平成27年度 第3回 市原市議会定例会
代表質問 小沢みか
1.共生社会の実現について
・障害者基本法について
・障害者基本法の歴史と障害者権利条約締結までの歩み
障害者基本法は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関する、最も基本的な法律である。平成5(1993)年に制定され、H16年の改正で基本原則に「差別の禁止」が掲げられた。
その後H18(2006)年に「障害者権利条約」が採択され、日本はこの条約の締結に向け、以下述べるように国内法の整備を進めてきた。
ま ず平成23(2011)年に障害者基本法を再び改正し、「合理的配慮」という概念を新たに盛り込んだ。そして同年の障害者虐待防止法の成立、 H24(2012)年障害者総合支援法の成立、H25(2013)年障害者雇用促進法の改正、同年の障害者差別解消法の成立と次々と整備を進め、 H26(2014)年1月、日本は晴れて障害者権利条約の批准に至った。
採択から7年後、140番目の締結国であるが、締結が遅れた背景には、「形だけの批准に終わらないよう、まずそれにふさわしい改革を行った後にしてほしい」という障害者の願いがあった。
・合理的配慮とは
ところで、障害者基本法に掲げる「合理的配慮」とは、障害者一人一人を尊重し、その状況に応じた調整などを過度の負担がかからない範囲で行うという意味であり、障害者差別を考える上で非常に重要な概念である。
障 害者を差別してはいけない、ということは誰もがすぐわかることだが、例えば、ホームまでのエレベーターがないから車椅子の人は電車に乗れない、点字の資料 がないから目が見えない人は会合に参加できない、など、結果的にやりたいことが制限される、社会参加できない、こういった場合も、「合理的配慮に欠ける」 として差別にあたると法で規定されている。
ネットの姿勢と市長の公約
私たち市民ネットワーク は、25年前の設立当初から、障害があっても人権が十分に尊重され、安心して自分らしく暮らせるまちづくりを基本理念として活動してきました。小出市長に おかれては、先の選挙戦で障害者の自立支援を重点施策の中に掲げられたことは心強い限りで、大変評価しているところです。
そこで市長にお聞きします。障 害者基本法第3条、全て障害者は、障害者でない者と等しく基本的人権を享有し、その尊厳が重んぜられ、それにふさわしい生活を保障される権利を有するとい う理念の下、あらゆる分野の活動に参加する機会の確保、地域社会での共生の保障、コミュニケーション手段の選択の機会の確保などを図らなければならない、 という地域社会における共生についての条文、また第4条の差別の禁止についての条文、特に合理的配慮に関すること、以上について、市原市の現状と照らし合 わせ、どう認識しておられるのか、また今後の市政運営の中でどう取り組まれるのか。お考えをお聞かせください。
答弁 市長
「障 害者基本法」は、障がいの有無に関わらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを理念としており、これはまさに、私の考えるま ちづくりの方向性と合致するものであります。そこで、私は、障がい者など、だれもが安定的な生活を送れる「安心生活都市の実現」を、今後の市政運営に対す る私の基本的な考えの一つに掲げたところであります。
また、基本法には、「差別の禁止」が明記され、障がい者にとっての社会的障壁を取り除くことについて、「必要かつ合理的な配慮がされなければならない」と規定されております。
昨 年度、市内の障がい者の方々に伺ったアンケート調査によれば、「差別や疎外感を感じたことがある」と回答された方が、全体の約4分の1いらっしゃいますの で、市の現状といたしましては、いまだに障がい者にとっての社会的障壁は存在するものと認識せざるを得ません。このため、まずは、広く市民や事業者が、障 がいをお持ちの方についての正しい理解を深めていくための施策を展開してまいります。
さらに、本市からあらゆる障壁がなくなることを目指し、さまざまな生活環境に応じた支援策を推進してまいります。
