令和2年 第4回市原市議会定例会 個別質問:小沢みか

個別質問:小沢みか

質問と答弁

生活交通の確保策の推進について

*前置き

今回は公共交通政策のうち、広域交通や観光交通を除き、路線バスや、コミュニティバス・デマンドタクシーといった交通空白地域における地域交通、その他これらを補完する交通施策について取り上げます。

これまで他会派からも幾度となく取り上げられており、特に交通空白不便地域の課題については私から改めて申し上げるまでもなく、当局も十分認識されていることと思います。

それを踏まえ、始めに市原市地域公共交通網形成計画(通称網計画)に掲げられた個別施策を中心に伺い、最後に全体的な方向性について伺います。

因みに網計画は5つの基本方針と20の施策が示されており、策定からすでに丸2年以上経過しています。また施策の実現に向け、今年度約1000万円の委託で調査分析中であることも承知の上で質問します。

(1)施策3にある、地域間をつなぐバス路線の再編・強化について

1)網計画では、コンパクトプラスネットワークを推進するため、辰巳台・うるいど南・ちはら台の3地区を連携する路線と、ちはら台地区と市役所周辺を連絡する路線を再編するとしています。

計画では来年度から何かしら実施することになっていますが、全く状況が見えず、音沙汰もなく、住民からは一体どうなっているのかという声が上がっています。

そこで進捗状況と、いつまでに何を行いどのような姿を目指しているのか、具体的にお聞かせ願います。

(都市戦略部長)

進捗状況についてですが、昨年度、辰巳台・うるいど南・ちはら台及び市役所周辺のバス路線の再編について、バス事業者が保有するICデータを基に、事業者との協働により調査分析を行い、協議を重ね、路線再編の素案を地域公共交通会議に報告いたしました。

本年度、この検討結果の実現性を高めるため、バス事業者が保有するICデータに加え、平成30年度に国が実施した東京都市圏パーソントリップ調査や携帯電話の位置情報等のビックデータを用いて、バス利用者に加え、人の移動実態を把握し、潜在的な移動需要を含めた調査を実施しているところです。

今後は、バス路線の効率化を図るため、需要に応じた運行計画案を作成し、令和3年度から実施主体となるバス事業者と再編に向けた協議・調整を図り、拠点間の結び付きを強化するなど、交通ネットワークの形成充実を目指してまいります。

※現在コンパクトプラスネットワークのまちづくりを進めているが、拠点形成の動きは見られるものの、交通の関する動きが市民にはなかなか見えない。

(2)施策8にある、地域主体の公共交通システムについて

網計画には、市内で既に運行されている交通空白地域における地域交通への支援や、他地域への拡充が掲げられています。

15年前のあおバスの運行を皮切りとした地域主体モデルは、住民の運営により市の負担の抑制が図られており、先進事例として国交省からも評価され、市外から多数の視察がありました。この点は高く評価しています。

では、これら地域交通の運営団体に対し、現在市はパートナーとしてどれだけ寄り添っているのでしょうか。

*補助金の負担について

補助金について申し上げますと、市の一貫した考え方は、ザックリですが基本的に運行経費の5割までプラス事務経費分で、運賃で賄えない場合は地元負担となります。

南総西コミュニティバス運営委員会を例にとると、昨年度の地元負担額は約400 万円にも上り、広告費や個人・企業に頭を下げ賛助金を得ることで何とか工面されています。そのご苦労は当局も十分承知しているはずです。

しかし各運営団体の方々は、自分たちが担うことで地域に公共交通を守る機運が広がるという一念で、必死に続けておられます。

2)当局ではこの状況をどう捉えているのか、ご答弁願います。

また、私は市の補助割合を5割からもう少し増やすだけで運営団体の負担は随分軽くなると考えるが如何でしょうか。合わせてご見解を伺います。

(都市戦略部長)

コミュニティバス・デマンドタクシーの運営につきましては、地域住民が主体的に携わり、市が地域を支援する協働体制で取り組むことが重要であると考えております。

市の支援といたしましては、運行に係る経費のほか、事務経費を補助するとともに、地域での運営会議に出席し、他の地域の事例紹介や運行の改善策を地域と共に検討するなど、運営の継続をサポートし、地域の負担軽減に努めてまいりました。

地域主体の公共交通がこれまで安定的に運営されてきたことから、市といたしましては、負担割合も含め、これまでの取り組みを基本にしながら、地域の方のご意見を伺い、課題解決に向けて取組んでまいりたいと思います。

