令和7年 第3回市原市議会定例会議 代表質問 小澤みか
- 代表質問 小沢みか
- 9月3日(水)
1 教育大綱改定骨子案について
(1)シティズンシップ教育について
(2)「多様な子どもへの支援」に係る市のスタンスについて
(3)スポーツ・文化に係る施策の目的について
2 地域医療推進ビジョンの実現について
3 市原市こども計画骨子案について
(1)介護保険制度の円滑な運営について
(2)移動手段の確保について
(2)高齢者のためのテクノロジーの推進について
4 EBPMを生かした成果重視の委託方式の導入について

方向性が伝わってこない
教育大綱は、地域の実情に応じて教育・学術及び文化の振興に関する施策について、その目標や方針を定めたものです。
本市はこの度、平成28年に策定した現大綱を、「新たに生じた社会状況や教育を取り巻く環境の変化」を踏まえて、改定に取り組まれました。その骨子案の5つの基本目標は、より簡潔明瞭に整理されたものと拝察いたします。
しかし、全体から受ける印象はいささか漠然としており、特に「改定の視点」としての「新たに生じた視点」について、どのような哲学で捉え具体的な施策に落とし込んでいくのか、そのポイントが骨子案からは伝わってきません。
そこでこれより、特に気になった点に絞り確認いたします。教育大綱は市長が策定するものと承知していますが、ここでは敢えて、実際に教育行政を推進する教育委員会に伺うことといたします。
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(1)シティズンシップ教育について
なぜ削除した
現大綱の「施策の基本的な方針」には、「主権者教育等によるシティズンシップの醸成を図ります」と明確に記されていますが、この「シティズンシップ」という言葉が、改定骨子案から削除されています。「社会の創り手となる力」や「主権者教育」という記述が散りばめられてはいるものの、その理念が薄められてしまったという印象は拭えません。
VUCAの時代において、子どもたちが市民として社会に積極的に関わり、課題を解決する力を身につけるシティズンシップ教育は、教育の最終目標とも言うべき極めて重要な概念です。単なる社会参加に留まらず、必要に応じて社会を変革する力を育むことは、持続可能な地域社会を築く上で不可欠です。
そこで教育長に伺います。
こうした本質的な教育概念である「シティズンシップ教育」を、改定にあたりどのような意図で削除されたのか、また、本市の教育は今後何を最上位の目標とされるのでしょうか。ご答弁願います。 -
(藤谷教育長)
平成27年の公職選挙法等の改正により18歳以上の国民に投票権が与えられたことや、令和4年の民法改正により成人年齢が引き下げられたこと等を踏まえますと、子どもたちが社会の中で自立し、他者と協力しながら、課題解決に向けて主体的、積極的に関わる力を育成することがますます重要になっていると捉えております。
このため、現大綱で位置づけている主権者教育等のシティズンシップの考え方について、改定骨子案では、基本目標1における方向性の一つとして「新しい時代の創り手となる力の育成」を位置づけ、必要となる資質・能力や挑戦する力の育成、社会参画に向けた教育を推進する等としたところであります。
将来の予測が困難なVUCAの時代といわれる現代において、私は、子どもたち一人一人が社会の一員として自分らしく活躍できるよう取り組むことが何よりも重要であると考えております。
こうしたことから、改定骨子案で位置づけた方向性の具現化を図るため、現在策定を進めております学校教育振興計画において、関連する施策をしっかりと位置付け、現場の教職員と教育委員会が一丸となり、教育大綱の基本理念である「未来へつなぐ いちはらの教育」の実現に全力を尽くしてまいります。
項目立てをされたことは評価しますが、こうした概念を最も端的明快に表したのがシティズンシップ教育です。大綱からその言葉が消えることは、やはり残念と言わざるを得ません。
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(2)「多様な子どもへの支援」に係る市のスタンスについて
不登校やインクルージョンなどのとらえ方
