平成28年度 第1回市原市議会定例会

代表質問     小沢みか

一億総活躍社会や政府の人口ビジョンについて

安 倍内閣のスローガンであり、流行語にもなった「一億総活躍社会」。しかし、この言葉に違和感を覚える国民は少なくないこともまた事実です。「一億総活躍社 会国民会議」の民間議員に選ばれたタレントの菊池桃子さんも、その一人。彼女は初会合で、「一億層活躍社会」という言葉を「ソーシャル・インクルージョ ン」という言葉に変えたらどうかと提言した。お子さんの一人に障害があるということを私はこのとき初めて知りました。

国民総動員体制で国家の発展を目指すのではなく、互いに多様な価値観を可能な限り認めあい、社会の中で個人が輝くことを目指すような国でありたいと私たちは思っています。

政 府が掲げる長期ビジョンで打ち出されている将来の方向性の「出生率1.8」「2060年に1億人」「2050年に実質GDP成長率1.5~2%維持」は、 あくまでも国家としての総体的な維持のためのものです。一方地方自治は、あくまでもそこに住む市民一人ひとりの幸福を最大限追求することを忘れてはならな いと思います。

1.市長の施政方針について

(1)新総合計画策定に向けての基本的な考え方について

現総合計画の検証

小出市長は、これからの10年間を「市原市の命運を決する10年」と位置づけ、現在その基本的方向性を示す新総合計画の策定を進めているところです。

その過程で、もちろん現総合計画「改定市原市総合計画」の検証も今後出てくることとは思うが、現時点でぜひ確認しておきたい点があります。

「改 定市原市総合計画」の策定はH16年度。当時の「人口の見通し」によると、国レベルの予測ではすでに長期の人口減少期に入ると推計されていたが、市原市に おいては「首都圏の地理的な優位性を活かし、地域資源の活用や政策的な施策展開により、H27年の想定人口30万人」を目指すとしました。高齢化率も、当 時は全国平均よりも緩やかであったのに、H27年度は25.3%と、逆に全国平均25.1%を上回り、これも想定とは逆の結果になってしまった。産業別人 口に至っても、第二次産業は安定した操業、第三次産業は順調に伸びると、今になればかなり楽観的な予測を立てています。

もちろん、将来予測 が困難な時代背景にあって、計画と実績にズレが生じるのは決して不思議ではありません。しかし、当時すでに日本全体の人口が頭打ちの状況の中で、拡大社会 の概念で計画を立てた当時の方針は、どこから生じたのか。その根拠や目標達成のための施策展開の裏付けがきちんとされていたのか、首をかしげざるを得ませ ん。

そこで小出市長に伺う。「改定市原市総合計画」における人口の見通しなど、策定当時の将来ビジョンを振り返り、計画期間を終えようとしている現在、率直に感じてらっしゃる点をお聞かせ願います。

 

(答弁) 市長

現行の総合計画では、平成27年の目標人口30万人を掲げ、人口の増加を目指したまちづくりが進められてまいりました。

しかしながら、本市も、全国的に進行する少子高齢化・人口減少の波に逆らえず、現総合計画を策定して以降、これまで、人口は減少傾向をたどってまいりました。

平成27年の国勢調査の速報値を見ましても、5年前の前回調査から約5,800人の人口が減少するなど、大変厳しい結果となり、目標人口30万人の達成は困難であります。

この要因につきましては、市原市人口ビジョンを基本として、さらに分析し、今後の計画に活かしてまいります。

現在、日本全国の自治体が、大きな時代の転換期を迎え、少子高齢化・人口減少をはじめ、これまで経験したことのない多くの課題に直面しており、その克服に懸命になっております。

私は、このような中で策定する新たな総合計画においては、人口増加を前提とした、これまでの拡大成長路線からの方向転換を図り、現実を直視し、身の丈にあった目標を定めていくことが、まず必要であると考えております。

