令和4年度 当初予算案 総括質疑・意見陳述 小沢みか
質疑
市民ネットワーク 小沢美佳です。
会派を代表し、R4年度の行政組織機構に関連する質疑を行います。
※副市長の特命事項について
はじめに、R4年度にむけ引き続き副市長2人制とされる目的や、その特命事項について確認致します。
市長はR2年度から新たに副市長2人制を導入されるにあたり、「全国に先駆け本市が目指す新たな街づくりを、強力なマネジメントのもと戦略的に展開するため、都市戦略担当副市長を配置する」と述べられました。
ところが、先般開かれた総務常任委員会の質疑の過程で、R4年度からその特命事項に変更が生じることが判明いたしました。
そこで改めて市長から、R4年度の副市長2人制の必要性、並びに来年度の特命事項及びその理由について、ご説明願います。
(市長)
私は、JR3駅周辺のさらなる魅力向上や高度な土地利用の転換を図り、魅力と活力ある拠点形成を早期に実現するため、新たに副市長を設置することとし、国・県との連携や公民連携は不可欠との思いの下、国から副市長を招へい致しました。
そうした中で、各拠点の持つ強みを分析し、また人口流出の中心となっている子育て世代のニーズを踏まえながら、北部3地区を人口のダムに、また、南部を中心とする地域においては、コロナ禍に伴う地方回帰の潮流などを捉え、国・県との連携、公民連携によるビジョンの策定や具体的な取組に取り組んでいただきました。
こうした動きを、全庁でさらに確かなものとし、また、今後も刻々と変化し、複雑多様化していく行政課題に立ち向うため、それぞれ異なった知識と経験、スキルを持つ2人の副市長の能力を最大限に活かし、総合計画に掲げる都市像「夢つなぎ ひときらめく 未来創造都市 いちはら」の実現に向け、強い覚悟をもって挑戦してまいります。
2年前、公共資産マネジメント・拠点形成・公共交通の3つの戦略を一体的に推進するため都市戦略部を創設され、それを統括する司令塔としての副市長の任命に、私たちも、市長の都市創生への並々ならぬ決意と捉え、期待を寄せておりました。
その壮大なミッションが、仮に次のステージに移るにせよ、市民に三位一体の成果を何も示さないまま、わずか2年で揺らぐなどという事態は、全く理解しがたいものです。
特命担当副市長を置くことは、予算執行上大きな影響を及ぼします。副市長2人制の必要性も、改めて問われなければなりません。
私たちは、市長の目指す都市像には1ミリのブレも生じてはいないと受け止めてはおりますが、まさに「組織は戦略に従う」のお言葉通り、今回の特命担当副市長の特命事項のブレが、戦略のブレに値するものと捉え、たいへん危惧するところです。
※市長事務部局において文化振興に関する事務を所掌することについて
次に、教育総務費・教育委員会費に関連して、R4年度に向けた組織機構改編により、教育に関する事務のうち文化財保護関連以外の文化に関する事務を、市長が管理・執行することについて質疑いたします。
この間の調査によって、この決定が教育委員会会議を開催せず、教育長による専決処分により進められていたことが明らかになりました。
これは教育委員会の役割を軽んじ、専門性・独立性・中立性・合議制といった教育委員会制度の理念をないがしろにし、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に抵触し兼ねない由々しき事態です。
この組織機構改編はR4年度の予算執行に大きく関わることから、改めて執行部のご見解をお聞かせ願います。
(教育長)
歳入歳出予算、その他議会の議決を要する事件の事案について、市長に意見を申し出ることは、教育委員会の会議において議決を要する事項とされております。
教育長の臨時代理につきましては、非常災害その他緊急やむを得ない事由により、会議を招集する暇がないときとされておりますので、意見の申し出等につきまして、教育委員会の機能が十分に発揮できるよう努めてまいります。
(総務部長)
歳入歳出予算その他議会の議決を要する事件の議案について、教育委員会へ意見聴取の照会を行うに当たっては丁寧な対応に努め、教育委員会が意見聴取事項を充分に審議したうえで、回答できる期間の確保を図れるよう、総合行政推進の理念のもと、教育委員会としっかりと連携して取り組んでまいります。
コンプライアンス違反による手続きで決定された組織機構改編は到底容認できるものではなく、本市が長年にわたりこのような運用を行っていたことは非常に残念でなりません。
先ほど総務部長から、教育委員会事務部局への意見照会から回答までの期間を適切に確保していなかったという趣旨のご発言がありましたが、それは最初から教育委員会の意見を尊重する意思がなかったためとも受け止められます。
このように文化行政に対し敬意を払えない行政組織に、「文化芸術を中心に据えたまちづくり」ができるのでしょうか。