市 原市では、H27年度4月1日現在、約1万2千名の方が障害者手帳の交付を受けている。家族の方の人数を考えると、およそ2割の市民が何らかの形で日常的 に障害者と向き合っていると推測される。従って、障害者問題はごく限られた一部の市民の問題ではなく、不特定多数の市民に関わりのある重要な市の施策であ る。市長の手腕に期待をしています。
千葉県障害者条例制定から市原市の状況は
ところで「合理的配慮」という概念は、改正障害者基本法に盛り込まれる5年も前、H18年に成立した全国初の障害者条例「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」に既に明記されていることは、周知のとおりです。
従って市原市もこれまで、市民意識の醸成を図るため、バリアフリー基本構想における心のバリアフリーの推進、障がい者スポーツ大会や精神保健福祉フェスタなど、啓発と交流の場づくりを行ってきましたが、市原市の障害者に対する合理的配慮に関する認知度や差別解消に向けた意識の向上は、どの程度図られてきたのでしょうか。現在までの総括的な評価をお聞かせください。
答弁 保健福祉部長 障がい者支援課
市では、さまざまな行事を通じて、障がい者と一般市民との交流を促進するほか、障がい者週間におけるパネル展示や広報紙を活用し、障がい者への理解を促す啓発活動に取り組んでおります。
市 民意識について、先ほどの市長答弁におきまして、その一部をご紹介させていただきましたが、昨年度、第3次障がい者基本計画の見直しの際に、市民アンケー トを実施いたしました。そのなかで、「障がい者への理解は深まってきていると思うか」との質問に対する一般市民からの回答では、「かなり深まってきたと思 う」と「少し深まってきたと思う」が、合わせて、51.7%となっており、2年前の調査に比べて、1.5%向上しております。
しかしながら同じ設問に対する、障がい者からの回答では、今回調査が34.7%で、前回調査との比較では、3.4%低下しており、一般市民との間で意識のうえで差があることが伺えます。
また、この内容をみると、身体・知的・精神のそれぞれの障がい者の間での差異も見られますことから、効果的な啓発活動のあり方について検討し、多くの人が障がい者に対する理解を深められるよう、努めてまいります。
この後の質問にもつながることですが、私はまず行政が範を示すという足元からの取り組みが、何よりも市民意識の醸成につながる有効な施策だと思っています。
基本的人権は誰もが享有(きょうゆう)しているものであるから、障害者に関する取り組みは、例えばいじめについて考える、高齢者への配慮について考えるなど、多方面につながるものである。さらなる取り組みをお願いします。
・相談支援について
障害者基本法第23条に規定されている相談体制の整備についてお聞きします。
市原市では現在相談支援として、身体・知的・精神の3分野それぞれについて市内の3事業所に委託し、専門職員を配置する事業を実施していますが、各分野を 統括し総合的・専門的な相談に応ずることができる基幹相談支援センターについては、当初の障害者福祉計画上では昨年度までに設置される予定が、未だに進ん でいません。障害者サービスが「措置」から「契約」へと大きく制度変更されて以降、行政窓口が相談業務から後退しています。「民民の契約を尊重する」「個 人情報保護を厳守する」などの理由で、窓口を訪れた相談者には事業所リストが 配られるだけで、「詳細な情報は直接事業所に確認してください」という状態になっていきました。
さらに、具体的な業務の話だが、「療育手 帳」担当、「自立支援給付」担当、「補装具」担当など、申請書類ごとの縦割りになっており、現在、庁内窓口には「よろず相談」の担当者がいません。民間事 業所に相談支援事業を委託はしていますが、現在の状態では責任の所在が不明確で、情報がきちんとフィードバックされる場所がありません。民間事業所が協力 して役所内に総合相談の窓口を開くという取り組みを行っている自治体も実際にあるようですが、これもちょっと違う気がします。市民からの相談をきちんと聞 いて、必要な施策につないでいくのは行政の仕事です。 市民の目から見れば、役所ほど知名度と信用度の高い場所は他にありません。