骨子案の「基本目標4」では、いじめ対策については「いじめ『ゼロ』宣言」と具体的な記述がある一方で、不登校については「対策の強化」という表現に留まり、その具体的な方針が示されていません。
本市は「学校の外」に居場所を求める子どもたちに、教育という立場からどう関わっていくのでしょうか。多様な子どもの個性を受け止めることができる学校改革を目指すのか、それとも学校という枠組みを超えた支援に力を入れるのか。
その根本的な考え方によって施策の方向性が決まってくるはずですが、骨子案からはそのスタンスが全く伝わってきません。
さらに、現大綱に明記されていた「インクルーシブ教育システム」という重要な概念が、骨子案では表記すらなく「多様なニーズ」という曖昧で一般的な言葉で一括りにされていることも非常に気になります。
そこで、本市が考える「多様なニーズ」とは具体的に何を指し、その対応や支援に向けた方策は何なのか、お聞かせ願います。 -
(教育部長)
社会の状況、教育を取り巻く環境が変化し、障がいを持つ子、不登校児童生徒、ヤングケアラー、貧困、外国にルーツを持つ子、性的マイノリティの子等、子どもの状況が多様化・複雑化する中において、子どもたち一人一人に焦点を当てた、きめ細かな対応が必要であると考えております。
そのため、教育委員会では、児童生徒一人一人が自立し、社会の一員として活躍できるよう、支援しております。
具体的には、帰国・外国人児童生徒、不登校、医療的ケア等、様々な支援を必要とする児童生徒のために、スクールカウンセラーアシスタントや心のサポーター、スクールメディカルサポーターや市原版スクールソーシャルワーカーの配置、つなぐルームやフレンド市原の活用、フリースクールとの連携など、様々な支援を行っております。
今後も全ての児童生徒に寄り添い、実態に合わせた環境づくりに取り組んでまいります。
骨子案からはそういった意志が伝わってきません。
改定方針には「子どもや若者等当事者の幅広い意見を聴取」とありますが、結局、障害児や不登校、外国にルーツを持つ子どもといった、いわゆるマイノリティ当事者の意見は聴取されませんでした。こうした生の声をもっと拾っていたら、もう少し書きぶりも違っていたのではないでしょうか。性の多様性について
また、もう一つの「多様性」として、性の多様性について触れない訳にはいきません。令和5年に施行されたLGBT理解増進法は、現大綱が策定された当時には想定されていなかった動きです。
具体的な話になりますが、本市の中学校は制服の選択制が進んだ一方で、標準名簿を男女混合にしていない学校がまだ半数以上を占めています。これは学校現場が生徒個人の尊重よりも事務効率を優先していることの表れではないでしょうか。
小さなことと思われるかもしれませんが、男女混合名簿は生徒が無意識に内面化するジェンダーバイアスを払拭するための初歩的な措置だと思います。何より必要以上に男女で区別することは、性自認が異なる生徒の存在を無視することになり、人権問題とも言えます。
本市は、令和6年1月にパートナーシップ・ファミリーシップ制度を導入し、性の多様性を尊重する姿勢を対外的に示しています。この理念を教育現場にどう反映させるのか。男女混合名簿の取り組みと合わせて、ご見解をお聞かせ願います。
(教育部長)性的指向・性自認にかかわらず、誰もが安心して生活していくためには、性の多様性を尊重することが重要であると認識しており、一人一人が性の多様性を認め合い、自分らしく学校生活が送れるよう、男女混合名簿やジェンダーに配慮した制服の導入、水着の使用等の対応を進めております。
また、委員会活動や児童会・生徒会活動を行う際や、運動会の応援団などの行事において、性別にとらわれることなく、それぞれの個性に応じて活躍できるよう配慮しております。
教育委員会といたしましては、ジェンダー平等や多様性の尊重の趣旨を踏まえ、引き続き学校と連携しながら、一人一人の個性を大切にした取組を進めてまいります。
男女混合名簿について明確なお答えがありませんでしたが、ぜひ取り組んで下さい。
無論センシティブな問題でもあることから、最大限の配慮を持って対応されるようお願いいたします。
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(3)スポーツ・文化に係る施策の目的について
教育でにぎわい創出?
