが、基本計画においては、本市の特性に応じた多極ネットワーク型コンパクトシティの実現に向け、地域公共交通網を見直し、地域全体を見渡した面的な公共交通ネットワークの構築に取り組むとともに、交通空白・不便地域における公共交通システムの継続的な支援により、生活利便性の向上を図ることとしております。
このことから、バス運行対策費補助事業やバスロケーションシステム整備費補助事業などの取組を推進してまいります。
また、今年3月のJRダイヤ改正により、総武線経由の東京行き直通快速が1往復増発され、毎時 1本の直通快速が運転されることとなりました。併せて、姉ヶ崎駅に夕刻下りの特急列車の停車が実現いたします。
今後は、来年度策定する地域公共交通網形成計画や都市計画マスタープランにおいて、より具体的な方向性と施策の展開を示してまいりたいと考えております。
次に、駅周辺の魅力の向上についてでございますが、御提言にもありますように、若者や女性が歩いて楽しめるまちづくりを進めていくことが大変重要であると認識しております。
このため、JR3駅周辺商業活性化事業や、立地適正化計画による多様な都市機能の誘導などにより、生活利便性を高めるとともに、賑わいと魅力の向上を図ってまいりたいと考えております。
このような取り組みにより、「若者・女性・子育て世代に選ばれるまち」、そして「その子どもたちにも住み続けてもらえる」まちづくりを目指してまいります。
基本計画にもいろいろと散りばめられているのでしょうが、施策パッケージとしてわかりやすく示されていません。若い女性の社会移動動向は、市の未来を考えるうえで非常に重要な意味があります。男性主体・男性主導のまちというイメージから、女性にとって好ましいイメージへ。これが市原市の目指す姿であると私たちは考えています。
しかし、計画の策定にあたり、肝心要の当事者の声を実際にどの程度聴取されたのか、甚だ疑問です。未来創生ミーティングや説明会も、その対象は従来と変わらず年配の方や男性が中心でした。
今後、総合計画に関する市民フォーラムなども開催すると伺っていますが、当局におかれては、それらを含めあらゆる機会を捉えて、若い女性の声を聞く機会を意識して設けていただくよう要望します。
2.H29年度当初予算案について
(1)「財源対策」の方針について
財政調整基金の取り崩しについて
当初予算案の概要の中の「予算の特徴」に示されているいわゆる「財源対策」について、まず財政調整基金の取り崩し10億円に関して伺う。
財調は残高目標40億円確保を目標に、「恒常的な取り崩しを抑制する」としながらも、H24年以来6年連続とすっかり慣例になっています。「長期財政収支の見通し」でも、財調繰り入れを毎年10億円と見込んでいます。
29年度は決算時余剰金積み立て無しでも残高44億円が確保されていますが、今後が心配。残高40億円確保のために決算余剰金を当て込んでいるのでしょうが、それには毎年余剰金20億が必要になります。どのようにして残高を維持するおつもりなのでしょうか?
答弁 (財政)
議員ご指摘のとおり、平成24年度当初予算編成以降、連続して基金からの繰入を行い予算案を編成しております。
財政調整基金につきましては、災害など不測の事態や歳入の急激な減少に対応するため設けられており、特に本市においては、景気の影響を受けやすい税収構造の特性からも一定の残高確保が必要と考えており、財政運営の基本的な考え方として40億円を下限値として設定しているところであります。
ここ数年の当初予算編成時点では、その時々の税収見込みや財政需要を踏まえ取り崩している状況にございますが、下限とする40億円は維持できており、新年度の予算編成におきましても、次年度での決算積立を考慮しない場合においても、40億円以上を確保したものであります。
残高確保の方策といたしましては、毎年度、前年度決算剰余金の半額以上を確実に積み立て、翌年度の取り崩し額はその積立額以下とすること、さらには税収の上ぶれ等が見込まれる場合には、予算に計上した取り崩しを抑制することなどにより、残高確保を図ってまいります。
なお、ここ5年程度の決算剰余金の見込みでは、20億円を超える剰余金が発生している状況にございます。
財調はそもそも災害など万が一の時に崩すためのものであって、最初に10億円の余剰を見込むくらいであれば、その分、臨時財政対策債など市債を減らした方がいいのではないでしょうか。
実質的には財調を積み立てる財源を、財調を取り崩して確保しています。この編成方法は、当初予算の一般財源不足を補うためだと思いますが、そもそも歳入の予算規模に見合わない歳出予算編成を続けていることが根本的な問題ではないでしょうか。
臨時財政対策債の活用について
次に、臨時財政対策債の活用について伺います。H29年度は交付団体となることを見込み、1.5億円計上されています。
臨時財政対策債の発行ももはや「臨時」ではなく、交付団体ともなれば財調の取り崩し同様恒常化しています。
後年度の返済分は交付税措置されると常々おっしゃっていますが、地方財政の借入金残高は臨財債分だけでも50兆円を超え、地方交付税の総額はここ10年間頭打ちです。国がこのような苦しい状況にある中で、交付・不交付すれすれの市原市が、この先交付税措置の恩恵にあずかれるとはとても思えません。
市原市のH26年度決算統計の地方債現在高を見ると、臨財債分は154億円に上っており、債務残高の3割をも占めています。
ここで改めて、市の臨財債に対するスタンスを問いたいと思います。すべて交付税とみなして(国が100%面倒を見ると考えて)できるだけ発行するのか、それとも実質的な地方債と考えて最小限の利用にとどめるのか、どちらの立場をとるのでしょうか。