その上で、人口減少の克服や若者の希望実現へ向けた積極的な戦略に果敢に取り組み、市民や議会の皆様とともに、未来を展望できる「夢と誇りが持てる、安心して暮らせるまち」の実現を目指してまいります。

こ のほど示された人口ビジョンの素案によれば、2060年の人口は、このまま推移すれば17万3千人。それに対し、展望値は21万人としています。両パター ンは恐らく全く違う財政状況であり、極端に言えば全く違う市の姿かもしれません。従って人口ビジョンで重要なのはその数字ではなく、未来のまちの姿をそこ からシミュレーションして捉えることだと思います。

市原市はこれまで、現総合計画策定時の人口(30万人)の見通しに沿って社会資本の整備を進めてきたはずです。結果的にそれが後世の負担になってしまうのであれば、また同じ事態を繰り返してはなりません。

・市原市の強みと弱みについて

もう一点、やはりこれは新総合計画策定に際して大事な観点だと思うので確認させていただきます。

「市原市には地理的優位性やポテンシャルがある」。これは合言葉のように昔から幾度となく繰り返されてきたフレーズでありますが、逆に市原市が抱えている弱み・他の自治体と比較して足りない点についてはあまり聞いたことがありません。その点、当局ではどう捉えてらっしゃるのか、お聞かせください。

(答弁)企画部長

大変難しいご質問でございますが、頑張って答弁したいと思います。

今年度に実施いたしました、いちはら未来会議などにおいては、参加者の皆様から、公共交通やコミュニティ問題などに関する御意見を多数いただいているところでございます。

また、町会長との未来創生ミーティングにおいては、地区を超えた連携が円滑に進まないとの御意見もいただいております。

こ うした観点に絞って本市の弱みについて考察いたしますと、本市は旧市原郡の町村合併により誕生した都市であり、県内一の広大な市域の中に、異なる特色を 持った市町村が集合体のように存在している、そのような都市構造であることが弱みとしてあげられるものと考えております。

市内の各地域は、人口密度や高齢化率など人口構成も大きく異なっており、一つの市の中に、例えば浦安市と御宿町が同居しているような状況となっております。

このような中で、各地域では、地域の活性化を目指し、地元に根ざした市民活動が展開されておりますが、この活動を市全体の活性化へと広げていくことがなかなか難しいという、構造的な課題を抱えているものと分析しております。

加えて、近隣市との比較では、東京都心部への公共交通の利便性が低いことや、アクアライン・圏央道の波及効果を活かしきれていないことなどがあり、これらの影響が本市の人口減少にもはっきりと現れているものと捉えております。

今 後は、これらの弱みや課題について、現総合計画の評価を行う中でしっかりと検証するとともに、地域の活力が本市全体の魅力向上へとつながる好循環を生み出 していくよう、特に地域間の人的ネットワークの形成や、それを支える公共交通の強化、こういったことについて、新総合計画の策定において、検討してまいり たいと考えております。

私はどちらかというと厳しい環境にある地方の出身なので、各々の風土の違いを感じることも多いのですが、一言でいうと、市原市の豊かで恵まれた環境が、逆に弱さになっていると思います。

・行政改革推進委員会でのエピソード

昨 年8月の行政改革推進委員会を傍聴させていただいた際に聞きました、ある委員の言葉が心に残っています。「市民、市民団体、企業、行政の関係者も今まで何 とかやってきているので、一人一人が真の危機感と覚悟を持っていない。税収が10億円ずつ減収になりそうと言われても、『ゆで蛙』の逸話のようにじわじわ と影響を受けるので、誰も危機感を持てない。だから大綱の策定方針案や他の様々な計画を見ても、タイトルと一部の項目以外、市原市をあまり感じない。良い ことが万遍なくたくさん書かれているが、本当に何をやりたいのか、何を優先的にやるのか分からない」私はそれを聞いて、膝を打つ思いでした。

安定成長の時代には対応できても、小出市長が述べられた「張った自治体が報われる切磋琢磨の時代」や変化の激しい局面ではどうか。小出市長の決意を共有し、真剣に応えられる人材の育成に、今後しっかりと取り組んでいかなければならないと思います。

