意見陳述 決算委員会 岡村由美子
決算委員会 岡村由美子
意見陳述
平成22年度の決算について、市民ネットワークを代表して、意見陳述を行います。
平成20年秋以来の経済不況、長期にわたる景気低迷で雇用は悪化し、加えて世界経済の不安定に大震災と、この2,3年は立て続けに大きな波に揺さぶられています。
また、そうした要因に加えて、高齢社会に本格的に突入して現役世代が減っていくことは、財政を圧迫する避けられない要因となっています。
歳入、歳出はともに6年ぶり50億円を超える減少となりました。
歳入は、国家財政がひっ迫し国庫支出金が減少したことに加え、個人市民税が昨年に比べ、10.4億円と、大幅に落ち込んだことが主な歳入減の要因となっています。
歳出は、子ども手当を除く扶助費が4.8億円の増となりました。
このような苦しい財政状況の中で市債の発行を23億円減らし、目標の年50億円をさらに下回る41億円に抑えたことは注目すべき点です。臨時財政対策債の発行を最終的に30億円から20億円とし、将来負担比率を5.8ポイント、実質公債費比率は0.2ポイント改善することができました。
入ってくるお金が少なかったにもかかわらず、平成20年で大規模建設事業のピークをほぼ終え、投資的経費がこの10年間では、平成16年に次いで93億円と低く抑えられたことが、市債残高を減らすことができた大きな要因と考えます。
経常収支比率は87.5%と、前年度より2.5ポイント上昇しております。
類似団体の21年度の経常収支比率の平均が91.6%であることを思うと、本市は決して高いわけではありません。
成長型社会から成熟型社会へ移行すれば、当然、経常的経費は高くなります。また、環境、社会教育、福祉などソフトな行政サービスへの需要も高まっています。
今日は、あらたに大規模な建設事業をおこなうよりも、地味ではありますが、既存のインフラの維持管理に力をいれ、活用する政策を柱としていかなければなりません。つまり、「投資的経費」を増やすより、「維持補修費」を充実させる政策への転換です。
大きな投資に対してはよほど慎重に計画的にしないと、後世に負担をかけることにつながります。その点でも、市庁舎建て替えについては、慎重にすすめていただきたいと思います。
そして、高齢社会、成熟型社会にふさわしい「環境・福祉・教育型財政」への政策転換を明確に意識してはかっていただきたいと思います。
歳入確保については、「債権対策回収本部」のとりくみが期待されます。悪質な滞納者には断固とした態度をとるべきと考えます。
一方、払いたくても払えない人に対しては、今後、同本部で情報の共有化をはかる中で、必要な支援のリストをつくり、全庁的に連携して個々の生活のサポートにつなげることにも今後取り組んでいただきたいと思います。
さまざまな生活の困難に直面している人が増えている中、政府も平成22年から一人一人に合わせた支援としてパーソナルサポートサービスをスタートさせています。雇用福祉一体型支援、官民協働事業がその特徴です。生活保護受給者が増える中、生活保護に至る前の予防的支援にも今後は取り組んでほしいと思います。
各自治体で公契約条例をつくる動きが活発化しています。本市も市内業者への調査や、検討部会設置など条例化に向けて、一歩踏み出していただくことを強く要望します。
市全体の地域経済の活性化につながる施策であると確信します。
市民活動の団体がこの10年かなり増えてきました。改訂総合計画や、地域福祉計画策定時に市民会議を広く行った成果もあり、協働に対する市民意識も高まってきています。
しかし、市民との協働をさらに効果的にすすめていくための、庁内の全事業の洗い出し、協働事業の評価・公表が不十分です。また協働事業には庁内横断的な対応が必要ですが、全部門を統括する部署が十分に機能している状態にあるといえません。先進市にみられるようにNPO・ボランティア支援室を「課」にし、企画部のもとにおくなどして、体制の強化をはかることが必要です。また、市民活動団体は、資金調達に四苦八苦しています。資金調達のしくみをつくることは、喫緊の課題です。
