令和7年 第1回市原市議会定例会議 代表質問 森山かおる

1.市原市総合計画[実行計画(令和7年度版)]案及び令和7年度当

初予算案について

予算編成の基本方針では「新たな総合計画を見据え、多様性・包括性・持続可能性を更に重視し、ウェルビーイングの高いまちの実現につなげる」とされています。

事業内容に目を通すと、子どもの居場所づくりや学びの選択肢確保、要配慮児童の受入れ体制の強化、基幹相談支援センターの支援体制、生活困窮者の自立支援など、マイノリティに対する新規事業や拡充事業が多くあり、市民一人ひとりに向き合い格差解消を意識した予算編成に取組まれたと感じております。

 

1)スクラップ・アンド・ビルドの推進について

    *定量的な事業の成果・効果の見える化

    高齢化の進展による社会保障関連費の増大、新たなまちづくりへの投資、公共施設の長寿命化対策としてごみ焼却施設や粗大ごみ処理施設の更新、市庁舎整備、チバニアンガイダンス施設の整備など、大規模建設事業による財政需要の対応が迫られる中で、事業の不断の見直しと優先順位付けは、これまで以上に厳しい目線で行わねばなりません。

    昨年10月に公表されたR7年度版実行計画策定及び予算編成の基本方針における留意点として「事業シートの活用等により様々な検証や事業の評価を必ず行い、必要な見直しに積極的に取組むとともに、定量的な事業の成果・効果の見える化を図る」ことが付け加えられました。

     これは、継続的に取組まれてきた事業のスクラップ・アンド・ビルドの徹底を、更に強化していくものと受け止めていますが、予算編成にあたり定量的な事業の成果・効果の見える化をスクラップ・アンド・ビルドにどのようにつなげたのか、お伺いします。

    2)市債発行について

    本市の財政運営の基本指針では市債発行の上限額を50億円とし、一時的に50億円を超える発行額とならざるを得ない場合には、後年度の発行額の抑制により恒常化しないよう努めるものとしています。

    市債発行額は今年度95.9億円、R7年度は88.6億円、その後も実行計画ベースでは109.9億円、115億円と増え続け、R10年度まで50億円を大幅に超える発行が続きます。それに伴って市債残高はR6年度から増加傾向に転じ、R16年度には644億円との見込みです。

    残高ピーク時のH8年度944億円と比較すれば300億円も減少していますが、将来世代の負担はどうでしょうか。

    市の人口推計によるとR16年度の人口は248,000人でH8年度に比べると約3万人の減少に留まっていますが、生産年齢人口の落ち込みは激しく約6万人も減少し約142,000人とのことです。

    大雑把な計算かもしれませんが、市債残高を生産年齢人口で割るとR16年度は一人当り453,521円。H8年度より若干(12,427円)少ないとはいえ、事業費や執行時期が確定していない大規模建設事業は含まれていないため、負担はH8年度を上回る可能性は十分あります。予算案によりますと、市債残高はH8年度944億円をピークにR5年度末には421億円まで減少してきた現状を踏まえ、交付税措置の有無など有利な地方債の活用について検討したとされていますが、生産年齢人口に見合った世代間負担の公平性をどのように捉えて市債発行額の精査を行われたのか、お伺いします。

    行政組織機構改革(案)について

    1)地方創生部の解消について

    R7年度には新たな総合計画を踏まえ、大幅な組織改革が行われることになっています。

    公共資産マネジメントの推進を加速化するために資産経営部を新設、地方創生部を解消して交通政策課を企画部に移管、観光・国際交流課と芸術際推進室を経済部に移管、教育委員会にスポーツ文化振興の所掌事務を戻し生涯学習部にスポーツ・文化振興課を新設するなど、大掛かりな組織改革といえますが、結局、元の鞘に収まったという印象をもっております。

    地方創生部については前定例会の代表質問でも申し上げましたが、目的や構成に多々疑問を感じてきたため、新たな総合計画の策定をにらんだ組織機構の改編を要望しました。そのため部の解消自体には全く異論はありませんが、市の戦略として効果検証は必要だと思っています。

    そこで確認させていただきます。別々の部署に所管されていた交通政策、観光・国際交流、文化及びスポーツ振興を、地方創生部に集約したことにより、どのような成果があったのか、お伺いします。

    もう一点確認させていただきます。

    地方創生部の解消により、交通政策課が企画部に移管されます。

    公共交通の利便性向上は市民ニーズのトップですが、市の公共交通の現状は運転手の労働時間の規制による2024年問題よりも前から路線バスの減便や運休が相次いで起こり、2018年に策定した立地適正化計画で示されたコンパクト・プラス・ネットワークの実現にも影響をもたらしています。交通政策を拠点形成やまちづくりと一体的に捉え、都市部に移管することも考えられたはずですが、それを敢えて企画部に移管したのは、強い思いが込められていると推測します。市長の思いをお聞かせ願います。