私 はやはり現総合計画は「プラン」というより「ドリーム」であったと思います。しかし、変革の時代の新総合計画は「ドリーム」ではなく、「プロジェクト」で なければなりません。従って、己の弱みに目をつぶることなく「地に足の着いた、市の課題を市民と共有できる計画」「優先順位が明快で、改革の手順が市民に 分かりやすい計画」。ぜひ以上を念頭に計画策定に努められ、市民や地域が行政とともにまちづくりに立ち向かうための真の羅針盤としていただきたいと思いま す。

(2)女性が住みたいと思えるまちづくりについて

・男性視点から女性視点のまちづくりへ

市 長が述べられた市原の「変革と創造」、そして「飛躍」。私はそのカギを握るのはズバリ女性だと思っています。総合戦略素案の「好循環を推進する施策横断の 取り組み」の中でも触れられているように、これまで市原市は臨海部コンビナートに代表される工業のまち、いわば男性視点のまちづくりを行うことで飛躍的に 発展を遂げてきました。これは、右肩あがりの経済成長時代には正しい方向性であったかもしれません。しかし、これから市原市が成熟した持続可能なまちを目 指すためには、女性の視点を生かした、女性に選ばれるまちへと変革することが必要です。

・交通の利便性の向上について

人口ビジョンの素案でも示されているように、市原市は近年、女性の流出が男性に比べて2倍から3倍、年によっては6倍も多いという傾向が常態化している。男女に差があるということは、カップルではなく独身の女性の移動が多いということが推測されます。

そこで、このほど市原市議会女性議員の会では、比較的若い世代の女性に的を絞ったアンケートや意見交換を踏まえて、女性の流出の原因を分析し、今後のまちづくりに際し優先して取り組んでいただきたい課題を以下に述べる三点に絞りました。

まず最も要望が多かったのは、やはり交通の利便性であした。車を持てない・持たないという若者の車離れが進んでいますが、交通弱者という言葉は高齢者だけに当てはまるのではないということを改めて実感しました。

市内に、例えば商社・アパレル・美容産業など、若い女性が好む職場環境が充実していればそれに越したことはないのですが、近隣市や都内への通勤が容易でさえあれば、住まいは市原市を選択する可能性はかなり高まるのではないでしょうか。

従って、公共交通の充実によるアクセスの向上が最優先課題と考えました。

・駅周辺の魅力向上について

二 番目に挙げるのは、駅周辺の魅力の向上です。駅に降り立った時にその街に漂う空気を、女性は特に敏感に感じとるものです。立ち並ぶ個々のお店の魅力も大事 であるし、例えば歩道や街路樹や街灯も含めた街全体のデザインと景観が、その駅を使う人々の心に大きな影響を及ぼします。車で通りすぎるのではなく、そぞ ろ歩きをしたくなるような街並みが人々の交流を生み、その都市空間への愛着が育つ。これは、個人が豊かな人生を送る上でも、とても大切なことです。

住宅の確保について

そして三番目が、住宅の確保です。

こ れまで低家賃の賃貸住宅ストックの多くを供給してきた市内の企業社宅も、今ではずいぶん減少しました。親元からの独立や結婚など、独身女性が次のステップ に進む際に後押しする仕組みが求められています。例えば空き家の活用や補助制度など、若い世代の希望を叶えるための住宅からのアプローチを、ぜひ検討して いただきたいと思います。

以上三点に絞った要望については、先月女性議員の会として小出市長に提言書をお渡ししたところです。総合戦略では女性への支援の推進を打ち出していますが、あらためてこの三つの課題に対する市長のご見解をぜひお聞かせください。