たとえば一つのやり方として、業務分担を申請事務ごとではなく地区担当制に変えることで、窓口に行けばいつも顔の知った職員が出てくれるという体制を確保している自治体もある。基幹相談支援センターであれ何であれ、いずれにしても業務の中に「相談支援」をきちんと位置付け、市民に対し担当者の顔が見える体制を構築していただきたと思いますが、いかがでしょうか。
答弁 保健福祉部長 障がい者支援課
現在、本市においては、議員ご指摘のとおり、相談業務については、3つの分野ごとに民間事業所に委託しており、いわゆるワンストップサービスとしての相談 窓口がない状況でございます。この体制につきましては、3つの分野の専門性を活かした対応という観点もありますが、総合的な対応も必要となっているところ でもあります。
したがいまして、市としましても、一つの窓口で利用者が安心して継続的に相談や支援を受けられる体制の構築は必要であると考えております。
なお、第Ⅳ期市原市障がい福祉計画において、平成29年度までに基幹相談支援センターの設置を目指すこととしておりますことから、センターの設置方法等と合わせ、検討してまいります。
一人の市民が、人生のステージごと、それこそ一生の間に何度も必要になるのが、障害者相談支援である。市民目線で見て、安心して利用できる仕組みは何か、という発想で取り組んでいただくよう要望する。
・当事者なしで当事者のことを決めないで
次に、障害者基本法第10条第2項に規定される当事者の意見の反映についてお聞きします。
現在、障害者支援協議会では、療育支援など児童に対する対策が遅れているという指摘が多く挙がっています。私も、法定の児童発達支援センターが未だに設置されないことなどを含め、確かにその通りだと日々感じているところです。そこでまずは幼い障害児を育てている世代の意見をもっと反映する仕組みが必要だと思いますが、今後どのように取り組まれるのか、ご見解をお聞かせください。
答弁 保健福祉部長 障がい者支援課
心身の機能に障がいのある、または、発達の気になる児童に対し、成長を促し、生活習慣を身につける支援を行うことは、非常に重要であると認識しております。
現在、市内の関係団体で組織する「市原市障がい者支援協議会」では、療育支援に関わる、新たな専門部会の設置を検討しているところであり、この中で、保護者へのアンケート等の実施に関する意見も出されております。
市といたしましては、同協議会および専門部会をはじめとする関係機関との連携を図り、障がい児を育てる若い世代の意見やニーズを的確に把握し、より適切な支援を受けられる体制づくりを進めてまいりたいと考えております。
障 害者の自立生活運動の中で、世界中で使われているスローガンに「Nothing about us, without us(私たちぬきに私たちのことを決めないで)」というものがあります。「合理的配慮の欠如は差別だ」と言われても、健常者にしてみれば、何が配慮に欠け ているのか気付かないものです。合理的配慮の出発点は、まず当事者の声をよく聞くことだと思います。「障害者のために環境を整えてあげましょう」ではな く、障害者一人ひとりがどういう配慮を望んでいるかを伝えられる環境を十分に保障するよう、努めていただきたいと思います。
・庁内における障害者雇用の取り組みについて
・「いちはらスマイルカンパニー」表彰事業について
H25(2013) 年の障害者雇用促進法の改正など、国の一連の取り組みの強化によって、近年の障害者の就労状況は上向きの傾向にあると言われています。私はH25年の本会 議で、障害者雇用に積極的な地域の企業を何らかの形で応援する仕組みを作っていただくよう要望しましたが、このほど「いちはらスマイルカンパニー」表彰事 業が創設され、大変喜ばしく思っています。
・職員の採用における差別について
しかし、一般的に身体障害者の雇用は一定程度進んでいるものの、知的・精神の分野についてはまだまだ遅れをとっているのが現状です。
