令和6年 第2回市原市議会定例会議 代表質問 森山かおる

1.不登校児童生徒への支援について

1)不登校原因の分析

昨年10月に文部科学省が公表した2022年度の問題行動・不登校調査によると、不登校児童生徒数が約29万9千人、過去最多となりました。本市においても、毎年増加傾向にあり2022年度の502人から2023年度には619人と、1年間で117人も増えています。

文部科学省は昨年10月に緊急対策として、「各学校及び教育委員会等にあっては、効果的な不登校児童生徒への支援につなげるためにも、個々の不登校児童生徒の不登校のきっかけや継続理由についての的確な把握に努めるとともに、不登校児童生徒数が増加している要因についても分析に努めること」と通知しています。

更に今年3月、文科省の委託調査で不登校を経験した小中学生や担任らに要因を訪ねたところ、「いじめ被害」「教員への反発」の項目に該当すると回答した割合が、学校側は子ども側より20ポイント低く、認識に大きな差があることが判明しました。

更に先週公表された千葉県が実施した実態調査結果でも、学校に「行きたくない」と思ったきっかけは 「先生のことで気になることがあった(先生が好きではなかった、怖かった)」が 最も多く 27.9%、次いで、「勉強が分からない、授業についていけなかった」が 24.9%、「友達のことで気になることがあった(嫌がらせやいじめがあった)」22.2%となっています。

一方で、本市の不登校理由のトップは小中学生ともに「無気力」次いで「不安などの情緒的混乱」が5年以上続いています。これは学校側の判断だと伺っており、文科省や県の調査結果から見ても子ども側との認識のズレがあるのではないでしょうか。何故無気力や情緒的混乱になるのかという真の原因を探らなければ適切な対策は講じられません。そのためには児童生徒や保護者へのアンケート調査などが考えられますが、当局としての見解を伺います。

(教育振興部長)

不登校児童生徒の原因の分析についてお答えいたします。

不登校児童生徒への対策を進めていくうえで、アンケート調査等により、不登校となっている児童生徒やその保護者から直接その原因や要望を伺うことは重要であると考えております。市教育委員会では、昨年6月に、不登校に係る本市の児童生徒の状況を的確に捉えるために、市独自の調査として、市内全児童生徒の保護者を対象にアンケートを行い、5,474人の保護者から回答をいただきました。

このうち不登校になった児童生徒の保護者から学校に行きづらくなった主な理由を複数選択で回答していただいたところ、「いじめを除く友人関係の問題」が38%、「教職員との関係をめぐる問題」が19%、「病気などの体調の不良」が18%、「学業の不振」が17%等の理由が挙げられました。

この結果は、議員ご案内の令和6年3月に公表された、文部科学省の委託調査による「不登校の要因分析に関する調査研究」の結果と同様の傾向にあり、これまで教員が不登校の主な要因として捉えていた「無気力・不安」と保護者が考える要因に違いがあると認識しているところです。

併せて、県教育委員会において、昨年度12月から1月にかけて、県内全ての不登校児童生徒及びその保護者に対して「不登校児童生徒等実態調査」が実施され、6月14日にその調査結果が発表されたところです。

この調査については、本市の不登校児童生徒やその保護者も含まれており、本市の児童生徒や保護者の回答結果については、この後、市教育委員会にも提供いただけることとなっております。教育委員会としましては、引き続き、各種調査結果について分析を進め、エビデンスに基づき、当事者のニーズに応じた不登校対策にしっかりと取り組んでまいります。

 真の理由を探ることで、今までの支援策が適切だったのか、どこが不充分だったのかといった、課題が見えてくると思います。

 県の調査では、どんな場所に行きたいかとの問いに対して、何時に行っても良い場所(遅刻や早退をしても良い場所)と回答した児童生徒が60.6%で最多。次いで、ゆっくり休めるスペースや場所を求める回答が57.4%となっています。次に、そのような場所を提供している民間団体について話しを移します。


2)民間団体との連携と支援について 

*情報提供

今年度からは市内3か所の教育支援教室(フレンド市原)に加え、市内2校につなぐルームを設置しましたが、この体制だけでは支援の手が行き届かないのは明白です。

市内にはフリースクールや不登校児童生徒を支援するために子どもの居場所作りを行う民間団体が増えつつあります。今年3月末にNPOいちはら市民活動協議会が開催したイベントでは、民間14団体に加え、教育支援センターもパネリストとして参加されており、公民連携を感じることができ嬉しく思っております。