骨子案には「トップスポーツチームとの連携により、賑わいを創出する」「歴史遺産や文化芸術を地域資源として活用し、交流人口・関係人口の拡大により、賑わいを創出する」とあります。この「賑わいを創出する」という表現をもって目的としている事に、私達は強い違和感を覚えています。
経済協力開発機構(OECD)が「教育の目的は、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの2つを実現することである」と提唱していますが、本市は「社会のウェルビーイング」を「賑わい」と解釈しているのでしょうか。もしそうだとすれば、それはあまりにも薄っぺらな概念ではないでしょうか。
スポーツや文化といった社会教育は、賑わいの創出やまちの繁栄のためにあるのでしょうか。教育長のお考えをお聞かせ願います。 -
(藤谷教育長)
教育大綱につきましては、議員お話しいただいたとおり、総合教育会議において、市長と私や教育委員が十分に協議・調整をし、策定することが、法で義務付けられており、本市では、総合計画と整合を図り、策定しております。
現在、策定を進めております新たな総合計画素案におきまして、ご質問のスポーツや文化に係る施策につきましては、分野2「『育む・学ぶ』の子ども・若者・教育・生涯学習」に加え、分野5「『魅せる・楽しむ』の交流・自然」にも位置づけ、施策の展開を図ることとしております。
こうした点も踏まえ、教育大綱改定骨子案におきましては、スポーツや文化等について、教育活動である「社会教育・学び」という観点から施策の方向性を位置付けたところであり、その具現化を図るため、個別計画において、関連する施策をしっかりと位置付け、社会教育の充実に取り組んでまいります。
また、スポーツや文化等につきましては、「地域づくり」とも密接に関連があり、あわせて展開していくことで、社会教育のより効果的な展開が可能であることから、教育大綱改定骨子案におきましては、スポーツ施設や歴史遺産等の活用による「交流・賑わい」という観点からも位置付けたところであります。
こうした取組により、基本目標である「生涯にわたって学び、スポーツ・文化を通じて輝くことができるまちの実現」を図ってまいります。
教育は未来の市原市を担う子どもたちの成長を支える最重要分野であり、その指針となる大綱は、理念と哲学に裏打ちされた、より具体的で力強いものであって欲しいと願っています。
大綱の改定を通して本市の教育に対する明確な意思を市民に示すことを求め、次の質問に移ります。
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2.地域医療推進ビジョンの実現について
取り組みを評価
まず、市原市地域医療推進ビジョンの策定、そして市西部地区の新たなパートナー事業者候補者の選定に至るまで、市長はじめ当局職員、また本市の医療政策参与・千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センターの吉村センター長 並びに関係各位の多大なるご尽力に対し、心より敬意を表します。
帝京大学ちば総合医療センターの移転表明という危機を契機に、県ではなく市自らビジョンを策定したこと、またポピュリズムや感情論を廃し、EBPMに徹した優れたアプローチを行った事に対し、私たちはたいへん高く評価しています。
この取り組みは、本市の医療政策におけるターニングポイントになると確信しています。新病院の役割と市民への説明責任
ビジョンでは、市内の医療機能のうち回復期・慢性期・在宅医療が不足する一方、急性期病床は過剰であると分析されています。そして医師や看護師の不足・病院経営の厳しさといった現状や、今後の人口減少・超高齢社会も踏まえて、市西部地区に望まれる医療機能として、回復期・慢性期病床を中心とした整備が適切としています。
このたび決定した(仮称)姉崎のぞみ病院は、まさにビジョンが示した誘導すべき医療機能に概ね合致しており、本市の抱える医療資源の課題を解決するパートナーとして大変心強く感じています。
しかしながら、市民の中には、依然として漠然とした不安を抱いている方がおられることも事実です。特に、新病院が二次救急輪番への参加を明らかにしていないことに対し、懸念の声が聞かれます。
そこで、市民の不安を払拭し、新病院の役割に対する理解を深めるためにも、市民や関係者とのビジョンの共有を加速させ、ビジョンに基づきなぜ(仮称)姉崎のぞみ病院が本市にとって最適な選択肢であるのか、改めて市民に説明する機会を設けて頂きたい。
市長のご見解をお聞かせ願います。 -
(小出市長)
本市では、帝京大学ちば総合医療センターの移転決定に伴い、医療提供体制の再編成が課題となっております。
こうした中、現在、本市の医療政策参与を務めて頂いている、千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センターの吉村センター長をはじめ、地域医療の専門家と意見交換を重ねる中で、私は、将来の医療需要を見据え、持続可能な医療体制の確保を目指す中長期的なビジョンの必要性を痛感し、担当部に策定を指示したところであります。
