平成30年度 第2回市原市議会定例会

個別質問 小沢みか

1.学校教育について
(1) 
部活動の在り方について
小学校水泳大会の廃止事件について

昨年度末、何人かの小学生の保護者から別々に同じ内容の相談が寄せられました。

学校から、今年度より市原市小学校水泳大会を廃止する旨の通知が来た。理由は「国の指導で飛び込みスタートが禁止となったので、これ以上の記録更新が期待できないから」というものでした。この場合、大会の廃止は水泳部の廃止も意味しています。

同通知は一時期ネットでも広がり、一部の保護者の間では「大会を目標に日々努力を重ねてきた子どもの気持ちを考えれば、こんな理屈は到底受け入れられない」と、大会廃止の撤回を求める署名活動も始まった。

そこで当局に伺ったところ、実は小規模校では選手の選出や指導に苦慮していた事、プールの安全・衛生管理などで教師に過重な負担がかかっていた事等の事情が理解できた。

このエピソードの先には、大会の参加も含めた小中学校の部活動全体の在り方を今後どうするのかという問題があります。これはいわゆる教師の働き方改革にも直結するものです。


国や県のガイドライン

ご承知のように、部活動は教師の長時間勤務の原因として最も多く挙げられています。

昨年12月、文部科学省が学校における働き方改革に関する中央教育審議会の中間報告を受けて緊急対策をとりまとめ、今年3月にはスポーツ庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を示しました。これにより県教育委員会のガイドラインも今月改定されたところです。教師や児童生徒の疲弊に加え、少子化が進む中で、従前の体制の維持は困難。速やかに抜本的な改革が必要であるとして、市に対しても対策を求めています。


水泳大会廃止の代替策は

ここで先ほどのエピソードに話を戻します。

保護者の皆さんは、このような社会情勢や教育現場の事情を理解し納得されたが、教育委員会に対し「それでも一方的に廃止するのではなく、何らかの代替策を講じてほしい」と要望されました。

そこで改めて、どう対応されたのかお聞かせください。

答弁 (学校教育部長)
小学校水泳大会が今年度より中止になったことから、水泳競技に興味・関心のある児童の活躍の場を設ける意味で、代替策について小学校校長会・小中学校体育連盟・教育委員会で協議いたしました。

協議の結果、市原市水泳協会と連携を図り、市原市が開催する市民大会水泳競技を各小学校で紹介し、入賞した児童を各小学校で表彰することといたしました。

すでに、各小学校では6月発行の学校便り等に掲載し、全学年を対象に周知したところであります。
今後も関係機関と連携を図ってまいります。

大会を水泳協会に移行したというご答弁でした。

私は市内の整形外科医院に隣接する薬局に勤務していますが、部活動で体を壊す小学生の多さに胸を痛めています。また、平日の大会に児童や顧問の教師が参加して授業に穴が開くという、本末転倒の事態が通例となっています。今回の水泳を皮切りに、本市もまずは小学校から、過熱化する部活動の在り方を見直す動きは、多くの市民も異論がないのではないでしょうか。

但し、その際に今回のような唐突で対応が後手に回るようなやり方では、理解は得られません。保護者には丁寧かつ率直に事情を説明し、子どもの気持ちに寄り添い受け皿を確保する努力を怠ることのないよう、まず苦言を呈したいと思います。


地域との連携について
さて、市原市の小中学校の部活動改革のこれまでの取り組みとしては、外部指導員の活用が挙げられます。徐々に広がってはいるようですが、顧問である教師との方針のくい違いや大会の引率、事故などの責任の所在はあくまでも顧問にある事などから、思ったほどには教師の負担軽減につながっていないという声が一般的です。

そこで、先ほどの小学校水泳大会の例のように、体育協会やスポーツクラブなど地域の団体との組織的な連携あるいは運営の移行も、国が勧める部活動改革の手段の一つに挙げられています。

そこで市原市の取り組みの現状と今後の方針についてお聞かせください。

答弁 (学校教育部長)
現在、本市の部活動は、少子化に伴う競技人口の減少や顧問となる教員の専門性、児童生徒や保護者のニーズの多様化などの課題を抱えております。

市では、これらの課題に対応するため、各種目において優れた指導力を有する50名以上の外部指導者の方々に活躍をいただいております。

更に、児童生徒が充実した部活動を行うために、学校部活動の意義や市原市の広域性などを十分に考慮しながら、体育協会や民間スポーツクラブ等との連携や地域との連携に努めてまいります。

