令和3年 第2回市原市議会定例会 個別質問 森山かおる
個別質問:森山かおる
1.公共施設のバリアフリー化の取組みについて
1)上総牛久駅前のトイレについて
*協定の内容は?
昨年12月に上総牛久駅にトイレが新築された。予算化された2019年度の審査時においてトイレのバリアフリー対応についてお聞きしたところ、「多目的トイレをオストメイト対応にするなど、バリアフリーを考慮した計画となっている」との答弁を聞き、市のバリアフリーに関する意識の高さを感じ嬉しく思っておりました。同時に、上総牛久駅は市の南玄関であり、その場所から、市のバリアフリー度を発信できるチャンスだと思っていました。ところが完成したトイレをみると、車椅子対応ではあるもののオストメイト対応の設備はございません。
トイレ設置については、第3回アートミックスの当初開催予定(2020.3月)に合わせるために市からの発注では時間を要することから、事業者と協定を結び設計・施工を一括して委託。実際の設計・施工は再委託されています。
そこで確認させていただきます。事業者とどのような協定を締結されたのでしょうか。
(経済部長)
上総牛久駅前のトイレの整備に関する協定内容等について、お答えいたします。
本事業は、本市における観光振興の中心である南部地域の玄関口であり、トロッコ列車の発着地にもなっている小湊鉄道上総牛久駅前に、観光バスなどにも対応した公衆トイレを整備することを目的としたものであります。
このため、駅施設や建設用地を管理・所有する小湊鉄道株式会社と事業の適正かつ円滑な遂行を図り、相互に協力して施工にあたることを目的に、両者で「牛久駅前公衆便所新築工事等の施行に関する協定書」を締結いたしました。
具体的な協定内容は、用地を管理・所有する小湊鉄道株式会社が施工に関することを担うこととし、工事に要する費用は、総額概算として、その範囲で市が負担すること。
また、工事費にかかる計画予算として、別添に実施設計委託費や建築工事費、施工監理費といった予算区分や、その内訳となる便器数や水洗器具等の概算額を掲載しております。
協定における上総牛久駅前のトイレの整備では、本工事箇所は駅構内のバス転回広場に位置し、利用客の安全等を考慮する必要があることから、用地を管理・所有している小湊鉄道株式会社に委託したところであります。
したがいまして、この工事の設計・施工に関しては、小湊鉄道株式会社が発注者となり、全体の施工管理を行うこととしております。
市は、事業主体として、工事等の施行にあたり、小湊鉄道株式会社と相互に協力するものとしております。
予算審査時の積算根拠がオストメイト対応だったので、協定に明記していないというのであれば市のミスではないでしょうか。
*上位計画との不整合
市原市観光振興ビジョンの戦略3魅力のある観光地づくりにおいて「 観光地を訪れる全ての人が、より快適に使えるよう、ユニバーサルデザインに配慮した観光地のトイレ整備を行います」と謳っています。
また、市のバリアフリー基本構想では、国が定めたユニバーサルデザイン2020行動計画に基づき、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を契機としたまちづくりへの展開を図るため、観光地のバリアフリー化を推進する、と記されています。
ユニバーサルデザイン2020行動計画では、トイレの利用環境の改善として、障害のある人の外出を妨げる大きな要因を解消し、車椅子利用者だけでなくオストメイトなどの内部障害や発達障害等見た目だけではわかりにくい障害のある人に配慮するよう求めています。
このようなビジョンや構想からしても、オストメイト対応は必須でなければならなかったはずで、バリアフリーへの意識が欠如していたと言わざるを得ません。
そこで、今後の対応についてお伺いします。
(経済部長)
上総牛久駅前のトイレの整備につきましては、令和元年度事業といたしまして、6月から設計・施工に着手したところでございます。
しかしながら、令和元年の度重なる台風や大雨被害に伴う工事の遅延、新型コロナウイルス感染症の拡大による工事現場の人員制限や、トイレなどの設備部材の供給への影響が生じたことにより、2度の工期延長を行ったのち、令和2年11月に完了を確認し、トイレの引き渡しを受けたところでございます。
このような状況の中で、予算面及び時間的な制約から、数度の内容変更が生じ、当初計画していたユニバーサルデザインに配慮したトイレの整備は、車椅子対応や手すり、温水暖房便座の対応など一部にとどまりまして、オストメイトは未整備となったところでございます。
しかしながら、この場所、多くの人が集まる拠点となる観光トイレは、多様な方々が利用しやすいようユニバーサルデザインに配慮することが重要であると考えております。
このような観点から、上総牛久駅前のトイレのオストメイトに関しましては、設置に向け、小湊鉄道株式会社と前向きに協議をしているところであり、このほか観光拠点となる既存トイレにつきましても、改めてユニバーサルデザインの観点から点検を行い、必要な設備の充実に向けて検討してまいります。
では、その財源についてはどうお考えでしょうか
(経済部長)
