令和6年 第4回市原市議会定例会議 代表質問 質疑応答 小沢みか

代表質問 小沢みか
12月5日(木)

1 協働のまちづくりの推進について
 (1)地域運営組織に係る新たな制度の導入について
 (2)地域における人材や組織の育成について
 (3)行政が主体的に関わるための組織体制の構築について

2 八幡宿駅周辺における拠点まちづくりビジョンの実施について
 (1)西口周辺における公共施設跡地活用の方向性について
 (2)整備基本計画の策定・推進について

3市原市こども計画骨子案について

4市政運営のおける組織改革について

1.協働のまちづくりの推進について

 町会自治会の疲弊・コミュニティの危機

近年、町会・自治会の加入率低下や担い手不足が深刻化し、地域コミュニティの維持が困難な状況にあります。実際、地方創生ミーティングや団地再生サミットなど様々な対話の場で住民や関係者からこの問題が提起されており、その声は年々大きくなっている気がいたします。

さらには防災、美化・清掃、 高齢者の健康づくりや見守り、子育て支援や居場所づくりなど、地域活動を行う多くの団体も同様の状況にあります。

実際、地縁組織を初めとする市民活動団体は法人格を持たない任意団体が大半を占め、組織力に課題を抱えています。総務省の調査でも、役員・スタッフの高齢化、次のリーダー人材不足、活動資金不足などが大きな問題として挙げられています。

これまでの本市の市民活動支援は、地域共創プロジェクトといった事業はあるものの、主に既存の組織へのサポートにとどまっていた感があります。地域社会を取り巻く状況の変化も踏まえて、地域の自発的な取り組みを待つことなく、もう一歩踏み込んだ手法を導入すべき時期に来ているのではないでしょうか。

(1)地域運営組織に係る新たな制度の導入について

今年9月施行の改正地方自治法により「指定地域共同団体活動制度」が創設されました。

地域住民の生活サービスの提供に資する活動を行う団体を市町村長が指定し、その要件は条例で定めます。市町村は指定団体への支援や調整等に加えて、行政財産の貸付や随意契約による事務の委託も可能となります。

従来の地域活動は、個人の義務感や熱意に頼るところが大きかったと思いますが、この制度の導入により組織的基盤が強化され、多様な地域団体の連携や協働が進み、活動の持続可能性や発展性の向上が期待されます。そこで、この新たな支援制度を導入することについて、当局のご見解をお聞かせ願います。


「早期導入に向け」というご答弁で安心しました。

同制度は、地域課題の解決に繋がる大きな可能性を秘めていると思います。それだけに幾多のハードルが想定されますが、もはや手をこまねいている状況ではありません。ぜひ前向きなご検討をお願いいたします。

また同時に、地域活動のデジタル化や、町会・自治会における広報物の配布・回覧、各種委員の推薦・選出などの行政協力業務の棚卸しといった、活動の効率化や負担軽減に資する取り組みも、当然ながら積極的に進めていただくよう合わせて要望いたします。

  (2)地域における人材や組織の育成について

今年9月の団地再生サミットの共同宣言でも言及されていたプロボノ制度のように、職業経験を活かした社会貢献活動の推進は、非常に有意義な取り組みといえます。

具体的には、会計業務やIT支援、コンサルティング、イベント企画、PR活動などが考えられます。こういった人材バンクの仕組みを構築する事について、当局のご見解を伺います。


「まちサポいちはら」の活用といった具体的な運用の提示があり、一歩進めていただけるということで、評価したいと思います。このような仕組みは、地域に継続的なスキルが蓄積され、そこからさらなる人材や組織が育つという好循環を促すことに繋がります。ぜひ前向きなご検討をお願いいたします。

(3)行政が主体的に関わるための組織体制の構築について


「現在支所でも行っている」というようなお話がありましたが、今の状況はとても「地域担当職員制度を導入している」と胸を張って言えるレベルではありません。

勿論簡単なことではないと承知していますが、いまデメリットばかりを並べ立てていたら全てが一歩も前に進みません。行政自らが変わる覚悟なくして、どうやって地域の疲弊を食い止め協働のまちづくりを進めるというのでしょうか。

