平成28年度 第4回 市原市議会定例会
代表質問 森山かおる
1.地域防災計画について
(1)災害弱者の視点を入れることについて
今年は日本の各地で大地震が起こりました。熊本で震度7、鳥取では震度6、福島で震度5。その度に被災状況が報道されおり、過去の教訓を活かした防災・減災の取り組みが求められます。
市原市では千葉県が行った地震防災アセスメント調査の成果を踏まえ、現在、地域防災計画の前提となる防災アセスメント調査を行い、この結果をもとに次年度以降に地域防災計画の見直しを行うと伺っています。
これまでの大災害において乳幼児や子ども、障がい者、高齢者などは、情報が入手しにくく逃げ遅れたり、日常使用している自助具や薬が持ち出せず体調を崩したり、避難所生活で気持ちが落ちつがずパニックを起こすなど、一般の人に比べて被害を重く受けがちであることから災害弱者といわれています。私は災害弱者といわれる人を弱者にさせないような対策が必要だと思っています。そのためには、いかにして意見をすいあげて対策を講じるかが問われます。
市原市地域防災計画では、防災に関する政策・方針決定過程及び防災の現場における女性の参画を拡大し、男女共同参画の視点を取り入れた防災体制の確立を図るものとしていますが、国の防災基本計画では高齢者や障がい者の参画も拡大するよう改訂されています。
そこで、地域防災計画の作成に関わる防災会議についてお伺いします。
現在の防災会議の委員は38名、うち4名が女性です。災害弱者の視点を取り入れて計画に反映させるために、高齢者、子育て中の若いお母さん、障がい者を委員に加えていただきたいのですが、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
災害弱者の視点を取り入れることについて、お答えいたします。
地域防災計画は、災害対策基本法に基づき、関係機関等で構成される防災会議が作成するものであります。
現在の計画は、東日本大震災の教訓から、避難行動要支援者や女性の視点に立った防災対策を講ずるものとして修正を行ない、要支援者への対応や福祉避難所施設の整備などの施策に取り組んでいるところであります。
次年度以降に予定する計画の見直しの中では、本市の地域ごとの実情を反映させるとともに、熊本地震など東日本大震災以降に発生した災害の教訓を踏まえ、災害弱者にも、さらに配慮した計画づくりが必要であると考えております。
このため、地域ごとの市民防災会議の開催などにより、災害弱者の視点など、地域のきめ細かな考えを地域防災計画に反映できるよう、努めてまいります。
防災会議に限らず、例えば子育て中のお母さん方のNPO団体や障がい者支援会議、障がい者団体福祉協議会などを通じて意見を聞くこともできます。昨日のご答弁では市民防災会議の開催に努めるということでしたので、ここでも高齢者、子育て中の若いお母さん、障がい者、女性に参加してもらい、様々な場でより多くの声に耳を傾けていただきたい。
(2)備蓄物資について
現在市原市では食糧、飲料水、毛布、衛生用品、資器材などの備蓄物資を用意し、民間事業者と協定を結んで調達体制の構築も進められております。ここで気になるのが先の決算特別委員会で小沢議員の質問にありましたアレルギー対応食の備蓄です。
東日本大震災による避難所生活では、食物アレルギーのある子どもが食べられるものがないことやアトピー性皮膚炎やぜんそく症状の悪化などの問題事例があったことから、千葉県がH24年に行った災害に備えたアレルギーに関するアンケート調査を行いました。調査結果によると、「災害対策を考える上で重要なアレルギー疾患は何か」との質問に対して82%が食物アレルギーと回答しています。年齢別でみると2歳から12歳までが最も多く、続いて中学生、2歳未満となっており、住んでいる市町村に対しての要望で圧倒的に多かったのがアレルギー対応食の備蓄でした。
そこでアレルギー対応食を市の備蓄品に加えていただくことと、長期化する避難所生活に備えてアレルギー対応食を持ってきてくれる民間事業者と協定を結んでおく必要があると考えますが、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
備蓄物資について、お答えいたします。
はじめに、アレルギー対応の食糧備蓄といたしましては、平成28年4月1日現在、梅がゆ2,000食、白がゆ3,000食、わかめごはん37,800食、合計52,800食を備蓄しております。
次に、アレルギー対応の食糧を供給できる事業者との協定締結につきましては、現在、食糧の供給に関する協定を6事業者と締結している状況にあります。
今後も、市における備蓄を補完する取組として、アレルギー対応のできる新たな事業者の確保も含め、継続的に災害時応援協定の締結に取り組んでまいります。