このビジョンでは、今後、高齢者人口の増加が見込まれる状況から、回復期や慢性期などの病床機能がより必要となることや、在宅の高齢者を支える医療・介護機能が重要となることが明らかになりました。
また、ビジョンの実現に向けては、新たに誘致する医療機関だけでなく、地域の医療・介護関係者や市民との連携・協働により行動を起こすことが極めて重要であることを示しました。
これらの分析結果に基づき、市西部地区への病院開設にかかる事業者を公募した結果、千葉県内で病院や介護施設を複数運営し、高齢者医療の経験を豊富に有する「医療法人社団寿光会(じゅこうかい)」を選定したところであります。
寿光会が計画する「(仮称)姉崎のぞみ病院」は、本市で不足している回復期、慢性期病床を提供するとともに、外来診療、在宅医療にも積極的に取り組むとしております。
また、救急医療については、病院開設時は一次救急として、高齢者救急への対応や、市内の救急拠点病院の後方支援の役割を果たすとしており、二次救急への対応は、開設後の状況を見ながら、引き続き検討するとしております。
以上の点から、寿光会が新たに整備する病院は、地域医療推進ビジョンの趣旨に合致し、これからの本市の医療需要に必要な機能を備えたものであると考えております。
私は、市民の安心・安全を守ることに、常に意を注いでおり、医療施策につきましては、都市基盤を構成する重要な要素であると認識しております。
今後は、未来創生ミーティングなど市民の皆様との対話の機会を通じて、ビジョンに示した方向性等を丁寧に伝え、地域医療の将来像の共有に努めてまいります。
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行政だけでなく私たち市議会議員も、ビジョンをきちんと理解し市民に説明することで、住民の不安を払拭する役割を果たさなければならないと思っています。
ビジョンの実現に向けたアクションについて
次に、ビジョンには2035年に向け行政、市民、医療機関、介護施設が協働で実現を目指すとしてその役割が明確に示されていますが、医療政策に対する市民の関心が高まっている今こそ、行政が積極的にリーダーシップを発揮する時ではないでしょうか。
ビジョンの中でも市が早急に着手できるアクションは、市民のヘルスリテラシーの向上です。
市民一人ひとりが医療制度や疾病に関する正しい知識を持つことは、不必要な救急搬送の抑制や適切な医療機関への受診を促し、結果として医療提供体制全体の最適化につながります。
そこで、市民のヘルスリテラシー向上に向け、具体的な啓発活動や教育プログラムをどのように展開していくのか、当局のご見解をお聞かせ願います。 -
(保健福祉部長)
市原市地域医療推進ビジョンでは、2035年に向けた協働アクションのひとつとして、「市民のヘルスリテラシーの向上」を挙げており、市民の皆様に実践していただきたい行動の例として、「自己管理の徹底と健康診断の受診」や「かかりつけ医を持つこと」などを記載してございます。
ヘルスリテラシー向上に向けた市の取組といたしましては、いちはら市民大学の専門講座に、「いちはら健康大使コース」を設け、健康なまちづくりを支える人材の育成のほか、教養講座として「健康リテラシー講座」を開設し、健康的な生活習慣の実践に役立つ知識や技術を学んで頂いております。
このほか、「いちはら健倖フェスタ」等のイベントにおいて、健康や病気の予防に対する正しい知識等の普及啓発を行うと共に、救急車の適正利用を呼びかけるリーフレットの配布等を行っているところでございます。また、地域医療推進ビジョンは、市ウェブサイトで公開しておりますが、より分かりやすいリーフレット等を作成し、幅広く趣旨の浸透を図ってまいりたいというふうに考えております。
今後も、関係部局と連携し、こうした啓発活動を継続することにより、市民のヘルスリテラシーの向上に努めてまいります。
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ビジョンの前と後とでは、当然取り組みは違ってくると思います。
ビジョンを絵に描いた餅に終わらせないためには、強力な推進体制を構築することが不可欠です。
庁内外の関係者が密に連携するワーキングチームを立ち上げ、ビジョンの具現化に向けた具体的なアクションを加速させるよう要望いたします。医療機関の連携体制の構築について
最後に、医療機関の連携体制の構築について伺います。
ビジョンでは、拠点病院間の連携や、役割分担の明確化、逆紹介の推進などが掲げられています。
私は、こうした連携を恒久的なものにするための着地点として、地域医療 連携推進法人制度に注目しています。
地域医療 連携推進法人とは、複数の医療機関が連携して医療資源を効率的に活用するための組織で、医療機関同士の機能分担や、共同での医薬品・医療機器の購入、人事交流、紹介状のやり取りや転院などがスムーズになり、医療機関と患者双方に大きなメリットをもたらします。
