令和3年 第1回市原市議会定例会
意見陳述 森山かおる
R3年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、総括的な見地から意見陳述を行います。
*財政について
R3年度一般会計の予算規模は994億円。全額国から交付されるワクチン接種費を除くと、前年度を下回る977億1千万円。特に、市税収入は新型コロナウィルス感染症などの影響により、過去最大規模の減収を見込み、前年度比マイナス4.5%、額にして21億9,200万円の減収という、厳しい中での予算編成にあたられました。
経常収支比率は前年度比3.8ポイント上昇し過去最高の99.7%、財政の硬直化は大変深刻です。そこで限りある財源をどのように優先付けて振り向けられたのかという視点で審査を行いました。
では、これより各々の施策や事業について述べさせていただきます。
誰一人取り残さない共生社会の実現について申し上げます。
私たちは引きこもりやヤングケアラーの問題を通して、各部署の縦割りをなくし複合的な課題に対応できる支援体制の構築を求めてきました。このほど予算案で示された包括的支援体制の整備では、福祉総合相談センターを設置し、翌年にはさらに地区センターを9カ所開設されるとのこと。市原市が県内でも、先進的に取り組まれたことを大変評価しております。
この支援体制を強固なものにしていくためには、行政の各部署との連携はもとより、市民や地域活動団体などとのつながりが必要不可欠となります。しかし、誰一人取り残さない共生社会の実現は、担当部署だけで進められるものではありません。
庁内の全職員が「目の前で困っている一市民をどうすれば救えるか」という意識をもって取り組まれることを期待しております。
次に子育て世代の信頼を回復し、安心して子育てができるまちの実現について申し上げます。
要保護児童保護施策として、新規事業の立ち上げや児童福祉スーパーバイザーの設置、保健師の増員など人的配置も強化されました。また児童虐待を未然に防ぐ施策にも積極的に取り組まれ、これまでになく児童福祉の観点から施策が強化されたことに意気込みを感じております。しかし市民ネットワークは10年以上も前から家庭児童相談員の人員体制の強化を幾度も要望してきただけに、なぜもっと早く取り組めなかったのか、悔やまれてならなりません。
また、分科会審査を通して障がい児に対する意識の低さが気になりました。保護者が疾病や疲労で養育困難となった場合に子どもを預ける子育て短期支援事業では、障がい児の受け入れについて想定されていたのでしょうか。遠隔相談事業については、母子相談専用ルーム「MOM」と子ども福祉課・保育課をオンラインでつないでいるものの、肝心の発達支援センターは含まれていなかったことがあげられます。
障がい児が虐待を受けるリスクは健常児よりも高いことは過去の調査でも指摘されており、全国の障がい児入所施設492カ所を対象にした4年前の調査では、3割の子どもが入所前に家庭で虐待を受けていた可能性があるとの報告もあります。障がいがあるが故に育てにくさを感じ、追い詰められている保護者に配慮した支援を望みます。
一方で、医療的ケア児保育支援事業については、公立認定こども園2施設での受け入れ体制が整備されたことを嬉しく思っております。障がいや医療的ケアの有無に関わらず全ての子どもが集団生活を通して共に学び育ち合う教育・保育の機会を提供することは共生社会実現にも繋がります。今後、更に受け入れ施設の拡充を図り、対象児が卒園後に進むと想定される公立小学校での受け入れ体制を整備することで、切れ目のない支援体制をお願いいたします。
次に公共資産マネジメントについて申し上げます。
まず、庁舎強靱化対策事業について。
第2庁舎の建て替えにあたって、R3年度には具体的な機能や規模などを決めるとしています。検討に当たっては、市全体を俯瞰して、現有施設の活用や支所機能の強化などを充分に勘案した上で、機能の配置や規模を考えていただきたい。
公共施設再配置モデルケース推進事業については、八幡宿駅西口の老朽化した6公共施設を複合化し、八幡運動公園側に整備するため、R3年度はPPP/PFI等による整備・運営手法を選定するとしています。私たちは立地場所について、県の高潮浸水想定区域図で最大3メートルの浸水予測があることなどから、これまでリスクを指摘してきました。それでも尚、市民の財産ともいえる公共施設をリスクある場所に建設するというのであれば、災害時においてはこの施設が現地連絡本部になることや、浸水リスクについて市民への説明を求めます。
