平成29年度 第2回市原市議会定例会
代表質問:小沢みか
市民ネットワークは、前回の定例議会で、庁舎強靭化対策については決して拙速に進めず、公共資産マネジメントと整合性を図るよう強く要望してきました。このたび、当初示された行程を見直して、私どもの要望に沿った方向性を示していただいたことを、大変評価しています。
今後も、本庁舎も数ある公共施設の一つとして、その将来の整備方針については、長期的な視点で市民との合意を得ながら検討していただくようお願い申し上げます。
1.保健医療政策について
(1)「いつの間にか健康になれるまち」について
・2035年を見据えて 計画の理念について(パブリックヘルス)
「いつの間にか健康になれるまち」とは、このたび策定された個別計画「いちはら健倖まちづくりプラン」に掲げられている基本理念であります。
保健医療改革は、2025 年を見据えた地域包括ケアシステムの実施が大きな節目とされていますが、その先の団塊ジュニアの世代が 65 歳に到達し始める 2035 年頃までに、さらなる発展形が求められています。従って、その将来ビジョンとそれに基づいた中長期的戦略、地道な努力の積み重ねが必要です。
さて「健倖まちづくりプラン」の健倖の倖は、人偏に幸(さち)という漢字で表されています。単に長生きだけではありません、そこに幸福を感じることが出来る人生、逆に言えば、幸福を感じる日々の暮らしこそが健康を創るという意味と捉えることが出来ます。大いに共感するところです。
さらに、基本理念である「いつの間にか健康になれるまち」。これはつまり、これまでの個人へのアプローチによって各々の健康づくりの努力を促すという考え方から、社会環境へのアプローチによって、その環境に身を置いた市民が知らず知らずのうちに健康に良い生活スタイルになるという「公共の健康(パブリックヘルス)」の考え方へ大きく転換させたものです。
事実この概念は、最近の知見で、あらゆる検診や治療などよりも健康寿命の延伸に確実に効果があると、国内外で疫学的に証明されています。
・理念の実効性の確保について
しかし、この全く新しい理念のもとで、総合目標である「健康寿命の延伸」を今後どう具現化していくのか、ということこそが肝心です。
前計画までの事業の主流は、各種健診、リーフレットなどによる情報発信や講座の開催など、まさに個人の自助努力への働きかけでした。
理念が変わればおのずと戦略も変わるはずです。今後はどのような施策によって「いつのまにか健康になれるまち」を目指すのか、その行程を含めた具体的な戦略をお聞かせください。
答弁 (保健福祉部長)
これまで、我が国の健康政策は、栄養摂取や運動の励行など、健康づくりに取り組もうとする個人の行動を支援することを重視してまいりましたが、最近では、時間的にゆとりのない人や、健康づくりに無関心な人も含め、社会全体として健康を守る環境を整備していこうとする方向にシフトしております。
こうした方向性を踏まえ、このたび策定した「いちはら健倖まちづくりプラン」におきましては、健康に関心がある人もそうでない人も無意識に健康的な行動がとれるような、「いつの間にか健康になれるまち」を目指すことといたしました。
具体的な施策展開の例といたしましては、健康づくりへの動機付けとなるポイント制度、運動しやすい公園や歩きやすい道路の整備、高齢者サロン等における健康体操の普及、市民に健康情報を発信するいちはら健康大使の育成、公共施設等における受動喫煙防止対策、地産地消や健康食の普及など、さまざまな分野にわたりますので、今後、優先順位を付けながら、段階的に取り組む必要があるものと考えております。
「いつの間にか健康になれるまち」の実現に向けましては、保健や福祉分野だけでなく、まちづくりにかかわる様々な施策を健康という視点で考え直していくことが必要となりますので、庁内の各部署や関係団体と連携しながら、積極的に取り組んでまいります。
計画には例えば「運動等活動しやすい公園、サイクリングロードを整備します」とありますが、今後このようなハード面の整備も健康づくりの視点から進められていくのでしょうか。
パブリックヘルスの実現のためには、保健医療部門以外の例えばまちづくり、環境、経済、子育て、都市整備など、あらゆる部門でその理念を共有する必要があります。そこで、市長に伺います。庁内横断的な意識の共有について、現状や展望などご見解をお聞かせください。
答弁 (市長)
「いちはら健倖まちづくりプラン」は、総合計画の基本計画と連動する個別計画と位置づけ、「いつの間にか健康になれるまち」の実現をめざしております。
私は、かねてから申し上げているとおり、行政の計画は作ることが目的ではなく、実行して初めて意味があるものであると考えております。
そこで、総合計画に基づく施策を具現化するにあたり、全庁横断的な組織による推進体制の強化を図るため、私が本部長となり、庁内全ての部局長等によって構成する「変革創造本部」を設置したところであります。
この本部を中心に、総合行政の観点から様々な議論や施策の検証を重ね、教育、市民の社会参加、都市整備、観光など、市民の健康づくりに結びつくような取り組みについて、庁内横断的に取り組んでまいります。
計画の中では、指標として、65才平均自立期間の延伸が掲げられています。目標値は「延伸」としか書かれていませんが、ぜひ国の平均値より0.1ポイントでも上回るように、全庁一丸となって取り組まれるようお願いします。
(2)健康格差の縮小について
市原市が抱える健康格差とは?