車両の購入も5割負担の原則で、運営団体が820万円を5年償還払いされています。仮に運営を続けることができなくなれば、支払い義務だけが残ります。

なぜこうまでして住民が背負わなければならないのでしょうか。

3)そもそも5割というその基準の根拠はどこにあるのか?なぜ5割にこだわるのでしょうか。

市民が納得できるような根拠を示してください。

(都市戦略部長)

本市の交通空白地域の解消に向けた取組方針は、地域との協働による取り組みを基本とし、市は、地域で設立した運営協議会などをサポートする制度としております。

基準の根拠としましては、地域の方が自分事として運営して頂くため、市の補助は運行経費の1/2を上限とし、不足分は地域が負担することとしております。

なお、負担割合につきましては、地域の方々や交通事業者、学識経験者を構成員とする地域公共交通会議にお諮りし、市原市地域公共交通網形成計画の基本的な考えとして、明確化いたしました。

例えば、他の交通空白地域にも拡大していった場合に、市の負担がどのくらいになるのか試算しているのでしょうか?全体の予算枠の見込みを立てた上での判断ならまだわかるんです。

地元負担が5割なら当事者意識が生まれて、3割だと意識が薄れるという話ではないはずです。

運営団体の方々は誇りを持って活動されています。それは負担が減っても何ら変わらないと思います。

*地元の意見を聞いて

昨年11月に運営団体の方々を一堂に会し意見交換を行ったそうですが、その際各団体から「補助額の割合をもう少し見直してほしい」「後継者の確保が難しい」「運行エリアを拡大したい」との声が上がったと伺っています。

こうした声に真摯に対応していただきたいと思います。

(3)高齢者等の外出支援について

*交通部局と福祉部局との連携について

網計画に掲げられている福祉施策等との連携について伺います。

これに関しては国交省と厚労省が3年前に通達を出し、交通と福祉の両部局による合同協議会の設置や、既存の協議体への構成員の相互参加を促しています。

4)そこで伺いますが、本市ではこれら国の通達を受け、組織作りを進めているのでしょうか。

あるいは、介護保険事業推進協議会や協議体、地域ケア会議などに、交通部門の職員や交通事業者等が参加したり、逆に地域公共交通会議等に福祉部門の職員や社会福祉法人や社協等が参加したりするなどの取り組みは進めているのでしょうか。

(都市戦略部長)

これまでに交通部門と福祉部門の連携した取り組みといたしましては、「地域公共交通網形成計画」や「高齢者福祉共生プラン」の策定に際し、適宜情報交換や協議をしてまいりました。

これらの計画において、高齢者の移動支援や移動手段の確保等の施策を位置付け、現在、買い物や通院の支援及び福祉有償運送などを実施しているところです。

引き続き、高齢者の移動に関する視点や手段の確保に向け、福祉部門と密に連携し、情報を共有化することで、相互の理解の促進と一体的な対策を図るとともに、必要に応じて、それぞれの会議体に相互参加することも検討してまいります。

2年前に南総地区町会長会が行ったアンケートによれば、70歳以上の免許保有率はほぼ70%。自家用車依存の生活を迫られることへの不安の解消は、喫緊の課題であることが改めて示されました。

また、高齢者等の移動の問題は、既に福祉関係者からも数多く指摘が上がっているはずです。まずは取っ掛かりにでも、職員が互いの会議体に参加することぐらいは、すぐできることではないでしょうか。

*介護保険などの活用策も進まず

さらに網計画では、来年度より高齢者の外出を支援する新たな補助制度を実施するとしていますが、実際はその準備すら始めていないとのことで、早くも計画に狂いが生じています。実に残念です。

介護保険の総合事業の枠組みの中で、例えば病院などの送迎前後の付き添いや、通所施設・通いの場などへの送迎に関する補助などを行うことは、制度上可能です。

民間の調査機関によれば、R元年11月現在、実際に取り組んでいるあるいは検討している市町村は約45%にも上っています。

5)介護保険以外にも一般会計からの拠出も含め、補助制度はすでに多くの自治体が工夫を凝らしながら導入していますが、本市はなぜアクションを起こせないのでしょうか。

ぜひ迅速に取り組みを進めて頂きたいのですが、如何でしょうか。

(保健福祉部長)

介護保険事業による「介護予防・日常生活支援総合事業」におきましては、地域の実情に応じて行う訪問型サービスや通所型サービスなどがありますが、このうち住民主体による訪問型サービスの一類型として、移動支援があります。

