平成31年/令和元年 第2回市原市議会定例会
個別質問 森山かおる
1.運営費補助金について
⑴ 監査委員からの指摘事項に対する対応について
社会経済情勢の変化に伴って、市民ニーズが多様化、増大化する中で、民間において実施される公益性の高い事業が、市民ニーズに対応するための重要な役割を担っています。このような状況のもと、市は民間の団体等に補助金という形で財政援助を行っています。
H29年度H30年度予算編成方針では、負担金及び補助金についてはゼロベースで必要性や効果等を検証し、引き続き整理統合や補助率の適正化、終期設定等の全般的な見直しに取り組むとされていました。行革アクションプランⅠにおいて種々の事業の見直しがされたことは承知していますが、今年度の予算編成方針においても、決算審査における監査委員からの意見をふまえ、公平性の観点からゼロベースで検討し、全般的な見直しを行い、改善に向けてとりくむこととされています。このことからも、負担金及び補助金のあり方については、まだ検討課題が多いのではないかと感じています。
監査委員がまとめたH29年度歳入歳出決算審査意見書では、運営費補助金について3点の指摘がされています。
1.事務局機能を市に置くことを定めている団体に対して、責任の所在が不明確にならないよう、自立的な運営の確立に向けた支援を進められたい。
2.具体的な補助対象範囲の区別が不明確なものもあることから、審査体制や要綱等の検証、規定の見直し等の対応を図られたい。
3.多額の繰越金が生じている団体に対して、各団体の運営収支状況を踏まえた交付基準の策定について検討されたい。
これらの指摘事項について、どのように取り組まれているのか、また補助金の交付にあたって現在のチェック体制はどのようになっているのか、合わせてお伺いします。
(答弁) 財政部長
運営費補助金に関する指摘事項への取り組みとチェック体制について、お答えいたします。
本市では、補助金の適正な執行の確保に向けた取り組みといたしまして、これまで、主に毎年度の予算編成の中で対応を図ってまいりました。
2019年度当初予算編成においては、監査委員からの運営費補助金に対する指摘を踏まえ、予算編成方針のほか、予算要求に係る留意事項等を定めた予算編成要綱について見直しを行い、補助団体の自立運営への配慮や審査体制等の検証、また収支状況を踏まえた交付基準とすることなどを一層明確に示したところであります。
この結果、2019年度予算編成においては、交付要綱未整備の補助金について、新たに5件が整備されるなど、一定の改善がなされたところであります。
次に、補助金のチェック体制についてでありますが、予算編成過程の中で、まずは補助金に係る予算要求にあっては、各部門において、庁内統一のチェックシートを用い、補助の目的や効果、交付団体の決算状況、補助の継続性の適否や課題、類似の補助金との整理統合の検討など多面的な検証を行い、その上で、この検証を踏まえた査定作業を実施し、予算案として議会の審議に付しているところでございます。
指摘事項については改善されつつあるという事ですが、H28年第1回定例会・おおむね全ての補助金について要綱等を整備し対象経費等を明確にしているところと答弁されていました。
しかし2年半経っても、具体的な補助対象範囲の区別が不明確なものもあり要綱等の検証が必要だと指摘を受けています。つまり、監査委員からの指摘事項も、補助金に対する根本的な考え方の曖昧さゆえの指摘ではないかと思っています。
市の補助金は、まちの経営の潤滑油のような役割をもち、市の施策を進めるうえで重要なツールでもありますが、補助金は公益性のある行為に対して反対給付を伴わない一方的な支出であるため、市民が納得できるような補助金のあり方が求められます。
近年では多くの自治体が補助金の適正化ガイドラインの策定や、統一した交付基準を設けるなど、着実に見直しを図っています。例えば千葉市ではガイドラインに沿ったチェックシートを活用して補助の公益性や効果、補助目的等を検証し、第3者の評価も入れながら個々の補助金について検討や見直しを進め、その内容を市のホームページに載せ市民への説明責任も果たしています。
厳しい財政状況の中では補助金をスリム化することも必要ですが、行財政改革大綱の柱「多様な主体との協働の推進」を広げるためには、補助金を上手く活用していく視点が求められます。
そのためにも、市民が納得できるようなガイドラインや統一した交付基準を設け、補助金が公平・公正に使われているのかを客観的に検証する仕組みを市民に「見える化」していただきたいと思いますが、ご見解を伺います