アレルギー対応食は、アレルギーがない人も食べることができますし、一般的な支援物資はアレルギーに対応したものではないことから、必要数を調査して、市の備蓄と協定による対応をお願いします。
次に備蓄物資の保管場所について伺います。指定されている避難所は95ケ所あり、そのほとんどは学校です。避難所に指定されている学校では空き教室を利用して備蓄物資の保管を進めてきましたが、13校においてはスペースがないことから保管がありません。被災状況によっては道路が寸断され避難所に運べないことも想定されることから、備蓄物資は避難所に置く必要があると思います。備蓄物資の保管ができない避難所13校について、保管倉庫を設置していただきたいのですが、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
現在、小中学校における備蓄につきましては、余裕教室を備蓄庫として利用しておりますが、余裕教室のない小中学校では備蓄庫がない状況にあります。
大規模災害時においては、道路等が被災し物資の搬送に支障を来たすことが予想されますので、避難所に近い場所に食糧や飲料水等を備蓄することが必要と認識しております。
このため、今後も教育委員会事務部局と協議を行い、小中学校における備蓄場所の更なる確保に努めてまいります。
学校によっては備蓄物資がないというのは、地域住民にとっては理解しがたいものがあります。災害時は市の職員は様々な対応に追われることになり、備蓄物資を運ぶ負担を考えて、是非お願いしたい。
(3)業務継続計画と応援受入れ体制について
業務継続計画とは、行政が被災し、人、物、情報等、利用できる資源が十分手に入らなくなったとしても、継続して行わなければならない通常業務の優先順位を決めて、その優先業務を非常時に円滑に執行できるよう、必要な資源の準備や対応方針・手段をあらかじめ定めようとする計画です。
この10月に起きた鳥取県中部地震で被災した倉吉市は、業務継続計画を整備し、緊急性のない業務はやめ災害対応に職員を集中すると定めていたものの、給水車の巡回や罹災証明の発行などで仕事量は絞るどころか膨み、対応する職員の不足が浮き彫りになりました。
阪神・淡路大震災では発災が早朝の5時46分、8時30分に兵庫県災害対策本部の会議が開かれたが、集まれたのは21人中たった5人。昼の時点で出勤できたのは警察や消防が90%に達したが、それ以外の職員は兵庫県庁20%、神戸市役所37%。その後の神戸市の参集率は、18時間後で41%、42時間後で60%、1週間後で90%という状況でした。11市原市の業務継続計画の参集率を見ますと、3時間までに48.4%、5.5時間までに64.4%、23時間までに100%が集まれると予測されています。しかし日頃子どもを預けている保育所が被災しクローズした場合や、不安な状況のなかで高齢者を家に残して出勤できないこともありますし、家族や職員自身がけがを負ってしまうこともあります。
業務継続計画を実行性のあるものにしていくためには、もっといろんな要素を考えて参集率を予測する必要があると思いますが、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
本計画における職員の参集予測につきましては、東京都の事業継続計画を参考にして、職員の居住地と本庁舎との直線距離を計測し、一定の条件設定のもと算定したものであります。
この職員の参集予測は、発災条件により大きく異なるため、全てのケースを想定することは困難であり、道路や交通等の被害が想定よりも大きかった場合、参集率は低下し、非常時優先業務を実施する人的資源が不足することも想定されます。
このため、必要な人員が確保できない場合の対応といたしまして、まずは部門内外からの応援職員により人員を確保し、現に参集した職員により最善を尽くしてまいります。
算定方法は東京都の業務継続計画を参考にしていますが、居住地からの距離が20キロ以上の場合は公共交通機関が復旧するまで参集不可と想定して3日目から人数に計上しています。また職員の負傷や発災時の混乱などによって参集が困難な割合を計算しており、1週間経っても2%は出勤できないとしています。千葉県も同様です。参集率は非常時に業務を行っていくためには基礎となるデータですので、厳しい条件設定のもとで予測していただきたいと思います。
内閣府による「市町村のための業務継続計画作成ガイド」では、非常時の優先業務の対象を災害応急対策や早期にやるべき優先度が高い復旧・復興などの応急業務と優先度の高い通常業務としています。しかし市原市では、優先度の高い通常業務だけを対象にしています。この理由は応急業務や復旧・復興業務は地域防災計画で行っていくので、業務継続計画にはのせていないということだと思うのですが、実際に職員がどれだけ集まれるのかわからない状況の中で人材の配分をしていくには、一連の流れとした計画にするほうが動きやすいのではないでしょうか。
