平成17年度 第2回市原市議会定例会 6月29日(水)

市議会レポート【個別質問】桑田なお子

1.個人情報保護と住民基本台帳について

2005年4月から個人情報保護法が施行になり、新聞紙上での各種試験の合格発表がなくなり病院や施設の面会者記入の方法もプライバシーが保てるように工夫されてきています。
この法律は個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利や利益を保護することを目的としています。事業者に適用されるルールには利用目的、適性かつ安全な管理、第三者提供の制限、開示・苦情処理があげられます。開示の部分では自分に関する情報の開示はもちろん訂正等を求める事が出来ます。つまり「個人情報の自己コントロール権」を保障しているのです。
さて、どこで家族構成を調べたのか我が家においては受験生に対する塾や家庭教師の案内の電話が度々はいってきます。もう少し年齢がいくとお墓の案内の電話が入ってくるといいます。
一体どこで調べたのでしょうか、今問題になっているのが住民基本台帳の大量閲覧です。
他にもこの大量閲覧を悪用した犯罪が起きているわけで、これを見直すことが必要です。もっとも市原市は6月から従来世帯別に並んでいた台帳を、50音順に変え、家族構成を分からないようにしたと聞いていますが、果たして閲覧の申請件数を減らせるのか、疑問が残るところです。その効果はいかがでしょうか、手ごたえをお聞かせ下さい。浦安市、市川市では6月市議会に住民基本台帳の閲覧を制限する条例案を提出したと聞いています。おりしも総務省では「住民基本台帳の閲覧制度の見直しを議論する検討会を5月11日に始めた。」との報道もなされています。
先ほど話しました個人情報の自己コントロール権、言い換えますとプライバシーの侵害をもたらすと認めた判決が5月30日金沢地裁で下りました。訴訟の内容は住民が自分の個人情報を住民基本台帳から削除するよう求めたものです。
この判決は離脱を求める住民を住基ネットに強制的に参加させる事を自己情報コントロール権の侵害と断じたものであり本人の意思による「選択制」や離脱自治体に憲法上の根拠(憲法第13条に違反する~個人の尊重と公共の福祉)をしめしたものです。私たち市民ネットワークは住基ネット導入に対し、個人情報保護の視点から反対してきました。

そこで伺いますが、住基ネットの現時点での住民選択制を導入すべきと考えますが見解をお聞かせ下さい。

関連して市原市の住基カード作成件数が平成16年度の1年間で458件、全体では1022件と聞いています。先日の捧議員の質問の中で1565件と言われましたが担当部署に確認したところ、県に報告する時重複があったと言う事で、実際の数は1022件で取得率は0.36%になります。ちなみに全国の平均が0.43%です。この住基カードの普及率から判断するにほとんどの人は必要としていません。使用期限が10年と言うのも敬遠される理由かも知れません。先日の議会答弁の中で証明書自動公付機を使えるように住基カードとは別に市民カードを発行するとありました。住基カードではなく市民カードを作らざるを得ない事情があったと思いますが、ますます住基カードは要らないものだったのではないかと思います。

先日はクレジットカードで情報が流出したとの事故が報道されていましたが、事故がおきた時の対応策は考えておられるのでしょうか、見解をお示しください。

2.男女共同参画社会づくりについて

市原市でもようやく4月1日から男女共同参画社会づくり条例が施行されました。
これからが正念場です。しかしながら男女共同参画という言葉はまだ一般的には知られておりません。
男女共同参画とは「人権尊重の理念を深く社会に根付かせ、真の男女平等をめざすもの」です。
5年半前、国で男女共同参画社会基本法が制定されるにあたって「男女平等」という言葉を使おうとしたそうですが、国の要を担っている人たちの中に平等に対するアレルギーや反発があり、「男女共同参画」の言葉に落ち着いた、という経緯があります。
個人レベルでは確かに女性も強くなったかもしれません。しかしながら2002年の内閣府で行った世論調査では男女の地位について75%の人が「男性の方が優遇されている」と考えています。「意思決定の場に女性はどれくらいいるのか」の調査では全国の市町村議員の女性比率は7.9%、千葉県市町村職員の管理職では3.6%、市原市はわずか1.4%です。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という固定的性別役割分担意識は今年2月に公表された2004年調査結果では、この調査を始めてから初めてこの考え方に「反対」「どちらかというと反対」の人が過半数を超えました。