先ほどの水泳大会の例のように、同じような大会を水泳協会でもやっているのであればお願いしていく。そうすることで協会の活動も広がる。ぜひ、様々な団体・地域資源と協議の場を設けていただきたい。

地域への移行の際に注意したいのは、部活動を学校から切り離しすぎてしまうと、教員の負担はなくなるが、どんな家庭環境の子どもでも移動することなく安心して取り組めるという、学校教育の一環としての部活動の意義が失われかねないという事です。


休養日などの運営基準について

そこで、改革の最も有効な手段の一つとして、活動時間や休養日などの基準を定め遵守するという運営の適正化がある。しかし現在市原市の基準は国・県のガイドラインより甘いうえ、実際は顧問の裁量に任されている(指導が徹底されていない)学校もあると伺っています。

これらについて今後改善されるのかどうか、お考えをお聞かせください。

答弁 (学校教育部長)
これまで教育委員会では、平成27年3月に「教職員の勤務実態改善に向けた方策」として、部活動の休養日について、平日は1日、週末は月のうち2日以上を休養日とすることを通知し、取り組んでまいりました。

さらに、昨年度は「教職員の業務改善検討委員会」を組織し、その提言を受け、平成30年1月に、改めて部活動の休養日について徹底を図っているところであります。

その後、本年3月に国から出されたガイドラインでは運動部活動の「適切な休養日等の設定」について、週当たり2日以上、平日・週末それぞれ少なくとも1日以上の休養日を設けること、1日の活動時間は、長くとも平日2時間程度、学校の休業日は3時間程度とすることと示されたところです。

さらに、本年6月には、国のガイドラインを受け、県教育委員会から「安全で充実した運動部活動のためのガイドライン」改訂版が示されたところであります。

教育委員会では本市の運動部活動の実態や国・県のガイドラインを踏まえ、「学校に係る運動部活動の方針」を、関係機関と連携を図りながら検討してまいります。

千葉県は全国で最も部活動の時間が長い。もともと部活動が過熱化しがちな文化があるため、現場任せでは是正は困難です。当局がしっかり旗を振って規制を徹底するよう求めます。


部活動指導員の活用は

もう一つの手段として、昨年4月に「部活動指導員」が学校教育法施行規則に定められた。学校職員として任用されることで顧問として大会の引率なども行えます、「外部」ではありません、言うなれば「内部指導員」です。国は今年度新たに予算を組んで、国・県各々三分の一ずつの補助事業を設けています。

この部活動指導員の活用について、市原市は昨年6月の本会議では調査研究するという消極的なご答弁でした。検討状況と今後の見通しをお聞かせください。

答弁 (学校教育部長)
部活動指導員については、平成29年度の「学校教育法施行規則」の一部改正による制度化を受け、県内でも一部の市において、導入に向けた動きが具体化しております。

教育委員会では、他市の担当者と情報交換を行うなど現在、引き続き調査・研究を進めているところです。

部活動指導員は、専門的な技術指導が期待できることや顧問の教員がいなくても部活動の練習や大会の引率が可能になることから、顧問の教員の負担軽減が期待される一方、各学校の部活動のニーズに合った指導者が確保できるかなどの課題が考えられます。

部活動指導員の導入は、今後の部活動の継続、維持・発展にむけて、その一助となり得ると認識していることから、今後、引き続き各学校のニーズを把握すると共に関係団体等との連携も視野に入れながら、検討してまいります。

ある顧問の実際を調べたところ、部活による超過勤務1ヶ月92時間。過労死ラインを優に超えている。これで授業に影響がないはずがありません。

この補助事業に現在県内では6市町村が手を上げています。なぜ市原市はできないのでしょうか。


市の方針を示せ

そもそも、部活動改革の必要性は少なくとも20年以上昔からずっと叫ばれていて、国からの通知なども度々出されていますが、市原市はまともな実態調査すら行っていない。熱心な教師や一部保護者との板挟みで、なかなか改革の一歩を踏み出せない事情もわからなくもないですが、ここで教育委員会として部活動改革の意志と方向性を明確に示す必要があるのではないでしょうか。
ご見解を伺います。

答弁 (学校教育部長)
学校での部活動は、これまで児童生徒と教職員の努力、保護者の皆様の理解と御協力、そして、地域の方々の支援や応援をいただく中で活発に行われてきました。

そして、児童生徒の心身における成長と豊かな学校生活の実現に大きな役割を果たし、多くの教育的な成果をあげてきました。

しかしながら、少子化に伴う競技人口の減少や顧問となる教員の専門性、児童生徒や保護者のニーズの多様化等により、従来と同様の運営体制では、部活動の維持が難しくなってきているという現状もあります。