しかしながら民間団体はどれだけ意欲的に活動しても、その情報を不登校や行き渋りに悩んでいる親子に直接届けられないことをもどかしく感じておられるのです。

公教育では補完しきれない支援を行っているのが民間団体と言える今、双方がタッグを組んで支援する必要があると思っています。そこで、民間団体との定期的な情報交換を行う場を設け活動状況を共有し合い、その情報を不登校や行き渋りに悩んでいる親子だけでなく、その手前にいる子どもと保護者にも届くよう、全ての家庭に提供していただきたいのですが、見解を伺います。

(教育振興部長)

不登校児童生徒の支援にあたっては、個々の状況に応じて、一人一人の社会的自立に向けた適切な居場所を提供することが重要であり、そうした中で、多様化するニーズに対応するため、民間団体との連携は重要であると考えております。

教育委員会では、不登校の児童生徒をもつ保護者の団体、市民団体、フリースクールなど、それぞれの立場から、不登校児童生徒の学習支援や保護者の支援を行う民間団体が増えていると承知しており、それらの団体等とは、定期的に教育センターにて情報交換を行っているところです。

具体的には、不登校支援を行う民間団体が、市内の子どもの居場所を紹介する冊子「子どもの居場所ガイド2024」を作成することから、児童生徒や保護者の選択肢の一つとなるように、学校をとおして、周知してまいります。教育委員会といたしましては、子どもの居場所づくりに係る民間団体と、各団体の状況や活動内容などの情報交換を行うなど更なる連携を図り、保護者や学校に必要な情報提供を行ってまいります。

*民間団体への支援

このような民間団体の殆どは自己資金もなく、手探り状態で活動を続けています。

中には日本財団の補助金を受けて活動している団体もありますが、その制度利用は3年間の区切りがあり、その後は自前で活動しなければなりません。収益事業でもなければ運営にかかる費用の捻出は困難になり、せっかく蓄積してきたノウハウが生かされず、何よりも心の拠り所として利用してきた子どもたちが居場所を失うことになります。

私が懸念しているのは、日本財団の補助を受けているか否かに関わらず、今後新たに熱意ある団体が何らかの制度を活用して居場所作りに乗り出そうと思っても、その先は自前での活動となると子どもたちへの支援は広がらないということです。他自治体ではこのような団体に対して補助を行っています。先程も述べましたが、行政がやるべき事を補完しているのが民間団体であり、その熱意に頼りっぱなしにせず、活動を継続していくための支援が必要だと考えますが、見解を伺います。

(こども未来部長)

こどもの居場所づくりを行う民間団体への支援について、お答えをいたします。

 こどもの居場所づくりを進める上で、地域に根差した民間団体の存在と活動は欠くことのできないものであり、今後、子どもを取り巻く環境の変化に伴う様々なニーズに対応していくためには、活動への支援だけでなく、関係機関が連携・協働していくことが重要となります。

 また、昨年、国が策定した「こどもの居場所づくりに関する指針」においても、民間団体、学校、行政等が連携をし、それぞれの役割を果たす必要があることや、多様で持続可能な居場所づくりへの言及がなされたところです。

市といたしましては、子どもが安心・安全に過ごせる居場所づくりの重要性はさらに増していくものと認識をしており、今後、関係者間の連携を進め、居場所を求める子どもたちと居場所がしっかり繋がるよう取り組んでまいりたいと考えております。

そこで、先ずは、民間団体にご協力をいただき、こどもの居場所や子育て支援に資する地域資源の詳細を把握し、リスト化など地域資源の見える化を図るととともに、これらの情報に子どもたちがアクセスできるよう、情報提供についても関係機関と連携をして取り組んでまいります。

 また、民間団体への支援につきましては、継続性が求められるこどもの居場所の役割を踏まえ、改正児童福祉法で位置づけられた、こどもの居場所づくりを支援する「児童育成支援拠点事業」に取り組む中で団体と対話を重ねながら、安定的な運営に関する支援のニーズや課題等を整理し、総合的な支援のあり方を検討してまいります。