これは国の計画「第2次健康日本21」の基本柱の一つで、同計画では「社会環境の整備」によってこの実現を目指すとされ、「いちはら健倖まちづくりプラン」でも、総合目標として掲げられています。
一口に健康格差と言っても、地域格差、所得格差、雇用格差、教育格差など様々な背景が考えられます。例えば、東京都足立区の場合は、生活困窮世帯の子どもたちが食習慣・運動習慣・むし歯など、多くの点で一般世帯の子どもたちに比べて危機的状況にあるという問題を、調査を行って明らかにしています。
そこで伺います。市原市ではどのような健康格差が問題であると捉えているのでしょうか。
答弁 (保健福祉部長)
健康格差は、一般的には、「地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差」のことを言いますが、この「健倖まちづくりプラン」におきましては、健康に関心がある人とない人との間で、生じる健康格差の縮小という点に着目をしております。
健康に無関心な人達も、普段の生活のなかで行動したことが、結果的に健康に良かった、というような「しかけ」を盛り込んだ社会環境の整備に取り組むことで、健康格差の縮小につなげてまいりたいと考えております。
また、もう一つの視点といたしまして、健康格差には、妊娠期から子ども、青年、壮年、老年期までの生涯にわたる生活の状態や、各世代における経験等が影響をしてまいります。
このことから、大人になってからの生活だけでなく子どもの頃からの生活習慣にも着目し、長期的な視点に立ち、ライフステージに応じた健康づくりを推進してまいります
・具値的な対策は
例えば、国保事業実施計画(データヘルス計画)では、レセプトデータ等を活用して被保険者をリスク分類し、ターゲットを絞った対策を行っています。しかし、その一方で生活保護など社会的にリスクが高いカテゴリーに特化したアプローチは、手つかずのままです。
これまで行われてきた不特定多数へのキャンペーンや検診などの事業は、健康に関心のある人には響きますが、そうでない人には届かないので、やればやるほど格差が広がるという落とし穴があります。
従って、健康格差の解消のためには、事業展開のパターンをこれまでと変えていく必要があると思いますが、今後具体的にどのようにアプローチしていくのか、お聞かせください。
答弁 (保健福祉部長)
まず、はじめに、庁内職員の意識改革という点で、新たな取り組みの一例として申し上げます。今回の「健倖まちづくりプラン」策定にあたりまして、庁内の関係課長による検討会議を開催いたしましたが、この会議に先立ち、東京大学から講師をお招きし、「健康なまちづくりにおける部署間連携の必要性について」と題した講演をしていただき、その後、グループワークを行いながら、計画案の検討を進めました。
こうした試みにより、認識の共有化が図られ、新たな事業提案にもつながったものと考えており、今後も、庁内の各部署が、健康を取り巻く社会環境の整備に取り組めるよう、連携の強化を図ってまいります。
さらに、庁外へのアプローチといたしまして健康につながる社会環境整備のひとつに、「地域社会とのつながり」というものが挙げられます。
周囲の人への信頼感が高い地域に住む人の方が、そうでない地域に住む人よりも、要介護になる率が低いという調査結果があります。これを言い換えれば、人々との絆が深いほど、健康であるということがわかっております。
地域における人と人とのつながりが「地域力」となって、個人や地域の健康課題の解決にも役立つことが期待されますので、「いちはら健康大使」などのボランティア活動や、地域で活動する各種団体の皆様との連携による取り組みを進めていきたいと思っております。
まずは健康格差を客観的なデータで「見える化」することが第1歩。
(3)エビデンス(科学的根拠)に基づいた事業の展開について
行政部門の中でも特に保健医療分野は、近年長期にわたる疫学調査の結果が次々と明らかになり、さらにビッグデータを活用した分析が爆発的に進んだことで、様々なエビデンスが蓄積されるようになりました。
「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことが行政の使命である以上、エビデンスの活用によって費用対効果の高い事業を優先して行うことは当然であるし、一方で根拠の薄い施策は過剰な早期診断や不必要な予防的介入につながって逆効果となる可能性もあります。
