令和2年 第1回市原市議会定例会

R2年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、
総括的な質疑:小沢みか

1.新型コロナウィルス感染症対策に伴う市政への影響について

新型コロナウィルス感染症でWHOがパンデミックを表明し、社会経済の混迷が日に日に深まっています。このまま感染症対策や自粛ムードが拡大・長期化すれば、市原市においては、昨秋の台風・豪雨災害によるダメージも重なって、各方面に相当な打撃を与えることは想像に難くありません。

そこで、予算編成後に刻々と状況が変わっていることから、現時点での見立てについて伺います。新型コロナウィルスによる一連の社会状況が市原市の地域経済に与える影響、並びに来年度の歳入への影響及び対応策について、可能な限り具体的にお聞かせください。

(経済部長)

本市臨海部に立地する企業は、国内はもとより、グローバルな企業活動を展開しておりますことから、サプライチェーンの一端を担う中国の生産活動の停滞等は、臨海部企業にも徐々に影響が出始めてきているとの情報を確認しております。

また、市原商工会議所が開設している「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」には、飲食店における宴会等の自粛や、イベント中止に伴う観光施設への予約キャンセルなどの影響による経営相談が日ごとに増してきており、このような状況が長引くと、本市の地域経済に大きな影響を及ぼすものと推察をされます。

このような中、国は中小企業に対する資金繰りや雇用調整に関わる支援策を拡充したところであり、市といたしましても、市原商工会議所と連携し、新型コロナウイルスの影響を受けて、業績の悪化が見られる事業者に対し、これらの支援策や補助制度の橋渡し等、事業者に寄り添った支援に努めているところでございます。

今後、コロナウイルス感染症による影響が長期化した場合には、国からも更なる支援策の拡充が見込まれますことから、これら支援策の情報に注視するとともに、県や商工会議所と連携を密にし、市内事業者への影響に関する情報の把握に努め、地域経済への影響を最小限に食い止めるよう、支援を実施してまいります。

(財政部長)

感染症拡大による経済の停滞は、本市財政に様々な影響を及ぼすことは避けられないものと考えております。

特に歳入面でありますけども、法人市民税は、景気の影響を受けやすく、感染症に加えまして、昨今の原油価格の急落、円高は、石油精製・石油化学を中心とする本市の産業の特徴から、税収に大きな影響を及ぼす恐れがございます。

しかしながら、地方税は、個人市民税や固定資産税をはじめ、前年の所得あるいは資産に対する課税などでありまして、経済や景気動向には直ちに影響をうけない比較的安定した財源となってございまして、現在ご審議いただいております令和2年度予算案では、市税全体の93.4%がこうした比較的安定した税でありますことから、現時点では税収の影響は限定的なものと考えてございます。

一方、税以外の歳入では、歳入全体の6.1%を占める地方消費税交付金は、生産活動・消費動向に直接連動する歳入でありますことから、その動向には十分注視してまいります。

次に歳出面で申し上げますと、国において新たな給付金など、感染症拡大に伴う各種施策が出た場合には、これに呼応した財政出動には的確に対応してまいります。

また、過去の例からは、景気の悪化とともに中間納付で過払いとなった法人市民税の過誤納還付というものが大きな影響と出るものと懸念をされるところでございます。

なお、2020年、令和2年度予算の執行への影響でありますが、令和2年が、本市まちづくりの飛躍に向けて極めて重要な年との認識の下、真に必要な施策を計上したものでございますことから、予算案が可決・成立いただきました暁には、事業の執行留保などの措置をとることなく、財政調整基金の活用も含め、目標達成に向けて、着実に推進すべきものと考えております。

ウィルスを抑えることは難しいと考えますが、市民の漠然とした不安感は行政の姿勢一つで大きく違ってきます。市民は何に不安を感じているか、何に困っているか、常にアンテナを高く立てて、早め早めの判断と対応に努めていただくよう申し添えておきます。

2.職員に対する行政経営力の強化について

「未来創造経営力強化プロジェクト」支援委託料3600万円についてだが、通常の職員研修費約1900万円は、ほぼ例年通り別途計上されています。その上に重ねて、総務部ではなく企画部の事業として、全職員に対する研修に3600万の高額の予算組みがされており、しかもコンサルへの委託料とのこと。この事業の意図するところと、具体的な中身についてお聞かせください。

(企画部長)

本事業に取り組む意図としましては、総合計画に掲げる都市像実現に向け、全ての職員が高い志を持って「変革と創造」を実践する組織となるため、従来の手法とは全く異なり、他の自治体でも実践されていない、新たなマネジメント手法を導入することであります。

また、「いちはらイノベーション宣言」による様々なプロジェクトをスタートアップし、「対話と連携」を基軸に地域課題を解決するためには、職員一人一人が主体的に行動し、部門間の連携を図る総合行政による経営力の強化が必要と考え、各種プロジェクトと平行して取り組むことといたしました。

事業内容につきましては、市長が目指す行政経営の理念・ビジョンの明確化、これらを実現するための職員の行動指針を策定するとともに、各部門において組織ビジョンを策定し、具体的な行動・成果へつなげる新たなマネジメントシステムを構築してまいります。