本協定につきましては、県の補助金を受けまして完了、引き渡しを受けております。今回、デザインビルドということで、いろいろと内容変更がございました。
今後につきましては、その負担面も含めまして、小湊と今、協議を行っているところでございます。
オストメイト対応にするために更に税金が投入されるのかと思うと、手放しには喜べません。
市のバリアフリー基本構想の方針には、高齢者や障害者が感じているバリアを理解し、互いに助け合い、支え合う「心のバリアフリー」を一層充実させるとあります。その意識を誰よりも行政にもっていただきたいのです。
*再委託の問題
再委託を承知の上で事業者と協定を結んだのであれば、当初市が計画していたものを成果物とすべきであったし、設計変更についても市が直接発注していれば把握できたことです。
再委託の問題は他にもあります。養老川臨海公園にあるバリアフリートイレの清掃も指定管理者から再委託。毎週清掃していると伺いましたが、ボルトが緩んだ便座はガタガタ動き、数ヶ月は放置されていたと容易に想像できる状態でした。身体に障害がある人がバランスを崩せば大事故を引き起こしかねません。
そこで、これらの問題を通して再委託の状況管理については、対策を講じる必要があると思いますが、ご見解をお伺いします。
(財政部長)
再委託の適切な管理について、お答えをいたします。
市では、公共施設の維持管理をはじめ、様々な業務を外部に委託しておりますが、委託にあたりましては、委託業務内容に齟齬が生じることのないよう、仕様書等で可能な限り具体的に業務内容を明示しております。
受託者は、この仕様書等に基づいて業務を行い、一方、市は発注者として、当該業務が適切に履行されるよう管理し、監督しなければなりません。
受託者が受託業務の一部を、市の承認を得て再委託する場合がございますけれども、この場合についても、受託者と再委託者との間で、仕様書等で業務内容を明確にし、受託者は、発注者として再委託業務が的確に履行されるよう、再委託者を管理・監督する必要がございます。
議員からご指摘のございました事例につきましては、受託者と再委託者との間で、施設の不具合等があった場合の報告が、仕様書等に明示されていなかったこと、あるいは明示はされていたものの、これが徹底されておらず、受託者が再委託者を管理・監督できていなかったこと、これが要因と考えております。
市といたしましても、発注者といたしまして、受託者を管理・監督する責任がございます。
このことを踏まえまして、今後速やかに、施設管理委託等のうち再委託に係るもの全件について、仕様書等の再点検を行うとともに、市と受託者との間での管理状況の情報共有について、全庁に周知徹底し、再委託の一層の適正管理を推進してまいります。
市民にとっては公共工事・公共施設の管理責任は市にあると思うのが当然のこと。
アウトソーシングは良いが、手が離れれば離れるほど、それを上手く活用できているか否かの状況把握が求められます。しっかりと仕組みを作っていただくようお願いします。
2)公共施設におけるバリアフリーの基準について
上総牛久駅前のトイレについては、オストメイト対応の不備だけでなく、当初の予定に乳児のオムツ交換台さえ含まれていなかったのも残念でなりません。
先ほど市の観光振興ビジョンやバリアフリー基本構想について触れましたが、どんなにビジョンや構想を掲げても、実際にどのように整備するのかを各部署で考えるのは非効率だと感じています。今後は公共資産マネジメントが本格的に動き出し、公共施設の統廃合が進められることから、
トイレの問題を通して、公共施設におけるバリアフリーの整備基準を設けてはどうかと考えますが、ご見解をお伺いします。
(都市戦略部長)
公共施設におけるバリアフリーの基準についてお答えいたします。
本市の公共施設につきましては、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」いわゆる「バリアフリー法」や、「千葉県福祉のまちづくり条例」で定められた基準に基づき、整備を進めております。
加えて、本市において「公共建築物のバリアフリー化方針」を策定し、多様なニーズに対応するため、施設ごとに異なる建築物の形状、目的、使用方法等を考慮したバリアフリー化を検討するものとしております。
市といたしましては、施設ごとにきめ細かくバリアフリー化を図るとともに、庁内横断的に設置した「市原市バリアフリー推進調整会議」等を活用し、効率的かつ効果的にバリアフリー化を推進していくことで、誰もが暮らしやすいまちづくりの実現を目指したいと考えております。
第1庁舎建設時には階段の手すりやストレッチャーが入れるエレベーターなど、仕様の変更により増額された事例もありました。
まずは法律に則って、その上乗せ部分を施設に応じて検討していくということでしょうが、予算にも係わってくることなので、できるだけスムーズに対応できるようお願いします。
2.共生社会の実現に向けた取組みについて
1)インクルーシブ教育について
*重度障害があっても共に学べる環境を
インクルーシブ教育とは、2006年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示されたもので、障害のある子どももない子どもも共に教育を受けることで、子どもたちの多様性を尊重し、障害のある子どもが精神的にも、身体的にも最大限まで発達できるよう、また、社会に他の子どもと変わらず参加できるように支援していくという教育方針。これは「共生社会」の実現を目指すものです。