さて市原市では総合計画の中で審議会における女性委員の割合が現在の22.5%から2007年には30%とありますが今年度の目標数値をお聞かせ下さい。又、市原市の条例のなかに「基本計画の策定」は市民及び事業者の参画のもと協働して行うとありますが、平成13年に10年間の基本計画ができ、前半は今年で終了します。後半の平成18年度からの実施計画はどうなっているのか、その進み具合をお聞かせ下さい。この計画を作る段階で参画する市民と言われる方々は一般公募をするのか、どういう基準で決めていくのかもお聞かせ下さい。

さて6月10日には「(仮称)男女共同参画プラザ」設置についての要望書が「いちはらの男女共同参画をすすめる会」から市長へ手渡されました。その場に同席させてもらいましたが、熱い思いを持った市民10数名の姿に頼もしさを感じました。これは五井駅近くの「土地区画整理事務所」跡にできる市民活動支援センターの中に「(仮称)男女共同参画プラザ」という拠点を設置して欲しいとの要望です。
「女性センター」「男女共同参画プラザ」等については、他市では男女共同参画の推進の拠点として位置づけられ、行政が委託も含めて事業運営をすすめています。
例えば、千葉市女性センター(通称ハーモニープラザ)では千葉市文化振興財団に年間2億円の予算で委託、男女平等を目指す市民の方々の様々な活動や学習を支援するため、調査、情報発信、相談、研修、交流の五つの機能を持っています。

今回市原市の「(仮称)男女共同参画プラザ」は市民の自主運営と聞いております。市民との協働という形であるとはいえ、施策をすすめる拠点としての意味から、予算措置も含めて行政のかかわりが必要と考えますが、見解をお聞かせ下さい。

さて、今年の3月末に「市原市特定事業主行動計画」が示されました。内容は市役所職員の仕事と子育ての両立に向けて雇用環境の整備を推進するためのものです。
役所だからこそ民間に先駆けて模範を示せるよい機会だと思います。
おりしも政府は6月14日少子化対策に本格的に取り組むため有識者委員会を9月に発足させるとの報道がありました。子どもを欲しい人が満足いくまで産み育て、再び職場に戻れるような社会にならなければ、少子化はこれからも進んでいく事でしょう。

「市原市特定事業主行動計画」は平成17年4月1日から平成22年3月31日までの5年間を第1期の計画期間としています。その中に男性職員の育児参加を促進するために新たな制度の導入を図るとありましたが、具体的にはどのような制度を考えておられるのかお聞かせ下さい。

3.学童保育について

市民ネットではこれまで度々学童保育についてこの場で質問してきました。平成15年9月議会では市内の学童保育利用者の負担が8000円から12000円の差があることに対し保育料の統一化、そして当時運営を担っていた保護者の負担を軽くしていかなくてはならないと主張し、障害児の受け入れも積極的に取り組んで欲しいと要望いたしました。幸いにもこの3つが今年4月から実現できましたことは高く評価するものです。
初めて障害児を受け入れた学童保育では戸惑いと一時的な混乱があったことは事実です。しかしながらそこの学童保育の指導員及び利用者の良き理解があり、その子どもに対し急遽、専任の指導員をつけることによって解決がなされています。今まで3人の指導員が4人になったことは大人の目が増えることであり他の児童にとっても歓迎すべきことです。
今回、保育所と学童保育の連携が取れ、初めから障害児に対する理解がなされていれば4月当初から混乱もなく順調に受け入れが出来たという学びをこれからは生かしてください。是非、保育所と学童保育の連携を図ってください。本来ならば母親が子どもの情報を正直に学童保育の指導員に伝えたらよかったのですが、本当のことを話すと断られるのではないかという母親の不安があったので言い出せなかったのです。障害児は断られてしまうのが現実です。
そこで2点お聞かせ下さい。

1点目、これからも障害児を学童で受け入れる場合専任の指導員を付けるという仕組みづくりが必要と考えますが見解をお聞かせ下さい。

2点目、指導員を採用する際、あるいは障害児の受け入れが決まった学童保育の指導員に対して障害児に対する理解を深めるためにも研修が必要と考えますがそのことについてどのように考えておられるのかお聞かせ下さい。