ビジョンにも「地域医療 連携推進法人に向けた研究及び機運醸成」と明記されています。
そこで、本市における地域医療の将来像を実現するための方策としての、地域医療 連携推進法人など医療機関連携のあり方について、市長の展望をお聞かせ願います。 -
(小出市長)
地域医療連携推進法人は、平成29年に新設された制度でありますが、当時、私は地域医療への取組を進める中で、同制度について着目し、厚生労働省を訪問して、直接、担当者と意見交換をしてまいりました。
その結果を持ち帰り、市内の医療関係者と対話を行いましたが、当時の本市の医療事情において、時期尚早との意見が多数でありました。
しかしながら、その後、本市をめぐる地域医療の状況は変化しており、地域医療推進ビジョンに示した将来像の実現に向けて、医療機関の連携は重要性を増しており、地域医療連携推進法人は一つの有効な方策であると認識をしております。ビジョンに示した将来像の実現には、「支え合う医療、つながる市原、はぐくむ未来」という言葉が示すように、医療・介護に携わる当事者が共通の課題認識を持ち、方向性を共有することが重要であります。
このため、今後も市医師会など医療・介護関係者との対話を重ね、地域医療の課題解決に努めてまいります。
市長がいち早くこの制度に注目されていたことは、嬉しい驚きです。
帝京病院の移転という危機を、将来を見据えた地域医療再構築の好機へと変える本市の一連の取り組みは、既に全国から注目されています。市立病院を持たない本市が、データと連携に基づいた確かな医療体制を構築することができれば、これは全国のモデルケースとなるでしょう。
ビジョンに描かれた10年後の未来だけでなく、その先も見据えて、この変革を継続して進めていくことが重要です。市民の命と健康を守るため、そして医療分野における先進都市を目指して、市長の強力なリーダーシップと実行力に引き続き期待しています。
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3.高齢者福祉施策について 5問
(1)介護保険制度の円滑な運営について
認定審査期間の遅れ(事務の迅速化)
先日、私は居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの皆様から、多岐にわたる深刻なご指摘を伺う機会がありました。
中でも介護認定審査期間の長期化は、市民生活に直結する看過できない事態と感じました。
厚生労働省の通知では30日以内を目標としているにもかかわらず、全国平均は40.8日、そして本市はそれをさらに上回る48.2日。現場のお話では60日を超すことも珍しくないという、極めて憂慮すべき状況にあります。
特に更新申請において、決定が下りないまま認定期間が切れ、サービス提供に支障が生じるケースが日常的に発生しています。暫定ケアプランでしのいでも、介護度が変わればまた作成しなければなりません。特に介護度が下がった場合、暫定で受けていたサービスが さかのぼって無効となり、利用者の全額負担か事業者の負担のどちらかという理不尽な事態となり、双方に多大な混乱と負担が生じます。介護現場のICT化や個人情報の取り扱い(事務の効率化)
また、紙の書類提出のためだけに本庁舎への来庁を求められるなどICT化の遅れも深刻です。
さらに、ケアプランの作成に必要な主治医意見書の医療機関名や医師の氏名といった基本的な情報が「医師会から借りている書類だから」という不可解な理由で共有されない(共有している自治体はある)といった、情報の取り扱いに対する意識の低さも露呈しています。
これでは効率的な事務運営など望むべくもありません。
そこで、このように市民サービスに支障を来している現状に対し、当局はどのように認識し、これを打開するための具体策をどのように講じるのか。お考えをお聞かせ願います。 -
(保健福祉部長)
介護保険制度を取り巻く環境は大きく変化しており、平成12年度の制度開始当初3万5,265人だった高齢者人口が、令和7年4月1日時点では8万2,485人となり、要介護・要支援認定者数は、2,931人から1万5,191人と、5倍以上に増加しております。
これに伴い、介護人材の不足や、介護現場の業務負担の増加、また議員に御指摘いただきました要介護認定審査期間の長期化など、様々な課題が顕在化してまいりました。
このことから、市では、介護事業者の事務負担軽減のため、届出等に添付する書類の削減やLogoフォームを活用したオンライン手続きへの移行を進めてまいりました。
また、認定審査期間の短縮につなげるため、今年度、介護認定調査員を2名増員し、調査体制を強化するとともに、職員による調査票の点検方法等を見直し、事務の効率化を図るなどの対策を講じているところでございます。