*認証フリースクール通学者への支援

教育機会確保法ではフリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など、多様な教育機会を確保する施策を国と自治体の責務とし、必要な財政支援に努めるよう求めています。

今年度から市はフリースクール通学者に対し、公共交通機関を使う場合に費用の半額(上限あり)を補助する制度を設けましたが、公共交通が脆弱な本市ではその効果は限定的と言えます。

これまで幾度も申し上げてきましたが、文科省の調査によるとフリースクールの入学金は平均5万円、月額授業料は平均3万3千円と高額であるため通学を諦めざるを得えないことや、そもそも公教育からこぼれてしまった子どもの学びを保障するために、家庭に全額費用負担させるというのは理不尽な話です。

その上、不登校になったことで親が仕事を辞めざるを得ない「不登校離職」という問題も起きており、家計の収入が大幅に減少したのに支出は増えてしまう家庭があるのも事実です。

市の財政白書によると、R5年度の一般会計予算で小中学生一人当り平均約21万円使われるとしていますが、学校に行けない子どもたちはその恩恵を受けることは出来ません。他の自治体では一定の基準を満たすフリースクールに認証制度を設け、認証を受けたフリースクールに通学する家庭に対して補助を行っています。市でも検討していただきたいのですが、見解を伺います。

(教育振興部長)

フリースクールへの通所には、利用のための費用が必要であり、また、子どもの送迎等のために仕事を辞めなければならないなどの声も聞いていることから、教育委員会としても、利用者への支援は必要であると考えております。

 このようなことから、有償のフリースクールへ通う児童生徒の保護者の経済的な負担を軽減するために、今年度から、上限額を設け、公共交通機関を利用した場合に、交通費の半額を補助する取組を行っております。 教育委員会といたしましては、引き続き、他の自治体の先進事例等を研究しながら、教育委員会内に設置した不登校対策プロジェクトチームにおいて、より有効な支援について検討してまいります。

3)子ども・保護者と学校を結ぶコミュニケーションシートについて

子どもが不登校になった時の保護者の心痛は相当なものです。先生方も担任する子どもが不登校になれば、家庭とのやりとりなどに戸惑い、どう接したらよいのか悩まれることもあると思います。

 先程質問した民間団体の情報提供やフレンド市原を紹介することによって、保護者も子どもも学校から見放されたと感じてしまうのではないかという不安が生じるでしょうし、保護者からは「給食費を止めてほしいと言い出せなかった」「配布物がもらえず悲しい思いをした」などの声を聞いております。

 そこで紹介したいのが、長野県教育委員会が作成したコミュニケーションシート。学校と保護者の連絡方法や配布物の受け取り方法、給食費・教材費・旅行貯金をどうしたいか、健康診断や行事に行った時に配慮してほしいこと、フリースクールや居場所・ICT教材による自宅学習を出席扱いにしてほしいかなど、保護者が言い出しにくい事をチェックシート方式で答えられるようにしています。本市においても導入していただきたいのですが、見解を伺います。

(教育振興部長)

コミュニケーションシートとは、欠席が増えてきた児童生徒の保護者が、今後どのような学校の対応を希望しているかについて、文書等でやりとりするものであり、保護者が学校に直接言い出しにくい内容について伝えるものです。

不登校児童生徒の対応については、学校と保護者が共に支援の方向性を考えていくことが重要であり、現在、各学校では児童生徒の状況を踏まえながら、保護者と直接話し合いをすることで、児童生徒や家庭の状況を詳細に把握しているところです。

一方で、例えば欠席日数が増えてきた時に、給食費や教材費の支払いなど、保護者にとって言い出しにくい内容について、コミュニケーションシートを活用していくことも有効であると考えます。教育委員会としましては、保護者との話し合いをコミュニケーションの基本としつつ、状況に応じて対応できるよう、他の自治体の先進事例等を研究しながら、保護者と学校の双方にとって有効な取組となるよう、市原版コミュニケーションシートについて、検討してまいります。