    3.新たな市原市総合計画【基本構想・基本計画】骨子案について

    1)総合行政の推進について

    基本理念である変革と創造を推進していくために3つの戦略が掲げられ、それを具現化するために5つの方策と15の施策が打ち出されました。

    現総合計画と比較すると市民に伝わりやすい言葉を用いられており、施策を46から15に絞り込むなど、シンプルにまとめ上げられたように感じています。先日傍聴した総合計画審議会では、ここまで絞り込んだ理由として「敢えて細かく設定しないことで縦割りを防ぎ部局横断的に取組む」とのご説明がありました。総合行政の推進を強化していくという姿勢は評価したいところですが、現状を見るとかなりハードルが高いと感じています。

    例えば八幡宿駅西口複合施設整備後の公共施設跡地については、立地適正化計画の都市誘導区域内にあるにも関わらず、財政部と都市部での検討プロセスが見えないまま売却が進められようとしていました。

    また日頃から感じていることですが、障がい福祉に係る協議会や審議会に特別支援教育という観点から教育委員会が同席することも必要だと思いますし、その逆もしかりです。

    私が知る限り、県では10年以上前から障がい福祉や特別支援教育に関わる会合には、必ず双方の職員が同席していました。

    後で情報を共有すれば良いということではなく、委員や市民の声を直に聴くことで思いの深さを知ることができますし、幅広い意見交換に繋がります。

    これらは職員の意識改革というレベルで改善できるかもしれませんが、それさえままならない状況です。敢えて施策を絞り込み部局横断的な取組みを進めるためには、総合行政の推進の強化が必要だと考えますが、どのように強化していくのか、またそのための仕組みについてお伺いします。

    4.不登校児童生徒への支援について

    このテーマについてはこれまで幾度か取り上げてきました。民間団体との連携や子どもの居場所づくり座談会の開催、またR7年度にはフリースクールの利用料及び運営者への補助も設けられ、市の取組みが前進していることを嬉しく思っています。

    一方、保護者や専門家から話を伺うたびに、まだまだ多くの課題があることを痛感し、今回も質問させていただきます。

    1)教員と保護者のための研修について

    不登校の子どもを支えるためには、頭痛や腹痛などを訴える行き渋り期、休み始め家にこもる混乱期、休みが長期化する慢性期、外との関わりに関心を示し始め何かをやってみたくなる回復期といった4つの段階があり、その段階に応じた関わり方が重要だとされています。

    行き渋り期にはムリして学校に行かせず子どものあるがままを受け入れる、混乱期には甘えを受け止め安心させてあげる、慢性期には子どものやっていることに関心を示し家の中での充実度を高めていく、こうして回復期に漸く外に出ることができます。

    しかしこのような心の回復プロセスを理解していなかったために、行き渋りや家にこもり始めた時に登校を促したことで親子関係が悪化し、子どもが心を閉ざしてしまったというエピソードを何人もの方から聞いています。

    また、学習の遅れが気になり通学できない日がいつまで続くのか、このままでは引きこもりになってしまうのではないかと焦る保護者の気持ちや、年度が代わり新しい担任になると、引き継ぎや知識不足といったことから対応が継続されなかったという経験談も聞いております。そこで、教員と保護者が4つの段階に応じた知識を得られる研修の場が必要だと思いますが、見解を伺います。

    2)適切な支援を考えるための実態調査について

     栃木県のNPO法人キーデザインが無料LINE相談窓口の利用者を対象に、子どもの不登校が家庭に与えた影響についての実態調査をしたところ、回答者376名のうち約4人に1人が離職や休職を選択しており、「早退・遅刻・欠勤が増えた」「雇用形態を変えた」も含めると、仕事に何らかの影響が生じている家庭が約8割にも達していることが判明したとのことです。

    不登校離職の問題は実際に市内でも起こっています。

    しかし、もっと深刻なのは働かざるを得ないひとり親や共働き家庭です。子どもの学年や留守中の安全性の確保などの観点からネグレクトと見なされるのではと気になりながらも、後ろ髪を引かれる思いで子どもを一人家において仕事に出るしかありません。

    これでは先程述べた段階に応じた関わりが持ちにくく、子どもの心の回復に影響をもたらす恐れもあります。このように不登校児童生徒への支援は子どもへの直接的なアプローチだけでなく、家庭状況を把握して幅広い観点から対策を講じなければならないと思います。そのためには実態調査が必要と考えますが見解を伺います。

    3)ストレスマネジメント教育について

    不登校の兆候が見られる児童を受け入れる教室「つなぐルーム」が今年度2校に設置され、R7年度には5校に拡充される予定です。

    教室に入りづらい子どもにとって安心できる場所を作ることで、不登校の未然防止や学校へ登校するきっかけの場とするというもので、文部科学省がCOCOLO プランで示している、学びたいと思った時に学べる環境を整えるスペシャルサポート設置の取組だと思っている。

    16年前になりますが、私の子どもが通学していた大阪の学校に同様の教室が設置されていたこともあり、その効果については一定の理解をしていますが、不登校の未然防止としてもう一歩踏み込んで考えていただきたいと思っています。