次に人員配置について申し上げます。
道路や橋梁などインフラの維持補修費は、前年度に比べ大幅に減額(道路維持費16%減、橋梁長寿命化事業40%減)。 実施時期の見直しで委託料を削った分、高まる市民ニーズに対応するのは市の職員ですが、現業職員は約20年間退職者の補充はございません。感染症拡大を含む自然災害が多発する時代において、危急時に市民の生命や財産を守る上で何よりも重要なのは自治体職員のマンパワーです。市民ニーズに迅速に対応できる人員配置を求めます。
次に公共資産の維持管理費用について申し上げます。
R3年度予算編成では、これまで以上にシーリングをかけた上で、標準経費は部局編成枠として配分する一般財源の中で部局主体で編成されましたが、道路や橋梁などインフラの維持補修や管理費用を標準経費に含めることに無理があると感じました。
他自治体では道路など、公共土木施設の維持補修に要する資金に充てるための基金を設けています。更に、公共施設についても立て替えや増改築に備えた基金とは別に、大規模改修に特化した基金を設けるなど、安定した財源の確保に工夫をこらしています。
コロナ禍の地方財政への影響はリーマンショックより長期化するとの見方もあり、公共施設やインフラの老朽化が深刻さを増す中で計画のズレが生じると、今後の財政にしわ寄せがくるのではないかと懸念します。
維持管理費用の縮減と予算の平準化を図る長寿命化計画の目的に則って、事業が遂行される財源措置が必要です。
最後に市民ニーズと施策のギャップについて申し上げます。
まず、公共交通について
R元年度の市民意識調査では、「住みにくい」と思う理由の1位が交通の便の悪さでした。具体的に移住を考えている人のうち、移住先として市内よりも市外が2倍以上多く選ばれているのも、市内交通が大きく影響しています。過去10年間に市原市に移住した方へのアンケートでも、移住後の不満として一番多くあがっていたのが交通問題でした。これを踏まえ市では公共交通施策を最優先課題としながらも、予算案では交通空白・不便地域における地域主体のデマンドタクシーやコミュニティバスの運営補助費は前年度とほぼ同額の865万2千円。
バス運行維持費補助金4千17万円は、前年度当初予算と比較して約2,300万の増額でありますが、補正予算や単価上昇を勘案した額で、実質的には殆ど変わっておりません。
地域公共交通網形成計画が策定されて2年半経ちますが、未だに課題整理や調査といった段階に留まっています。市民が実感できる形を早急に示すよう求めます。
新規事業として、都心から近く豊かな自然環境が広がっていることを市の強みとし、オフィス誘致をする里山ワーク推進事業があります。この事業そのものの是非はともかく、市民意識調査では、市原の環境を未来に残していくために必要なこととして、年代別・地域別・職業別の全てで一番にあげているのが不法投棄対策等の生活環境の保全です。
「豊かな自然環境を市の強み」とうたいながら、今も残土や再生土・産業廃棄物の埋め立てで、井戸水への影響など生活環境に脅かされている市民がいるにも係わらず、環境保全の施策に相変わらず弱さが見られることに、矛盾を感じざるを得ません。
オープンイノベーションPJの推進、約5千万はほぼ全額がコンサル委託料。相変わらずゴール設定が曖昧で、どんな課題がいつ解消されるのか不透明なままです。しかも係わるコンサルや企業の殆どが東京都などの市外であり、アイデアは事業者から募ったもの。
これが安定成長の時代ならまだしも、コロナ禍により市政始まって以来とも言うべき危機的状況において、なぜ優先されるのか理解に苦しみます。
他にも、いちはらアートミックス、オリンピック・パラリンピックに係わるキャンプの受け入れなど、コロナ禍において真に市民が求めていると言えるのでしょうか。
今は、市民の困りごとに徹底的に寄り添うべき時であると思っています。
以上、
包括的支援体制や子育て支援など評価できる点もありましたが、市民ニーズに寄り添った予算案ではないと判断せざるを得ないことから、市民ネットワークはR3年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、反対の立場を表明し、意見陳述といたします。