令和2年 第2回市原市議会定例会 個別質問:小沢みか

個別質問:小沢みか

1.新型コロナウイルス感染症に対する医療体制の整備について

今回、新型コロナウイルス感染症によって様々な課題が突き付けられましたが、最優先すべき対策は、いかに地域医療の崩壊を防ぐか、だと思います。

本定例会でもすでに複数の会派からご提言があったので、それらを踏まえ、私からは1点だけ、市の基本的なスタンスに関わる質問を行います。

*地域外来・検査センターの設置について

先般の代表質問では、地域外来・検査センターの設置に向けて、市医師会と連携しながら県に働きかけていくというご答弁がありました。

ご承知のように県内感染期には、市民あるいは開業医が帰国者・接触者相談センターに連絡しても、PCR検査に中々つないでもらえないという状況にありました。

さらに、4月に市医師会が行ったアンケート調査によると、回答のあった49施設中、感染防護具等の不足や動線の分離が不可能という理由で、発熱患者を診察していない施設は、約3割の17カ所にも上っています。その一方、発熱患者を診ている施設は、各々手探りで感染防止対策を行い、今現在も大変ご苦労をされている状況です。

今後市内に地域外来・検査センターが設置されれば、県の施設を通さずダイレクトに検査につなげることができます。

感染拡大防止や市民の不安の解消につながるのはもちろん、医療従事者側も安心して通常の診療に専念できるようになることから、医療施設の負担が軽減され、地域医療の崩壊を防ぐことにもつながります。

従って、設置に向けて鋭意取り組んで頂くのは当然ですが、当局のおっしゃるところの「市医師会との連携」について、私はあえて苦言を呈したいと思います。

*医師会との連携のあり方について

市民の命や暮らしが危機に瀕した際には、当然基礎自治体である市が、最前線に立ちます。

国でも県でも医師会でもありません。

ところが実際、この度の地域外来・検査センター設置への動きは、市の方針や協議で決めたものではなく、市医師会が危機感を感じて独自に奔走されたことによるものです。

その他、拠点病院が自助努力で病床を確保していることや、先ほど申し上げた発熱患者の診療状況などの医療現場の実態を、市はどの程度把握し、課題解決に乗り出してこられたのでしょうか。

本市の地域医療は、ほぼ民間の医療機関のモチベーションに依存しているのが実情です。

こんなことで新型コロナ禍を乗り越えられるのでしょうか。

もっと行政が地域医療政策を我が事として捉え、危機的状況に際してもイニシアチブをとる必要があると考えますが、当局のご見解をお聞かせ願います。

(保健福祉部長)

まず、医師会との関係についてお答えします。

本市の新型インフルエンザ等対策行動計画におきましては、政府が緊急事態を宣言した場合には、「特措法に基づく対策本部を設置する」ことや、感染症の「発生時には、医学・公衆衛生の学識経験者の意見を適宜聴取する」としております。

このことから、緊急事態が宣言された後の対策本部会議には、公衆衛生の専門的な知識を有し、医師資格のある市原保健所長に、オブザーバーとしてご出席をしていただいたところであります。

医師会につきましては、新型コロナウイルス感染症が国内・県内で拡大し、医療現場がその対応に追われる中にあって、市対策本部会議への参加はお願いしておりませんでしたが、事務局を通じて、逐次、医療現場のニーズはお聞きしてまいりました。

今後も、感染の再拡大に備え、これまで以上に医師会とは連絡を密にし、連携をしていくとともに、市として対策を検討するにあたりましては、医学・公衆衛生に関する助言を求めていく場合に、市原保健所長や医師会に協議を積極的にお願いしてまいります。

*対策本部等への医師会の関与について

今回、市の対策本部等の会議に市医師会からの出席は一度もなかったことについては、非常に残念に思っています。

今回の新型コロナ禍では、帰国者・接触者外来や感染者などの情報は、市にも一般の医療機関にも非公開でした。そういう状況下ではなおさら、市内の医療現場の状況を対策本部が直接把握し、情報交換を行いながら対策を協議する場が、当然必要ではなかったのではないでしょうか。