五井駅東口開発については、基盤整備は整いつつあります。しかし、ヨーカドーはまだ大店立地法による届け出がなされていない状況にあり、まちのにぎわいづくり、市原の顔づくりといったソフト面、本事業の本来の目的達成までにはまだまだ先が見えません。どんなまちをめざしているのか?つねに原点に戻り、働きかけていかないと、市の中心部となるべき市の玄関口が、市民意識から、置き去りにされてしまう恐れがあります。組合解散が24年夏あたりと聞いていますが、遅くともそれまでにはエリアマネジメントのしくみをつくらないと、まちづくりの推進役が不在になりかねません。
また、平成22年度決算では、水と彫刻の丘の実施設計が上がっております。どのように改修されるのか、そのことが、今後の南市原のまちづくりにどう関わってくるのか、未だ市民の目には見えません。市民と夢を共有しながら、本市全体の観光面、芸術面、文化面での発展を果たしていただきたいと思います。
広い市原では、北と南のまちづくりの情報の共有、意識のつながりが大切です。市民を巻き込んでのまちづくり、仕掛けづくりがますます重要になると思います。
次に款別で特に申し上げたい点のみ、あげさせていただきます。
*総務費について
総合評価落札方式が19年に導入以来、すこしずつ増えています。時間がかかるなどのデメリットもありますが、公共事業の民間請負が増える中、質の確保のためにも総合的に評価していくやり方は効果的です。今後もさらにひろげてください。
交通マスタープラン推進事業についてはマスタープランに書き込まれた事業を着実に具現化して下さい。
男女共同参画推進については「男女共同参画センター」が、「市民活動の拠点」として、機能しているとはとてもいえない状況です。今後のあり方について根本的に協議し、見直してください。男女共同参画推進そのものについても、法律制定から10年、条例制定の時は市民のなかで盛り上がりがあったが、その後停滞気味です。推進をはかること。
サンプラザ市原は、2億3600万円かけて改修計画の骨子が出されました。生涯学習センターなど、どのような活用の仕方なのかはっきりさせ、利用促進に結び付けること、サンプラザ市原の位置づけについても明確化すること。
「小規模営繕登録制度」の新設は市内の小規模事業者を元気にし、地域経済の活性化につながる制度として評価いたします。全庁的、出先機関の状況を把握し、さらに周知、推進をはかること。
指定管理者制度については、第2期の指定替え等の選定がおこなわれましたが、「経費削減」「市民サービスの向上」に基づいた選定が行われたか、全体の評価をすること。公園の指定管理者選定においては経費節減の目的に沿っていません。選定のあり方等、いまいちど見直すこと。
*民生費について
・地域福祉について
第2次地域福祉計画ができ、社会福祉推進の要としての社会福祉協議会の役割が重要になっています。行政の役割も明確化し、計画の具現化をはかること。
安心生活創造事業費は、23年度までのモデル事業ですが、「地域ケア」体制のモデルとなるよう、期間終了後も継続させること。かつ、他地域での展開等も視野に入れ検討していくこと。
・障がい者について
障害福祉扶助費が2.9億円増と国の方針もあって全体的に充実してきています。
重度心身障がい児者に対しては、日中活動の場の充実を国、県に強く働きかけること。また精神障害者の地域移行がすすむなか、日中活動の場や相談の需要が高まっています。今後は姉ヶ崎駅や八幡宿駅周辺に地域活動支援センターⅠ型を増やすこと。
・子ども施策について
保育所の新設は評価しますが、依然として待機児童が多い状況です。さらに新設をすすめ、待機児童をなくすこと。また従来の施設で老朽化した個所については順次改修し、駐車場も拡張すること
発達支援センターは、相談後、速やかに支援につなげること。巡回相談、地域支援をさらにすすめるとともに、地域への啓発に努めること。
放課後児童健全育成事業については、量的には確保されつつあるので、今度は子どもの育つ環境としての質の向上を図ること。過密状態のところ、また障がい児受け入れ等で必要なところから順次、整備をすること。また、学校との連携を密にすること。
・生活保護
増えていく生活保護世帯の社会的な背景に目を向け、地域の縁作りにつながるきめ細かな支援を保健福祉行政としてとりくむこと。ケースワーカーはさらなる増員をはかること。
