令和4年第2回市議会定例会 代表質問 森山かおる

代表質問 森山かおる

1.市民サービスの向上について  

昨年8月、市民サービスの更なる向上に向け、職員一人一人が高い志を持って総合計画を一層推進していくために、組織ビジョン・経営理念・行動指針が策定されました。

 組織ビジョン「みんなの未来へ“しんか”し続けるプロ集団」

“しんか”には、発展させて「進める」「深める」「伸びる」「新たに変化していく」などの意味が込められており、一人ひとりがプロとしての誇りを持ち、より高いレベルを追求し、ともに“しんか”し続ける集団を目指していくというものです。

このビジョン達成のために作られたのが経営理念「いちはら愛を真ん中に」。 「いちはら」という表現は、土地だけではなく、市民や企業なども含めた広義の意味があり、「いちはらを愛し、より良くしたいと思う気持ち」を職員が意識し、あらゆる場面において中心に据えるというものです。

そして理念を実現するために5つの行動指針が策定されました。

「市民の思いを自分ごと化」 「ゴールを見据えて決断と実行」 「本質を捉えたその先への挑戦」 「プロとしての自覚と成長」 「自ら始める認め合いと支え合い」

要は、市民や市内事業者の声に耳を傾け、ニーズの先にある物を常に考え行動すると言うことだと思いますが、今年度になって市民からこんな声を聞いています。

基本的な質問にも答えられず、何度も待たされた。市の助成金について問い合わせたが「そのような制度はない」と言われ、逆にスマホで市のHPを検索して職員に見せなければならなかった。制度を熟知していないために何度も足を運ばされた、など。

私は個々の職員を責めるつもりは全くありませんが、このようなエピソードからは少なくともプロ集団という意識は感じられません。

ビジョンや理念・行動指針を策定して終わりではなく、職員一人ひとりに浸透させていくことで、初めて市民サービスの向上に繋がると思いますが、市長のお考えをお聞かせ願います。

(市長)

市民ネットワークを代表しての森山議員のご質問にお答えいたします。

私は、総合計画に掲げる都市像の実現に向け、更なる変革を成し遂げるために、組織のあるべき姿や目指すべき方向性を全職員と共有し、一人一人が持てる強みを存分に発揮しながら、一丸となって、みんなの未来へ果敢に進んでいきたいという強い信念のもと、令和2年度から3年度にかけて組織ビジョン、経営理念、行動指針を策定しました。

この組織ビジョン、経営理念、行動指針を総称する「クレド」は、私自身、若手やベテランを問わず、多くの職員と対話を重ねて策定したものであり、まさしく皆の手でつくり上げた、未来に向かって「しんか」し続ける市原市役所組織の羅針盤であります。

したがって、クレドはつくって終わりではありません。いかに職員一人一人がクレドに込められた理念を心の真ん中に据え、何をなすべきかを考え、あらゆる局面で主体的行動につなげていくか、策定後がまさに本番であり、全庁を挙げて理念浸透の取組を展開しております。

具体的には、理念浸透ワークショップを開催し、私も多くの職員との対話を通じて、職員個々の職場や仕事に対する思いや熱量を感じるとともに、いちはらに馳せた思いを共有しながら市役所組織の一体感を高めてまいりました。

また、職場内でのポスターの掲示、パソコン画面へのポップアップ、クレドカードの携帯など、クレドを常に意識できる環境のもと、職員は、日々クレドを胸に、仕事に向き合っているところであります。

加えて、各部門においては、クレドに掲げられた理念の一つ一つが、普段の職場生活のあらゆる場面で活かされるよう、それぞれの職場に即したクレド浸透のアクションプランを考え、継続的な実践に取り組んでおります。

さらに、人事担当部門においても、職員が「働きがい」と「働きやすさ」を実感できるよう、人財育成基本方針、人事評価制度、研修体系をクレドと連動させる見直しを進めており、実効性のある人事制度の構築と職場風土の醸成を実現していくことで、職員のモチベーションをより一層向上させてまいります。

よい組織はより良いチームワークで成り立っております。一人一人の熱い思いと行動が、やがて同僚の共感とともに結びつき、その複数の線が組織という面となって大きなうねりに昇華していく。私は、そのような強い絆と信頼感で結ばれたチームが生み出す仕事は、必ずや市民の皆様から高く評価されるものであると固く信じております。