市原市の障害者雇用は、現時点で市長部局2.25%、教育委員会2.10%と法定ギリギリセーフという状況であるが、もっぱら身体障害者だけを対象とした障害者別募集です。
確 かに、厚労省から都道府県労働局長への通達では「障害者のみを対象とする採用で、障害種別を限定して募集を行うことは差別に該当しない」とあるが、また一 方で「応募者の持つ能力・適正が職務を遂行できるか否かを基準として、できる限り障害種別に関わりなく公正に応募の機会を与えることが重要」とも指摘され ています。
今後は、国の示す方向性に沿って、障害者の応募の機会を広げることが望ましいと思うが、ご見解をお聞かせください。
答弁 市長
市では、障害者の雇用の促進等に関する法律で義務付けられております「法定雇用率」を遵守するため、障がい者を新たに採用する必要が生じた場合に、障がいの有無に関わらず受験できる一般の募集枠とは別に、障がい者枠での採用試験を実施しております。
こ の障がい者枠の採用試験におきましては、一般枠と同様に、採用後における事務処理能力等を見極めるため、人物性行、適性、一般知識、適応性などの総合的な 判定を実施しております。これまで知的障がい者等の募集は見送ってまいりましたが、私は、市政運営に対する基本的な考え方として「安心生活都市の実現」を 掲げております。
この中で、障がい者や生活困窮者など、誰もが安定的な生活を送れるよう、就労等の自立支援にこれまで以上に力を注ぐとさせていただきました。
そこで、知的障がい者等が社会参画し、自立して生活ができる共生社会の実現として、次回、障がい者枠の採用試験を実施する場合には、近隣他市に先駆けて、 知的障がい者も募集の対象に含めてまいります。障がい者の自立支援を考えれば、市が先導的な取り組みを推進することは、市内の民間事業者へも同様の取り組 みを促すものと思われます。市長のご決断を大変評価するものであります。
・チャレンジ雇用制度について
ま た、市原市では、H23年度から知的障害者・精神障害者などを非常勤職員として雇用するチャレンジ雇用制度に取り組んでいます。同制度は、1~3年の業務 経験を踏まえて一般企業への就職へつなげるという障害者ご本人への直接的な支援に加え、職員が障害者と共に働くことで理解を深め、それを業務の質の向上に も生かすという、また別の大きな意義があります。
そこでお聞きします。5年目となる同制度の取り組みによって、庁内の環境はどう変化したか。また、たとえば研修の項目に取り入れるなど、さらに職員の意識を向上させるための工夫はされているのか。お答えください。
答弁 保健福祉部長 障がい者支援課
チャ レンジ雇用は、平成23年10月より開始いたしましたが、当時は、職員が障がい者と一緒に働いた経験がなく、どのような業務ができるのか、業務を依頼する ことに対する不安や戸惑いの声も聞かれました。しかし、現在では、依頼のあった課の職員からは、チャレンジ雇用職員の仕事振りに対して、真面目で期待以上 の成果があり、継続して利用したいという意見も聞かれております。また、今年度からは、より一般就労に近い形で経験を積ませるため、専門指導員を配置せ ず、障がい者が直接各課へ出向き、市職員の指示・監督の下で従事することを原則としております。このため、職員にとりましても、知的障がい者や精神障がい 者に、職場の同僚として直接、接することとなるため、障がいへの理解を深めるきっかけとなっているものと考えております。
答弁 総務部長 人事課
庁内におけるチャレンジ雇用の取組により、職場で知的障がい者や精神障がい者と共に働くことに対する職員の意識は変わりつつあるものと認識しております。 このような中、国は、平成28年4月1日の障害者差別解消法の施行に向け、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を本年2月に閣議決定 し、行政機関や民間事業所に対し啓発等を実施しております。市といたしましては、庁内における知的障がい者等の雇用に対する職員意識の変化を的確に捉え、 今後一層の意識改革を進めていく必要があるものと考えております。現在、主任2年目の職員を対象に、人権研修を毎年実施し、障害者福祉を含めた人権意識の 醸成を図るとともに、市が市民向けに実施する「人権啓発講演会」や「精神疾患勉強会」への職員の参加を促しております。今後は、これらの取組に加え、障害 者差別の解消を図るための研修カリキュラムの充実など、国の基本方針に沿った、対応に努めてまいります。