あわせて、社会的に教職員の過重な勤務が指摘され、勤務の適正化が求められる中、本市においても教職員の多忙化を解消するための取組を進めていく必要があります。

このような中、国のガイドラインや県のガイドライン改訂版が示されるなど、従前行われてきた指導方針や練習方法について、科学的トレーニングの積極的な導入や複数校の生徒が参加する合同部活動の推進、そして、部活動指導員の導入等により、これまでの部活動に対する意識を改革し、今後も持続可能なものとしていくことが求められています。

これらの現状を踏まえ、教育委員会としましては、関係諸機関等と協議し、保護者や地域の理解が得られるよう、本市の児童生徒がスポーツに親しみ、豊かな学校生活を送るための、「学校に係る運動部活動の方針」を作成し、部活動の新たな取組を進めてまいります。

部活動の在り方は、この後の質問にも関係しますが、教師のみならず子どもの学力や生活環境に大きく影響を与える非常に需要な問題。ぜひ本気で取り組んでいただくよう要望します。

(2) 通学区域について

学区外就学の多さと共働き等による許可事由の不自然さ

この春ある中学校を訪れた際に「今年は学区外就学の生徒が33名入学した」というお話を耳にしました。以前から話には聞いていましたが、改めてその人数の多さに驚きました。

そこで市内全体を見わたすと、通学区域内の小学校の卒業生の2割以上が学区外に就学しているという区域が5カ所も存在し、うち2カ所は三人に1人が流出していました。

本市の学区外就学については取扱要綱が定められており、21項目ある事由(転居予定、地理的条件、いじめ・不登校など)の何れかに該当する場合に書類提出などの手続きを経て許可が下りる流れになっています。

そこで、特に中学校入学時に絞って申請事由の内訳を調べたところ、目立って多い事由の一つが「共働き等により、預託する親戚等又は勤務先の学区の学校を希望する場合」というものでした。そしてそれは、いくつかの特定の通学区域に集中する傾向がみられました。

大体、下校時に親が仕事で留守だから親戚や知人宅に預けるなどという理由が、小学生ならまだしも中学生、しかも特定の地域の家庭に多いのは、甚だ不自然ではないでしょうか。

因みに千葉市はこの事由が認められるのは小3まで。他の自治体もせいぜい小学生まで。もっと言えば、市原市は常勤の場合一度認められれば卒業まで有効ですが、他は毎年更新が必要な自治体がほとんどです。

そこで伺いますが、当局では申請時の書類(両親の在職証明、身元引受書、身元引受者の住民票)以外に、この事実確認をどのように行っているのでしょうか。

答弁 (学校教育部長)
共働きを要件とする学区外就学の趣旨は、児童生徒が学校から帰宅した際、監護する方がどなたもいらっしゃらないご家庭において、児童生徒を預かっていただくお宅がある学区の学校に就学するというものでございます。

手続きとしましては、保護者の就労を確認するために、勤務先の責任者がその就労を証明する「就労証明書」、さらに、児童生徒を預かる方が保護者代わりとしての責任を果たすことを約束する「身元引受書」、これらの書類の提出を求めております。

さらに、書類の記載内容のみでは学区外就学の必要性の判断に不十分な場合は、保護者からご家庭の実態を丁寧に聴き取るほか、勤務先に雇用形態、就業時間を確認する等、許可にあたっては慎重に事実確認を行っております。

 

越境の実態は 地域住民のお話から

役所としては、書類が整っていれば許可するという建前があるということだと思いますが、果たしてこれでいいのでしょうか。

毎年多くの生徒が流出している地域でお話を伺うと、例えば越境している生徒の多くが普通に自宅から登下校しており、預けられているという話は聞いたことが無いと口をそろえておっしゃる。

越境の真の理由の主なものは部活動で、例えば地域の小学生チームの実力のある生徒がよりよい環境を求めてごっそり越境する。ますます地元の学校の部活が弱体化し、果てには消滅するとう悪循環に陥っています。その他「学力が低いから」「小規模校だから」というマイナスイメージも、保護者の選択に大きな影響を与えている事もまた事実です。

またある地区では、越境している生徒が、木がうっそうと生い茂る赤道を通って登下校していると、付近の住民が心配されています。

私は、これら地元の実態を当局や学校が認識していないはずはないと思っています。認識していながら何の対策も取っていないとすれば、行政指導が適正に行われていないという意味で問題があるし、仮に認識していないとすればこれはこれで問題です。