理念浸透の取組に係る成果は、決して即効性があるものではありません。だからこそ、私自身が職員の先頭に立ち、日々自ら体現し、あらゆる機会をもって、理念に込められた思いを発信することで、より一層の浸透を推し進め、市役所の更なる変革と組織力強化のもと、市民サービスの更なる向上につなげてまいります。

市長の想いは伝わってきますが、市民サービスの「更なる向上」以前に、通常のサービスが提供できていない現状を認識していただきたかったのです。

次に、数ある部署の中でも特に福祉分野では知識や経験が求められますが、目の前の業務をこなすのに精一杯な状況では、一事業を深掘りして理解を深めるとかニーズの掘り起こしができない上に、業務が細分化されてその担当者でなければ分からないという状況を生み出してしまいます。これまでも窓口に相談に行ったが担当者が不在で後日足を運ばされたという声を度々聴いている。

そこで、部署によっては人事異動のスパンを長くすることで、その分野での広い見識をもち、担当者以外でもある程度の対応ができるようにするとか、以前にも要望したスペシャリストを育成するといった事で改善できると考えますが、ご見解を伺います。

(総務部長)

人事異動の間隔及び専門性の高い人材育成についてお答えいたします。

多様化・複雑化する市民ニーズへ適切に対応するためには、豊富な経験と高い専門性を持った職員の存在が重要となります。

そこで、本市では採用後10年の中で3か所程度の部署に配属することを原則とし、様々な経験を積むことで、職員一人一人が幅広い視野を持って仕事に取り組めるよう努めているところです。

その後は、職員の適性や組織需要に応じた計画的なジョブローテーションにより、おおむね、3年から5年の間隔で人事異動を行っております。

人事異動の間隔の長期化については、業務の継続性や経験の蓄積など、安定的な行政運営に有効な面があると考えております。

一方、同一業務への長期的な従事は、仕事の属人化や職員の多様な成長機会の喪失など持続的な組織機能が弱体化する恐れもあることから、慎重な対応も必要になると認識しているところです。

人事異動により一時的な知見の流出は生じますが、市民の皆様に信頼される安定した行政運営を実施するため、各所属では業務マニュアルの整備や、職場内研修を通じて、人材育成を図っております。

また、福祉部門をはじめ、ICT部門や技術系部門など、高度な専門性を有する職場においては、職員の能力向上を目的に、戦略的な部署・職務異動を行い、計画的なキャリア形成による専門領域での活躍を期待できる人材の育成を実践しております。

さらに、特定分野での豊かな経験と専門的な知見を有する管理監督職、あるいは副参事、主幹等のスタッフ職を任用するなど、高度な行政課題にも対応できるよう、組織としての対応能力を高めているところであります。

今後も適正な人事異動の構築・運用に向け、組織の状況に応じた人事異動の在り方や、複線型人事制度を含む他団体の有効な事例についても研究し、取り組んでまいります。

スペシャリストの育成については複線型人事制度として行財政改革アクションプランに明記されていましたが、再任用や任期付き職員の採用を図る必要があるとの理由から2年前に消えてしまった。しかし、それは行政側の都合としか思えません。いちはら愛を真ん中にという経営理念を掲げるのであれば、市民を真ん中に据えて人事制度の見直しを再検討するよう要望します。

2.日本語を母語としない方々への支援について 

今年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻により、本市にもウクライナ人親子3人が避難されました。住宅、生活用品や生活資金の提供、就労・就学支援や日本語教育の提供など、市としてできる限りの支援に取組んでおられます。

戦争や紛争のない平和な暮らしの中でこそ人権が守られるということを改めて感じるとともに、避難民の受け入れを機に、市内に住む日本語を母語としない方々への支援も改めて考えていただきたく質問致します。

1)福祉の相談窓口における支援体制について

今年度から、市内9箇所に設置された高齢者の相談支援機関である「地域包括支援センター」に、福祉に関する相談であれば何でもワンストップで受け入れる「地区福祉総合相談センター」の機能が加わりました。誰にも相談できず地域で孤立する方にアプローチし、相談支援機関へのつなぎやアウトリーチを行うことで、地域共生社会の実現を目指すものです。

身近な地域にこうした相談窓口ができたことで相談件数も増え、潜在化していた課題があぶり出されることになろうかと思っております。その一つが日本語を母語としない方への対応です。R3年1月1日時点の住民基本台帳の外国人登録者は約6,200人。中には日本語の読み書きが不便な方もおられると思います。