・教育行政における障害者差別解消法に係る取り組みについて
・公立幼稚園の入園資格について
「障害者差別解消法」は、障害者基本法に基づき、直接差別、あるいは合理的配慮を怠るなどの間接差別を解消するために、行政や事業者に対し具体的取組を求め、そのルールを定めたもので、H25年に成立、施行は来年の4月に迫っています。ところで間もなく公立幼稚園の募集の時期を迎えるが、現時点で入園資格に「集団生活ができる幼児」という規定を設けているのは、千葉市、袖ヶ浦市など近隣はもちろん、私が調べた範囲では、市原市以外に全く見当たりません。2年前にも本会議で質問させていただきましたが、このように発達に遅れのある子供を実質的に排除する規定は、どう考えても障害者差別解消法にマッチしないと感じています。ぜひ改善を検討していただきたのですが、いかがでしょうか。
答弁 学校教育部長 学校教育課
公立幼稚園の昨年度までの募集要項では、施設の状況や職員体制などにより、困難な場合もあることから、「集団生活ができる幼児」を応募資格の一つとしてお りました。平成28年4月から施行されます障害者差別解消法では、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目的としていることから、法の趣旨 をふまえ、今後検討してまいります。
《要望》:現在、子ども・子育て支援新制度のなか で、公立幼稚園のあり方や統廃合等が検討されているのは承知していますが、どんな形であれ社会にモデルを示すのが公の役割だと思います。障害児が健常児と 共に教育を受けられる機会を保証することは、今や「善意」や「理念」といった抽象的な段階ではなく、れっきとした「法令遵守」という段階に入っています。
従って、応募規定に関してはシンプルに生年月日と住所地のみの規定にしていただくよう要望します。
・早期からの教育相談・支援体制構築事業について
次に、教育センターを中心に今年度から「早期からの教育相談・支援体制構築事業」というモデル事業が 始められています。これは、3名の就学支援コーディネーターが地域に出向き、発達に不安のある幼児について、早い段階から就学に向けての情報提供や支援を 行うというものです。幼い障害児を育てている保護者はまず例外なく皆、将来の就学先について漠然とした大きな不安を抱えています。今回このモデル事業に よって、まずは保護者の不安が解消され、学校側の受け入れ態勢がよりスムーズに整備されることを期待しています。
ただ事業を進める上で一点指摘したいことがあります。この事業はそもそも、障害がある者とない者が共に学ぶ仕組み、つまり「インクルーシブ教育システム」において、合理的配慮やその基盤となる基礎的環境整備を構築するために、文科省から打ち出されたものです。学校側にどんな子供でも受け入れるという障害者差別解消法の理念が共有されていることが、この事業を進める上での前提となります。
実際に普通学級、特別支援学級、特別支援学校という選択肢があるなかで、学校側に受け入れる気持ちや合理的配慮が無ければ、結局保護者の選ぶ道は限られてしまいます。一歩間違えば、この事業でかえって障害児の振り分けが進むことになってしまうのではないかと危惧していますが、この点について今後どのように対応されるのか、お聞かせください。
答弁 学校教育部長 教育センター
「早期からの教育相談・支援体制構築事業」は、特別な支援が必要となる可能性のある子ども及びその保護者に対し、早期から情報の提供や相談会の実施等に取 り組み、柔軟できめ細かな対応ができる一貫した支援体制を構築するための事業であります。本市では、就学支援コーディネーターを三歳児健康診査等に派遣し 相談活動を行い、保護者を支援しております。また、学校が必要な合理的配慮を行う準備ができるよう、就学支援コーディネーターをとおし、情報を共有するな ど、保護者と学校の連携を図っております。本事業を推進するにあたっては、早期の振り分けにならないよう努めてまいります。