今後の見直しのなかで、内閣府のガイドラインにあるように、地域防災計画で定められている応急業務、復旧・復興業務等の災害対応業務も含めた計画を作成することは検討されているのでしょうか。
答弁 総務部長
業務継続計画が発動される想定規模の地震災害では、全職員が配備体制となる震災3号配備であるため、一義的に発災直後は、全職員が地域防災計画上の応急業務に従事することになります。
このため、地域防災計画上の応急業務と非常時優先業務を共に「いつ」、「誰が」、「何をするのか」を時系列で整理することで人的資源の過不足への対応策を予め定めておくことができるなど、計画の実効性を高められるメリットがあると考えられます。
このようなことから、次年度以降に予定する地域防災計画の見直しにおいて、業務継続計画を地域防災計画と一体とした計画にするなど、計画体系のあり方も含めて、見直しに取り組んでまいります。
市の業務継続計画では、職員の応援について基本的には各部門内で流動的な配置をし、それが困難な場合は部門間調整を行うこととしており、他都市からの応援には触れられていません。
東日本大震災や熊本地震では、全国の自治体から多くの応援職員を受入れたが、応援職員に対し配備や活動の明確な指示ができず、さらには宿舎の確保、食料の提供、道案内等の対応に困難を極めたという課題もあったことから、支援を要する業務や受入れ態勢を予め具体的にきめておく必要があると思います。
大災害を経験した神戸市では、市の職員以外の人材を活用しながら実施できる業務継続計画を策定し、他都市からの応援職員の力を最大限に活かすために受援計画というものが作られています。この受援計画は応援を受ける業務を対象として、「応援要請」「応援受入れ」「応援終了」という流れで、手順を確認しながら実施できるようにし、地域防災計画から独立した計画になっています。
このような応援受入れ体制を整えるために、受援計画の策定が必要と思いますが、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
受援計画について、お答えいたします。
大規模災害発生後に実施すべき業務を適切に実施するためには、外部からの応援が必要であることは、熊本地震の教訓からも明らかであります。
この外部からの応援を円滑に受け入れるためには、受援計画の策定が必要となりますが、まずは、各局面における人的資源の状況を整理する必要がありますので、地域防災計画と業務継続計画の見直しと併せ、受援計画の策定に取り組んでまいります。
応援受入れを少しでもスムーズに行うために、受援計画の策定に取り組んでいただくようお願いします。
(4)地区防災計画策定について
東日本大震災では市町村などの行政が大きな損害を受けたため、地域住民自身による自助、地域コミュニティにおける共助が重要な役割を果たしました。今後、発生が予想される首都圏直下地震、南海トラフ地震等の大規模広域災害に備え、自助・共助の役割の重要性がますます高まっています。
そこで地区の特性に合った防災計画を策定し、これを市の地域防災計画に定めることを提案できるボトムアップ型の制度として、2013年に「地区防災計画制度」が創設されました。地区防災計画には、市内の一定区域内の居住者や事業者が行う防災訓練、防災活動に必要な物資や資材の備蓄、居住者同士の支援などが定められます。
市域が広い市原市においては、人口密度や高齢化率、土地の形状も大きく異なることから、地区防災計画の策定が重要になってくると思いますが、そのためには住民が自発的に作りたいと思えるような機運の醸成が必要です。
市長と町会長で語ろう未来創生ミーティングでは、独自の防災マップを作成している地区がある一方で取り組みがあまり進んでいない所もあり、地域差を感じました。まずは自助・共助の力を高めることからスタートしなければならいと考えます。
そこで地区防災計画の策定に限らず、自助・共助の力を高めていくために市としてどのように取り組んでいくのか、ご見解をお伺いします。
答弁 総務部長
地区防災計画策定について、お答えいたします。
今年度実施している地域防災計画の基礎資料となる防災アセスメント調査では、近年の災害情報を加えた地区ごとの防災性を評価する「地区別防災カルテ」を策定することとしております。
その防災カルテで作成されたデータを基に、地域の災害リスクや避難ルートなどについて、市と地域で共通認識を図る場を設けていく必要があるものと考えております。
このため、市民の皆様が災害時に適切な行動が取れるよう「市民向けの地域防災計画」を作成し、お示しすることで、地域の防災対策を地域が考える機運の醸成を図り、地区防災計画策定につなげられるよう、自助・共助の取組の活性化に努めてまいります。