(答弁) 財政部長
補助金に係るガイドラインの策定と、使われ方、検証結果の「見える化」について、お答えいたします。
補助金の適正化に係るガイドラインにつきましては、議員からご紹介のありましたように、補助金の見直しや検証方法などの基準として、いくつかの自治体で整理・策定されております。
現在、本市では、ガイドラインとしての作成はございませんが、他市のガイドラインと同様の趣旨により、毎年度、予算編成の中で、補助金の見直し基準や検証方法を示し、統一的なチェックシートを用いて、当該補助金の公益性、必要性、公平性、事業効果、金額の妥当性などの点検・確認を行っているところでございます。
議員からご提言のありました、補助金ガイドラインの作成と検証結果の「見える化」に向けた仕組みづくりにつきましては、厳しい財政状況の中で、多様化する市民ニーズへの的確な対応や、多様な主体との協働の推進、さらには公平性や透明性の確保などの観点から効果も期待できますことから、今後、調査・研究してまいりたいと考えております。
限りある財源だからこそ「多様な主体の支援・育成」「公共領域へ参加しやすい環境の整備」に、補助金が有効なツールとなるようお願いします。
2.シルバー人材センターの運営について
シルバー人材センターは、高齢者が自らの経験と能力を活かして働く機会の増加につながるよう設立されたもので、臨時的かつ短期的な就業の機会を提供している。働くことによって生きがいを感じ健康増進にもつながることから、医療費削減にも寄与しています。
そして何よりも「高齢者が自分らしくいきいきと活躍し、住み慣れた地域で安心して暮らせる、支え合いのまちへ」を目指す市の理念の具現化に向けて、センターの役割は今後ますます重要になってきます。
しかしその運営状況は厳しいもの。
運転資金を持たないセンターは年度当初の会員の配分金や人件費が捻出できないため、毎年、約2,500万円を市から借り入れ、年度末に返済しています。
近隣3市(千葉市・袖ケ浦市・木更津市)では、一般会計で言う財政調整基金のような「財政運営資金積立資産」をもち、資金繰り対策をしていますが、市原市シルバー人材センターはH24年度に一般社団法人から公益社団法人に移行した時に、赤字で繰越金がなかったために「財政運営資金積立資産」をもてなかったためです。
公益社団法人となれば利益を残せないので、運営資金を積み立てることができず、こうして毎年、借入金に頼らざるを得ません。市ではこのような運営状況についてどのように受け止めておられるのか、伺います。
(答弁) 保健福祉部長
市原市シルバー人材センターの運営状況への見解についてお答えいたします。
公益社団法人に関しましては、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律において、「公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えてはならない」という、「収支相償」の定めがあり、剰余金の取り扱いが制限されております。
このことから、公益社団法人である市原市シルバー人材センターでは、運転資金の積み立てができず、また、財政運営資金積立試算もゼロであることから、年度当初に運営資産の市からの借入れをし、年度末に返済しているところです。
この運営状況につきましては、現行制度上、やむを得ないところである一方、運営面における課題とも考えているところです。
全国シルバー人材センター事業協会では運転資金の積み立てを可能とする見直しを国へ要望しているとのことですが、市原市シルバー人材センターは独自に県へ要望を出しています。
しかし、センターの役割を考えれば、市としてもアクションを起こす必要があると考えます。
H29年度の統計によると、市原市の60才以上の人口95,911人に対しセンター会員数は514人で入会率は0.5%。県平均(1.2%)の半分以下。会員が仕事に就いた割合は市原市が80.9%に対し県平均は87.0%。入会率も就業率も県平均に及ばない状況にあります。
この課題をクリアするために、もっと周知して会員数を増やそうとホームページをリニューアル。営業活動や新たな事業展開も進め、就業の機会を確保。業務依頼と会員のマッチングをスムーズに行えるよう、電話対応からネット検索に切り替えて効率化を図る。仕事の質を高めるために会員への研修会を開催するなど、改革に踏み出しています。
このような状況の中で、市としても国や県に要望するなど、センターへの支援を考えていただきたいと思いますが、ご見解を伺います。