(答弁) 市長

女性の減少は、人口減少に直面する本市にとって、非常に大きな課題であります。

女性が住みたいと思えるまちづくりを進めていくためには、何よりもまず、女性の声を積極的に取り入れていくことが重要であると考えております。

そのような中で、このたび、市原市議会女性の会「こすもす倶楽部」の皆様は、この課題解決に向け、実際に市民の皆様との対話を進めるなど、たいへん意義のある活動をされたものと受け止めております。

私は、今回ご提言としていただいた「公共交通の利便性の向上」、「街並みの魅力の向上」、「住まいの確保に対する支援」の3つの視点につきましては、貴重なご提言として、新総合計画の策定に活かしてまいります。

今後も、様々な場面において、市民の皆様との対話を重ねるとともに、議会との両輪により、ともに考え、議論をしながら、本市のまちづくりを進めてまいります。

こ の提言の中に、女性支援と常にセットで捉えられている「子育て・教育・福祉」といった観点が含まれていないところに、ぜひ注目していただきたい。限りある 財源をまずどこに振り向ければ効果的か。あれもこれもではなく、まずはここからという若い女性の声の重さをぜひくみ取っていただき、新総合計画に反映させ ていただきたいと思います。

・女性の意見聴取の場を

そこでもう一つ要望したい点があります。

今後新総合計画の策定にあたり、先に開かれた市民会議を皮切りに、今後も中間報告会や地域別懇談会など、行政が市民と直接向き合う場が設けられとのことです。

しかし、例えば「未来創生ミーティング」をはじめ懇談の場の多くは、ほぼ出席者の9割以上が男性という現状です。

これは総合計画策定時に限りませんが、今後はぜひ女性が多くを占める場へ積極的に出ていって、女性の生の声を聴取する機会もたくさん設けていただきたい。如何でしょうか。

(答弁)企画部長

女性の市外流出が進むなか、今後のまちづくりには、女性の視点や感性を取り入れていく重要性が、これまでにも増して、高まっているものと認識しております。

特に、転出傾向が強い若い世代の女性の声をしっかりと聞き、まちづくりに反映させていく必要がございます。

このため、大学や企業、子育て関連の施設などとも連携をしながら、学生や社会人、子育て世代の女性を対象としたミーティングの場を創出するなど、多様な機会を通じて、女性の皆様との対話を進めてまいりたいと考えております。

また、新総合計画を構成する個別計画の一つである、「いちはら男女共同参画社会づくりプラン」、これの見直しを行ってまいりますので、この過程におきましても女性の皆様の声を伺い、よりよい施策を検討してまいります。

(3)スタッフ職の活用について

・参事職の必要性を問う

このほど小出市長から行政組織機構の見直しが示されました。行政運営の実効性を高め、複雑多様化するニーズなどに対応する総合行政を推進するためとのことでした。

特に、推進室が設置される地域包括ケアシステム、参事が配置される公共資産マネジメントや立地適正化などは、これまで市民ネットとしても特に体制の充実を要望してきた政策分野であるので、その点は大変評価しています。

ただここで一点だけ確認させていただきたいのは、スタッフ職としての活用の意義についてです。

参事という職務は伺ったところによると10年ほど前にも設けられていたそうですが、今回一気に4名誕生することとなりました。級別では部長と同列でありますが、部長・次長・課長といったいわゆるライン職とは異なり、決裁権は持たず、直属の部下にあたる職員はいません。

各々の行政分野については、より広い視野から調査・研究、総合調整を行い、集中的に企画・立案を図る役割が求められるということは理解していますが、それらの業務を遂行するために、なぜ今回敢えて9級職である参事を配置するのか。参事の登用によって、どのような効果を期待しているのか。お聞かせください。

(答弁)市長

現在、本市を取り巻く状況として、公共施設等の老朽化に伴う維持・更新、各種債権の未収金対策、地域観光資源の発掘、人口減少社会に向けた持続可能なまちづくりといった部門を超える新たな課題が発生しております。

私 は、このような課題に効果的に対応し、新たな市原市を創りあげるため、組織の枠組みを超えた庁内横断的な取組を円滑に進めていく必要があることから、今 般、公共資産マネジメント担当、税務担当、観光担当、立地適正化担当の4名の部長級である参事を配置することといたしました。