このほか、申請者の負担軽減策といたしまして、「マイナポータル」を活用した「ぴったりサービス」による要介護認定等の電子申請も受け付けているところでございます。
市といたしましては、これら事業者、利用者の負担軽減の取り組みを継続して実施していくとともに、他自治体での取り組みを参考に、さらなる事務改善につなげてまいりたいと考えております。
色々と取り組みをしているとの答弁だが、課題解決には至っていないのではないでしょうか。介護現場と意見交換をする仕組みがない
私が介護現場の皆さまのお話を伺って一番感じたのは、そもそもこういった現場の声を吸い上げ、制度運営に活かす仕組みが欠如していることが根本的な問題ではないかということです。
今年度の行政機構改編で高齢者支援課に「事業者支援係」が新設されたが、その実態は「支援」ではなく「監査」の強化が目的とも聞いています。これでは現場の声が反映されることは永久にありません。
現場の意見を運営改善に活かすための、形式的ではない真に機能する対話とフィードバックの仕組みを構築する必要があると考えます。
当局は、このような現場との協働体制の構築についてどう捉え、具体的にどう取り組まれるのか、ご見解を伺います。
(保健福祉部長)
現在、介護事業者の皆様から意見を伺う機会といたしましては、まずは、日々の窓口対応の時の場や、介護サービス事業者に対する運営指導の場、このほか、市が指定する地域密着型サービス事業者が定期的に開催する運営推進会議や、市原市高齢者福祉施設協議会等の定例会がございます。
これらの機会を通じ、頂いたご意見を改善した場合には、フィードバックの場として、年1回実施しております、事業者向けの集団指導の機会を活用しているところでございます。
今年度、介護事業者(36:19)の運営や介護人材の確保対策について、よりきめ細やかな支援を行うため、先ほどご紹介いただきました高齢者支援課に事業者支援係を設置いたしましたことから、さらに意見交換の場を設けるなど、事業者の方々との対話を進めながら、事務改善やその結果をフィードバックする仕組みの構築に取り組んでまいります。福祉は民間の力なくしては成り立ちません。行政と事業者が胸襟を開いて対話する場がなければ、制度の最適化は不可能です。
鋭意取り組まれるよう要望いたします。
(2)移動手段の確保について移動手段の確保の重要性
高齢者の移動手段の確保は、単なる交通の利便性の問題にとどまらず、社会参加を促し生活を支える社会基盤として重要であることは言うまでもありません。
実際にケアマネの方から伺った事例で、自宅から徒歩圏内だったイトーヨーカドー姉崎店が閉鎖してからというもの食料も買えなくなり、ついには体調を崩して救急搬送された高齢者もいらっしゃるとのことです。
移動が制限されることで、高齢者は通院や日々の買い物だけでなく、地域との交流機会を失い、「孤独・孤立」という深刻な状態が加速する可能性があります。この問題は、これまでも地域ケア会議や生活支援体制整備事業の協議体などで常に提起されてきたはずで、当局も当然承知している事と思います。
例えば「通いの場」は現在約200カ所に上りますが、そこに辿り着く手段がなければその意義は半減してしまいます。これからは「居場所の確保」と合わせ「そこへ通うための手段の確保」にも、政策の比重をかける必要があるのではないでしょうか。行政の消極的な姿勢
そこで、改めて既存の福祉制度を精査いたしますと、まず介護保険制度の中に送迎や移動支援のスキームが既に組み込まれていることが分かります。
同制度の介護予防・日常生活支援 総合事業(総合事業)がそれで、各市区町村の創意工夫により多様な主体が参画できる仕組みとなっています。ところが厚生労働省の調査資料によると、総合事業のうち「送迎・移動支援」の千葉県内の実施率は44%に上っているにもかかわらず、本市は未実施です。
また、介護保険制度以外の枠組みである生活支援体制整備事業においても、買い物ツアーや移動販売は少しずつ広がってはいますが、あくまで民間主導の域を出ず、行政の積極性は感じられません。
このように柔軟に活用できる制度があるにもかかわらず活用が進まず、抜本的な解決策への動きが鈍い理由は何なのでしょうか。
これまでどのような検討を行い、今後どのようにこの現状を変えていくおつもりか、ご答弁願います。
(保健福祉部長)
議員のご紹介のありました、介護予防・日常生活支援 総合事業における移動支援につきましては、介護保険法に定められたサービスメニューで、地域の住民や活動団体が主体となって実施することが想定されているものでございます。
しかしながら、移動支援を伴うサービスにつきましては、保険の取り扱いや事故時の責任の所在、人材の確保などの課題があることから、現時点では、実施には至っておりません。
一方で、地区社会福祉協議会を中心に、地域住民主体の支援活動として移送サービスを実施している地区や、地域での移動支援に係るボランティア団体もございますことから、これらの団体へ、総合事業における移動支援の実施を働きかけるとともに、担い手の育成に向けた研修の実施など課題解決に向けた支援により、地域の実情に即した移動支援につながるよう、取り組んでまいりたいと考えております。
