令和3年 第1回市原市議会定例会

代表質問 小沢みか

1.令和3年度当初予算()と中長期的な財政運営について

新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されてから1年以上経過ししました。以来、3度感染拡大の波が襲い、2度の緊急事態宣言の発出をうけ、市内の社会経済・そして市民の生活や価値観までもがひっくり返るほどの影響を受ける事態となりました。

R3年度当初予算案の歳入を俯瞰すると、特に自主財源の根幹である市民税の-22億・11.3%の落ち込みは深刻です。

リーマンショック時・平成22年度の-35億よりは減少幅は小さいものの、感染症の蔓延は経済破綻や自然災害に比べ予測が立てづらく、再び感染が拡大する可能性も多分にあります。今回の予算編成の難しさは、市政始まって以来といっても過言ではなかったのではないかと推察します。

*ビルドアンドスクラップについて

ただ、編成にあたって「実行計画をゼロベースで見直し、スクラップを強化した」とのことですが、予算案資料の中の「行財政改革の効果額」を見ると、前年度は約11億円であったのに対し今回は4億7000万と、事業数こそ多いのですが逆に小粒で、これだけではスクラップの中身を読み取ることができません。

そこで、実際にどのように施策の組み換えを行ったのか、具体的にご説明願います。

 

(財政部長)

令和3年度当初予算編成では、厳しい財政状況の中、「子育て世代の信頼を回復し、安心して子育てができるまちの実現」など重点的取組事項を優先することとし、既に採択されている実行計画事業であっても、現状での優先度や事業効果を見極め、ゼロベースで編成することを方針に掲げました。

ビルド・アンド・スクラップは、新たな事業を実施するにあたっては、既存事業との効果を比較し、効果が優る場合にこれを実施し、同時に効果が劣る事務、既存事業を廃止する考え方でございます。

令和3年度の編成にあたりましては、計画事業の実施時期の見直しや事業の統合、民間との連携による代替など、あらゆる方策を重ね、これまで以上に組織横断的な対話を重ね、スクラップ等に取り組んでまいりました。

具体的な内容につきましては、事業費の大小さまざまございますが、一例を挙げますと、

・市税のクレジットカード納付の導入をビルドし、納税啓発事業等をスクラップ

・中小企業チャレンジ応援事業をビルドし、元気な商業者支援事業をスクラップ、

・都市近郊農業高収益化モデル事業をビルドし、観光農園整備補助事業をスクラップ などがございます。

これらに加えまして、市として重点的取組事項実施に向けた新たな事業の財源確保に向け、道路維持管理事業や区画整理事業、橋りょう長寿命化事業などについて、事業規模縮小や実施時期の見直しなどのほか、これらのほか少額の事業も合わせまして、約13億8千万円の削減を図ったところでございます。

 

実行計画を見比べても「組み換え」という視点が読み取れないので、庁内の危機感が伝わってきません。

結局、総花的な財政緊縮という印象は否めず、これでは市民から見えにくいし評価もされません。

*建設事業へのしわ寄せについて

一般会計の性質別歳出で特に何が削られているかというと、普通建設事業費(70億8500万)です。当初予算ベースで前年度比-19億円と、過去10年間で2番目の低さです。また維持補修費は過去10年間で最低(9億5500万)で、3割(3億9000万)もの削減です。建設事業債の発行は37%減(26億9000万)で、これも過去10年間で最低です。

元々そのような計画であれば何の問題もありません。しかし公共資産マネジメント個別施設計画の取りまとめ資料に「現下の社会経済情勢を踏まえ、直近1~2年は緊急対応修繕を優先し、大規模改修はR4年度以降とする」とあります。ということは、老朽化が進行する中で、必要な長寿命化事業等が過剰に先送りされていないか、またそうでなくとも、先行きが不透明な中で先送りすると、R4年度以降かえって苦しくなるのではないか、そんな懸念が生じます。1年待てば社会経済が回復する保証はどこにもありません。

そこで、普通建設事業費や維持補修費がどのような考え方のもとに縮減されたのか、簡潔にご説明願います。

 

(財政部長)

令和3年度当初予算編成にあたりましては、編成時点で考えられる最大限の財源対策を講じても、なお大幅な財源不足が見込まれましたことから、経常的・義務的な経費を除きまして、普通建設事業など政策的経費については、これまで以上に厳しい要求上限額を設けました。