そこで、地区福祉総合相談センターについての周知はどこまで図られているのか。また、センターに相談があった場合の体制について、お伺いします。

(保健福祉部長)

地区福祉総合相談センターの周知と、相談体制について、お答えいたします。

本年度から、市内9か所の地域包括支援センターの機能を強化し、「地区福祉総合相談センター」として、分野や属性を問わず、福祉全般に関する相談に応じる体制を整えたところです。

「地区福祉総合相談センター」の設置に際しましては、「広報いちはら」令和4年3月号で特集記事を掲載し、市民の皆様に広く周知を図ったところであり、無料の専用アプリ「カタログポケット」を利用することで、英語、中国語、スペイン語など9言語の翻訳版を閲覧することが可能となっております。

相談対応における言語の問題につきましては、これまでも、ご本人や同行者が日本語を話すことができる場合が大多数ではありますが、この場合におきましても、できる限り、分かりやすい日本語を用いるよう努めるほか、日本語の理解が困難な場面では、翻訳アプリ等を活用するなど、相談者に寄り添った対応に努めております。

引き続き、日本語を母語としない方にも配慮した、分かりやすい周知に努めるとともに、一人でも安心して相談ができる環境づくりに、取り組んでまいります。

今、相談窓口での対応についてお聞きしましたが、孤立している方への支援については、情報共有ができる地域コミュニティとの連携が必要になってくる場合もあります。その際、日本語を母語としない方への対応については、全庁的な取組みが必要だと思っています。

そこで地方創生部にお伺いします。多文化共生の観点から保健福祉部局とどのように連携して取組んでいくのか、お聞かせ下さい。

(地方創生部長)

外国人に対する支援に係る保健福祉部門との連携について、多文化共生の観点からお答えいたします。

 本市では、これまで外国人市民が日常生活において不自由なく生活していくために、行政情報の多言語化の推進や、外国人市民からの日常生活の困りごと相談に複数の言語で応じるなど、保健福祉部門をはじめ庁内関係部署と連携を図り、生活の利便性の向上に努めてまいりました。

また、日本語を母語としない外国人市民の定住化に伴い、外国人市民の理解をサポートする取組がより必要とされていると考え、外国人と行政のつなぎ役として活動している多文化共生キーパーソンの募集・支援や外国人相談体制の更なる充実に取り組んでおります。

引き続き、外国人市民が抱える課題や問題を理解し、それぞれの背景に寄り添った対応を図るため、庁内関係部署と多文化共生の理念を共有するとともに、国際交流協会や民間ボランティア団体と連携し、教育、福祉などをはじめ、外国人市民の生活全般への支援を進めてまいります。

孤立を防ぐのは地域共生ですが、日本語を母語としない方に対しては多文化共生として、しっかり取組んでいただくようお願いします。

2)学齢期の子どもへの支援について 

  • 教育現場における支援について

市原市内の小中学校に在籍する外国籍の児童生徒数は、今年5月1日時点で349人。社会のグローバル化や政府が打ち出した外国人労働者の受け入れ拡大により、10年程前と比較して約1.3倍に増えています。また日本国籍であっても日本語を充分に習得できていない児童生徒もいるため、日本語指導を必要としている児童生徒数は188人、約1.6倍に増えました。

このような児童生徒が基本的な学力を身につけ、将来の進路の選択肢を広げるためには、生活言語に加えて学習言語の習得が必要になります。

では、教育現場における日本語指導の体制はどうかというと、県からの加配教員5名が小中学校6校で週に1~2時間程度。市が独自に配置している指導協力者(時給の有償ボランティア)は昨年度から9名に増員されたことで、児童生徒一人あたり年間31時間までの枠内で取り出し授業を行っています。これでようやく週1時間が確保されるようになりましたが、一般的に生活に必要な言語習得は3年、学習言語となると9年かかるといわれており、この時間数では学習言語の習得には到底及びません。

また、この指導を受けるには保護者からの希望が必要となっているため、日常生活では不自由なく日本語を話せているなど保護者の認識不足によって希望しないケースがあることや、希望者が多い場合には年数が少ない児童生徒が優先されると伺っており、現状の時間枠では足りないのではないでしょうか。