市長は市民との対話と連携を重視し、DXの推進によって職員が人にしかできない仕事に注力できる環境を創出すると述べておられます。同制度は、まさにその方針を具現化するものです。

今回、協働のまちづくりを推進する手段として新たな仕組みを3点提案させていただきましたが、すべて連動している話で、この中のどれ一つ欠けても全て成り立たちません。ぜひ本気で進めていただくよう要望いたします。

2.八幡宿駅周辺における拠点まちづくりビジョンの実践について

(1)西口周辺における公共施設跡地活用の方向性について

現在市は、公共施設再配置のモデルケースとして、西口周辺にある公共施設を機能集約した複合施設の整備を進めています。今回はその跡地のうち支所・公民館・認定こども園の敷地約8,200㎡の利活用の方向性について伺います。

当局から示された方向性では、跡地は売却、募集方法はプロポーザル、建物は事業者が解体、活用用途は商業機能を主軸とし居住機能なども付加が可能、とまとめられています。

しかし、この方向性に対し私はいくつかの問題点を指摘したいと思います。

不十分なニーズ把握・土地のポテンシャルの軽視

当局はこの決定にあたり、無作為抽出による約400名の市原地区住民アンケートや企業などへの意向調査の結果を参考にしています。

その一方で、町会や地域活動団体等の意見は全く反映されていません。無作為抽出だけでは「まちづくり」という視点まで踏み込んだ意見を引き出すことはできません。

また当該区域は都市機能誘導区域内にあり、駅からのアクセスは徒歩圏内。しかも飯香岡八幡宮に隣接し、幹線通り沿いという一等地です。民間側が売却を望むのは当然であって、それを売却の主な根拠とするのはいささか短絡的ではないでしょうか。

PRE戦略との矛盾

市は「市原市公共資産活用基本方針」において「公的不動産の適切で効率的な管理・運用を推進し、新たな価値の創出を目指す」と定めています(いわゆるPRE戦略)。しかし今回の動きは、初めから財産の処分のみに重きを置いているとしか思えません。そこで当局では、PRE戦略の観点から当該跡地のポテンシャルをどのように評価し、またどのような考え方から土地ごと売却の方向性を出すに至ったのか、ご説明願います。

いま「市場性が高く、公共性は低い」とのお話がありましたが、なぜ公共性が低いと言えるのでしょうか?

公共資産活用基本方針(p11)には、『売却可能資産』とは「将来的にも本市利用の見込みがない」「売却しても特に支障がない」と定義しています。

当該跡地がこれに該当すると判断した根拠を示してください。


拠点まちづくりビジョンには「飯香岡八幡宮や駅西口広場を活かして滞留空間を創出する」としているが、都市部とそのような検討を行ったうえでの判断なのでしょうか?

市民との対話で、活用の可能性を模索せよ


近年は本市も、障害があっても一人で通えるという理由から駅近に立地する就労支援施設が増えていると感じています。

立地適正化計画では、八幡宿駅周辺のまちづくりの方向性として、高齢者等が歩いて安心して生活できる医療・福祉機能をはじめ、千葉・東京方面に通勤する子育て世代、通学する若者が生活し交流できる、子育て・教育・文化機能の誘導も示されています。

売却は最終最後の手段です。八幡宿駅西口の公共施設再配置事業は、跡地活用まで含めての「モデルケース」ではないでしょうか。ぜひ地域との対話を丁寧に行い、まちづくり全体のイメージを共有したうえで、跡地活用のあり方を検討されるよう要望いたします。

 (2)整備基本計画の策定・推進について

当初は令和4年度中の策定を目指していましたが、順天堂大学の誘致が大きな要因となり、遅れが生じています。しかも全てにおいて住民への説明がほとんどなされていない現状に懸念を抱いていることから、何点か質問いたします。

土地利用などの方向性について

大学の新設は、確かに地域活性化の大きな起爆剤となる可能性を秘めています。しかし学生が駅と大学を往復するだけとなっては全く意味がありません。若者達が交流し、働き、生活する魅力あふれる街にするためには、住宅や商業施設、そして地域住民との交流が促されるような面的整備が不可欠です。