これにより、現場をよく知る各部局が、事業の緊急性・効果等を十分見極め、精査を行った上での予算化となったものでございます。

議員ご質問のとおり、維持補修費、普通建設事業費が前年度と比較いたしまして大きく減少してございますが、この要因といたしましては、一般市道の整備、あるいは橋りょう長寿命化などの実施時期の見直しによる減少、こういった事業もございますが、防災行政無線システムの整備事業、これは前年度、予算的には完了したこと、民間保育所整備や老人福祉施設整備などの計画件数が減少、歴史ミュージアム整備の進捗などによりまして、大規模事業の完了による減少が主な要因となってございます。

一方で、八幡椎津線平田の整備事業ですとか、自家用給油設備の整備、あるいは小中学校のトイレ環境整備など、真に実施が望まれる事業についてはしっかりと財源配分をしてまいりました。

 

このように、普通建設事業費や維持補修費が前年度から減少となりましたが、個別施設計画での施設健全度の判定結果も踏まえまして、安全性も考慮した上で、必要な事業については、的確に配分ができたものと考えてございます。

 

つまり私は、インフラやハコモノの長寿命化の先送りは市民には見えにくいので、安易にここに手を付けていないかどうか確認したかったのです。

例えば「これまでの公共事業のあり方をこのように見直して無駄をそぎ落とした」「けれどもこのように市民の安心安全は確保していく」と説明されれば納得できるのですが。

一方ソフト事業については、予算編成方針によれば部局ごとの創意工夫にゆだねられている部分が大きいようですが、一旦走り出した事業を担当部局自らがアウトカムに照らして大なたを振るうのは、実際なかなか難しいのではないでしょうか。更にそこに新規事業が新たな課題解決策とばかりに積みあがっていくばかり。トータルシステムがどう効いているのか今一つ伝わってきません。

私は3年前の予算審議で事業の撤退基準を定めることを提案しました。言わばスクラップのルール化です。多くは地域活性化策などのソフト事業が該当すると思うが、ここにきてやはり必要だと感じざるを得ません。

*長期財政収支見通しに公共資産マネジメントに係る経費を入れることについて

次に、中長期的な財政見通しについてお聞きします。

R3年度当初予算案では、経常収支比率が99.7%と当初予算ベースで過去最高の水準で、計算上では政策的経費が1億3000万円しかないという厳しい状況です。

普通会計の長期財政収支見通しでは、経常収支比率はこのまま高い水準で推移し、収支不足は今後10年間で約278億円も見込まれています。しかもこの推計には、相変わらず公共資産マネジメントによる統廃合や大規模改修に係る経費が計上されていません。

一方、このほど個別施設計画に基づいた試算が示されましたが、10年間の合計は1185億で、そのうち一般財源からの持ち出しは約458億です。これを少し乱暴だが先ほどの長期財政収支見通しの収支不足に単純に加えると、736億にも上ることになります。

これまでも申し上げてきましたが、やはり早急に公共資産マネジメントに係る経費を大雑把でも見込んだ長期財政収支見通しを立てていただきたいのです。更に「見通して終わり」ではなく、収支不足を是正するための具体的な方策・財政構造改革に着手する必要があるのではないでしょうか。ご答弁願います。

 

(財政部長)

社会保障関連経費の増大や、今年度策定いたしました個別施設計画に基づく公共施設の老朽化対策費など、財政需要の増加に加えまして、今般の新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せないことを考えますと、今後は、これまで以上に中長期的な視点に立った財政運営が必要と考えております。

したがいまして、議員ご指摘のとおり、捕捉可能な将来負担を盛り込んだ長期財政収支見通しの作成、これは必須であると、このように認識しております。

そこで、収支見通しによる収支乖離の解消に向け、計画・予算・改革が一体となった本市のトータルシステムの一層の深化、これを深めまして、何を実施し、何を止め、そして何を縮減するのか、各事業の評価をより的確に行うことや、これに新たな歳入の増加への取組も合わせまして、収支均衡につながる行財政計画の策定に取り組んでまいります。

 

公共資産マネジメント推進計画が策定されたのは、もう5年も前です。実はその時点ですでにベースの推計データは出ていて、課題も把握されているにも関わらず放置されたままです。

当局に本当に危機感はあるのでしょうか。ぜひ早急に取り組んでいただくよう重ねて要望します。

 

 

 

2.新型コロナウイルス感染症対応 地方創生臨時交付金 充当事業から見る、危機に強い行政経営について

*財政措置の類型

新型コロナウイルス感染症という突発的且つ未経験の危機に対し、市原市はどのように緊急対応を行ったのか。R2年4月から12月までについてまとめた資料を配布させていただいたので、ご参照願います。