民間や地元からの申し出を待つのではなく、行政の積極的な働きかけによる支援メニューの開発に期待しています。福祉部局と交通部局の連携の遅れ
次に、全庁的な連携体制について伺います。
私は3年前の一般質問で、交通部局と福祉部局が合同で協議会を設置するなどの組織づくりを進めるべきと提言しました。
地域公共交通計画には基本方針として「福祉施策などとの連携」と明記されており、庁内プロジェクトは立ち上がっているようです。
しかし計画推進の母体である地域公共交通会議の近年の議事録を見ても、交通事業者の連携に関する議論は確認できますが、福祉部門との具体的な連携に関する議論の記録は見当たりません。
国が分野横断的な連携を強く求めていること、そして全国の自治体で「買い物×交通」「医療×交通」といった多角的な先進事例が次々と生まれていることを、当局がご存じないはずはありません。これらの事例はいずれも「移動」を単なる物理的な行為ではなく、社会参加や見守りといった目的を付加した多機能な取り組みへと進化させています。
そこで伺います。
高齢者の複合的な課題を解決するための司令塔機能として、交通、福祉、地域、民間事業者等ステークホルダーによるプラットフォームを構築し、そこでの戦略に基づいた具体的なモデルを検討・導入する考えはあるのでしょうか。ご答弁願います。
(交通政策担当部長)
市民の移動手段の確保については、既存の地域公共交通の再構築と、高齢者をはじめ、障がい者や子どもなど、本当に移動に困っている市民の方々のためになる事業の立案が重要であると捉えております。
国では、令和5年の『地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律』において、「地域の関係者」との「連携と協働」の推進を位置づけ、「地域公共交通計画」への記載に努めるよう促しております。
そこで市では、新たな「地域公共交通計画」の策定にあたり、計画策定の視点の1つとして「市民や交通事業者等の地域の関係者との連携強化」を掲げ、移動に係る社会課題に対し、地域の総力を結集して解決に取り組むことといたしました。
加えて、移動の課題は、公共交通だけでなく、福祉や介護、教育、観光など、幅広い分野にまたがることから、情報や課題、対策及び手法を共有し、効果的な施策立案につながるよう、16の課で構成する庁内横断プロジェクトチームを設置し、検討を進めております。
今後、新たな移動の手段を確保していく上で、交通事業者だけでなく、市民や企業、地域団体など、あらゆる主体との効果的な連携を図ることが最も重要であることから、既存の協議体の活用も含め、連携の仕組みを構築することで、移動の手段の確保に取り組んでまいります。
本市の公共交通に係る課題は、広大な市域という地理的課題、ボランティアの高齢化・担い手不足という社会的課題、そして部署間の連携不足という構造的課題を同時に解決する必要があります。
このような困難な取り組みだからこそ、私は交通施策が最もウェルフェアに直結する高齢者に、まずは焦点を当てた戦略が必要だと考えています。
当局の奮起に期待し、次の質問に移ります。
(3)高齢者のためのテクノロジーの推進について市原市の現状
近年、高齢者のデジタル活用が広がっていますが、本市の取り組みはデジタルデバイドの解消策としての民間連携による出張講座が中心で、いまだ十分とは言えない状況です。
今後は単にデジタル機器の操作方法を希望者に教えるだけではなく、テクノロジーで高齢者の生活を豊かにし社会課題を解決する、いわゆる『高齢者テクノロジー(エイジテック)』という、もっと踏み込んだ視点が必要ではないでしょうか。「エイジテック」と導入事例
エイジテックは、健康維持や社会参加、生活支援、見守りといった多岐にわたるニーズに応える革新的な分野として、今や世界的に注目されています。
企業や大学では、高齢者向け健康アプリや見守りIoTデバイス等の開発が進んでおり、自治体もデジ田交付金の活用など積極的な取り組みを始めています。
こう言うと最先端の技術革新という印象が強いかもしれませんが、地域に根差した「人の力」を活かした取り組みも可能です。例えば熊本県宇城市では、中高生がボランティアとして高齢者向けのスマートフォン講座をサポートし、世代間交流を促しています。本市のコミュニティスクール等でも応用できるのではないでしょうか。
そこで、超高齢社会の課題解決に向け、本市として新たに『エイジテック』という概念を政策に位置づけることについて、ご見解をお聞かせ願います。
(保健福祉部長)
エイジテックとは、高齢化する社会の様々な課題を「テクノロジー」で解決しようとするものであり、高齢者自身の生活の質の向上だけではなく、介護現場の業務の負担軽減にも寄与するものであると捉えております。
本市の取り組みとしましては、移動スマホ教室を実施しているほか、介護現場におきましては、業務負担の軽減のため、県の補助金を活用した介護ロボットの導入などが進められているところでございます。