拠点まちづくりビジョンでは、駅東口から若宮方面へ続く道路をシンボルロードとし、憩いと交流の場を創出するべく「周辺の農振地区の解除」といった方策が示されています。

従って、ビジョンに掲げる土地利用の方向性やインフラ整備などの整備基本計画の骨格部分については、大学設置の可否に関わらず早急に取り組みを進めていかなければならないのではないでしょうか。当局は現時点でどのような考えを持っているのかお聞かせ願います。


どうも行政は「拠点まちづくりビジョン」を忘れてしまっているような気がしてなりません。

そもそもビジョンは大学誘致を前提とはしておらず、当然ながら整備基本計画は大学整備計画ではありません。特に土地利用に係る農業政策の方向性については、地権者のみならず市全体の論議が必要ですから、当局には一日も早く具体的な行動に移すよう求めます。

地域との対話と住民との組織作りを進めよ


ぜひまちづくりプレーヤーの皆さんの想いにしっかり応えていただきたいと思います。

また、公民連携による組織については、ビジョンに掲げているように学識経験者や専門性の高い民間によるサポートについても検討をお願いします。

最後に、整備基本計画の策定にあたっては、先ほど質問した西口エリアも当然ながら対象となるから、駅を超えて人々が対流するような一体性を持たせた計画とするよう、ここで念押しさせていただきます。

具体的には、東西各々どのような手段で滞留空間を創出するか、そして両エリアを結ぶ歩行者空間をどう再構築するか、さらに飯香岡八幡宮を意識した景観の形成など、ビジョンで示されている住民や関係者の意見が着実に整備計画に落としこまれるよう、引き続き注視していきたいと思います。

3.市原市こども計画骨子案について

市原市こども計画のポイント

こども基本法の制定やこども大綱の閣議決定を受け、本市においても新たに「こども計画の策定が進められています。同計画は、子ども・若者の未来を左右する重要なものとなるため、より深い論議が求められます。

これまでの本市の子ども・若者に係る諸計画と異なる主なポイントとして、

*子ども・若者、子育て当事者の意見をこれまで以上に丁寧に聴取したこと

*「こどもの権利の尊重」を基本的な視点にしたこと

*対象年齢の定義について、30代の青年期も含むとしたこと

以上であると受け止めています。

先般、計画の骨子案について、附属機関である「いちはらっこの子育ち支援会議」を傍聴しました。その中で出された意見も踏まえ、気になった点について質問いたします。

困難な状況にある子ども・若者の声を反映しているか

まず計画策定にあたって、児童生徒によるワークショップの開催など当事者の意見聴取に意を用いられたことについては評価いたします。

ただ、困難な状況にある子どもたちの声が十分に拾えているのかどうかが気になります。

貧困、虐待、不登校、障害児、ヤングケアラー、外国人、非行、ケアリーバーなど、声を上げにくい状況にある子どもたちに関する具体的な調査方法や、その結果が計画にどのように反映されているのかについて、具体的な説明を求めます。


困難な状況にある子どもたちの声は特に意識して拾うことが大事です。また、調査すること、分析すること、計画に反映することはまた別の作業です。ぜひその一連の流れも明確にしていただきたいと思います。

貧困対策への取組みが弱まっている

教育の機会均等の取組み強化を

貧困対策の中で特に注目している視点の一つが「教育の機会均等」です。

市原市の生活保護家庭の生徒の大学等への進学率は、母数が少ないため年によってバラツキが大きいが、20~40%台。全国の全世帯における進学率は令和5年度で約80%ですから、依然として格差が存在しています。

貧困対策推進計画 実績報告書」によれば、困窮層世帯のうち、就学援助制度を利用したことがない割合が39%にも上っています。支援からこぼれ落ちている児童生徒がまだまだ大勢いるということに他なりません。

就学援助で国が示す援助対象品目のうち、市原市が採用していない品目は、オンライン学習通品費・クラブ活動費・体育実技用具費・生徒会費・PTA会費などまだたくさんあります。