この間の臨時交付金は、計5回・約15億7000万円。財政調整基金の繰り入れは、計3回・約9億4000万円。

一方コロナ対応にあたる各事業について、当局にもチェックしていただき独自に4類型に分けました。因みに、特別定額給付金など国からの受託事務の性格が強い事業は、市の独自性の観点から除いています。

まず大きく緊急的・短期的な事業と中長期的な事業とに分け、緊急的・短期的な事業は「救済」と「感染予防」、中長期的な事業は「行政改革」と「地域活性化・その他」とに分けました。

臨時交付金充当事業に着目すると、全体の配分率は金額ベースで「救済」に34.1%、「感染予防」29.1%、「行政改革」19.7%、「地域活性化・その他」17.1%という状況でした。

*事業選択・効果見込み・効果検証に対する考えは?

ここでお聞きしたいのは約17%を占める「地域活性化・その他」の事業への支出についです。

例えば、いちはら魅力再発券事業約1億6000万・いちはら宝探し事業 2000万 大規模イベント実証実験等事業2000万など、計3億3000万円に上ります。

感染終息の目途が立っておらず、窮地に立たされている市民や事業者も多かった中で、これらの事業がなぜ優先的に選択されたのか。この時期の予算措置効果をどう見込んでおられたのか。また、今後どのように効果検証を行うのか。ご説明願います。

 

(財政部長)

事業選択と事業効果、効果検証について、お答えをいたします。

はじめに事業選択と事業効果でございますが、本交付金の目的、あるいは使途は、「感染拡大の防止」、「感染拡大の影響を受けている地方経済や市民生活の支援」、「ポストコロナに向けた経済構造の転換」等で地方創生を図ることとされております。

これを受けまして、本市では、感染症の影響による市内の状況を捉えながら、新生児を持つ家庭や、医療機関、障害福祉サービス事業所、介護保険事業所など、感染症による影響を大きく受けている市民や事業所を支援の対象とした給付制度や、小中学校及び避難所における感染防止対策などを実施してまいりました。

また併せて、「新しい生活様式」や生産・消費活動の変化を踏まえた豊かな市民生活のリードモデルを実現するための方策の一つとして、公民連携による具体化にも取組むなど、交付金の目的達成に向けた事業を選択してきたところでございます。

交付金事業の効果検証でありますが、国から、事業終了後、実施状況やその効果を公表することとされており、またその方法について、アンケート調査その他の適切な方法により測定することとされております。

本市による効果検証は現段階では決定しておりませんが、今後、事業内容、事業目的を踏まえまして、また国県からの通知にも注視し、適切な方法を検討してまいります。

 

この3億3000万円、もっと住民の窮状に寄り添って使ってほしかったというのが素直な市民感情です。国には国、市には市の役割があります。次への活力に繋げるためにも、ここはまちの疲弊を最小限に抑えることに注力するという判断はできなかったのでしょうか。

今回の一連の対応を振り返って、突発的で予測不可能な危機への対応のあり方について、気付きや改善点があればお聞かせ願います。

また、改めて「危機に強い」行政経営には何が必要とお考えか、市長からご答弁願います。

 

(市長)

私が考える危機に強い行政経営とは、常日ごろからあらゆる危機を想定し、いかなる事態となろうとも対応できるよう、組織強化や財源対策なども含め、事前に対応策をしっかりと講じておくということであります。

具体的には、シーズンレビューなどで、職員との対話により市の現状や課題を常に共有し、組織として危機意識の強化に繋げるとともに、財政調整基金の残高確保など財源対策を講じてまいりました。

また、危機に直面した場合にあっては、市長である私の強いリーダーシップの下で、市民のために何をすべきかを考え、職員と危機意識を共有し、企業や市民の皆様と一丸となった取組を、機を逸することなく、スピード感を持って決断し実行することが必要不可欠であります。

今後も、引き続きこうした取組を推進することで、危機に強い行政経営に真正面から取り組んでまいります。

 

(財政部長)

この度の交付金活用事業は、感染症収束に向けた各種事業を速やかに構築し実施すること、感染症の影響で予想される社会構造への変化にも遅滞なく準備すること、これらが要請されまして、本市では、全庁を挙げ事業の立案・実施に取り組みました。