(答弁) 保健福祉部長
シルバー人材センターへの支援についてお答えいたします。
剰余金取り扱い制限による、安定的な運営の難しい状況への対応につきましては、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会から国へ、将来の収支変動に備えた資金や運転資金として積み立てることを可能とする見直しを要望しているところです。
また、全国市長会から国に対し、「シルバー人材センター事業について、十分な財政措置及び地域の実情を勘案した適正な事業運営のため、所要の措置を講ずる」よう、先般7月5日に、要請をしたところであり、本市といたしましても、その動向を注視しているところです。
市のシルバー人材センターへの直接の支援といたしましては、補助金や貸付金による財政的な支援に加え、市のウェブサイトにおいてシルバー人材センターを広く知っていただくための紹介をしている他、「いちはらFM」の「週刊市原市」で事業内容の説明や、会員数の増加に繋げる募集内容などを盛り込んだPRを本年3月に放送するなど、広報面における支援も行っているところです。
このほか、市の公共事業の発注について、関係部署に働きかけを行い、シルバー人材センターの受注への後押し等も実施しており、今後とも、引き続き、シルバー人材センターの安定運営に向けた支援に取り組んでまいります。
国や県の動きを待っているだけでなく、もっと積極的なアクションも考えてほしい。
要望が叶って法令や条例が改正されたとしても、安定した運営を行えるだけの資金積立には何年もかかると想像できる。それまでの支援も必要。
市はあらゆる分野で規制緩和を進めています。その一環として、例えば借入金申請の簡略化、交付決定までの期間の短縮化などを検討していただきたいと思いますが、如何でしょうか。
(答弁) 保健福祉部長
貸付金や補助金の手続きについてお答えいたします。
資金の貸付や補助金の交付につきましては、「公益社団法人市原市シルバー人材センター運営費の貸付けに関する要綱」、「公益社団法人市原市シルバー人材センター運営費補助金交付要綱」を定め、これによる適正な執行とともに、速やかな事務執行にも努めているところです。
申請手続きの簡略化や期間短縮につきましては、一連の事務手続きの中で、シルバー人材センターにおいて負担が大きいと受けとめている部分などにつきまして意見を聞きながら、より効果的な在り方を検討してまいります。
シルバー人材センターの役割は、市にとって重要。
シルバー人材センターのポテンシャルが十分に発揮できるような支援をお願いします。
3.房総里山芸術祭いちはらアートミックス2020
昨年9月議会において、市内外に本市の魅力を発信し地域振興につながるよう、より質の高い芸術祭とするために、ディレクターとプロデューサーの委託費用が補正予算で組まれました。
両者の必要性については、他の地域型芸術祭でもディレクターとプロデューサーを設置している例が多く、専門性の高い分野だけに外部の専門家等にお願いしたいとのことだったので、私達は承認しました。
ところが基本計画によると総合ディレクター、アートディレクターの名前は上がっているが、プロデューサーは不在のまま。
その経緯と、プロデューサーに求めていた、広報宣伝、交通計画、資金計画を含めたイベント運営の全般を統括する役割は、誰が担うのか、伺います。
(答弁) アートミックス担当参事
プロデューサー不在の経緯とその役割を誰が担うのかについて、お答えをいたします。
昨年度、第3回アート×ミックスの開催に向けて、実行委員会内に、民間の委員及び市職員に有識者を加えた「基本計画策定委員会」を設置し、計画をゼロベースから協議してまいりました。
その中で、芸術祭を成功させるためには、アート分野でのディレクション業務と、全体を統括するプロデュース業務が重要であるという協議結果となり、昨年9月の補正予算において、ディレクターとプロデューサーの費用を要求させていただきました。
この時点では、アートディレクターは公募で選出するという選択も考えておりましたが、その後の協議を重ねていく中で、「アートの部分は北川フラム氏にお願いすべきだ」という結論に至り、総会を経て、ディレクターを北川氏に決定いたしました。
一方、全体を総括するプロデューサーですが、当初一人の人物を当てることを想定しておりましたが、プロデューサー的な役割の一部を担える北川氏を招聘できたこと、基本計画策定委員会の委員等に広報面、交通計画面など、各分野に知見のある方々がおり、この方々を核として外部業者等を交えることでプロデュース業務の遂行が可能であるという判断に至りました。