具体的には、「通院等をする場合の移送前後の付き添い支援」や、「通いの場」などへの送迎が想定されており、住民が主体となって当該活動を行う場合に、その間接経費等に対する費用助成が、介護保険事業の枠組みにより可能となっております。

また、本市では、高齢者の日常生活への支援体制の充実に向け、生活支援体制整備事業に取り組んでおり、市全域を対象とする第1層協議体と市内11の圏域に第2層協議体を設置し、現在、第2層協議体において、地域課題の確認と解決に向けた取組の検討がなされているところであります。

市としましては、この各第2層協議体での検討を通じ、移動支援ニーズの状況を踏まえ、必要により第1層協議体において、制度の構築を検討してまいります。

また、一般会計における補助制度の導入につきましては、課題ととらえており、今後、交通施策全般を俯瞰する中で、検討してまいりたいと考えております。

新たな交通施策の導入について

市原市は交通空白地域以外にも、例えば団地の周辺などに無秩序に住宅が建ち、勾配がきつく道路の幅が狭く入り組んでいるような地域が多く点在しています。

このような地域を中心に、既存の公共交通サービスを補完し高齢者等の足替わりとなるような新たなモビリティシステムの導入が求められます。

先日の代表質問のご答弁では「これから調査研究する」とのことでしたが、まだその段階かと落胆しました。この分野の技術革新は目覚ましく、今や近隣含め多くの自治体が交通事業者との調整に汗をかきながら実証運行などに踏み切っています。

市原市が二の足を踏んでいる理由が私にはわかりません。ぜひ奮起していただくよう要望します。

(4)将来のビジョンについて

*補助金額の市町村比較

そもそも市原市の生活交通政策は、市全体の政策の重要度としてどのような位置づけになっているのでしょうか。地域交通事業への補助金のデータから考察します。

資料は、県HPから2018年度の県内市町村のデータを独自にグラフ化したものです。補助額の多い順に並べました。

路線バス・コミュニティバス・デマンド合わせた額は、市原市は約2500万円で32番目。

2枚目・そのうちコミュニティバスへは720万円で、導入39自治体中37番目。最も多い浦安市(2億7900万円)の約40分の1。

3枚目・デマンドタクシーは80万円で、21自治体中21番目。市原市は成田市(6300万円)の約80分の1。

補助額だけで政策の重要度を推し量ることはできませんが、市原市の財政規模からいってこのデータはあまりにも衝撃的です。

他の自治体にすれば、市原市は経費をかけずに上手くやっているねという見方もあるかもしれませんが、担い手である運営団体の方々はじめ不便を強いられている市民にすれば、たまったものではありません。

*他施策とのバランスからも交通政策の在り方を問う

その一方で、一般会計から他団体へは公共交通をはるかに超える(場合によっては何十倍もの)額を拠出し、コンサルへの委託やイベント開催には次々と何千万・何億もの税金がつぎ込まれています。

ここで私が指摘したいのは、金額の多寡ではなくバランスの問題です。

市民アンケートでは「市原市を『住みにくい』と思う理由」第1位は「交通の便が悪い」ですが、この市民の声が予算配分に適切に反映されていると言えるのでしょうか。

6)これでは、市原市は公共交通政策に消極的ではないかと市民から思われても仕方ありません。

市民の生活実感と政策が噛み合っていないことについて、市長はどのようにお考えでしょうか。

(市長)

生活交通の確保は、市民の皆様の日常生活に直結するものであり、令和元年度市民意識調査においても、公共交通の充実を求める回答が最も多いことから、本市が最優先に取り組むべき重点課題の一つであります。

このことから、私は「組織は戦略に従う」という理念の下、令和2年度の機構改革において、目指す都市像の実現に向け、常に一歩先を見据えた先駆的な施策を展開するため、都市戦略部を創設し、交通政策課を組み入れたものであります。

交通施策につきましては、内陸部まで民営の鉄道が整備されているという本市の特徴も踏まえつつ、地域主体による交通施策の推進を基本とし、効率的・効果的な予算配分と組織体制に努めてまいりました。

また、市の主要施策の今後の方向性について、担当部局の職員と率直に意見を交わした先月のオータムレビューにおいては、「地域公共交通網形成計画の推進」を最初に取り上げ、市南部地域をはじめとする交通空白地域の対策について、今年度実施中の調査結果も踏まえ、より積極的に検討するよう、指示したところであります。