一例をあげると、国立がん研究センターの予防研究グループが、がん検診の種類ごとに推奨レベルを5つのグレードで公表しています。それによると、数あるがん検診の中で、死亡率減少効果が高く、かつその効果がリスクを大きく上回るとして強く推奨しているのは、驚くことに大腸がんの便潜血検査のみです。市は現在6種類のがん検診に対し毎年約3億円の一般財源を投じていますが、その中には全く効果がないと判定された検診が含まれているのも事実です。
そこで伺います。保健医療分野での政策形成や財源の配分にあたり、当局ではどの程度エビデンスを意識しているのか。また、実際にどのように事業展開に反映されているのかお聞かせください。
答弁 (保健福祉部長)
科学的あるいは医学的に蓄積された根拠に基づき、市民に対する保健事業や健康教育を効果的かつ効率的に展開するという姿勢は、極めて重要であると考えております。
市が実施しております保健事業のうち、エビデンスに基づく事業の例を挙げますと、ただいま議員からもご紹介がありましたが、大腸がん検診等のがん検診におきましては、国の指針で定められた、死亡率減少効果の科学的根拠に基づく検診方法を用い、適切な精度管理の下で実施することにより、一定の成果を挙げております。
また、国民健康保険のデータヘルス計画に掲げた保健事業では、レセプトおよび特定健診データの分析結果を基に、生活習慣病予防等に関する、既知の、すでに知られているエビデンスを活用し、本市の被保険者の実情に即した事業に取り組んでおります。
しかしながら、市が行う全ての保健事業がエビデンスを背景に実施しているという状況にはなく、アンケートや各種統計資料に基づく目標値を設定しているほか、類似自治体の実績等を参考としながら、各事業の執行にあたっているところであります。
今後は、可能な限り、最新の知見の収集に努め、「健倖まちづくりプラン」に掲げた健康づくり事業の具現化に努めてまいります。
エビデンスを活用することで、市民によりわかりやすくメリハリのある効率的な財源配分が可能になります。ぜひ積極的に進めて頂きたいと思います。
(4)いちはらポイント制度の活用について
(5)薬局の活用と医薬品の適正使用の推進について
(6)子ども医療費助成制度について
(4)~(6)省略
(7)受動喫煙のない社会を目指す取り組みについて
・市の取り組み・現状と今後
2010年に発出された厚労省健康局長通知によれば、健康増進法第25条を踏まえ、公共的な空間については原則全面禁煙であるべき、また子どもの利用が想定される公共的な空間は屋外も受動喫煙防止のための配慮が必要としています。
市はこれまでたばこ対策として、子どもたちへの喫煙防止教育、乳幼児健診や健康まつりなどの機会を捉えた啓発活動などを行ってきたが、肝心の公共施設における取組み状況は、昨年度、公共施設70施設のうち60施設が敷地内禁煙未実施で、うち3施設は建物内禁煙すら未実施。さらに幼稚園1園、小学校1校、中学校7校も未だ敷地内禁煙を実施していません。
「健倖まちづくりプラン」では、前計画より一歩踏み込んで「受動喫煙のない社会を目指す」という項目が主要施策に位置づけられています。今後、具体的にどのように実効性のある対策を取られるのか、お聞かせください。
答弁 (保健福祉部長)
「健倖まちづくりプラン」におきましては、市民の立場にたった目標として「たばこについて正しく理解し、たばこの害を受けないようにする」ことを掲げたところであります。
具体的な対策でございますが、これまで進めてまいりました公共施設等における敷地内や建物内の禁煙状況の調査に加えまして、屋外に喫煙スペースが設置されている場合には、その場所等についても詳細に調査し、改善への取り組みを進めております。
また、千葉県市原保健所が事務局となり、市医師会や商工会議所等の関係機関により構成されている「市原地域・職域連携推進協議会」におきまして、今後5年間の活動目標として、「たばこ対策の推進」が掲げられたところであります。
市といたしましては、今後は、県をはじめとする当該協議会の構成団体と連携をしながら、市内各事業所における受動喫煙防止対策の充実や、市民への啓発などの対策を進めてまいりたいと考えております。
・せめて路上喫煙防止条例の制定を
受動喫煙防止対策は、いうまでもなく疾病や死亡のリスクの減少やその費用対効果に対するエビデンスが確立していますが、日本の取り組みはWHOの評価基準の最低ランクで、禁煙後進国と言われています。政府は東京オリンピック・パラリンピックやその前年のラグビーワールドカップに向けて、早急に対策強化の法整備を図ろうとしているものの、なかなか進んでいません。