具体的には、職員の意識調査・分析、関係者への聞き取り、庁内対話やワークショップ等をきめ細かく実施するとともに、トータルシステムや人事制度など既存の仕組みとの連携を図るなど、新たな取組となりますことから、専門的な知見を有する事業者に技術的な支援を委託し、本事業が確実に成果を上げられるよう取り組んでまいります。

イノベーションの成否は、実は市民や民間よりも職員が如何に主体的に関わることができるか、にかかっていると思います。そういう意味で、最も要になる事業と感じました。

そこで考慮していただきたいのは、以前指摘したコンサルへの委託の多さに関してです。

プランニング又は市民対話などに係るマネジメントの部門は、極力コンサルに投げずに職員自ら担っていただきたいのです。予算をかけずにスキルアップできる有効な手段と考えるので、ここで申し添えておきます。

意見陳述

では、これより意見陳述を行います。市長並びに執行部におかれては、分科会で申し上げた事項と合わせてご勘案頂くよう予め要望いたします。

(財政について)

R2年度当初予算案は過去最大規模となりましたが、自主財源である市税が伸びを欠き、経常収支比率が高止まりになることが特に気になりました。とはいえ各種指標は順調に改善しており、財政規律は健全に守られると判断したので、これより各々の施策や事業について申し上げます。

(都市戦略部の設置について)

まず、まちづくりのマネジメントを一体的かつ強力に推し進めるために、都市戦略担当副市長を新たに設置し、都市戦略部を創設されることについては、高く評価しています。

H29年当時、総務常任委員会から、公共資産マネジメントを推進するための体制として、市長直轄の組織を設置する旨の要望書を提出し、会派としても一般質問で同様に繰り返し求めてきました。それだけに、今回の組織改編はようやくという想いがあります。

少し遅すぎた感もありますが、その分前例にとらわれないダイナミックな展開を期待しています。

次に、SDGsについて申し上げます。

基本計画の改訂によってSDGsの理念が柱となり、市長からは「SDGsのシンボルとなるまちを目指す」という力強い宣言もお聞きし、嬉しく思っています。

ちょうど1年前の一般質問で取り上げさせていただきましたが、その時の要望以上に積極的に取り組んでいただけることに対して、高く評価いたします。

私は、「誰一人として取り残さない」という理念がもっとも重要だと思っています。SDGsは何か特別な事業を繰り出すということではなく「マイノリティを社会の中心に据える」ということです。

職員一人ひとりがそのマインド・覚悟を持って行政運営にあたるのはもちろん、地元の事業者や市民に対するインフォメーションを積極的に行うことで、機運の醸成に努めていただきたいと考えています。

次に、いちはらイノベーション宣言について申し上げます。

R2年度当初予算案は、様々な新規プロジェクトを立ち上げることで、刻々と変わる時代のニーズやチャンスを確実に捉え、成果につなげたいという市長の意欲が十分に伝わる予算編成だと思います。

ただし、各分野にまたがるこれらプロジェクト関連事業をざっと拾い上げると、総額約2億5千万円にものぼり、その殆どが外部委託または補助金です。

市民や民間を主役に据えるという事は、逆にそれだけ行政の責任が増すという事です。

期待値は大きいがゴール設定が曖昧で捉えどころのない事業に、これだけ公金を投入するからには、常にシビアに効果検証を行い、場合によっては大幅な軌道修正もいとわない覚悟が必要ではないでしょうか。

ビルド(積み上げ)が目立つ新年度予算案だが、持続可能な行政経営のためには、どんな基準で何をいつまでにどうやってスクラップするかという視点が今まで以上に問われている。

次に、加茂学園小中一貫校のグローバル化推進事業 約1600万円について申し上げます。

そのほとんどがALTの派遣委託料で、ALTを学校に常時配置することで、英語教育を充実させるというものです。一見素晴らしい取り組みにも思えるが、敢えて2点指摘します。

1点目は、小規模学級特認校事業とのバランスについてです。

国府小はICTの活用、海上小は英語教育の強化に加え、各々地域の風土を生かした魅力づけによって、複式学級の解消に成果を上げてきました。制度開始から7年、熱意ある現場教師の地道な努力や地元関係者のご協力の賜物であることは言うまでもありません。

ちなみに、小規模学級特認校事業の来年度予算は、2校合わせてわずか9万円。

対して今回のグローバル化推進事業は破格の1600万円。しかも、今後他の学区からの入学も見据えているとのこと。分科会では、同事業による小規模学級特認校への影響や今後の方向性について、十分検討していると判断することはできませんでした。

2点目は、教育予算の配分の考え方について。

例えば同事業が英語力向上のモデルケースで、将来横展開をきちんと見据えた上での財政投資であれば理解できますが、そもそも同事業の目的は、学力の向上よりも、児童生徒数の維持と地域活性化にあります。学力に関する目標値が定められていないことからも、それは明らかです。