市域の広い本市の生活交通は、人口減少に加え、いまだ先が見通せないコロナ禍の影響もあり、交通事業者が疲弊していることから、これまで以上に厳しい状況にあると考えております。

他方、生活交通を確保、維持していくためには、地域に住む皆様が正に自分事として捉えていただくことも重要であります。

このようなことから、今後も引き続き、市民や交通事業者などを始めとした関係者の皆様との連携をより強固にし、地域に寄り添った対話を重ねつつ、本市の生活交通の確保と持続可能な制度確立に向け、強い覚悟をもって全力で取り組んでまいります。

※交通政策は、街の風景や人々の生活を劇的に変える要素を持っている。

「住民主体」ならばフォローを

先に申し上げましたように「担い手はあくまでも住民」という市原市の基本方針そのものも、今一度問い直す時期に来ていると思います。

現在運行されている4地域は「たまたま強い志と実行力のある住民がおられたから実現できた」ということです。では事業が困難になった時にどうするのか?当局はちゃんと10年後を見据えているのでしょうか。

新たな導入地域も中々広がりませんが、交通が不便な地域ほど担い手が少ないという矛盾を抱えた仕組みですから、それも当然です。

今の仕組みで、本当に「持続可能な公共交通」だと胸を張って言えるのでしょうか。

行政・住民・交通事業者が協働で取り組むことに全く異論はありませんが、移動困難者に対する支援はまちづくり以前の福祉的課題であり、住民の交通権を保証するのは行政の責務です。

7)担い手がいる・いないに関係なく、困っている地域に必要なサービスを提供できるようなスキームを、ちゃんと考えているのでしょうか。

(都市戦略部長)

本市の地域公共交通の運営につきましては、持続可能な公共交通とするため、地域固有のニーズが把握でき、地域特性に応じた運行内容の設地域の方が主体となり、自分達の生活交通として「守り」「育てる」意識を持つことが重要と考えております。定ができる

市は、そのため、地域が取組む運営や立ち上げの支援を実施しております。

現在、市では、新たな運営団体の立上げに繋げる取組として、地域の特性に応じた交通モードや運行区域、運行経費などを市が検討し、それぞれの地域に適した地域公共交通の具体的な提案ができるよう、地域別対応方策の策定作業を進めているところです。

令和3年度からは、地域別対応方策を地域に提案し、地域との対話を重ねることで、課題を整理してまいりたいと考えております。

※市民生活の質を大きく左右する事業なのに「やるかやらないかは住民次第」はおかしい。

※大切なのは「住民主体」の方針ではなく、困っている市民をどう救うか。原点に立ち返って。

*地域公共交通再編実施計画の予定は

最後の質問です。

網計画には大まかな方針が書かれてはいますが、具体的な将来像が何も伝わってきません。

国は、自治体が公共交通ネットワークを再構築する場合、その実施計画を策定すれば実現を後押しするとしていますが、市原市はその気配も全くありません。

8)そこで伺います。当局では再編実施計画を策定する予定はあるのでしょうか。また今後どのような手順で生活交通再編の取り組みを具現化していくのでしょうか。

(都市戦略部長)

再編実施計画は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づき、交通事業者との合意の上で、路線再編、他の交通への転換等の具体的な事業を定める計画であります。

この実施計画は、国の認定を受けることで、実証運行などの経費に対する国庫補

助が交付されるメリットがある一方、交通事業者は、この計画に則り事業を実施する責務が生じます。

本市の公共交通網の再編につきましては、今年度、バス路線の運行計画案と、交通空白地域における地域別対応方策の策定に取り組んでいるところです。

議員ご質問の再編実施計画の策定につきましては、本年度策定する運行計画案及び地域別対応方策の成果を検証しつつ、交通事業者とともに課題を整理し、その必要性を検討してまいります。

今後は、地域公共交通会議をぜひ有効活用されるよう願います。同会議は、行政・住民・交通事業者3者の合議で施策を方向付けできる協議体として、大きな鍵を握っています。

現在議案のほとんどが国の助成金に関する承認で、形骸化しているようです。

地元運営団体の要望や市民の声が反映されるような場にしていただきたいと思います。

市原市は基本的にクルマがあることを前提とした都市構造ですから、よほど思い切った転換が必要です。

市民が未来に希望を持てるような具体的なビジョンを来年度中には示していただくよう改めて要望し、質問を終わります。