改めて、このような実態を認識しているのかいないのか、また何らかの対策を講じたことがあれば、お聞かせください。

答弁 (学区教育部)
学区外就学の場合、あらかじめ学校が指定した通学路がある通常の学区内就学とは異なることから、その通学方法については、保護者による送迎を基本とする等、保護者において児童生徒の登下校時の安全を確保することが許可条件としております。

個々の通学方法については、学校までの距離、道路事情、交通量等は、案件ごとに様々であることから、最終的には、現場の状況を一番知る学校長が、保護者との協議を経て、安全な通学方法を確認・決定し、その実態把握につきましては、日頃、各学校現場において行っているところでございます。

なお、登下校時の安全確保がなされていない事実が判明した場合は、保護者に対し指導を行い、早急に児童生徒の通学時の安全を確保するよう対応してまいります。

私は通学路の安全性の問題を聞いているのではなく、学区外就学の真の理由を聞いているのです。

地域住民の声が届いていないのでしょうか。地域に開かれた、地域とともにある教育行政という理念と相反したご答弁ではないでしょうか。地元に不安、不満、混乱、分断を招いている現実を直視していただきたい。

行政には許可する責務がありますが、それ以上に許可した結果への責任も伴うのではないでしょうか。


学校規模適正化具体策との整合性について

先日当局より、学校規模適正化の実現に向けた具体的な方策案が示されました。そこでは今後適正規模を下回ると予測される中学校のうちの2校について「学区外就学の人数を現在の半数程度に減らすよう対策を講じ、適正規模の確保を目指す」としています。

しかし地元住民にしてみれば、「やはり許可が適正に行われていなかったという事か。今まで問題を放置しておきながら、今さらどう適正に戻すのか」と、当局の言動のブレに対し不信感を抱くのは明白である。今後「実態調査の実施や教職員・保護者等と協議し、対応策を検討する」としていますが、遅きに失すると言わざるを得ません。


市原市の方針は

結局、通学区域制度に対する市原市の方針が私たちに全く見えてこない、という点が一番問題なのです。

約20年前から通学区域制度の弾力化が潮流となり、特に東京都や埼玉県の自治体などで学校選択制が導入されました(県内では松戸市)。しかし、通学の安全確保の難しさや学校間格差の拡大、地域コミュニティの衰退などのデメリットが表面化し、方向性を見直す自治体も現れています。

こうした問題は、確実にしかし密かに、市原市の特定の学区でも起こっているのです。

仮に本市が、個々の保護者の希望を尊重し弾力化を推進するという方針であれば、なぜもっと堂々と進めないのか。実際に船橋市や習志野市のように、部活動を事由に認めている自治体もあるのだから、市原市も要綱を見直せば実態との乖離は無くなります。

そうではなく、学区制度は適正に守るという方針であれば、要綱の遵守を徹底し、部活動も含めた教育の機会均等に向け、課題を直視しテコ入れを図っていただきたい。どちらなのでしょうか。

改めて、本市の通学区域制度の方針と今後の課題解決策についてお聞かせください。

答弁 (学校教育部長)
本市は、広域の市域を有し、様々な地区特性を抱えている中で、各学校が適正な教育環境を確保することが必要であることから、教育委員会があらかじめ設定した区域、いわゆる「通学区域」に基づいて、就学する学校の指定をおこなっております。

一方で、国からは、地域の実情に即して、就学する学校の指定を弾力的に行うよう、求められております。

そこで、教育委員会といたしましては、通学区域に基づく学校の指定を原則としつつも、児童生徒の教育環境の充実等に資すると認められる場合に学区外就学を許可しているところでございます。

今後も、これまでどおり、必要に応じ、例外的に学区外就学を認める現在の制度を維持し、通学区域制及び学区外就学のそれぞれの制度趣旨を踏まえ、教育環境の充実に努めてまいりたいと考えております。

 

今後の取り組み

保護者が公立の学校に求めているのは、決して「特色ある教育」などではなく、「より身近な環境のもとで安心して学び、基本的な力を身につけられる学校」です。これは言わずもがな公教育の基本であり、どの学校でも平等に担保されなければなりません。

何らかの課題があることで学校が選択されないという状況があれば、行政は速やかにその課題を克服すべく手を尽くす責務があります。

市原市教育大綱の基本理念に「市民・地域の力『市原力』の活用」が掲げられていますが、私は通学区域制度もその根幹を支えていると思います。

今後、学校規模適正化に際しては必要に応じて区域の見直しを図ることも含め、改めて同制度の意義を問い直し、信念をもって対策を講じていただくよう要望します。