まずは困窮家庭の児童生徒に支援を確実に届けたり、対象品目の拡充も検討したりする必要があるのではないでしょうか。

独自に給付型奨学金制度を開始した自治体もあります。本市が生活困窮舎自立支援法に基づく子どもの学習支援を拡充されたことは大変評価していますが、こども計画でさらに教育の機会均等の取組みを強化されるよう要望いたします。

子どもの権利の尊重はどのように具現化されるのか

次に、「子どもの権利の尊重」について伺います。

骨子案では最も基本的な視点として掲げられていますが、施策体系を見るとなぜか後方に位置づけられ、具体的な施策としては、条例の制定の他は意見聴取や啓発事業にとどまっています。例えば、虐待防止、ヤングケアラー支援、インクルージョンに資する環境整備など、子ども・若者の権利擁護に直結する施策は様々考えられますが、新たな計画では具体的にどのように強化されるのか、ご説明願います。

切れ目のない支援について

次に、同様に基本的な視点として掲げられている「切れ目のない支援」について伺います。

これについては、施策体系が基本的に「妊娠期・乳幼児期」「学童期・思春期」「青年期」といった年代別に区切られているため、その時点で切れ目が生じる構造になってしまっていることが残念です。

例えば、障害のある子どもが、療育から特別支援教育、そして高等教育・就労へと移行する際の切れ目が、一番の課題なのです。

計画は行政と市民との約束事を具体的に示すものですから、先ほどの「こどもの権利の尊重」と同様、「切れ目のない支援」という視点が施策体系にも表れていなければならないと思います。そこで、年代ごとや部局間といった様々な切れ目に対して、こども計画では具体的にどのような施策によって繋げていくのか、当局のご見解をお聞かせ願います。


骨子案から読み取れない視点については、ぜひ計画に明確に位置づけていただきたいと思います。

市原市こども計画は子ども・若者の未来を照らす計画であると同時に、個別計画でありながら新たな総合計画よりも一足早く策定されるため、非常に重要な意味を持つと思います。5年間で全ての課題を解決できるものではない事も承知しています。だからこそ、的を絞った効果的な戦略を市民に示していただくよう要望いたします。

4.市政運営における組織改革について

ここでは特に、公共資産マネジメント部門と地方創生部に関し、憂慮している事項について申し上げます。

公共資産マネジメント部門について

まず、公共資産マネジメント部門についてです。

公共資産マネジメント推進課が企画部に新設されたのが平成29年度。市民の貴重な資産の再編という大きな使命を背負い、市議会の期待も大きかったと認識しています。

しかし現在は財政部で公共施設の保全と包括管理が主な業務となり、マネジメントではなく縮減が優先されているような状態にあります。先ほど取り上げた八幡宿駅西口の公共施設跡地における利活用方針は、まさにこの典型的な例と言えるでしょう。

いま、市内全体の公共資産を俯瞰し、適切な配置や新たな価値の創出といった本来の公共資産マネジメントの役割を、一体誰が担うのでしょうか。

地方創生部について

また、地方創生部については以前も指摘しましたが、その目的や構成に多くの疑問を抱いています。

*まず「地方創生」の対象となる「地方」について、首都圏から見た地方なのか、市の南部なのか北部なのか、定義が不明確なまま施策が推進されていること。

*そして教育委員会から文化振興を引き剥がしたことによって、本市の教育と文化の一体的な取り組みが難しくなっている恐れがあること。

*さらに、コンパクトプラスネットワークとの整合性の観点から、拠点整備と公共交通政策の一体的な推進が望まれますが、両部門が別の部に配置されてしまっていること。

「地方創生」という言葉自体も、法整備から10年が経過しその意味合いが薄れてきています。取り組みの成果を実感している市民も少ないのではないでしょうか。

市長の方針を問う


目まぐるしく変転し複雑で予測困難な「ブーカの時代」には、柔軟かつ迅速な対応が必要。新たな総合計画を待つのではなく、来年度から取り組んでいただきたいと思います。市長には、今後も市民の期待に応え、市原市の未来を切り開くための戦略的なビジョンを示していただくよう願います。