教育改革で個性重視の教育へ転換が進み、教師はひとりひとりの児童生徒とより丁寧に向き合うことが求められるようになりました。さらに学習指導要領の改訂で、来年度から小学校の外国語の授業時数が増え、ICT活用スキルなど教育の高度化も進めなければなりません。加えて市原市は全国学力・学習状況調査で平均よりも劣っている状況から、なかなか脱却できていません。

これら喫緊の課題に対し、基礎学力定着講師、日本語指導協力員、部活動指導員、スクールカウンセラーアシスタントや心のサポーターなどこれまで行ってきた外部人材の活用は、市原市にとって教師の負担を軽減し学力向上につながる確かな手応えがある施策と認識しています。

しかし今回の予算案では、これらの拡充はほとんど見送られています。

教育予算に限りがあるのであれば、地域活性化への充当は他の部署に譲って、その分これまでの検証により学習効果が見込める事業や、現に児童生徒や教師の抱える課題を解決する事業に力点を置いていただきたいと考えます。教育予算の配分については今後更なる善処を期待しています。

最後に、看過できない事項について申し上げます。いずれも公共資産マネジメントに係わる問題です。

まず、駐車場 管制装置改修工事費 約1600万円について申し上げます。

梨の木公園駐車場の駐車券発券機・精算機等の管制装置に、老朽化による不具合が生じているため、その改修工事に係る費用。

1997年(H9)の供用開始当時に比べ、周囲の民間駐車場は増え、違法駐車は減少しました。一方梨の木公園駐車場は駅前の好立地にもかかわらず利用台数も収入も減り続け、指定管理料年3700万円の半分も賄えていません。さらに今後はリフト装置の改修も見こまなければなりません。

同駐車場の在り方については、これまでも再三再四議会で指摘されてきました。

来年度はリノベーションまちづくりプロジェクトで、五井会館とその周辺エリアの利活用を一体的に考える動きがスタートします。そして指定管理期間はあと1年を残すのみです。

この時期の性急な改修工事は、まちづくりの自由度を著しく下げてしまいます。当面は現状のまま手動で対応するとして、工事は利活用の方向性が見えてからでも遅くはないのではないでしょうか。

次に、公共施設再配置モデルケース推進事業 約3100万円について申し上げます。

同事業は、八幡宿駅西口の老朽化した6公共施設を複合化し、八幡運動公園側に整備するための調査を行い、事業手法を検討するものであり、R2年度は民間活力の導入の可能性を調査することとしています。

この取組は、市民が主体となって自由な発想を形にするというコンセプトで出発しました。しかし、特に建設予定地については、昨年の第3回定例会でも申し上げたように、市民ワークショップの参加者や地域住民のコンセンサスを得たものではありません。

加えて建設予定地は県の高潮浸水想定区域図で最大3メートルの浸水予想がなされ、周辺の道路は台風やゲリラ豪雨で冠水する路線として市の内水ハザードマップに明記されています。昨秋の台風・豪雨災害を経験してもなお、最もリスクの高い場所に、災害時には現地連絡本部となる公共施設を新築することは理解に苦しみます。

広域対象施設である教育センターと青少年指導センターを、横滑りで八幡に配置する判断も全く根拠に欠けたものと考えます。

最後に、庁舎強靭化対策事業 約4800万円について申し上げます

(R2~3継続事業 1億1000万)

予算額の主なものは、第2庁舎等を現在の敷地内に建て替えることを目的とする基本計画策定支援委託料。こちらに関しても、これまで議会あるいは市民ワークショップなどで様々な指摘があり、合意を得ているとはとても言えない事業です。

例えば、絶対に現在地でなければならない理由は何なのでしょうか。なぜ五井会館やサンプラザ市原といった現有公共施設の活用を検討されないのでしょうか。

ソサエティ5.0はとっくに始まっています。この時代に「分散型の庁舎では業務の継続性を維持できない」という理由には、失望すら覚えます。

そして、なぜ市民に身近な支所や公民館、コミュニティセンター、学校などの地域拠点施設よりも、市民がほとんど訪れる機会がない本庁舎の更新を優先するのでしょうか。

先月、八千代市が新年度予算案で、避難所の整備を優先するため市庁舎の設計費の計上を先送りしたとの新聞報道を目にしました。詳しい事情はともかく、状況の変化に敏感に反応してアクセルを吹かすこともあれば、とっさにブレーキを踏むこともある、そんな臨機応変な決断が、今まさに市原市にも求められているのではないでしょうか。

以上で、これより結論を申し上げます。

市民ネットワークは、今申し上げた梨の木公園駐車場改修工事、八幡宿駅西口のモデルケース事業、庁舎強靭化対策事業、以上の公共事業については一旦見合わせ、そのあり方についてはR2年度から新たに設置される都市戦略部のもとで、個別施設計画が出揃った段階で、場所・機能・量ともに今一度総合的に判断するよう求めます。

これら事業は、新年度予算案で現在の方針をそのまま推し進めるための費用として計上されていることから、市民ネットワークはR2年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、反対の立場を表明し、意見陳述とします。