又、指導員に対し発達支援センターが障害児についての相談窓口になっていることを知らせて下さい。
関連しての要望です。学童保育ではありませんが、認可外幼稚園に通う障害児に対しても何らかの支援をすべきと考えます。今回、次世代育成支援行動計画の中で認可外保育補助事業があげられています。ちなみに公立幼稚園では障害児4人に対し1人の補助員が付いています。

現在学童保育は市内に14箇所です。毎年2校ずつ増えてはいますが市内46校の学校に学童保育が配置されるのは単純に計算して後16年かかってしまいます。1校当たり20人あるいは10人を集めるには都市部の学校では難しくありませんが、小規模校では人数を確保するのが容易ではありません。となると小規模校では 半永久的に学童保育は出来なくなります。
先日、あるお母さんに「学童保育がないから便利な団地に引っ越していく人もいるのです。
なんとか出来ないでしょうか。ますます過疎は進んでいきます。おじいさんおばあさんが近くにいても仕事を持っているから預けられません」といわれました。
実際、小学校の時は引越して学童保育のある小学校に通い、中学校になって再び引越しをして地元の中学校に戻ったという例を聞いています。地域の中で再び友人関係を作りなおすのは容易なことではありません。

このような例に対し市はどのように考えておられるのかお聞かせ下さい。

又、ファミリーサポートセンターが個々のニーズに対応している自治体もあるようですが、市原市はその事業導入体制の検討・準備を進めていると聞いています。その計画の進み具合も合わせてお聞かせ下さい。

4.教科書問題について

4年ごとに行われる教科書採択の年になりました。2月の千葉県議会には「学習指導要領の目標に最もかなう中学校歴史・公民教科書の採択指導を求める」請願が「教科書を良くする千葉県議員連盟」から出されました。その時期にその請願を採択しないことを求める要請が「子どもと教科書千葉ネット21」から市民ネットワークが属している会派に届きました。
前者は憲法改定、教育基本法改定、「逞しい日本人」として「国益」を優先する「公民」をつくることをめざす団体であり、後者は現行の憲法・教育基本法に基づく教科書採択を求める団体からでした。
2002年4月に改定された指導要領には「歴史的事実に対する関心を高め、わが国の歴史の大きな流れと各時代の特色を世界の歴史を背景に理解させ、それを通してわが国の文化と伝統を広い視野にたって考えさせるとともに、我が国の歴史に対する愛情を高め、国民としての自覚を育てる」とあります。
書かれていることは尤もなことではありますが、我が国の文化と言われる「茶の湯」も「かな文字」も大陸から伝えられたものを基に日本流に発展させたものであることを忘れてはなりません。
もとより、自分の国の歴史を学び、国を愛する事は大切な事ではありますが、今日求められているのは地球規模で環境問題を考え、他国の歴史文化を自らの国の歴史文化を尊ぶのと同様に尊重する姿勢であり、充分な国際間のコミニュケーションを図っていく事だと考えます。
常々、教育長は「教育は子どもの幸せのためにある」と言われています。
そこで3点お訊ね致します。

1点目、終戦になるまで国民は天皇の赤子と呼ばれ皇国民と言われてきました。「皇国民の練成(心身を鍛えつくりあげること)」を目的とした教科書で学んだ経験のある教育長の教科書に対する考えをお聞かせ下さい。

2点目、市原市は昭和59年に「市原市非核平和都市宣言」をし、平和憲法の精神から非核三原則を遵守し、核兵器の廃絶と軍縮の推進を強く訴え、世界の恒久平和への願いを謳っていますが、この憲法の精神に則った教科書採択が適切と考え、従って「新しい歴史教科書をつくる会」が関わって作られた教科書は採択しないでほしいと思います。先日、同じような船井議員の質問に対し木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市、市原市の5市で公正かつ適切に採択するので現時点では表明できないと答弁されました。しかし、市原の子どもたちが使う教科書です。どのような教科書がふさわしいのか、見解をお聞かせ下さい。