市原市においては、NZのホストタウン登録、国際大会キャンプ誘致、世界に一番近い里山プロジェクトなど、国際交流によるレガシーの創出に取り組もうとしていますが、そうであれば、現在の受動喫煙対策では踏み込みが甘いのではないでしょうか。
例えば、朝の通勤時間帯のJR姉ヶ崎駅東口バスターミナル一帯の公共空間。「スポーツ健康都市宣言のまち」という看板の目の前で、喫煙する人が後を絶たない、という何とも矛盾した光景が常態化しています。周囲のあまりの煙たさに、たまりかねた通行人から「何とかしてくれ」と苦情を頂いたこともあります。
改正健康増進法案では屋内禁煙対策が焦点となっていますが、その一方で既に多くの自治体がいわゆる「路上喫煙防止条例」を制定しています。環境面からポイ捨て禁止条例に組み込むなど様々な形をとっているのですが、ほとんどが道路、駅前広場、バス停など、屋外の公共の用に供する場所を指定区域とし、喫煙に対し過料徴収を定めています。
市原市も同様に取り組む必要があるのではないでしょうか。ご見解をお聞かせください。
答弁 (保健福祉部長)
議員からご指摘の、いわゆる路上喫煙を規制する条例につきましては、県内の自治体におきましても、駅周辺などを対象区域として、主に、環境保護や歩行者の安全確保などの観点から、制定している例がございます。
本市では、「市原市ポイ捨て行為の防止に関する条例」において、喫煙する者の責務として、屋外で喫煙をする場合は、吸い殻入れを携帯し、移動しながら喫煙しないことなどを定めております。
屋外での喫煙防止対策につきましては、市民の個人的な生活の場面の中で、それをどのように規制すべきであるかについて、さまざまな角度からの検討が必要になるものと思われますが、今後も引き続き、情報収集を行い、関係部署と連携して、研究をしてまいります。
市原市を訪れる人々へのおもてなしの向上のためにも、徹底した環境整備を早急に進めて頂きたい。
(8)QOD(quality of death)の向上について
・QODの意味と国や県の動き
QOL(生活の質)は知っていますが、QODは聞いたことが無いという方がまだ多いのではないでしょうか。2013年に出された社会保障制度国民会議の報告書によれば、QODの向上とはすなわち「その時が来たらより納得し満足できる最期を迎えることが出来るよう支援すること」です。
例えば終末期の高齢者が自宅や施設で意識がなくなった時、慌てて救急車が呼ばれ、希望と異なる高度救命措置が施されてしまう。あるいは「延命処置どうしますか」と聞かれても決められず、結局「先生にお任せします」となる現状があります。
厚労省が2015年に公表した中長期政策「保健医療2035」では、終末期に関する保険者や自治体の役割として、望まない医療を受けないことや在宅療養を選択できるなどQOD向上のための取組の推進や、啓発・教育活動を行う体制の確立の必要性が示されました。今年4月には日本臨床救急医学会が、本人が蘇生を望まない意思を確認できた場合、救急隊員が蘇生措置の実施を判断するための指針を公表しました。千葉県は「最期まで自分らしく生きる」という動画配信やシンポジウム開催など、QODに関する情報を積極的に提供しています。
・市原市の死者数増加、市の考えは
市原市内の70歳以上の年間死亡者数は現在約2200名。団塊ジュニアが高齢者となる2035年過ぎには、1.7倍の3700名という推計が出ている。20年の間に、未だ経験したことのない多死社会が訪れるということである。
現在当局では、地域包括ケアシステムの構築に向けて在宅医療の推進に取り組んでいるところであるが、QODの向上もまさにその一環として取り組む課題ではないか。ご見解と今後の市の取り組みについて、ご答弁ください。
答弁 (保健福祉部長)
クォリティ・オブ・デスという言葉は、「死すべき運命にある人間の尊厳ある死」として整理されており、国では、「個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重され、人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を行うよう努める」との考え方を示しております。