更に文科省は市町村の教育委員会に対して、学齢期に近い幼児のためのプレスクールや来日直後の子供を対象とした初期集中指導・支援を実施し、円滑な就学に向けた取組みを進めるよう求めていますが、市では対応しておりません。

このような状況から、日本語指導については言語習得時間の増加、保護者への働きかけの強化、幼保小連携における幼児期からのアプローチが必要だと考えますが、ご見解をお伺いします。

(教育振興部長)

日本語指導の体制強化についてお答えいたします。

教育委員会では、市内の小・中学校に在籍する、日本語を母語としない児童生徒等に対し、初期的な日本語の指導を目的として指導協力者を派遣し、当該児童生徒の生活言語の習得を支援しております。

習得時間の確保につきましては、継続して学習できる環境を整えることが重要と考え、令和2年度より指導時数を10時間増やし、年間31時間の指導を可能としたところです。

また、指導期間につきましては、原則3年間としておりましたが、当該児童生徒の保護者から指導継続の希望があった場合や、日本語の習得状況から学校が期間の延長を必要と判断した場合には、3年以上の指導も可能としております。

学習言語につきましては、学校における各教科指導の中で当該児童生徒の学習内容の理解を丁寧に支援していくことで、習得につなげております。

さらに、学校では児童生徒の学習状況を把握し、日本語指導の必要とする児童生徒の保護者に対し状況を丁寧に説明し、受講するように働きかけをしております。

教育委員会としましては、言語を習得するには、できるだけ早い時期から取り組むことが大切だと考え、幼児期からのアプローチとして、遊びの中で日本語を自然に習得できるよう、今後も認定こども園などへの指導主事の訪問を通じて支援に努めてまいります。

  • 民団体等との連携について

国際交流協会では市内9教室で子どもから大人までを対象とした「にほんご教室」を開催しており、その様子を見学させていただいたところ、生活言語の習得はできている中学生が、学習面では小学低学年の漢字もおぼつかない状況でした。これでは学校の授業にはついていけず、現在の教育現場での日本語指導だけでは不充分だと痛感しました。

講師を務めるボランティアの方は、生活言語は教えられても学習指導については手探り状態だと仰っておられましたが、高校進学という目標に向けて熱意をもって指導されていました。

市内には他にも日本語指導や学習指導をしている民間団体があり、こうした熱意ある団体と連携を図ることで効率的な支援につながるのではないでしょうか。

そこで提案させていただきます。

国際交流協会や民間ボランティア団体、市の日本語指導協力者や教員などを集めて、学習言語レベルまで習得できる指導方法について学べる機会を設けてはどうでしょうか、当局の見解をお伺いします。

(教育振興部長)

民間団体等との連携についてお答えいたします。

日本語指導に係る関係団体の指導者が連携・協力して取組を進めていくことは

有効であり、民間団体等を含めた指導者がスキルアップのための研修を行うこ

とは有意義であると考えます。

学校現場においては、これまでも日本語担当指導教員等が、よりよい指導方法を

身につけるために必要な研修に参加し、スキルアップにつとめているところで

あります。

教育委員会としましては、これまでも国際交流協会など日本語指導に係る関係

団体と連携してまいりましたが、今後もさらに協力体制を強化できるよう関係

部局との情報共有に努めてまいります。

*日本語指導の人材確保について

国際交流協会では学齢期の子どもを対象にした教室を拡充したいとの思いを

もっておられますが、実際に動けるボランティア不足が課題だと伺っています。

市の多文化共生まちづくりプランでも、日本語教室の増設、国際交流協会の組

織体制の強化として人材育成をあげていますが、3年ほど前に市が主催した日本語学習支援ボランティア養成講座の受講生が同協会に登録したのは2割程度とのことです。

この現状を受け止めて今後どのようにボランティアを増やしていくのか、お伺

いします。

(地方創生部長)

日本語学習支援ボランティア確保のための取組について、お答えいたします。

 外国人市民がコミュニケーションの基礎となる日本語を学ぶ場は、多文化共生社会の実現に向けて、重要であり、外国人市民からの要望も多いことから、国際交流協会との共催により、日本語教室を市内7会場・9教室で開催しております。

この日本語教室は、国際交流協会の会員はもちろんのこと、多くのボランティアの方々にご参加いただいており、このボランティアの人材の確保・育成は日本語教室の運営にとって重要な取組みであると認識しております。