現在、東京都内では感染者も散発しており、第2波への備えは急務です。

当局のより積極的な姿勢に期待したいです。

2.児童虐待に係る庁内の体制と内部統制について

去る6月3日に明るみになりました、乳児が衰弱して亡くなった事件を受け、教育民生常任委員会での質疑も踏まえ、総括的な観点からお聞きします。

関係部署の体制について

*危機感の欠如について

10代で母親になり、次々と三人の子どもが生まれ、頼れる身内も近くにいない。

母子手帳交付時の面接で把握できる、これら客観的な情報だけでも、かなり支援が必要・つまり虐待のリスクが高いケースです。

先日頂いた資料『乳児死亡事件を受けた課題認識』で、当局は乳児検診や予防接種長期未受診者への認識の甘さを認めていますが、甘さはそれだけではありません。

先日の常任委員会でも「上のきょうだいは育てられていたから大丈夫だと思った」「電話で会話したから大丈夫だと思った」「単にきょうだいの不登園についての通報だと思った」「泣き声が聞こえたから大丈夫だと思った」のオンパレードでした。

保健師や相談員個々の感覚や経験値は様々にしても、それをカバーする仕組みがお粗末で、担当者の判断に任せ、リスクアセスメントもまともではなかった等という組織の実態は、私たち市民にとってまさに衝撃でした。

*ネウボラ制度のあり方について

そもそもネウボラとは、顔なじみの保健師が、妊娠時から必要な時にいつでも受け止めてくれるという、信頼感があって初めて成り立つ制度です。いくら豊富な育児支援メニューを用意しても、ハイリスクの親ほど支援を求めてこないという。そんな孤立しがちな母親にとって、顔なじみの保健師が社会との唯一の接点となります。

今後担当部署で、情報共有のあり方やチェック体制を見直すのはもちろんですが、保健師が、いつでも母親に寄り添い、ちょっとしたSOSも見逃さず、個々の状況に応じてプッシュ型の支援を届けることができます、そんな体制の確保が基本にあって然るべきではないでしょうか。

例えば、これだけ広い市域に対し、現状では地域担当保健師の拠点はたった3カ所で、配置はわずか2名ずつです。これでは到底顔なじみにはなれません。

当局では、現状の人員体制をどう認識し、今後どのように改善されるのか、ご見解を伺います。

(子ども未来部長)

子育てネウボラセンターでの母子保健に係る継続支援は、担当の保健師が時間を掛けてじっくりと、母子との関係性を築きながら、保健指導を行っております。

母親の中には、自分から悩みを言えない方や、保健師の訪問をなかなか受け入れられない方などがいることから、このような対応が難しい事例については、担当保健師まかせにせず、チームでサポートする体制を構築して取り組んでおります。

今後は、チーム力を更に強化し、誰一人取り残さない支援体制を作り上げてまいります。

また、身近に相談できる場を増やしていくことにつきましては、各地区で行っている育児相談や、より地域に近い3か所の駐在の利点を最大限に活用し、積極的に家庭訪問することにより、相談のニーズに応えられるよう努めてまいります。

なお、今後の体制の充実につきましては、「要保護児童保護施策審議会」での検証結果を踏まえたうえ、しっかりと検討してまいります。

これは以前も要望させていただいたことです。ぜひ取り組みをお願いします。

※子ども家庭総合支援室の相談員の人材育成について

次に、子ども家庭総合支援室の専門性の確保について伺います。

事件直前の昨年11月に家庭児童相談室から子ども家庭総合支援室へと体制強化が図られ、非常勤の相談員が5名から11名となりました。

しかし、そのうち未経験が半数以上の6名、反対に経験5年以上はたったの2名です。

さらに、今年度になって早くも専門職3名が退職し、教員資格者と入れ替わっています。

事件との因果関係は今後の検証に譲りますが、いずれにせよ虐待防止の専門性の確保の観点から言って、正直この状況では不安が拭えません。

指示・教育・管理全てにおいて高い専門性を持つ職員の配置と、現場経験を積んだ常勤の相談員の育成に、早急に着手する必要があると考えますが、当局のご見解を伺います。

(子ども未来部長)

家庭児童相談員については、昨年11月に6名増員するとともに、相談体制の充実に取り組んだところです。

従事する職員のスキルアップにつきましては、内部研修の実施や、外部の専門研修の受講のほか、OJTとして、既存の相談員がペアとなり、業務に関する指導を行ってまいりました。

 また、本年4月に、一般職員を増員したことで、市内を3エリアに分け、それぞれのチームを一般職員が統括管理する体制を導入したところです。

なお、これら新たに増員した職員の経験不足を補うため、緊急的な対応が必要なケースや、集中的な支援が必要なハイリスクのケースについては、チームにとらわれることなく、経験の多い職員を交えてミーティングを開催し、支援方針を決定しております。

今後も、こうした取組を徹底することにより、相談員一人一人が経験を積み、チームとして対応できるよう、体制の充実に努めてまいります。

急に増員したことの弊害はあると思います。

なぜ、虐待事件が起きた6年前の時点から計画的に育成できなかったのでしょうか?