今後、高齢者のウェルビーイングを向上させるため、また、不足が見込まれる介護人材を補うためにも、テクノロジーの活用は重要であると認識しております。
他自治体の取組事例等を参考にしながら、市の施策に反映できるよう、取り組んでまいりたいと考えております。
介護現場における負担軽減も、とても重要な役割だと思います。
GIGAスクール端末の大量返却を好機に
例えば、市原市認知症対策連絡協議会で出されたアイディアとして、GIGAスクール構想により2025年度から全国で大量に返却されるタブレット端末を、高齢者向けデジタル支援に活用してはどうか、といったご意見もありました。
私は、デバイスリサイクル企業やアプリ開発機関との協働で、コスト削減と環境貢献を両立させる意義深い事業になり得るのではないかと感じた次第です。新たな総合計画 基本計画の素案にも「市民との対話で描いたまちの姿」として「高齢者とデジタル」というワードが記されています。
まさにその具現化に向け「エイジテック」の推進を図っていただくよう要望いたします。
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4.EBPMを生かした成果重視の委託方式の導入について 1問
EBPMと過去の教訓
本市は新たな総合計画において、EBPM(根拠に基づいた政策立案)を重視し、ロジックモデルによる事業効果の明確化や成果検証の精緻化を掲げられました。私たちはこの流れに大きな期待を寄せています。
過去を振り返れば、コンサルへの委託など多額の公金を投じながらその効果が曖昧なまま終結した事業が散見され、特にコロナ禍のような緊急事態下で顕著でした。
成果が可視化されない限り、同じ轍を踏むことになりかねません。成果連動型民間委託契約方式(PFS)の導入を
そこで、EBPMを真に実効性あるものとするために、成果連動型民間委託契約方式(PFS)の導入を提案いたします。
これは、あらかじめ成果指標を設定し、達成度に応じて事業者へ報酬を支払う仕組みで、従来型の「やったこと」に支払う委託ではなく、「何が変わったか」という結果に焦点を当てることで、事業者の創意工夫を引き出し、限られた財源で最大の効果を追求する手法です。
政府もガイドラインを示し、各地で先行事例が成果を上げています。
EBPMとPFSは、どちらも政策の立案・実施における有効性と効率性を高めるためのアプローチです。市民の信頼に応えるためにも、全庁的なPFS導入に向け、手引きの作成といった具体的な方策を検討することを求めます。ご見解をお聞かせ願います。 -
(総務部長)
成果連動型民間委託契約方式、いわゆるPFSにつきましては、目指すべき事業の成果をあらかじめ明確化し、事業評価に応じて支払額が変動するというインセンティブにより、民間ノウハウを活用した創意工夫が促進され、事業の有効性・効率性の向上が期待されます。
国におきましても、令和元年7月、内閣府に「成果連動型事業推進室」を設置したのち、令和5年3月には、令和7年度までの取組事項をまとめた、「成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン」を決定し、医療や介護、まちづくりなど多くの行政サービスにPFSの活用を広げることとしております。
本市におきましても、例えば、企業版ふるさと納税においては、寄附額に応じて委託料を支払う支援委託、市の遊休財産活用においては、売却額に応じて委託料を支払う包括民間委託など、PFSと同様の要素を含んだ取組を一部実施してきたところであります。
また、現在作成中の新たな総合計画では、事業実施から目的実現に至るまでの道筋を、複数の要素に分解し論理的に整理する、ロジックモデルを導入する予定ですが、この考え方とPFSの相性は良いものと認識しております。
その一方で、PFSにつきましては、個々の契約における成果指標の設定や、指標の達成度に関する評価の在り方など、従来に比べて契約内容の検討に係る労力が相当量、増加することが見込まれます。
これに加え、評価の客観性の担保や成果報酬に対する予算の確保など、PFSを導入する上でいくつかの課題がございますことから、どのような場合に導入することが真に効果的なのか、十分に精査する必要があると考えております。
今後につきましては、PFSの導入について引き続き調査・研究を進めるとともに、ロジックモデルを活用することで、新たな総合計画が掲げる「目指すまちの姿」の実現に向けて、より効果の高い施策立案や、施策の成果を論理的に分析・検証し、施策の実効性を高めてまいります。
もちろん、内部調整や成果指標設定の難しさといった課題は承知しています。しかし、その課題を乗り越えてでも挑戦する価値が、PFSにはあると思います。PFSは単なる契約方式の変更に留まらず、行政のあり方そのものを変革する可能性を秘めているからです。
前向きに取り組まれるよう要望し、質問を終わります。