学校と保護者の信頼関係をつくる一助として導入していただくようお願いします。

また、健康診断についてはNHKウェブニュースによると、不登校の子どもが健康診断を毎回受けていたのはたった1割だそうで、7年間一度も受けなかったことで酷い側湾症なり激しい痛みが続いているというケースが報道されました。心身の不調やいじめなど様々な理由で不登校になった子どもたちにとって、健康診断のために登校するのは高いハードルであるため、医師会の協力を得て学校医となっている内科の医療機関で受けられるようにしている自治体もあるとのことです。生涯を通して影響がでることもあるので、子どもの健康を守るという観点から、健康診断の配慮については十分考えていただくようお願いします。


2.有害獣対策について  

*捕獲に対する交付金の見直しについて

 4月末の報道によると、房総半島で大繁殖しているキョンが県境を越え茨城県でも見つかったことから、たった4例ではあるが有力な情報に報奨金を出す制度を茨城県が導入するとのことで、相当な危機感の表れだと感じました。

本市ではR4年度に鳥獣被害防止計画を策定し、これまでの捕獲実績や被害状況などからR5年度以降3年間の鳥獣捕獲計画数を設定しています。(毎年イノシシ4,000頭、ニホンジカ150頭、ニホンザル150頭、ハクビシン400頭、アライグマ600頭、タヌキ150頭、キョン50頭。)

一方、千葉県がR3年に策定した第 2 次千葉県キョン防除実施計画によりますと、キョンの北上を防ぐため、市原市中部から一宮町にかけて分布拡大防止ラインが設定されましたが、本市のキョンの捕獲計画数はたった50頭です。県内自治体の捕獲計画数を調べてみたところ、君津市500頭、富津市300頭、木更津市200頭、長南町150頭と比べて非常に差があり、推定生息数が木更津市の2倍もある本市が50頭というのは、余りにも少なすぎるのではないかと感じております。

その理由は、本市はキョンの捕獲に対して交付金を出していないため報告があがらず、捕獲実績が10頭程度という少なさが影響しているのではないかと思っております。

市では鳥獣被害防止緊急捕獲等対策交付金交付要綱を見直し、R5年度からニホンジカを対象に加えたため捕獲数は前年度の6倍、141頭に伸びたという実績があり、県の計画でも捕獲数の伸びは交付金が有効だとする記述もあります。

先程述べた4市町では、市原市内でも被害が広がっているキョンは勿論のこと、アライグマやハクビシンなど小動物も交付金の対象としており、イノシシ・シカについては本市より3千円~5千円も高く設定されています。 有害獣捕獲に対する交付金の見直しいついて、見解を伺います。

(経済部長)

有害獣捕獲に対する交付金の見直しについて、お答えいたします。

市では、野生動物による農作物被害を、地域全体の問題として捉えており、効果的に被害を防止するには、住民を中心とした地域ぐるみの対策が必要と考え、地域での活動を推進するための様々な支援制度を設け、有害獣対策に取り組んでおります。

現在、最も大きな農作物被害をもたらすイノシシとシカの大型獣の対策は、町会捕獲を中心に対応しており、市が捕獲等事業指示書を交付した従事者に捕獲交付金を支給しております。

また、アライグマやハクビシン等の小動物においては、業務を委託しております市原市猟友会の駆除隊を中心に、わな捕獲を実施しております。

このような中、キョンにつきましては、近年、市南部地域を中心に、生息数・分布域の拡大が確認されており、地域住民からも被害報告や相談が増加している状況でございます。

さらに、捕獲従事者の高齢化等により捕獲個体の処理業務に関する負担や、昨今の社会経済情勢等により経済的な負担が増しているという意見も伺っております。

市としましては、こうした状況を鑑み、現在、近隣自治体等における有害獣の捕獲についての実態調査を実施しているところであります。

今後は、本市の被害状況や捕獲数、捕獲従事者の現状等も十分考慮した上で、捕獲交付金の見直し等も含めた効果的な対応策を整理するとともに、県や関係団体などとも協議・調整を進め、有害獣対策における支援体制の充実に努めてまいります。


イノシシ4,000頭の目標に対してR5年度の実績は3,177頭。この差をどう埋めるのかということも考えなくてはいけないと思います。罠の修理費や見回りのための経費もかかりますし、モチベーションをあげるためにも検討していただくようお願いします。