多くの市民がすでにそのことを見抜いています。
執行部はこれを猛省し、本来の適切な運用に改め、教育委員並びに市民の信頼回復に努めるよう求めます。
※ビルド&スクラップについて
また、適切な期間を確保しなかったもう一つの背景には、行政運営のタスク管理が適切に行えていない、という事もあるのではないでしょうか。
個々の業務の効率化が進んでいないという事もありますが、そもそもR4年度における行財政改革の効果が非常に小粒になることからも、施策や事業のビルド&スクラップのシステムが未だ発揮されず、業務が組織のキャパシティを超えているという恐れもあります。
さらに、実行計画のローリングや今回のような組織機構改編も、一歩間違えれば現場の混乱を招き、業務に心が入らず、結果今回のような失態に繋がっていくのではないかと、たいへん危惧しております。
意見陳述
それでは引き続き、特に気になった点に絞って意見陳述を行います。市長並びに執行部におかれましては、分科会で申し上げた事項も含めご勘案いただきますよう、あらかじめ要望いたします。
※地方創生部の新設と交流人口の拡大について
今般の組織機構改編により新設される地方創生部は、主に市南部地域を舞台に、現代アート、ゴルフ、里山といった地域資源を基軸とした観光施策を推進することにより、交流人口を拡大し、定住人口を維持しようとするものです。
しかし、市原市ならではの最大級の地域資源は、北部地域の臨海部企業に連なる既存産業です。
私たちは、観光関連施策や南部地域の活性化策を推進すること自体を否定するつもりはありませんが、本市が部を創設してまでそこに強く軸足を置くことによる費用対効果や、そもそもの交流人口の意義について、根本から問い直す必要性を強く感じています。
交流には、住民意識の高揚や連帯感・愛着心の醸成といった、数値で図りにくい効果も期待できますが、多額の市税やマンパワーを投入することになる以上、農産物や加工品等の開発、地域雇用の促進や収入増など、短期的・中長期的な経済効果が見込めなければなりません。
さらに、交流人口の拡大に伴う交通やインフラ、トイレや拠点施設の整備、あるいは管理運営に係る補助金など、市の歳出とのバランスも考慮されなければなりません。
また、公と民の線引きを何処にするのか。民とどこまで伴走し、何をゴールと定めるのか。
そういった様々な視点から検証された筋書きが明らかにされないまま、唐突に走り出すことに対して、危機感すら抱いています。
※コンパクトプラスネットワークについて
本市は、今から7年前・H27年に、交通空白地域における市民との協働による交通対策に取り組み、国交省から表彰を受けました。
しかし、今や県内では、他自治体が新たな交通モードの導入など次々と趣向を凝らした地域交通対策に取り組んでおり、本市はいつの間にか周回遅れとなってしまった感があります。
R1年度に、千葉大学との協同研究「人口維持に向けた若者回帰戦略研究」において、転入者の不満として最も多かった課題が公共交通であったとのことです。公共交通対策は若者へのアピールとしても、重要な役割を担っています。
R4年度は、地域公共交通計画の策定と新規地区への新たな交通モードの導入をめざすとのことですが、計画策定・調査研究・地域主体といったこれまでの受け身の姿勢から脱却し、積極果敢に最優先で進めていただくよう要望致します。
さらに拠点形成構想の推進については、担当部署が都市部に移り、徐々に形になる事が期待されますが、コンパクトプラスネットワークの考え方に従えば、その戦略の中には同時にアクセス性も組み込まれていなければなりません。
これは、YOUホールや八幡宿駅西口複合施設、庁舎といった施設整備にも言えることです。
ターゲット層の中に、高齢者・障害者・若者といった交通弱者が想定される場合、交通手段や駐車場の確保など、集いたいと思う人々が二の足を踏むような事態にならないよう必要な対策を講じて下さい。
※SDGsのシンボルとなるまちの実現について
リーディングプロジェクトのうち、子ども若者の貧困対策として、新たにスクールソーシャルワーカーを単独事業で配置することについては、最大限評価したいと思います。
その一方で、R4年度に向けた組織機構改編ではSDGsを標榜する部署がないことや、カーボンニュートラルに向けた取り組みに積極性が見えないことなど物足りなさも感じました。
私たちの期待は、「誰一人取り残さない」「ダイバーシティ(多様性)」「インクルージョン(包摂性)といった崇高な理念を、全庁で確実に共有することによって、それが各施策事業に反映されていくことにあります。
SDGsは人類が目指す普遍的なものであり、決して市の発展・ましてや人口維持のためにあるのではないということを、ここで声を大にして申し上げたいと思います。
※公民連携・アウトソーシングのあり方について
一般会計における性質別歳出の推移を見ると、物件費が上昇傾向にあり、R3年度当初予算でついに人件費を抜き、R4年度当初予算案ではさらにその差が開いています。