《要望》 せっかくのモデル事業が方向性を誤らないよう、当局には、あくまでも児童や保護者の立場に立って、教育現場への働きかけを行っていただきたい。その取り組みの具体案として、障害者差別解消法に基づく学校現場での対応要領の作成も、ぜひ進めていただくよう要望します
最後に。メガネが無かった時代は、近視の人も障害者でした。障害は、社会のありようによって変化するものです。このように、「障害は個人の中にある」のではなく「社会的障壁によって生じる」という概念は、今や国際的な常識となっています。
当局には、ぜひこのことを念頭に、共生社会の実現に取り組んでいただきたいと思います。
2.文化の香り高いまちづくりについて
・文化の振興について
・市原市民憲章と市民の不安
周知のように、S63年に制定された市原市民憲章では「ふるさと市原を愛し、養老川がはぐくんだ自然の恵みと先人の培った上総の国の伝統を守り伝え、輝かしい未来を信じ、 自然と歴史を大切にし、文化の香り高いまちをつくります」と高らかに謳われています。
しかし、市の財政が厳しさを増すにつれ、より効率的で即効性のある施策が求められる可能性が高い状況にあって、市民憲章の精神が今後も確実に継承されるの か、私は不安を覚えている市民は決して少なくないと思います。というのも、過去の本会議でもたびたび指摘させていただいているように、「市原市は全国有数 の歴史遺産を有しているのに、その認識が低く、有効活用されていない」あるいは「政策の中に、本来まちづくりの根底にあるはずの文化振興策が見えない」と いう市民の声を伺うことが多いからです。
・市民の文化への無関心のエピソード
昨年「中房総国際芸術祭いちはらアートミックス」という芸術をテーマにした一大イベントが繰り広げられたが、市民の注目度は今一つという結果に終わった。プロモーション活動はそれなりに行っていたと思うが、なぜ市民に認知されなかったのか。
また、私が以前知り合いのジャーナリストに、「市原市は他の市町村と何が一番違うと感じますか?」と尋ねたところ、「たとえば、他の市で大ホールを満杯に できるレベルの文化人の講演会が、市原市ではガラガラ。伝統芸能の催し物にも集まりません。ここが最も驚いた点ですね」という答えが返ってきたこともあり ます。
もし今、市原市民の文化に対する関心が薄れ、その結果故郷への誇りと愛着が損なわれるとすれば、今後の市原のまちづくりに大きな影を落としかねません。
そこで小出市長にお尋ねする。市原市の文化について、どう捉えてらっしゃるのか。これまでの文化行政についてどう考え、どのような文化振興策を打ち出されるのか。お聞かせください。
答弁 市長
私は、新たに策定いたします総合計画の基本的な考え方の中で、本市の歴史、文化、芸術の振興に積極的に取り組む姿勢をお示ししました。
本市には、豊かな自然と悠久の歴史の中で育まれてきた、数多くの歴史遺産をはじめ、地域に根付いた祭りや踊りなど、多くの誇れる文化がございます。
この土地で生まれ、受け継がれてきたふるさと市原の文化は、私たち市民にとって、郷土愛や誇り、精神的な支えともなります。
これまでの行政の取組は、こうした本市の文化の特徴を踏まえ、推進してきたものでありますが、本市の文化の魅力が、市民の皆さまに十分ご理解いただけていない、身近に感じていただけていないのではないかと考えております。
私は、本市の誇るべき文化を、地域の宝として発信していくとともに、地域の魅力を高める重要な資源として積極的に活用し、夢と誇りを持ち続けられるまちづくりを推進してまいります。
《意見》 文化に関する施策の影響は幅広く、教育分野はもちろん、高齢者の生きがいづくりなどの福祉分野、観光分野、広報分野、産業振興分野など、部局を横断した総 合的な取り組みが必要です。まさに小出市長が目指しておられる総合行政で、文化を土台にしたまちづくりを目指していただきたいと思います。