これらの新たなスタッフ職を活用し、市民の皆様にその成果を実感していただけるよう、行政の総合性を高め、喫緊の課題にスピード感を持って対応してまいります。

市 長の改革への強い思いは理解しています。ただ今回の見直しによって、9級職が19人から21人に増えることで、その運用コストについては納税者側としては 気になるところです。今後本格的な複線型人事制度の導入につながることと予想していますが、情報の共有や意思決定の過程がかえって複雑化しないよう、参事 の職務や職責を明確にして、各々の目的が十分に図られるようご配慮願います。

2.予算編成方針について

(1)公共資産マネジメントに係る財源の確保について

・公共資産マネジメントの試算とH28年度予算案

こ のほど示された公共資産マネジメント推進計画の素案によれば、H28年度以降40年間の更新等費用の試算は総額9641億円。単年度平均で241億円。そ れに対して投資可能額は、H21年~25年度の投資的経費の平均102億円に上下水道建設改良分の平均28億円を合わせて年平均130億円。そのギャップ は毎年111億円にも上るというシミュレーションが示されています。

更新等費用はあくまでも機械的に当てはめた理論値ではありますが、いずれにしても、少しでもこのギャップの縮減を図るべく、スピード感を持って進める必要があると痛切に感じました。

そんな思いでH28年度予算案を見ると、普通建設事業費が約106億円で上下水道建設改良分は約28億円。H27年度予算とそれほど変化は見られません。

ここで伺います。橋梁などすでに計画に則って長寿命化事業が進められている分野がありますが、H28年度予算案では、公共資産マネジメントに係る経費として一体どのくらい配分されているのか。ご答弁願います。

 

(答弁)財政部長

公共資産マネジメントの流れとしては、まず市としての公共資産の総合的、計画的な管理のあり方を策定し、次に、具体的な公共施設の統廃合等に向けた、実施計画の策定を経て、計画にしたがって予算措置することとなるものと考えております。

本市においては、公共資産マネジメント推進計画を本年度末までに策定する段階であり、新年度予算では、公共施設再配置基本方針の策定経費として、約730万円を計上しております。

このほか、公共資産マネジメント計画策定に先んじて、各インフラ資産等について個別に計画を策定しており、これに基づく、平成28年度での事業費としては、

公共施設では、市営住宅長寿命化事業として、約1億3,500万円を、

インフラ施設では、平成26年度から継続事業として実施している、福増クリーンセンター第二工場基幹改良事業費として、約14億円、

橋りょう長寿命化事業で、約6億1,800万円、公園施設長寿命化事業で、約1億2,000万円、し尿処理施設更新事業費で、約1,000万円、

一般廃棄物処理施設整備計画策定事業費で、約4,400万円、

下水道施設耐震対策事業で、約5,600万円、

下水道施設長寿命化事業で、約3億7,000万円、などを計上しており、これらの総額は、

約27億6,000万円となります。

なお、これらの経費は、長寿命化等の大規模改修経費や今後の長寿命化等に向けた計画策定の経費であり、老朽化や故障による修繕など、一般的な維持補修に要する経費等は含まれておりません。

長期財政見通しとのギャップ

では次に、長期的な見通しについて伺います。

昨年10月に示された「長期財政収支の見通し」(H27年度~36年度の10年間)によれば、これは普通会計ベースですが、普通建設事業費は徐々に減っていき、H36年には57億6千万円。H28年度予算約106億円の約二分の一近くに減っています。公共資産マネジメントのシミュレーションの額との間で、現時点では整合性が図られていない状態です。

もちろん、今後マネジメント計画が進んでいく中ですり合わせが行われるとは思いますが、それでも市民の安心安全にかかわることなので敢えてお聞きします。市原市の財政状況を鑑みて、今後10年間、毎年どのくらい予防保全に予算を回していけるのか。現段階の見通しをお聞かせ願います。