2040年には死亡数がピークを迎えるとされており、議員からもご紹介がありましたが、いわゆる「多死社会」、多く死ぬ社会の到来が予測されるなか、人生の最終段階における医療およびケアのあり方について、先ずは関係者の間で共通理解を深めることが重要であると考えております。
このため市では、地域包括ケアシステム構築の取り組みにおける、在宅医療と介護の連携体制づくりの中で、看取りに至るまでの過程を視野に入れた在宅生活支援のあり方について、意見交換や研修会などを行っております。
また、今年1月には、「最期まで自分らしく生きるために」と題した、市民向けの講演会を開催し、人生の最終段階における医療のあり方や自宅での看取りについて、理解を深めていただく機会を設けました。
今後も引き続き、在宅医療と介護の連携体制づくりに努めると共に、市民の皆様に、より理解を深めていただくような取り組みにつきましても、進めてまいりたいと考えております。
・行政が取り組むべきこと
延命措置とは具体的にどんな医療行為なのか、医療や介護サービスを使いながらの在宅療養とは実際にどんな生活なのか。行政が筋道を示すことで、市民の不安や迷いを緩和することがまず重要です。もちろん、かかりつけ医や訪問看護の充実など、在宅での看取りを叶えるための体制整備も必要でしょう。また、近年は特養や老健の7割が「看取り介護」を実施している一方で、医療介入や事前の意思確認などの方針を定めていない施設が半数以上との厚労省のデータが出ています。私は今後この問題にも行政が積極的に関与する必要があると思います。
当局もぜひこれらの取り組みを進めていただくよう要望します。
2.女性職員の活躍の推進について
・管理的地位にある女性職員の割合について
H27年8月に女性活躍推進法が成立し、女性の活躍に関わる状況を把握し、行動計画を策定することが地方自治体も含む事業主に義務付けられ、市原市もH32年度までの5年間の行動計画を策定しました。
これまで何度も申し上げているように、今後市が女性に選ばれるまちづくりを進めるためには、女性の感性が市の施策や事業に十分生かされることが絶対条件です。
そこで、行動計画の分析項目にある管理的地位にある女性職員の割合について伺います。
H28年4月現在、目標値10%に対して5.3%。さらに、全国平均は13.8%、県平均は10.7%(39位)。予算審査特別委員会の分科会でも申し上げましたが、統計トレンドから推察すると、市原市は20年ぐらい遅れています。
その時のご答弁では、制度の周知が足りなかったからということでしたが、それだけでしょうか。改めて伺います。市原市の女性管理職の割合が他市町村に比べて非常に低いのは、一体どこに問題があるのでしょうか
答弁 (総務部長)
本市の平成29年度、先ほど28年度のお話がございましたが、本市の平成29年度における女性職員の課長級以上の管理職登用率は、3.9%となっており、議員ご指摘のとおり、近隣他市と比較して非常に低い状況にございます。
また、千葉県や他市において、部長職に女性職員を登用するなど、女性活躍推進に向けて積極的に取り組まれており、本市においては、この点からも近隣他市に追いついていない状況でございます。
本市の割合が低い理由としましては、総職員数に占める女性職員の割合が、近隣市の多くが40%を超えているのに対し、本市では、29.6%と、10%以上少ない状況にあることが要因の一つであると分析しております。
また、総務省の資料によりますと、女性職員の管理職登用率が伸びない理由といたしまして、
・育児等家庭における負担が大きく仕事と家庭の両立が難しい。
・2つ目として、仕事と家庭の両立などについて、目標となる先輩職員が身近にいない。
・3つ目として、上位職に求められる能力を発揮する自信がない。
などの指摘がなされておりますが、本市においても、これらの傾向が一定程度当てはまるものと分析しております。
しかしながら、男女雇用機会均等法の施行後に採用された女性職員が、少しずつではありますが、毎年、課長職等の管理職に登用されており、今後は増える見込みもございます。
引き続き、女性職員の管理職登用の着実な推進を念頭に、組織風土の改革を含めた人事施策を展開してまいります。
もっと先行きが暗くなるデータがある。将来の管理職である係長相当職の女性の割合。残念ながらこちらはさらにひどい状況です。H28年4月現在、県内市町村の平均は36.6%ですが、市原市は18.5%(243人中45人)。これはワースト3です。育成も思うように進まず、むしろ他市町村から引き離される結果となっています。この先10年は挽回できないということでしょうか?