スーパーバイザーによる援助や指導の時間は十分確保していますか?指示系統の明確化は?今後の検証で明らかにしていただきたいです。

内部統制関連

※庁内の横軸の連携について

庁内全体の連携について伺います。

児童虐待の背景には、複数の問題が複雑に絡んでいる場合が往々にしてあります。

例えば生活困窮、DV、不登校など、子どもやその家庭に係わるすべての部署が、児童虐待への認識と情報を共有する仕組みが必要です。

さる児童相談所の職員から伺ったお話です。

担当していた児童が、県内他市から市原市内に引っ越した。引継ぎの話や手続きに同行したが、その際全ての部署を回って同じ説明を繰り返さなければなりませんでした。他市では、逆に全ての部署が集まり、揃って話を聞いてくれたのに・・・とのことでした。

行財政改革大綱では、庁内横断的な執行体制を確立すると掲げていますが、こんなちょっとした事例からも、果たして本気で改革を進める気があるのだろうかと、首をかしげざるを得ません。

今回の事件を受け、改めて横軸連携のあり方についてどのような課題があり、具体的にどのように変えなければならないと考えているのか。ご見解を伺います。

(子ども未来部長)

支援を必要とする子どもや家庭の中には、様々な問題を抱えている方が多く、解決につなげるためには、多角的な視点から家庭の置かれた状況を把握・分析し、適切な支援につなげていくことが重要となります。

 このため、子ども家庭総合支援室では、要保護児童対策地域協議会の調整機関として、例えば、保健福祉部門や教育委員会など、日頃から、さまざまな関係部署と連携することで、情報を集約し、支援対象者の状況を的確に把握することに努めております。

 しかしながら、この度の乳児死亡事件に関しましては、子ども家庭総合支援室と子育てネウボラセンターとの間で連携の仕組みはあったものの、具体的な行動を取るべき段階において、組織間の連携が機能せず、適切な対応をとることができませんでした。

現在、この点につきましては、乳児健診未受診や予防接種の未接種者に関する連携の取組をルール化し、対応の強化を図りました。

併せまして、今後、設置されます「要保護児童保護施策審議会」での検証結果を踏まえ、庁内関係部署や庁外の関係機関との連携強化についても、改革・改善を進め、しっかりと対応ができる組織へと変革してまいります。

※一連の情報発信の不手際について

今回の事件では、改めて不測の事態が発生した際の庁内の情報共有と情報発信のお粗末さを、世間に露呈する結果となりました。

マスコミの取材に対しては、当初頑なに口を閉ざし、園からの通報に関しては「きょうだいに関するものであって乳児に関するものではない」と詭弁を弄し、発言を二転三転させ、その間にも「個人情報保護」「児童福祉の観点」「守秘義務」の三種の楯を交互に繰り出す姿はもはや滑稽で、かえって問題を大きくし、世間の怒りを買い、市民から愛想を尽かされる結果になったと観ているのは、私ばかりではないと思います。

一連の情報は、1月に事件が発生した当時から市長も把握されていたはずです。こういう結果になることを本当に予測できなかったのでしょうか。

内部検証も実は1月から行っていて、十分時間がありました。にもかかわらず、このように不手際があったことについて、どこに原因があったと考えておられますか。

庁内の風通しが悪く、担当部署からの報告そのものに不備があったためなのか。

それとも、市長ご自身が、問題の重大性や公益性を軽く見て、判断を誤ったためなのか。

市長のご見解を伺います。

(市長)

行政と市民との信頼関係構築において、情報発信は大変重要であり、今回の報道対応により、行政への不信感を招く結果となりましたことにつきましては、市長として、責任を重く受け止めており、改めてお詫びを申し上げます。

 私は、今回の情報発信における問題点として、初期対応で適切な情報収集ができなかったこと、 また、伝えるべき情報を組織として正確に発信できなかった点があると捉えており、その背景には、職員ひとり一人と組織全体の危機意識の低さがあったと猛省しております。