例えば市からアドバイザーを出し、それぞれの地区の課題や問題点を一緒に考え助言してもらえる場を設けて、自助・共助の力を高めながら、地区防災計画を策定したいと思えるような働きかけをしていただきたいと思います。
2.JR3駅の駅前の整備について
市原市では国際大会を契機としたレガシーの創出を掲げ、海外からの来訪者をはじめ、誰もが安心して移動しやすい都市空間の創出と、これを支える心のバリアフリーの推進に取り組もうとしておられるところです。
しかしそれ以前に、日常生活に不便を感じておられる方々がいるという現状に目を向けていただきたく、ハード面の一つとしてJR3駅の駅前の整備について質問させていただきます。
市内のJR3駅にはエレベーターが完備されておりますが、これだけではバリアフリーとはいえません。バスの便数が少ない地域もあり自家用車で駅まで来られる方もおられ、障がいのある方のご家族から「安心して車を止めて乗り降りできる場所がない」と、障害者用駐車スペースの設置を求める声が市民ネットに数多く寄せられています。
3駅の駅前には、送迎する車が止められるスペースは確保されていません。車のトランクから車イスをおろして人を乗せるには時間がかかります。空いているバス停に車を止めて乗せ下ししていたらバスがきて困った。バスの時刻表を調べてバスが来ない時間に送るようにしている。市内には停められる場所がないので蘇我駅まで送った。など、不便を強いられています。
また駅前の使い勝手の悪さから、目的地まで車で送迎せざるを得ないという方もおられ、障がい者の自立の妨げにもなっています。
特に3駅のなかで一番交通量が多い五井駅東口は、通勤・通学の時間帯にはバス、自家用車、ゴルフ場送迎車でごった返しており、駅前の整備が求められます。
こうした事情もあってH23年にバス会社、ゴルフ場、地元住民などの関係者を集めて委員会を設け、バス停、タクシー乗り場、障がい者用駐車スペース、自家用車送迎スペースを設置する五井駅の東口・西口のレイアウトを作り、H24年に調査設計を実施したと伺っています。
警察との協議まで済ませているのに、なぜ4年間も事業化されてこなかったかお聞かせ下さい。
答弁 土木部長
五井駅前広場の改修についてお答えいたします。
五井駅東西駅前交通広場につきましては、広場内の混雑緩和を目的に、交通事業者や企業バス・ゴルフ場バスの関係機関、更には、地元関係者などとの協議を重ねまして、平成24年度に、駅前広場の予備設計として、千葉県公安委員会の意見を踏まえたレイアウトの見直しを行いました。
また、この協議の中で、朝の混雑時に東口駅前広場に停車しているゴルフ場バスにつきましては、広場の通行に支障とならないところへの移動をお願いしたことで、一定の効果がみられました。
このような経過を踏まえまして、事業の優先順位を総合的に判断した結果、駅前広場の改修につきましては、これまで事業化を見送ってまいりました。
市原市の一般財源はH20年のリーマンショック以降、年々減ってきている状況だったのにもかかわらず、そもそもなぜH24年に調査設計をしたのか疑問に思います。
この計画は今後どのようになるのか、お伺いします。
答弁 土木部長
この計画の今後について、お答えいたします。
五井駅東西駅前交通広場につきましては、ゴルフ場の協力により、一定の効果はあったものの、朝夕のラッシュ時には、まだまだ混雑している状況は認識しております。
しかしながら、現計画では、相当な事業費が見込まれることから、今後、庁内関係部署と協議しまして、計画の方向性を、再度、検討してまいりたいと考えております。
このまま事業化されなければ職員の労力が無駄になるだけでなく、調査に関わったバス会社、ゴルフ場、地元住民などの関係者の思いはどうなるのでしょうか。委員会を設けて話を聞くだけ聞いて、それで終わりというのでは、市への信頼が損なわれてしまうのではないかと思います。
この調査設計によると当時の概算では5億円と伺っていますが、4年が経過した現在では建設費が上がり、市の財政状況を考えるとこの事業化は大変厳しいと捉えています。
そこで最低限の駅前整備として、JR3駅に車イス利用者が安心して乗り降りできる駐車スペースを設置していただきたいのですが、ご見解をお伺いします。
答弁 土木部長
JR3駅における車椅子利用者の駐車スペースについて、お答えいたします。
JR3駅には、障がい者等が安全に移動しやすいよう、エレベーターの位置に合わせた、駐車スペースを設ける必要があると考えます。
このため、現計画の方向性を検討する中で、障がい者の駐車スペースの設置につきましては、優先的に、庁内はもとより、交通事業者や関係機関と調整してまいりたいと考えております。
障がい者の視点で質問しましたが、障がい者のニーズは高齢者や幼いお子さんのニーズとかぶることが多くあります。高齢者やベビーカーを使う方にとっても、安心して車をとめて乗り降りできるような工夫もお願いして、市民ネットワークの代表質問を終わらせていただきます。