当局ではこれまでも、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画や、男女共同参画基本計画の下で10年以上取り組んできたはずですが、成果が表れない根本的な原因はどこにあるのでしょうか?
H32年の目標10%達成のためには、現在6名の女性管理職を3年間で倍以上の15名に増やさなければならいのですが、この状況では相当厳しいのではないでしょうか。
ご見解をお聞かせください。
答弁 (総務部長)
女性活躍推進法に基づき策定いたしました「特定事業主行動計画」、これに掲げる「女性職員の課長級以上の管理職登用率を、平成32年度に10%にする」目標、これの達成につきましては、総職員数に占める女性職員の割合が低いこと、また、家庭の事情等により離職する職員がいること、を考えると、現実的には高いハードルであると捉えております。
この目標を達成するためには、これまでの延長線上ではなく、新たな取組により組織風土を変革するという気概を持って、戦略的な人事施策を展開する必要があるとの観点から、行動計画を精査し具体化に努めてまいります。
女性を選ばない自治体が、女性に選ばれる自治体になれるはずがありません。
これから具体的にどのようなポジティブアクションを起こされるのか。女性職員の計画的な育成手段を具体的に検討されているのか。行動計画によれば、人事配置の工夫やメンター制度、フレックスタイム制の導入も掲げられていますが、どの程度検討が進んでいるのでしょうか。
答弁 (総務部長)
これからのまちづくりにおいて、最も大切な力は「ひとの力」であり、人の力を最大限に発揮するためには、職員の力が重要でございます。
また、女性に選ばれるまちづくりなどの施策を具現化していくにあたっては、女性職員の発想と活躍がこれまた重要でございます。
そこで、女性職員の管理職への登用を促す計画的な育成を図るため、主な取組として2点を進めることとしております。
1点目は、女性職員の昇任に対する不安軽減とモチベーションアップを支援する研修を充実すること、2点目は、ワーク・ライフ・バランスの向上を推進し、安心して働き続けられる職場環境を整備することでございます。
具体的な取組として、研修につきましては、市町村職員中央研修所や千葉県自治研修センターなどの外部機関が実施するリーダー養成研修などへ積極的に派遣し、管理職として必要な政策形成能力やマネジメント能力の向上に努めてまいります。
2つ目の、安心して働き続けられる職場環境の整備につきましては、離職の原因と言われる介護や育児に係る各種支援制度を充実させてまいります。
また、各職場においては、管理職が率先して、定時退庁や休暇取得に対する周囲の理解やサポートを得られる組織風土を醸成してまいります。
今後、変革と創造による総合行政を推進していくためには、その原動力となる職員の働き方や組織風土、各種人事制度について、従来の発想から転換していく必要がございます。
そのため、具体的な制度検討としましては、例えば、採用後10年が経過するまでに、市政全体の取組を理解する機会となる管理部門を経験させるなど、人事配置上の工夫を行うとともに、メンター制度やフレックスタイムなどの新たな取組につきましても、国や先進自治体の例なども参考にしながら、導入について検討してまいります。
育成面、人事面、サポート面の三位一体改革が必要で、単なる「職場の雰囲気づくり」や「啓発」などは、ポジティブアクションとは呼べません。
・根本的な改善策は働き方改革
もちろん根本的な改善策はいわゆる働き方改革であることは言うまでもありません。
男性の育児参加は車の両輪です。育児の経験は、地域との関わりを持つことでスキルアップにもつながる絶好の機会であるという認識の共有に改めて務めていただきたいと思います。
私は、市原市が真に変革を遂げることが出来るかどうかは、決して大げさではなく女性がカギを握っていると思っています。ぜひ本腰を入れて取り組んでいただきたい。