(答弁)財政部長

昨年10月、長期財政収支見通しをお示ししたところですが、このうち、公共施設等の予防保全に係る経費として、維持補修費や普通建設事業費の見込み額を計上しております。

このうち、維持補修費につきましては、直近数年間の実績を踏まえ、今後毎年一定割合が増加していくものと見込み、

普通建設事業費につきましては、各種施設ごとに策定している長寿命化計画の事業費や土地区画整理事業など、毎年度経常的に実施している建設事業費を積み上げ、これに、防災庁舎建設事業など、その時点で実施が確実である大規模事業を考慮して、見込んだところであります。

この結果、今後10年間では、維持補修費で約142億円、普通建設事業費は約706億円となり、この二つで848億円となっております。

しかしながら、一方で、これらを実施した場合には、毎年多額の収支不足が発生し、10年間の合計では、約381億円もの大幅な財源不足が生じると見込んでおり、これらの事業費が担保されたものとはなっておりません。

さらに、推計に用いた普通建設事業費の多くは、道路整備や土地区画整理事業費等であり、予防保全に係る経費に使える額は限られます。

また、これは維持補修費についても同様であります。

したがいまして、ご質問の、今後10年間の予防保全にまわせる財源の見通しにつきましては、現時点では、お答えが困難なものでございます。

長期財政見通しについては、定期的に見直しを行なう予定でありますが、これを踏まえ、今後「公共施設再配置基本方針」や、総合計画、実施計画を策定する中で、他の事業とのバランスなどから、配分額を検討していくことになるものと考えております。

ス クラップアンドビルドから再生・修復の時代に入り、そのための技術も飛躍的に向上しています。対症療法的に劣化してから補修する従来の「事後保全」のやり 方ではなく、劣化が進む前にこまめに補修する「予防保全」によって寿命を延ばす。これが公共資産マネジメントの方針の一つである。確かにこれによってトー タルコストは下がるが、予算を前倒しして平準化することによって、逆に計画期間の初期段階の負担は、大きく増えることになる。事実、補修費がこれまでの2 倍になって、結局予防保全の一部を断念した自治体も少なくないと聞いています。このような場合、危険度に応じた優先度の見極めも必要になるでしょう。

いずれにしても、市原市が経常収支比率95.8%という状況の中で適切に予防保全を行うためには、今後長期財政を見通して、きちんと一定額を確保していかなければなりません。

・特定目的基金の確保について

ここで私は基本的な確保策の一つとして、特定目的基金の有効活用を挙げたいと思います。

現在、防災庁舎建設事業が進められていますが、例えばこのように一定規模の公共施設等を整備した場合に、将来の維持補修・更新に備えて特定目的基金を設立します。あるいは公共施設整備基金に毎年一定額を繰り入れるなど、公共資産マネジメントに係る財源の積極的な確保策を検討されてはいかがでしょうか。ご答弁願います。

(答弁)財政部長

本市の公共施設は老朽化が進行しており、その改修や建替え等への財政需要は、年々拡大していくものと考えております。

こうした財政需要に的確に対応するため、その財源として、公共施設整備基金を設置しているところであります。

今議会に提案中の、平成27年度3月補正予算案では、当該基金の積み増しを行なうこととしておりますが、本基金のみで今後の維持補修費等に対応する財源の全てを賄うことは困難であります。

議員ご提言の、一定以上の大規模施設等を整備した場合に、将来の維持補修・更新に備えて特定目的基金等に毎年定額を積み立てることにつきましては、まさに理想的と考えております。

しかしながら、現実の財政見通しの上では、社会保障関連経費の増大や現有の老朽化施設の更新費用等の捻出が優先され、公共施設整備基金に一定額を確保することが精一杯ではないかと考えております。

私は昨年の第1回定例議会で、市原市の一人当たりの特定目的基金の額が類似団体の4分の1以下であると指摘させていただきました。税負担の公平性を担保するために市債の発行は必要というのがこれまでのセオリーですが、人口減少時代には必ずしもそれは当てはまりません。