このような経緯から、基本計画には「プロデューサー」という一人の人物はおりませんが、「基本計画策定委員会」を継承した「企画運営会議」という合議体を中心として、プロデュース業務の各分野を所掌する方にアドバイスをいただきながら、事業を進行することとなった次第でございます。
広報宣伝、交通計画、資金計画をそれぞれ分散させて担うということでしょうか。
しかし統括して運営を考えるのがプロデューサーであるはず。その役割を分散させることによって、責任の所在が曖昧にならないのか、再度伺います。
(答弁) アートミックス担当参事
ただいま御紹介しました企画・運営会議につきましては、月1回程度やっておりまして、その中で各有識者からアドバイスをいただく中で、事務局等を交えた中で、こういう方向性ということを全員で判断しながらやっておりますので、方向性については、プロデューサーがいなくても、当初考えたような方向に進むと解釈しております。
もう1点伺います。補正予算ではディレクター、プロデューサーに今年1月から3月まで、各々1カ月あたり50万円計300万円が計上されたましたが、この使途はどうなるのか、伺います。
(答弁) アートミックス担当参事
300万円の補正予算の使途について、お答えいたします。
補正予算の内、ディレクター費用として計上しました予算の使途につきましては、総合ディレクターとして北川フラム氏を起用したことによる支出となります。
一方のプロデューサー費用として計上しました予算につきましては、執行しておりませんので、「いちはらアート×ミックス実行委員会補助金交付要綱」の規定による事業繰り越しのための準備に要する経費として繰越しております。
この予算は、当該補助金交付要綱に則り、先ほど答弁申し上げました各分野のプロデュース業務に充当して遂行してまいります。
第1回、第2回の開催を踏まえて必要としたはずのプロデューサー。
大きなイベント事業は思い描いた通りに進まないことは理解できますが、補正予算を組む前にもっと検討が必要だったのではないか。私は補助金に頼る事業の甘さを感じる。
統括して運営を考えるのがプロデューサーであるはず。その役割を分散させることによって、くれぐれも責任の所在が曖昧にならないようにしていただきたい。
アートミックスは南市原の活性化を目的としてスタート。前回では地域住民の活力がアップし、市民団体のモチベーションアップにもつながったと伺っています。
2017年の事業報告によると、運営スタッフは延べ2,580人(菜の花プレーヤーズ941人、町会・関係団体908人、市職員の全庁応援731人=全体の4分の1以上にもなる) なぜ、これほど多くの職員の応援が必要だったのか。
平日はボランティアの確保が難しいため業務命令で動員をかけたとの事ですが、平均すると期間中の平日22日間は毎日33人もの職員が駆り出されたことになり、これは応援のレベルを超えているのではないか。職場に残された職員への負担も大きく、本来の業務に支障をきたしたはず。
これまでの開催では試行錯誤されてきましたが、もう3回目になります。そろそろ補助金や職員の動員に頼らず、運営主体を官から民へ移行していかなければ、継続は難しいと考えます。
職員の動員からどう脱却していくのか、またそのために市の施策の中でアートミックスをどのように位置付けて将来の青図を描いておられるのか、以上2点のご見解を伺います。
(答弁) 市長
アート×ミックスは、人口減少・少子高齢化の進む南市原において、廃校やこれまで十分に生かし切れていなかった地域資源を活用する、課題解決型の芸術祭としてスタートしたものであります。
過去2回の開催を通じて、実行委員会を構成する団体や事業者との連携により、若い世代の訪問が増え、地域住民との交流が深まりつつあるなど、たしかな地域活性化の動きが見られ、「ひとの活躍が新たな誇りをつくるまち」としての成果が生まれてきているものと実感しております。
第3回の開催にあたり、これまでの取り組みをより進化させ、市域を超え、市原を中心とした里山の魅力を広く国内外に発信するため、「房総里山芸術祭」の名を冠したところであり、周辺自治体との広域的な協力体制により、さらなる交流人口の拡大を図ってまいります。
さらに、今回は企画・準備の段階から実行委員会の中心的な団体の方々にも深くかかわっていただいており、こうした連携体制を継続することで、実行委員会組織の発展・強化を図り、地域主体により継続的な運営がなされるよう、アート×ミックスの次なる展開に向け、取り組んでまいります。
答弁で時間切れとなりました。