関連予算の編成はこれまでに8回、過去にも例を見ない臨機での対応に取り組んでまいりました。

現時点における、本交付金対応での気付きということでございますけれども、より効果的な事業実施に向けては、実情を的確に捉えること、そのためには、市民ニーズの捕捉、あるいはあらゆるステークホルダーとの連携等を的確に行うことの重要性を再認識しております。

また同時に、職員が危機意識を持ち、アンテナを高くし、情報収集と共有した上で、何をすべきかを、タイムリーにそしてスピーディーに取り組むことの重要性を実感してございます。

説明責任を果たす上でも、その事業効果が発現する時期の長期・短期を問わず、その事業の対象者、目的、効果を整理し、事業構築をしていくことの必要性を改めて認識したところでございます。

 

初めての経験で予測不可能、マーケティングやアセスメントもほとんど行えない、国への申告期限は迫る、そんな状況でのご決断は困難を極めたことと推察はいたします。だからこそ、その経験値を糧としてぜひ今後に活かしていただくようよろしくお願いします。

 

 

  • デジタル化による行政の変革(DX・デジタルトランスフォーメーション)について

(1)目指す姿と推進体制について

*目指す姿について

情報化推進計画2020では「市民サービス」と「仕事の生産性」という二つの視点から、一体的かつ抜本的な変革を掲げています。

本計画の策定時はいわばビフォーコロナであったことから、今後は「新たな日常」にむけて各施策が前倒しで進んでいくものと思います。

計画に書かれてある「2026年のあるべき姿」によれば「各種行政手続きがいつでもどこでも可能になる」「結果役所に行く負担がなくなる」「市民一人一人のニーズに合った双方向コミュニケーションが可能になる」とのこと。つまり、行政と市民を繋ぐ要である窓口業務のあり方が大きく転換するという事で、今後はあらゆる施策をこの前提で捉え直す必要があります。

*人材について

ところで、気になるのは専門人材の確保策です。

R3年度は特定任期付職員を採用するとのことで、今後はAIやビッグデータ解析などの最新トレンド技術を活用できるエンジニア、さらには必要なシステムの将来像を描ける人材を、ノウハウが残るよう自前で採用・育成していく必要があると思います。

そこで、庁内の人材の確保・育成の方針や研修などの現状についてお聞かせ願います。

 

(総務部長)

テクノロジーの進展は不可逆的であり、その技術革新はますます加速化しております。

このような中、情報部門に従事する職員は、本市のデジタルインフラを整え情報通信技術を活用し、地域の課題解決や市の持続可能な発展を担っていかなければなりません。

このため、情報通信技術に関する専門的な知識をもった職員を育成すべく、民間のITベンダー等が開催する専門性の高い研修に参加させるとともに、研修終了後は、職場内で受講内容を共有し、所属全体のスキルアップを図っております。

さらに、全国の自治体及び関係団体の情報化統括責任者や情報化推進担当責任者で構成される「CIOフォーラム」に参加し、先進自治体との情報交換や、最新技術に関する情報収集にも取り組んでいるところです。

今後は高度な専門知識を有する情報政策アドバイザーによるOJTを充実させ、高度なICTスキルを持った人材の育成強化に努めてまいります。

また、職員の庁外情報化推進機関への長期派遣など人材の流動化を促進させ、組織としての高いICT水準を確保し、デジタル化による市民サービスの向上に繋げてまいります。

 

*組織体制について

次に組織体制について伺います。

デジタル戦略は、全ての部署が実行の主体となり得ます。

R3年度から情報政策課に新たにデジタル推進室を5名体制で新設するとのことですが、例えば各部署から人材を流動性高く登用する、あるいは各部署へ持ち帰って既存事業を強化するなど、新たな意識や取り組みを横展開するための組織的な対応については、どのようにお考えでしょうか。

 

(総務部長)

デジタル戦略の推進は、情報部門はもちろんのこと、庁内全体の取組として進める必要がございます。

このことから、市では、次長級の職員からなる「市原市情報化推進委員会」を組織し、高度情報化社会に求められる情報通信基盤の整備や市民サービス向上のための情報化推進について、総合的な見地からその導入、活用手法等について必要な事項を調査審議しております。

この情報化推進委員会には、各所属の担当職員による「部会」も設置しており、実務レベルでの情報共有を図るとともに、議論や検討を進め、業務のデジタル化による行政サービスや仕事の生産性の向上に繋げております。

また、デジタル化を必要とする部門に対し、情報政策課に在籍した職員を配置転換することで、職員が培ったICT分野の能力を活用し、各所属においてデジタル化推進体制の一翼を担っているところです。