この問題について、全庁的に危機意識を一段引き上げるため、私は、全部局長を招集し、情報発信における危機管理対応の重要性と具体的な対応方法について、共通認識を深め、徹底するよう、指示したところであります。

今後は、特に非常時において、正確な情報収集と分析を徹底し、伝えるべき情報をしっかりと発信することで、市民の皆様に信頼をいただけるよう、組織的に取り組んでまいります。

*責任の所在を曖昧にし、過去の教訓を活かせない組織風土について

責任の所在を曖昧にし、過去の教訓を活かせない組織風土について伺います。

過去の児童虐待死事件について

6年前、市内の8カ月の乳児が一時保護解除中に虐待され死亡した事件が起きました。

当時の検証報告書には、市への指摘がいくつかあります。

県(児相)が決めた(一次保護解除の)方針に対し、市側は不安を感じましたが、異議を唱えられず従ってしまったこと。

直接目視をしなかったため、家族の異変に気づけなかったこと。

母子保健担当部署では、家族のリスクの見立て・アセスメントに課題があったこと。

家庭訪問の際、同行訪問が徹底されていなかったこと。

以上の指摘は、そっくりそのまま今回にも当てはまります。

水道事業データ改ざん問題 検証報告を踏まえた取り組みについて

また3年前、市の水道事業において、40年以上も有収率の改ざんが行われていたことが明るみになった際に、「仕事が担当者任せでチェック機能が働かない」「仕事本来の目的が失われ、手段が目的化している」との内部検証委員会からの指摘もありました。

しかし今回、教訓は一つも活かされませんでした。結局はすべて他人事だったのでしょうか。

常任委員会の調査で参考人を務められた東京経営短期大学の小木曽教授は「何も変えたくないという行政組織の慣習文化の問題」と指摘されています。

これらの組織風土について、今後どのような改善措置を取られるのか、市長のご覚悟をお聞かせ願います。

(市長)

今回の事件を通じて、私は、危機管理対応の面で、組織的な問題があったと痛感しております。

市役所は、市民の安心・安全を守るため、窓口や様々な現場において、ちょっとした異変に気付き、情報を共有し、市民からの小さなSOSを見逃さない、組織が一丸となって行動できる体制でなければなりません。

大切な命を守る子ども未来部として、もう一度組織の使命に立ち返って、職員一人一人が危機意識を持って仕事のあり方を見直すとともに、市役所全体で危機意識を高め、日々の業務を見直す必要があります。

そこで、私は、今回の事件を教訓とした組織的な改革を断行するため、清宮副市長を本部長とする「要保護児童保護施策推進本部」を設置いたしました。

推進本部には、庁内関係部局の職員のほか、法務担当や防犯担当の専門職員、さらには行政経験豊富な総務担当・秘書担当アドバイザーを参画させ、庁内の知見を結集した体制といたしました。

今後は、この推進本部を中心として、組織的な課題等についても十分整理し、具体的な改革案を取りまとめてまいります。

私は、これまでも「組織は戦略に従う」との理念のもと、従来の発想にとらわれず、市原の未来をしっかり考え、不断の改革が行われるよう、組織体制と職員の意識変革を進めてまいりました。

その成果は、着実に表れているものと考えておりますが、今回の事件を通じて、さらなる改革が必要であると痛感しており、全職員一丸となって、組織と職員意識の「変革と創造」の取り組みを加速してまいります。

「もう二度と・・・」行政のこんなセリフを二度も三度も聞かされる。市民にとってこんな不幸なことはありません。

今回の事件で、子育て中の母親から「もう役所が信じられなくなった」「自分たちが困っても、助けてくれないところなのだと思った」という声が寄せられています。

いくら耳触りの良い支援事業や補助事業を並べても、結果こうなれば全てが水の泡です。

市長はじめ幹部職員も「自分が当事者意識に欠けていたから起きてしまった」と、亡くなった乳児に本気で謝罪していただきたいです。検証はそこからスタートします。

そうでなければ、今後第3者機関によるどんなに完璧な報告書が出ても、またいつか同様の事件は起こるでしょう。

そして私は、この事件に関して重大な事実がまだ明らかになっていないと思っています。

問題を可視化することで、社会は変わります。当局の姿勢を今後も見極めていきたいと思います。