市といたしましては、国際交流協会が実施する日本語学習支援ボランティアの育成を図る講座の重要性を広く市民に周知するとともに、参加いただいているボランティアへの新たな支援策を講じるなど、人材の確保・育成に向け、国際交流協会と連携して取り組んでまいります。

受講後のフォローも必要ではなかったでしょうか。退職した教員の方などの積極的な参加も呼びかけていただきたいと思います。

3.いちはらアートミックスの継続開催について 

今年2月、南房総里山芸術際いちはらアートミックス2020+の簡単な報告と、今後の継続開催を視野に入れた「アートのまちいちはら」推進ビジョンについて議会に説明がありましたが、その2ヶ月後に公表された事業報告書を見て唖然としました。

総括では「継続的な芸術祭の開催に向けては、さらなる広域連携や、より広範な民間企業の参画等について積極的に検討を進める」と締めくくっていますが、2回目までの報告書には記載されていた課題や反省点については一切触れられておりません。どんどんご都合主義に変わってきている事に危惧感を抱いています。

言うまでもなく、これまで3回の開催で11億円以上もの費用を投じている限り、継続開催については費用対効果や目的に照らし合わせた成果をシビアに検証した上で考えていただきたくお伺いします。

*掲げた目標「移住・定住」の成果は

2014年から開催されたアートミックスは、地域の活性化に向け地方都市が抱える諸問題をアートの力で解決する課題解決型芸術際としてスタートしました。昨年の第3回目は、継続開催による「アートのまちいちはら」というブランドイメージの定着化、交流・関係人口の増加、将来的な移住・定住化につなげることを目的としています。

では、その成果はというと、市長は3月の本会議で3点述べられた。交流人口・関係人口拡大に向けたアピールにより来場者数が過去最高であった、コロナウィルス感染対策により感染者を一人も出さなかった、地域との協働体制の強化が図られた、と。

しかしこれは実績であり、目的に照らし合わせた成果については触れられなかったことに非常に違和感を覚えました。

そこで改めて、これまで3回の開催を踏まえて伺います。

地域の活性化とは具体的にどのような形を指し、どのような成果をあげたのか。移住・定住の成果をいつ頃までに何人と見込んでいるのか。簡潔にお答え願います。

(地方創生部長)

アート×ミックスにおける地域活性化の目指す姿とその成果についてお答えいたします。

アート×ミックスの目指す姿は、総合計画に掲げる「地域資源を活かし、訪れたくなるまち」であり、具体的には、地域の方々の活動や産業との連携、地域資源の掘り起こしや磨き上げにより、市内外から多くの人が訪れ、様々な交流が進むこととしております。

その成果といたしまして、これまで3回開催したアート×ミックスでは、国外も含めて合計で約30万人の方に来場いただいておりますが、直近のアート×ミックス2020+(にせんにじゅうぷらす)では、延べ11万人を超える過去最多の来場者数となっております。

また、アート×ミックス2020+の開催にあたり、68の地元町会をはじめ、地域で活動する市民団体や、地元商店会などから多くのご協力をいただくなど、地域の方々の新たな活動も生まれたほか、既存の会場に加え、小湊鉄道の各駅、五井地区や平三地区を新会場とすることで地域資源の掘り起こしや磨き上げの拡大にも繋がっております。

さらに、「おもてなし交流プログラム」では、地域住民・学校・文化団体・事業者等が主体となって、本市の魅力を伝える体験プログラムやワークショップ等を実施したことにより、地域の方々と来場者との交流が進んだほか、地域で活動している市民活動団体からは、アート×ミックスの開催期間中は、地区の人口を大幅に超える方にお越しいただいたとの声や、地元商店街の方々からも賑わいの創出と多くの交流が生まれたとの声もいただいております。

このように、アート×ミックスを一つの契機として、新たな交流が生まれ、共感いただいた地元関係者を中心としたコミュニティ活動の深化に繋がり、地方創生の礎(いしづえ)となっているものと認識しております。

次に、移住・定住の成果についてお答えします。

移住・定住にかかる具体的な数値目標はございませんが、アーティストの移住だけでなく、地域おこし協力隊や里山ワーク推進事業など各種施策との相乗効果により、交流人口の拡大と定住人口の維持も含めて、一層の効果拡大を図ってまいります。

具体的な数値目標もない状況では事業評価はできません。

仮に交流人口が増え地域に賑わいをもたらしたとしても、開催期間だけの現象であれば地域活性化とは言えないのではないでしょうか。

2回目開催後の2019年度市民意識調査では、市の魅力を13項目あげたところアートミックスが選ばれたのは11番目。加茂地区でさえ7番目。南総地区では12番目という低さ。地域住民にさえ指示されていないのは何故なのでしょうか。市民意識とのズレをどう受け止めておられるのでしょうか。

*地域経済への効果について 市内にお金が落ちている?