    そこで取り入れていただきたいのがストレスマネジメント教育です。

    溜まったストレスを自分に向けるのが不登校、社会に向けるのが非行、弱い者に向けるのがいじめで、不登校だけでなく暴力やいじめといった行為にも繋がるストレスに向き合い、それをどう対処するかを考え、メンタルヘルスの力を身につける教育です。

    文部科学省では、ストレスについての正しい知識や対処方法を身につけ、セルフ・ケアができる力を育て、困難な状況を乗り越える『生きる力』を育てる活動としており、これは全ての子どもにとって生涯通じて役立つ知識でもあります。ストレスマネジメント教育の実践について、見解を伺います。

    4)学校教育の改革について

    これまでは、不登校児童生徒やその保護者に係る支援について伺ってきましたが、私は学校教育も変わらねばならない時期がきていると思っています。

    昨今、創意工夫を凝らした様々な学校の取組みが注目を浴びております。

    1年前に市内で開催された「夢見る公立校長先生」の上映会では、通知表をなくし本人がどれだけ伸びたかを個別評価する形に変える、宿題やテストをやめる、教科学習を環境や福祉といったカテゴリー別の学習に変えるなど、子どものやる気を起こし不登校にさせない学校教育の現場が映し出されていました。

    このような学校改革を成し遂げた公立学校長の熱意もさることながら、映像の中の子どもたちの生き生きとした姿が印象的で、会場にいた多くの保護者から「市原市にもこんな学校がほしい」との声があがっていました。

    フレンド市原やつなぐルームといった取組みを否定するつもりは全くありませんが、学校や教室に入れなくなった子どもたちを集めて別の居場所を作るだけでなく、公教育の責任として共に学べるための方策を考えていただきたいと思っています。それが真の多様性・包括性でもあり、文科省が示した「不登校を生まない、安心して学べる魅力ある学校づくり」の真髄ではないでしょうか。

    学校教育改革を進めることについて、教育長のお考えをお聞かせ下さい。



    好奇心を沸き立たせる教育は学びの原動力になり、自己肯定感も高まります。上映会に参加した保護者は、教育指導要領を守れば校長裁量で映画に映し出されたような学校改革ができることを知り、市原市での実践に期待しています。是非、その声に応えていだきたいと思います。

    5.コミュニティ・スクールの推進について

    *パイロット校の成果検証

    コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は、学校・家庭・地域が、学校の目指す教育目標やビジョンを共有し、地域と学校がより強固に連携・協働できる体制の構築を図ることを目的として、令和5年に市原小学校・市原中学校区と菊間小学校・菊間中学校区をパイロット校として導入されました。今年度は11中学校区に広げられ、R7年度には市内全中学校区(21)に導入されることになっています。

    学校が抱える課題が複雑・多様化し対応に苦慮する中で、地域全体で子どもの育ちを支えていくコミュニティ・スクール導入は欠かせないものだと思っていますが、導入開始当初に伺ったシンポジウムでは、地域の人材発掘をどのように進めればよいのかなどと悩む教職員の声を聞いてきました。

    また、R7年度には市内で最も多くの小学校を抱える八幡中学校区に導入されることになり、地域・家庭と学校の仲立ちを担うコーディネーターの配置については、担い手の負担を軽減するための配慮が望まれます。当局は、導入した学校の成果検証の結果を踏まえながら、地域の実情に応じ、中学校区単位をベースに市内全小中学校への導入を進めていくとしていますが、具体的にどのように地域の実情に対応されてきたのか、お伺いします。

    *コミュニティが抱える問題

    地域の実情として、深刻な問題があります。

    ここで令和5年度から先行的に取組んできた菊間小学校・菊間中学校区について取り上げたいと思います。

    7年前に小沢議員が当局の学区外就学に対する状況把握や対応の不備を指摘し、地域コミュニティの衰退に繋がっていると苦言を呈しました。まさにその問題が昨年開催された「市長と町会長で語ろう未来創生ミーティング」で浮き彫りになりました。

    少子化における学校運営をテーマとした市原地区会場で、菊間小学校ではR6年度の新入学対象者72名に対し、実際に入学したのは僅か17名であったという町会長の発言に愕然としました。その方は「コミュニティ・スクールは地域が子どもたちと一緒にまちづくりをすることも大切な目的なのに、学区外就学の子どもが大半を占めコミュニティが崩壊しているのが現状。これではコミュニティ・スクールもままならない」と嘆いておられ、学区の厳格化を求めておられました。すでに学区外就学の問題については7年前に指摘しており、その間に対応されていたらこのような問題は起きなかったのではないでしょうか。未だに改善されていないのは何故なのか、ご説明願います。

    しかし実態は部活動など定められた許可理由以外の理由が主で、越境している生徒の多くが自宅から登下校していることは周知の事実です。それを知っていながら放置していたとしたら、許可した責任が問われるのではないでしょうか。地域の悲痛な声に、今後どのように対応して、コミュニティ・スクールを進めていくのか、伺う。