その背景として、公民連携・アウトソーシングの広がりが無関係ではないと推察されますが、より本質的な問題として、芸術祭などを公共が維持し続ける必要性についてどこまで議論されているか、また、オープンイノベーションプロジェクトなど外部から提案された事業やアイディアが、真に市民ニーズにマッチしているかどうかという観点で取捨選択されているか、といった懸念があります。
人件費と物件費の合計額も毎年徐々に上昇、硬直化している。これではとても簡素で効率的な行政経営とは言えない。
改めて、公民連携・アウトソーシングのプロセスを再度検証し、まずは事業自体の必要性をエビデンスに基づき明確にしたうえで、最適な手法を選択するよう求めます。
※勤労会館と上総更科公園の一体的な整備について
これは、同施設を子どもと親を徹底応援する拠点としてリニューアルするというものです。
これまで市内では、NPOや市民などによる様々な子育て支援団体が活発に活動を繰り広げてきました。
一方市は、H26年の「サンプラザ市原」内「子供のフロア」の閉鎖以来、8年間にもわたる紆余曲折を経て、ようやく今回の施設整備に収まることとなりました。
この発表に対する反響は私たちの想像以上で、これまでになく多くの問い合わせが舞い込んでいます。子育てに関わる市民や各団体が、いかにこのような拠点を渇望していたかを改めて思い知らされた次第です。
今後リニューアルにあたっては、こうした人々の声を、既成概念に囚われることなく最大限反映させるよう切に願います。
子育てには、光の部分も影の部分もあります。魅力的な事業を展開し集客を促すことが真の目的ではなく、いかに影の部分に気づき、手を差し伸べることができるか。そこに行政が関わる意味があると思います。
さらに外国人や障害児など、全ての子どもや保護者が躊躇することなく足を運ぶことができるよう、きめ細かな配慮に努め、SDGsのシンボルとなる施設を目指して下さい。
※財政運営について
R4年度の一般会計当初予算案をR3年度当初予算と比較すると、歳入・市税のうち市民税が13.9%増の197億7,200万を計上。
特に法人市民税で83.8%・16億4,600万円もの大幅な増額が見込まれることは、近年甚大な自然災害や感染症といった災禍に見舞われていた私たち市民にとって、久々の明るい兆しとも思えました。
しかしながら2月以降急激に緊迫するウクライナ情勢の報道に接し、憤りやもどかしさを感じると同時に、原材料やエネルギーコストの上昇などによる市内企業への影響も懸念されるところです。
また、これまで過去10年間の決算状況を見ると、単年度収支が黒字の年が多く、しかも実質収支比率はここ数年上昇傾向で、この5年間は適正範囲の3~5%を超えています。
決算剰余金は、結果的に当初の計画にない事業への安易な拠出に繋がる恐れがあります。
以上のことから、執行部には、引き続き不透明な社会経済状況を前提としつつ、租税が確実に市民サービスに還元できるよう、計画に沿った厳格な行政経営を求めます。
※まとめ
令和4年度当初予算案では、評価すべき事業も多数認められました。
例えば、市原版スクールソーシャルワーカーの配置、小中学校施設のバリアフリー化、地区福祉総合相談センターの新設。
そしてPDCAサイクルを回した好事例として「いちはら移住・定住促進応援事業」のアップデート。
さらに組織機構改革の中では統計調査室から政策マーケティング室への改編や、生活福祉課の体制強化。
財政運営では、公共施設整備基金の積み立て目標の考え方が初めて示されたこと、などです。
しかしながら、この度の組織機構改編で、明確なビジョンやコストパフォーマンス分析が示されず、唐突に地方創生部が創設されることで、今後、南部地域で展開される観光関連事業に、必要以上にマンパワーや財源が消費されることが想定されます。
私たち市民ネットワークは、そのことによって、市全体の福祉の増進や、最少の経費で最大の効果を挙げなければならないとする地方自治法の原則に、齟齬が生じる恐れがあると考えることから、R4年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、反対の立場を表明いたします。
※結びに
R4年度は、総合計画の総仕上げとして、計画期間10年間の後半5年間がスタートする年です。
一体、市原市は何処へ突き進もうとしているのか。
コンビナートのまち?ゴルフのまち?現代アートのまち?チバニアンのまち?SDGsのシンボルのまち?世界に一番近い里山?
市原市に、もうこれ以上風呂敷を広げる余裕はないはずです。
執行部におかれましては、今一度公共性の原点に立ち返り、浮ついた目新しい仕掛けに飛びつくことなく、市民の声・現場の声を出発点とした地道な事業の構築に、一意専心で臨まれるよう切望し、以上意見の陳述といたします。