公共資産マネジメントは、H28年度予算案における重点化施策である「安心・安全の強化」に結びつくものです。事業が適切に行われるよう、計画的な財源の確保策を要望します。

(2)補助金について

枠配分経費の拡大による削減

H28 年度予算案の性質別歳出の項目の補助費等は38億8千万円で、昨年度予算額より2.1ポイント増。農業経営高度化支援事業補助や市原アートミックス実行委 員会補助などが増額の主な項目ですが、その一方で様々な団体・事業において、数%~20%前後減額されている項目が目立っています。

今回は補助金・負担金の見直しによって計4200万円の縮減が図られたということで、予算編成過程の改革で、部局による枠配分経費が約7倍に拡充された効果もここに表れたものと推察します。

H28年度予算編成要綱によれば、「補助金については、対象団体の決算報告書を確認して公益性・公平性・事業効果・金額の妥当性について検証すること」などと書かれています。

これに沿って、各当部局の裁量で努力せよということですが、この留意事項は毎年同じように指示があることからも、次のような疑問もわきます。

補助の妥当性の客観的な判断ができているか。支出効果を適正に判断しているか。交付された団体の自主性・独立性の確保や育成が図られているか。反対に既得権化していないか。

・他自治体の補助金改革

補助金は、市民に対しその根拠や使途を明らかにする必要があります。行政改革大綱でも補助金の適正化の必要性が記されていますが、客観的に検証する仕組みはまだ整備されていません。

一方、近年多くの自治体では、統一した交付基準を作るなど補助金制度の改革に着手しています。

例えば有名なのは我孫子市の取り組みですが、市単独の補助金を聖域なくすべて白紙に戻し、公募制にして、同じスタートラインで市民の委員会(第三者機関)が審査を行います。一度交付が決まった補助金も、最長3年間で白紙に戻し、応募があれば再度審査を行います。

実 は市原市は、一般会計のうち補助費等の占める割合はH28年度で4.2%ですが、2001年からの推移をみると、6%弱から徐々に減る傾向にあります。 H24年度の類似団体比較カードをみても、一部事務組合負担金を除く補助費等は、人口一人当たり13,996円。類似団体の32,219円と比較しても、 かなり少ない額です。

従って、市原市の場合、補助金は削減という観点よりもむしろ、予算の厳しい制約の中で、時代に合った新しいニーズに応える意欲のある団体や事業にも、いかにして公平にチャンスを与えることができるか、という観点が必要だと思います。

限りある財源を有効に活かすためにも、市民が納得できるような補助金の基準や仕組みを設けていただきたいのですが、当局のご見解をお聞かせください。

(答弁)財政部長

補助金の交付は、地方自治法上、「公益性のある場合」に限定し交付できるものとなっており、本市においては、平成28年度当初予算の一般会計で、総額、約37億3千万円が計上され、予算全体の約4%を占めております。

これらの補助金の中には、法令により交付が定められているものもありますが、多くは任意の補助金となっております。

そ の内容は、各種団体等への建設事業やイベントなどの事業費補助金、事務費等などの運営費補助金、就園奨励など扶助費的な補助金等がありますが、それぞれ費 用対効果などの十分な説明が必要となり、また必要性、公平性、透明性等が求められることから、概ね全ての補助金について、要綱等を整備し、対象経費等を明 確にしているところです。

しかしながら、補助の目的が多岐にわたり、交付対象も異なり、各種個別計画等に位置付けられたものや、政策的な要素を持つことも多く、一概に統一的な対応が困難な点もございます。

市の補助金は、まちの経営の潤滑油のようなものだとも言われる。

現在策定が進められている行財政改革大綱の四つの柱の一つに「多様な主体との協働の推進」が掲げられている。「多様な主体の支援・育成」「公共領域へ参加しやすい環境の整備」補助金がこれらの有効なツールとなるような取り組みを願いたい。