答弁 (財政部)
はじめに、財政調整基金の取り崩しを抑制して地方債を借りればいいのではないのかとのお問い合わせでございますが、建設事業債が基本でございますので、対象事業がなければ財源が足りないからといって、起債を借りることができないということが、地方財政の制度でございます。
次に、臨時財政対策債についてお答えいたします。
}臨時財政対策債は、地方固有の一般財源である普通交付税の振り替わりとして、発行が可能となっております。
臨時財政対策債の仕組みといたしましては、その元利償還金に交付税措置がされるわけでありますが、普通交付税算定上の基準財政需要額に所要額が算入されるというものであり、その額そのものが交付されるというものではございません。特に、普通交付税の交付・不交付の境界線上にある本市にとりましては、不透明と言わざるを得ず、この点から、補助金と同様な補てんが確実にあるとの認識にはありません。
しかしながら、臨時財政対策債発行額の基礎となる普通交付税は、全ての地方自治体が一定の行政水準を提供できるよう必要な財源を保障するものであります。このことから、臨時財政対策債の活用が可能な中で、これを活用しないことは、国が定める水準での行政サービスの提供が困難となることも考えられます。
また、現在、借り入れに係る利率は過去最も低い水準にございます。これらのことを総合的に考え合わせ、現時点においては、その時々の行政需要と税収等の収入状況等を踏まえた上で、可能な範囲で活用してまいりたいと考えております。
交付・不交付の線上にある市原市にとって、臨財債は実質的な地方債です。同じ意味で、私は7割交付税措置とされる緊急防災・減災事業債なども同様だと思いますが、臨財債の場合は言うなれば職員給与など経常的経費に充てることができるため、建設地方債と違って起債の恩恵を受ける世代が限られ、世代間の格差をさらに広げることになります。
余裕のない親のお金を当てにして借金を繰り返す子どもと言ったら言い過ぎかもしれませんが、安易な借金を前提とした財政運営は、財政の硬直化をいっそう招くことになります。
「財源対策」について
そもそも「財源対策」とは、一般的な感覚では、収入を増やす或いは支出を抑える方法を模索するのが先決であって、それでもやむなしの場合に初めて貯金を取り崩すなり借金をするのが筋です。
事務事業の見直しや行財政改革で計1億7000万ほど削減努力されるということですが、まだまだ民間に比べて検証が甘く大雑把な部分が沢山あるのではないでしょうか。
アウトカムに照らして効果的な事業が厳選されているか、無駄はないか、これから予算委員会でも審議されるとは思いますが、いずれにせよ「財源対策」は貯金の取り崩しや借金ありきではないという姿勢を、もっと打ち出していただきたいと思います。
(2)健全な財政運営のための指標について
当初予算案には、各財政指標が説明され、昨年度と比較した値も合わせて示されています。しかし、目標値については現在のところ、市債発行額50億円まで、財政調整基金残高概ね40億円確保の、2点くらいしか明らかにされていません。
夕張市の財政破綻をきっかけにH19年6月に地方財政健全化法が成立しましたが、イエローカード団体になるのは余程のことで、健全化判断比率の基準値は、実際はほとんど市の財政運営の参考にはなりません。
そこで、財政規律を図るために、各々の財政指標について当局が適正と考える独自の値を、ぜひ確認しておきたい。ご答弁ください
答弁 (財政)
財政指標は様々ございますが、大きくは現在の収支、資金繰りの状況を示すフロー指標と、将来の負担を示すストック指標とに区分されます。
市債発行と財政調整基金残高はいずれも、将来負担の抑制やリスク対応に係るものとして、本市独自の目標数値としてお示ししているところでありますが、新年度予算案ではいずれもこの数値をクリアすることができております。
その他の指標につきましては、ストック指標のうち将来負担比率、フロー指標のうち実質公債費比率は、地方財政健全化法により健全化基準が設けられておりますが、これらは大きくクリアしております。
このほか、経常収支比率、実質収支比率等、地方債依存度ほか多くの指標がございますが、他団体との比較では、ストック指標である将来負担比率や地方債残高は本市は明らかに良好であり、その一方で、フロー指標である経常収支比率については、他団体より悪い傾向にございます。
現段階において、本市としてこれら各指標の目標値は持ち合わせておりませんが、今後、市民と財政状況を共有する観点からも、一定の目安・目標とする数値を検討してまいりたいと考えております。
なお、指標は、他団体との比較を行う中で特徴や課題が見えてくる部分がありますことから、まずは既存の指標での基準を設定してまいりたいと考えております。
その上で、独自の新たな指標については、本市に適合し、市民とも共有する上で分かりやすいものとして先進自治体の状況等を参考にしながら、調査研究を進めてまいりたいと考えております。
H19年12月、岐阜県多治見市が全国に先駆けて財政健全化条例を成立させました。条例では、地方財政健全化法4指標に加え、独自の財政判断指標を設けています。以来、同様に条例を制定するなどして独自基準を定める自治体が徐々に増えています。
市原市も、近隣自治体や同一経済圏の類似団体などと比較検証したうえで、市民とともに財政運営に取り組めるよう、その目安となる指標の設定と目標値を定め、公表していただきたい。
高齢化を伴う人口減少が進む厳しい時代にあっても、常に福祉の向上を目指して安定した行政サービスを供給していくために、財政運営でも更に一歩進んだ仕組みの構築を求めます。