高齢者については
地域包括支援センターは相談件数が驚くほど増えており、委託先現場は大変な状況。ますますその需要が高まってくると思われますが、委託料を増やし高齢者支援の充実をはかること。本市は広域のため地区割りを見直し、かつ増設についても前向きに検討すること。
*衛生費について
ヒブワクチンは10人の死亡者がでています。公費助成はやめるべきです。予防接種は、副反応についての危険性を十分に保護者に伝えること。
残土処分場については、自然環境マップの成果を見て市原型の条例を検討するとのことですが、いったん失われた自然はもどってきません。市原では、県残土条例に該当する残土処分場計画が次々と県に申請されています。代表質問でもふれたように、一日も早く市の残土条例を改正し、周辺住民の同意を許可要件に加えることが、市原市民の周辺環境保全の本気度を示すことになります。早期改正を目指してほしい。
また、地権者に対して、残土処分事業業者に安易に土地を貸さないよう、行政からも働きかけること。「地権者は当然知っているべきだ」と地権者任せにするのでなく、十分な情報を事前に知らせること。
*労働費について
ふるさと雇用創出事業については地域振興がどれだけ実現できたか評価し、継続的雇用創出につなげること。
緊急雇用創出事業についても失業対策としての効果をしっかり評価し、必要ならば個々の事業の継続をはかること。
*農林水産費について
後継者の育成とくに若い農業の担い手をどう育てていくかが課題です。生活できるだけの収入とネットワーク作りがそのポイントです。支援の仕組みをさらに強化してください。
里山管理については、里山保全の市民団体15の支援状況は県里山条例の支援が縮小し、ほとんど支援がない状況です。一定の報奨金を払うなど活動を続けるための資金調達のしくみづくりが必要です。
*商工費について
中小企業サポート事業の成果を生かし、企業どうし、また、福祉との連携など、さらに幅広くコーディネートしていってください。
*土木費について
河川愛護事業と道路愛護団体、いずれも公園愛護団体のように報奨金の制度にし、市民団体の資金作りとして位置づけてほしい。
潤井戸1号近隣公園整備事業については、基盤整備は都市再生機構がやるとはいえ、利用者があまり見込めないなか、管理委託費がかなりかかることが大きな課題です。
市原市総合公園整備事業は25年春全面供用で、順次部分供用していますが、市民を呼び込むためのしかけが重要です。池は水質管理に留意すること。全体の維持管理については管理費を抑える工夫が必要です。
住生活基本計画が22年3月にできましたが、計画の具現化をはかり、進捗状況のチェックをすること。
*消防費について
先細り的な地域の消防団員を増やすために、消防団協力事業所という形で団員を増やす努力をしています。今後、企業の地域貢献という観点からもとくに臨界の大手企業に対し積極的に働きかけてほしい、
学校の備蓄については、地域防災計画上、小中学校は指定避難所として位置づけられており、備蓄の促進に向けて余裕教室等を積極的に利用する必要があります。教育委員会と連携して促進してください。
*教育費について
加茂小中一貫校については、加茂地区全体の交通政策を視野に入れつつ、しかし、まずは地元保護者や児童の声によく耳を傾け、スクールバス等必要な通学手段を講じること。
読書教育推進について、読書指導員の中学校の配置は効果が高いようです。配置日数を増やすこと。配本車が学校をまわることについては全校への拡大をはかってください。学校の蔵書のデータ化については課題を整理し、進めてください。
特別支援教育については、サポートファイルスクラムができたことを評価します。周知と活用をはかること。
いちはら生き生きキャンパス推進事業は、まちづくり塾卒業生を次につながるよう支援し、人材を生かしてください。NPO・ボランティア支援室との連携をはかること。
以上の指摘事項を、今後の行財政運営や予算組にぜひ生かしていただくことを願います。今後、注視してまいりたいと思います。
市民ネットワークは、平成22年度一般会計ならびに特別会計の決算について認定いたします。