*町会単位での取組みについて 

 有害獣による被害防止対策として、地域ぐるみで取り組む町会による有害獣捕獲がある。

これは有害獣の被害を農家だけの問題にせず、捕獲、電気柵などによる防護、住処とさせないための草刈りなどの環境整備という3点を軸とした対策を町会単位で進めていくものです。そのためにアドバイザーやサポーター制度を導入するといった市原市独自の取組みは、農林水産省から表彰を受けており、理想的な取組みだと評価しているが、農業従事者から話しを伺いますと実情にそぐわない点があり、見直しの時期がきていると感じております。そこで2点の課題についてお伺いします。

*町会を跨いでいる場合

町会による有害獣捕獲実施要領によりますと、捕獲従事者の許可区域は原則として自分が居住している町会区域内とするが、山林で繋がっている隣接町会や居住地以外に所有している農地などは可としており、全て町会長の同意が必要としています。町会が異なる市内数カ所に畑がある農業従事者からしてみれば、各々の町会毎に連絡しなければならい煩雑さに加え、捕獲従事者が畑ごとに違うという複雑さが生じてしまいますが、この課題にどのように対応されるのか、お伺いします。

(経済部長)

有害獣対策においては、捕獲・防護・環境整備の3つの側面からバランスよく対応していくことが重要とされており、市域が広域な本市では、地域の実情に即した対応が効果的であると考えております。

 そこで、市では、平成21年度から、地域ぐるみの捕獲体制づくりを推進し、現在、119の町会まで拡大しております。

本市の有害獣による農作物被害は、近年では減少傾向が見られ、この地域ぐるみでの取組の成果が徐々に表れてきているものと捉えております。

 一方で、議員御指摘のとおり、農地が複数の町会に所在し、広域に耕作している農業従事者にとりましては、複数の町会に依頼するなどの一定の手間が発生いたしますが、有害獣による被害対策は、個々がバラバラに自分の農地だけを守るのではなく、組織的な対応が効果的であるとされております。

 市といたしましては、各町会の捕獲従事者等が集まる「有害鳥獣情報交換会」を、今年度から市内8つの地区で順次開催することとしており、被害の状況や実施している対策内容のほか、わなの設置や管理のあり方など、様々な情報共有を図っております。今後も、地域での協力や連携を深め、町会捕獲の充実や捕獲従事者・農業従事者の方々の負担軽減等につなげてまいりたいと考えております。


農作被害が減少しているとの答弁がありましたが、複数の農業従事者からは「いちいち被害額なんて報告していない」と伺っています。実態と違うのではないでしょうか。

市には担い手不足という問題もあります。担い手を増やすために免許取得に補助を出している町会もるが、免許を取得しようと思って相談しても「なぜ免許を取る必要があるのか、今は枠がいっぱい」などと言われて、スムーズに進まないと頭を悩ませているという話しも聞いております。町会毎に意識の違いがあって、これでは農業従事者は右往左往させられるばかりです。例えば窓口を1本化して、農業従事者から被害の相談があれば市が責任をもって町会につないでいくといったことも考えていただきたいと思います。

*スキルの高い捕獲者の活用

複数の農業従事者からは、町会に連絡して箱罠を置いてもらったけれども半年或いは1年経っても捕獲できなかったと聞いております。

たまりかねて別の町会にいる知り合いに相談し、その区域で捕獲許可を得ている方に現場を見てもらったところ「ここに箱罠を置いてもかからない」と言われたそうです。けれども設置場所を変えるにしても、その方の許可区域ではないのでできません。そこで町会を通して箱罠を設置した方にお願いしてアドバイス通りに場所を移したところ、翌日にイノシシが捕獲されたというエピソードもあります。

これは捕獲従事者のスキルの問題であり、サポーター制度がうまく機能していないといえる事例です。しかし農業従事者にとって有害獣対策は死活問題であり、畑を守るためには、今すぐスキルの高い捕獲従事者に依頼したいと思うのは当然のことです。

そもそも鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(第69条)では、狩猟区域について「土地に関し登記した権利を有する者の同意を得なければならない」と定められております。必要なのは土地所有者の同意であって、町会長の同意を得ることや許可区域を町会単位で限定するといった市原市独自のルールは、被害に悩んでいる農業従事者を更に悩ませていると言いえます。このような現状を解決するために、農業従事者がスキルの高い捕獲従事者にダイレクトに依頼できるような体制も必要だと考えますが、如何でしょうか。

(経済部長)