移住定住の成果が現れるのはこれからだとしても、過去最大の来場者数を誇るのであればその成果として、市内経済に潤いをもたらしたのであれば良しとしたいところです。

そこでアートミックス2020+の報告書を見ると6億円の事業費で11億3千万円の経済波及効果があったと評価しておられるが、そのうち県内は7億1,900万円。直接効果では5億600万円。

しかし肝心なのは地域や市内事業者にどれくらいお金が落ちているのかということです。

地域及び市内の経済効果についてお伺いします。

(地方創生部長)

地域及び市内への地域経済への効果についてお答えいたします。

 アート×ミックス2020+(にせんにじゅうプラス)の会期中の小湊鉄道の乗降客数は前年同時期と比較すると、利用者数は約4.5%増加したほか、チバニアンなどの周辺観光地への回遊も見られました。

また、アンケート調査結果では、来場者のうち20.6%の方は、会場周辺の一般店舗で食事をしております。会場に出店していただいた飲食業者からは、用意していたものがお昼過ぎには売り切れてしまったとのお声もあり、ご協力いただいた地元商店会からも、多くの人出により、売上が向上したとのお話もうかがっております。

加えて、開催時にはテレビやラジオ、新聞や雑誌など多くのメディアに取り上げられ、市原を知っていただき、訪れたくなる絶好の機会になったものと捉えております。

 アート×ミックス開催による経済波及効果だけではなく、市外のあらゆる方々に向けた情報発信により、本市の里山の魅力など潜在的な資源が新たに注目を集めるきっかけとなり、ふるさと納税の拡大、さらなる観光交流の振興などにつながることも期待されることから、今後も経済波及効果が継続していくものと考えております。

*自立した運営に向けて覚悟を示せ 民間に委ねるか縮小か辞めるか?

これまで3回の開催費用は総額約11億5千万円。このうち市の一般財源から6億1,500万も補助金をだしています。

運営費用の9割を市・県・国からの補助金に頼り、移住定住のゴール設定や成果も曖昧、経済効果も限定的、その上毎回多大な市職員の応援がなければ運営出来ないイベントのあり方を根本的に見直していただきたいと思います。

今後の開催については、これまでと同様の手法では多くの市民が納得致しません。多額の補助金や市職員に頼らず、自立した運営を最大限目指すために民間に委ねていくのか、それともこれまでの費用対効果を鑑みて縮小する或いは辞めるという選択肢もあります。ご見解をお伺いします。

(地方創生部長)

芸術祭の今後の開催について、お答えいたします。

 芸術祭は、本市が実施している大きなプロジェクトであり、過去3回の開催の過程でも、様々な挑戦をしてまいりました。

そうした中で、先ほどもご答弁申し上げたとおり、本市への好影響が確実に現れてきております。

 来年度は、本市の市制施行60周年の記念すべき年度であり、また現在、千葉県が検討している千葉県生誕150周年事業との方向性が合致していることなどから、次回開催にあたっては、現在までの取り組みを踏まえ、近隣自治体との広域連携や民間団体との連携を図っていくなど、持続可能な新たな芸術祭となるよう、検討準備を進めてまいります。

継続するのであれば目標値の明確化、収支面での大幅な改善は最低限必要です。

今年度から、私たちが要望したEBPM(エビデンスに基づく政策形成)という視点を取り入れていただいて、政策マーケティング室が配置されました。確かなデータに基づき客観的にアートミックスの効果について分析した上で、今後の開催のあり方について検討していただきたいと思います。

それと障がい者への配慮については第2回目の開催で反省点としてあげていたのに、3回目の開催では何も変わっていませんでした。新しく会場になった古民家の門を車椅子の方がどうやって開けて入れるのですか。ディレクターもアーティストも全然分かっていない。その点を実行委員会できちんと広めて取組んでいただきたいと思います。