今後も情報部門を中心としたDXを加速させるとともに、庁内横断的な連携を更に強化し、電子自治体の実現に向け、デジタル戦略に取り組んでまいります。

 

市の意欲的な取り組みに期待しますが、ここで私は大きく二つの視点について確認したいと思います。

 

(2)情報弱者への支援(デジタルデバイド対策)について

国はデジタル庁を創設するなど、強力な旗振りで行政のDXを押し進めようとしています。ここで基礎自治体たる市の務めは、いかにデジタルになじみのない市民に寄り添い、情報格差をなくすことができるかだと思います。

各種手続きのオンライン化などのICT技術は、利用可能な方であれば生活の利便性が格段に向上すると思われますが、一方そうでない方々との格差が新たな課題となるとも考えられます。

*高齢者への支援について

情報弱者となり得る筆頭は、やはり高齢者です。

例えば、お店や病院などが少なく移動手段も限られているような過疎地域にお住いであったり、そうでなくても体が弱り外出もままならなかったりと、本来はそんなご高齢の方々にこそICT技術が必要だと思いますが、こうした方々ほどデジタル環境になじめずその恩恵が受けられない、という皮肉な状況は容易に想像できます。デジタル化を進めるにあたり、行政はその点によほど留意して同時並行で対策を立てる必要があると思います。

 

そこで伺います。高齢者世帯へのICT環境整備支援や、パソコンやスマホなどの手ほどき、またそのための支援員の配置といったお考えはあるのでしょうか。デジタルデバイド対策についてご見解をお聞かせ願います。

 

(総務部長)

ICT化の進展による各種手続きのオンライン化は、議員ご案内のとおり、仕事の生産性を高めるとともに、より便利で快適な行政サービスの提供が可能となります。

一方、新たな技術が利便性とともにもたらす変化は、それに取り残される人たちとの格差を生み出しかねません。

国が行った調査では、ICT技術の進歩に対する高齢者の不安が掲げられており、高齢者をはじめとするデジタル機器に不慣れな市民に対する支援が、自治体のICT化を進める上で対応しなければならない事項の一つであると認識しております。

このような情報通信技術の利用に不安を持つ方への対応といたしましては、対面による窓口業務を継続するとともに、デジタル化した手続の支援を当該部署が親切に行うことで対応を図ってまいります。

なお、手続き業務をデジタル化する場合は、視覚的にもわかりやすく操作性の平易な機能を取り入れるなど、デジタル機器に不慣れな市民にも寄り添ったシステムの構築に取組んでまいります。

また、高齢者をはじめとするデジタル機器に不慣れな方は、ICTの利便性を体感する機会が少ないことが課題であると言われております。

このことから、デジタルデバイドの解消に向け、公民館やコミュニティセンターで実施されているパソコン教室やスマホ教室との連携など学習の場を積極的に設け、ICT化による便益をすべての人が等しく享受できるよう努めてまいります。

 

交通手段の乏しい高齢者にとって、ICT技術はまさに足代わり。通信網は第2の交通網とも言えます。

先日千葉日報に、認知症高齢者支援としてテレビ電話の活用普及に取り組む市内の市民団体が紹介されていました。こういう取り組みを後押しするような行政の仕掛けも必要です。

「誰一人取り残さない」という本市の理念を貫き取り組まれるよう期待します。

 

もう一点は、デジタル技術をいかに社会的課題にフォーカスして活用するかという側面から、具体的な提案です。

 

(3)障害児者等へのICTの活用について

*療育部門への活用について

このほど要保護児童保護施策の一環として、情報を一元管理し各関係機関で共有するシステムを導入するとのことだが、同様に障害児者支援などの領域にも展開しては如何でしょうか。

現在、障がい児等の成育歴や支援内容などの情報を、保護者と療育・医療・教育各機関や進路先などと共有し、ライフステージに伴う切れ目のない支援に役立てるためのツールとして、相談支援ファイル「スクラム」があります。しかし記入に手間がかかる等の理由で未だ思うように普及や活用が進んでいないと聞いています。

こういった既存の取り組みの課題解決にこそ、ICTネットワーク技術を活用して頂きたいのですが、ご見解をお聞かせ願います。

 

(学校教育部長)

いちはら相談支援ファイル「スクラム」は、子どもたちの成長や自立に必要な支援を継続的に行うため、母子健康手帳と同様に保護者が子どもの成長の過程や支援の状況を記録するもので、必要に応じて支援者や専門機関と情報を共有する際にも活用するものです。