お答えいたします。

近年の町会捕獲においては、地域住民の高齢化が進み、捕獲従事者が不足している町会も見受けられるなど、管理が行き届かず、十分な効果が得られていないわなもいくつか存在しており、次世代を担う捕獲従事者の育成や、地域全体の捕獲技術の底上げなどが課題と承知しております。

そこで市では、平成27年度から、有害獣の生態や被害発生のメカニズムを熟知した専門家に、有害獣アドバイザー業務を委託し、科学的知見から対策のアドバイスを受け、地域特性に応じた抜本的な対策を推進しております。

加えて、捕獲従事者のスキルアップにつきましても、有害獣アドバイザーによる、きめ細やかな指導・サポート体制を充実させていくことで、町会捕獲の技術向上や従事者の確保に努めております。さらには、将来的に、捕獲従事者が不足する町会が発生することも想定されるため、町会間の交流や連携による捕獲技術の向上、捕獲体制の強化を図るとともに、これまでの町会捕獲の体制をより発展させ、複数の町会が協力・連携して捕獲に取り組むといった新たな手法につきましても、地域住民や関係者等と議論を重ね、今後、検討してまいります。


地域ぐるみの取組みは、有害獣の被害を農家だけの問題にせず町会全体で取組んでいくというものですが、要領に則れば畑を守るために罠免許を取得しても、町会長の同意がなければ自分が所有する土地であっても罠の設置ができないというのは、これは誰しもが首をかしげざるを得ない制度ではないでしょうか。町会長の同意や捕獲許可区域については、農業従事者に寄り添った見直しを早急にしていただくようお願いします。

3.アートを活用した観光地づくり事業について 

本事業の主な中身はアートミックスであったが、R5年度からは百年後芸術際内房総アートフェスが加えられた。そこでまずアートフェスについてお伺いします。

*広域連携による効果について

R5年度から6年度にかけて、市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市を舞台に「広域連携」「官民協働」による初めての試みとして、百年後芸術際―内房総アートフェスが開催されました。市原市においてはこれまで3回開催してきたアートミックスの成果を継承し、アートミックス2024を百年後芸術際―内房総アートフェス―として開催するというものです。

 今回は来訪者の5市での周遊等の広域連携による交流人口・関係人口の増加により、更なる地域経済の活性化を目指し、地域の魅力の「見える化」や市民の郷土に対する愛着と誇りの醸成に繋げるとしていましたが、ある会場で地元の方に伺ったところ、開催期間は前回の約2倍にもかかわらず、来場者は半減してしまったとのこと。 過去3回開催したアートミックスが定着してきたのなら、ここまで落ち込むことはないはずです。交流人口や関係人口など広域連携による効果について、現時点でどのような手応えを感じておられるのか、お聞かせ願います。

(地方創生部長)

広域連携による手ごたえについてお答えをいたします。

今回の芸術祭は、千葉県誕生150周年記念事業の一環として、5市連携・官民協同による新たな体制で実施されたことで、まったく新規のイベントとして捉えられたことから、プロモーションの面での難しさがあり、また、天候不順も重なったことなどから、会期前半の来場者には伸び悩みが見られました。

これを受け、4月以降、更なるプロモーションに努めた結果、認知度も向上し、ゴールデンウィーク以降は土・日・祝日を中心に、大変多くのお客様にお越しいただき、各イベントにおいても、その多くが満席となるなど、来場者数も伸びてまいりました。

また、旧内田小学校で展開した「おもてなし交流プログラム」や、湖畔美術館の「湖畔マルシェ」、旧平三小学校で実施した「里山市」など、芸術祭の会期と合わせて実施した地域イベントによる賑わいの創出も相まって、会期の終盤には、前回に近い来場者数は見込めるようになっております。

なお、来場者の実績等については、現在、実行委員会事務局にて精査しているところでございます。

そして今回、内房総5市の広域連携で実施したことにより、アートを媒介に各市の地域資源が新たな価値の創造につながっていると手ごたえを感じているところであります。また、ライブアートの実施も県内外から人を呼び込む契機となり、新たな来場者の獲得にもつながったものと考えております。

*地域経済の把握は?