3点目、教科書の展示が6月17日から7月6日まで教育センターにて行われています。広報いちはらに案内が出て、ホームページでも情報提供がなされています。これからの教科書の採択過程が市民に分かるように「採択地区協議会」の議事録をホームページで情報開示すべきと考えますが見解をお聞かせ下さい。

5.防犯教育について(CAP教育プログラム)

このCAPプログラムについては平成16年3月議会で高槻議員、そして同じ平成16年6月議会で二田口議員が取り上げ、教育委員会の考えを聞いています。それに対し教育委員会はCAPプログラムの情報収集に努め、市教育センターの研修課題として取り組んでいきたいとの回答を出されたのですが、その後の進み具合をお聞かせ下さい。
「百聞は一見に如かず」と言いますが実際にCAPプログラムを体験してみて是非とも皆さんに体験し、知ってもらいたくて今回質問に取り上げました。
さて、毎日のように新聞紙上には犯罪被害者のニュースが出ています。
市原市は各小中学校に刺す又、催涙スプレー、捕獲器具ネットランチャーを配ばり、不審者から子どもを守るという気迫を見せています。今年の入学準備には防犯グッズをそろえる人が多かったと聞いています。
ある人が「いやな世の中になったものね。子どもに大人を信じたらダメと教えなくてはいけないなんて・・・」と言われていましたが、そうではなく正確には「信頼できる大人は大勢いるけど、そうでない大人もいるから気をつけようね」ということだと思います。
暴力は起こり得ることを前提に考えなくてはなりません。従来の対策では限界があるのではないでしょうか。自らの力で心と身を守る方法を考える時がきています。

防犯の教育では火災訓練もどきの「不審者が侵入する」という設定での訓練がありますが恐怖心だけをあおるようで子ども自身の力になっているのだろうか、との疑問を私はもっています。この類の訓練についての見解をお聞かせ下さい。

さてCAPはchild assault prevention の略で「子どもがあらゆる暴力から身を守るための教育プログラム」として今、全国各地で注目を浴びています。
いちはら市民ネットワーク主催で「CAPぽけっと」の皆さんに来てもらってYOUホールで講座を開きました。40人近くの大人が実際にロールプレイを含む劇を通して学びました。暴力とは心と身体を傷つけるものであり、人権を侵害するものです。暴力の中にはイジメ、誘拐、ちかん、虐待などがあります。
CAPでは義務を伴わない基本的人権として「安心して」「自信をもって」「自由に生きる」権利があると教えます。子どもたちは自分の権利について知っていれば、それに基づいた行動が出来、それは暴力防止に繋がっていきます。自分を大切に思い自分の存在はかけがえなく尊いと感じていれば、「イヤだ」「やめて」という意思表示をする事が出来、その場から逃げる事が出来ます。そして信頼できる大人に相談することで問題の解決をみることが出来ます。
市内の辰巳台東小学校が昨年PTAでこのCAPを取り入れ、小学6年生全員が学び好評だったと聞いています。そして、毎年の行事にしようとの計画があるとも聞いています。費用がかかるためバザーの収益金をあてたり、費用捻出のため色々な工夫をされているようです。東京葛飾区では教育委員会主導の事業が展開され、 四街道や船橋ではライオンズクラブが学校に助成していると聞いています。
このCAPは単なるマニュアルといわれる手引き書ではありません。
私たち一人一人が潜在的に持っている力や個性を引き出し生き生きと息吹かせることで(エンパワーメント)自分で判断し、自分で決定する力を持つようになるという考えです。
 つまりCAPのプログラムは子どもたちを守るべき弱い存在としてみるのではなく、その内にある力を信じてそれを引き出し、自己肯定感を育てるプログラムです。
非行や様々な誘惑から子どもたちを守るにはこの自己肯定感、言い換えますと自己評価、これを高めるのが有効だと思います。

市原市でもこの暴力防止プログラムを取り入れて、子どもたち自身に「何が出来るか考える力」をつけこの時代を乗り越えてほしいと願うものですが、先ず教育の現場におられる先生方にこのCAPを知ってもらいたい、教師の研修にぜひCAPプログラムを取り入れていただきたいと思います。始めの質問と一部重複いたしますが教育委員会の見解をお聞かせ下さい。

これで1回目の質問を終わります。