また、教育センターのウェブサイトからダウンロードすることができ、自宅のパソコンから入力し、デジタルデータとしても保存ができることを紹介しております。

しかしながら、現状では、紙面による扱いが主であることから、保護者にとっては、手書きによる負担や、相談の都度印刷した紙面を持参することによる利便性に欠ける面があると考えております。

こうしたことから、障がい児・者等への支援を行うさまざまな機関や関係部署と連携し、「スクラム」におけるICT技術の活用について、検討してまいります。

 

すでに在宅医療・介護の連携にもICTネットワークシステムが導入されています。

教師等支援者側の業務の効率化にもつながります。

*市民サービスはマスではなくコアの視点で

例えばGIGAスクール構想では、一人一台タブレット導入を皮切りに意欲的に進められていますが、今後は何らかの理由で登校できない児童生徒のためのオンライン授業の活用や、障がいを抱えた児童生徒にも伝わりやすいデジタル教材の活用といった施策も積極的に進めて頂きたいと思います。

情報化推進計画の指標には、行政手続きの利用件数などが目標に掲げられています。しかしこれから大事なのは、市民を数で掴むマスマーケティングではなくコアマーケティングです。目の前の一人の市民の困りごとをどう解決するか。そんな視点を真ん中にしてサービスデザインに努めていただくよう願っています。

 

 

 

4.「新たな日常」に向けた公共施設の再配置について

*公共資産マネジメント推進計画の見直し

先ほども触れましたが、このほど水道と市役所第2庁舎以外の個別施設計画が出揃い、これらの取りまとめが報告されました。今後は国の要請に応じて公共資産マネジメント推進計画の見直しに着手するとのことです。

見直しの視点として、新型コロナウイルスの影響を踏まえたDXの推進等に伴う新しい生活様式や、再生可能エネルギーの導入等のSDGsの理念を考慮するとのことで、その点は大いに期待しています。

ただここで気になるのは、先行して更新の取り組みを始めている公共施設についてです。これらも同様に一連の変化に合わせた対応をされるのでしょうか。

特に取り上げたいのは、やはり八幡宿駅西口複合施設や市役所第2庁舎についてです。

八幡宿駅西口複合施設について

八幡宿駅西口複合施設の構想はもう3年以上前からの話ですが、この間にコロナやSDGsに加え、ハザードエリアをより意識した立地適正化計画の見直しや、東口を含めた駅周辺の拠点まちづくりの取り組みも、大きな社会変化の要素です。

同施設の整備は、これらの変革がまるで起きていないかのように粛々と進められているように見えます。

市役所第2庁舎について

また、市役所第2庁舎の整備に関しても、公共施設の窓口のあり方が行政のDXで全く違ってくるということは先ほど申し上げた通りで、しかもそれはそう遠くない話でしょう。

この2施設は、本庁舎と支所という関係性でもあります。これらを筆頭に、公共施設の再配置については、手戻りもいとわない覚悟で「新たな日常」を踏まえた再検討を全市的な視点で行う決断が必要と思いますが、ご見解をお聞かせ願います。

 

(都市戦略部長)

新型コロナウイルス感染拡大という、かつてない危機に直面し、市民生活や、社会経済活動など、様々な場面において、「新たな日常」への転換が模索されています。

議員ご指摘のとおり、このような社会の変容を前提として、公共資産マネジメントや、公共施設の再配置を検討する必要があるものと考えます。

市では、今年度末までに策定する個別施設計画を踏まえ、令和3年度に、公共資産マネジメント推進計画の中間見直しに取り組んでまいりますが、その際、「新たな日常」や、DX、SDGs戦略といった、新たな視点を取り入れる考えであります。

また、見直しにあたっては、アンケート調査等の市民意見の聴取をもとに、拠点形成事業や、ICT・DX事業、さらに、同時期に改訂予定の行財政改革大綱などとの連携を図ってまいります。

今後も、しっかりと庁内連携の強化を図りながら、現在、取り組みを進めている事業も含め、これからの公共施設のあり方を整理し、「新たな日常」に向けた戦略的な公共施設の再配置に取り組んでまいります。

 

これだけの規模の公共施設の更新は、言わば50年に一度しか訪れないチャンスです。両施設はまさに「新たな日常」の起点となって、公共サービスの可能性を拓く大きな鍵を握っています。

次世代に胸を張って引き継ぐことができるよう、私たちも心して関わっていきたいと思います。