広域連携による交流人口・関係人口の増加により、更なる地域経済の活性化を目指しているとの事でしたが、ここで一つ触れさせていただきます。

2月の市民経済常任委員会において、第3回までの開催で市の負担6億円に対し経済効果は27億円だとお聞きしましたが、それは全体的な経済波及効果であって、県内はその7割、市内の経済効果については以前質問したところ当局は把握されていませんでした。今回は市内の経済効果を把握できるような調査をされていることを期待して、その結果を待ちたいと思います。

*成果指標は何のためにあるのか

そもそもアートを活用した観光地づくり事業の成果指標は小湊鐵道利用客数(1日フリー乗車券・観光列車乗車など)8万人を目標としていますが、来場者数が過去最高11万人だと誇った前回でも3.8万人でした。先日の全員説明会で示された資料を見ても、過去にアートミックスが開催された年の利用客数は前年度と比較してほぼ減少傾向にあるという不思議な状況です。小湊鐵道利用客数を伸ばすことは地域経済の活性化の一つであり、交流人口や関係人口がどれだけ増えても鉄道利用を促すような工夫がなければ成果に繋がらないということです。今後も継続して開催するのであれば、事業効果を的確に判断できる成果指標の見直しも含めた上で、成果指標に照らし合わせた改革が必要だと考えます、見解を伺います。

(地方創生部長)

成果指標の見直しについて、お答えをいたします。

現在、芸術祭に係る事業シートで記載しております成果指標については、総合計画の各種指標から、主に関係する指標を適用しているものであり、小湊鐵道の乗客者数のうち、観光列車乗車人数と房総横断鉄道利用乗車券の利用者数等の合計数としております。

 小湊鐵道は、南市原を主な舞台にして実施する芸術祭の重要なコンテンツであることから、これを指標として用いたものでございます。

 現在、観光列車であるトロッコ列車が故障により運休している状況に加え、小湊鐵道につきましては、新型コロナウイルスや、大規模災害の影響を受け、これまでの状況と大きく変化が生じていることから、市としても支援の在り方等の検討を進めているところでございます。このような状況も踏まえ、芸術祭の指標につきましては、新たな総合計画の策定と合わせ、適切な指標を検討してまいります。



元々、この事業は南市原の活性化を目指すもので、交流人口・関係人口を増やす最終的な目標は移住定住を促すことでしたが、移住定住に係る人口の指標が全くないのもおかしな話しです。それを踏まえて的確に事業効果を把握できるような指標を考えていただきたいと思います。

*事業費について

 内房総アートフェスではR5年~6年度で3億8,700万円を補助金として実行委員会に払っています。内訳は市一般財源から1億2,100万円、残り2億6,600万円は企業版ふるさと納税です。因みに他市の状況を調べてみたところ、5千万円~6千万円を一般財源から出しているということで、本市はその2倍以上を支出しているということになります。

同実行委員会のウェブサイトでは、計画や予算については事務局と開催市で十分な協議と審査をし、適切に決定しているとあるが、予算の使途内容については公表されておりません。総事業費は7億6千万円と伺っていますが、総合プロデューサーやアートディレクター、市原エリアのアーティストに幾ら払ったのかなど、最終的な使途内容が分かる事業報告書を出してもらうよう、内房総アートフェス実行委員会に求めて然るべきだと思いますが、如何でしょうか。

(地方創生部長)

内房総アートフェスの報告書について、お答えをいたします。

内房総アートフェスの報告書については、議員ご案内のとおり、実行委員会事務局が作成・報告することとなっております。 報告書の作成にあたっては、本市のこれまでの実績等を参考に、事業収支や成果の検証、課題などについて、可能な限り詳細な形となるよう、実行委員会事務局に要望してまいります。


これまではアートミックス実行委員会として事業報告書を作成していましたが、それに代わるものとして、まずは内房総アートフェス実行委員会から事業報告書を出してもらい、それをベースにして、アートミックス2024としての検証が必要だと思っています。

 以前にも申し上げましたが、回を重ねる毎に検証が甘くなっていることが気になってなりません。初回のアートミックスの報告書では数々の課題が挙げられており、それをステップとして更により良いものにしたいという姿勢が感じられましたが、2020+では都合の良い実績だけがツラツラ述べられていて、課題については全く触れられていませんでした。PDCAを回すためには課題や反省点の洗い出しは不可欠です。しっかり検証した報告の基でなければ、私たちは今後の開催については認めることが出来ないことを申し上げておきます。