私は自分自身の子育て経験からも、インクルーシブ教育が共生社会の実現につながることを確信し、たとえ重度障害があっても地元の学校に通うことの意義を感じてきました。例えば災害時に、周囲の理解を得られず避難所に行くことを躊躇したという話もあります。障害への理解は決して道徳など机上の勉強で得られるものではなく、共に過ごした経験がなければあり得ないこと。
市では就学相談の際に保護者の意見を聞き取り、就学先を決定しておられます。その際に当初から特別支援学校を希望される保護者もいると思いますが、中には地元の学校への通学に漠然とした不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。
うちの子のような重度障害児が通学していた前例がない、もしくは聞いたことがないなど、最初から諦めていたという保護者の声を耳にし、残念に思ったことがありました。
就学相談において重度障害児が地元の学校に就学した割合はどれくらいだったのか。また、特別支援学校を希望された方の理由について、お伺いします。
(学校教育部長)
重度の障がいがある児童生徒の地域の学校への就学についてお答えいたします。
市原市では、教育大綱「未来へつなぐ いちはらの教育」の基本理念のもと、あらゆる子どもたちへの支援体制の充実を掲げ、インクルーシブ教育システムの構築に向けて教育内容や方法の改善充実に取り組んでいるところです。
過去2年間で、就学相談のあった重度の障がいがある児童生徒のうち、地域の学校に就学した方は、約5%です。
特別支援学校の就学を選択した保護者からは、子どもの特性に応じた教育内容、及び少人数で複数の担任配置のある中で、きめ細かな支援や指導を受けることができると考え、希望したと伺っております。
一般的に特別支援学校は専門性が高いといわれていますが、その言葉に甘えていては、インクルーシブ教育は進みません。
重度障害児の保護者が地元の学校に関心を寄せ通学させたいと思ってもらえるよう、就学相談の場だけでなく学校側からもアプローチしていただきたいが、如何でしょうか。
(学校教育部長)
市原市教育委員会では特別な支援を必要とする幼児の保護者に対して、発達支援センターとの共催により就学説明会を開催し、就学に向けた相談の進め方を説明するとともに、市立小学校の通常学級や特別支援学級、市内の通級指導教室、及び県立の特別支援学校などの進学先について、見学することを勧めております。
また、指導主事が当該幼児と保護者の全員と面談を行い、希望があった場合には、指導主事や相談員が学校見学に同行し、個に応じた適切な選択ができるよう支援をしております。
見学先の学校では、学校教育目標や教育課程について説明するほか、教室・階段・トイレ・グラウンド等の学校施設を案内したり、授業や休み時間の子どもたちの様子を見てもらったりする中で、質問や要望等を伺うなど、子どもや保護者の気持ちに寄り添った対応をしております。
教育委員会としましては、今後とも学校と連携し、保護者への十分な情報提供を行うとともに、丁寧な話し合いによる合意形成のもと、就学先を決定してまいります。
一度は見学に来て欲しいというメッセージも必要ですが、それよりも学校側から受け入れを前提とした気持ちを伝えてほしいのです。そのアプローチがあってこそ、保護者の気持ちが動くと思っています。
*医療的ケア児の就学 学校での受け入れ体制の準備は?
以前議会で実際に市内に住むお子さんを事例に取り上げ、医療的ケア児の教育・保育施設、学校での受け入れについて質問させていただきました。
今年度から公立認定こども園(2園)において、痰の吸引・導尿・経管栄養を対象とした医療的ケア児の受け入れ体制が整備されましたが、そのお子さんは公立認定こども園よりも早く受け入れ体制を整えた私立の幼稚園に昨年度から通い、他の子ども達と共に集団生活を送っておられます。
この先2年足らずで就学を迎えることになりますが、学校での受け入れ体制の整備について、現状と今後のスケジュールをお聞かせ下さい。
(学校教育部長)
市原市教育委員会では、先に述べましたインクルーシブ教育の構築をはじめ、SDGsに掲げる目標の実現に向けて、すべての子どもたちが平等に望む教育を受けられるよう、必要とする児童生徒に医療的ケアを提供し、その実現を図ってまいりたいと考えております。
国においても、令和3年6月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立し、「学校設置者は、在籍する医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する。」とされました。
現在、この法律等に基づき受け入れるための「市原市立学校における医療的ケアガイドライン」を今年度内に策定するため、医師、学識経験者、関係機関の代表者及び保護者の代表等で構成する特別支援等連携協議会の意見を伺うなど、準備を進めております。
なお、策定中のガイドラインにつきましては、医療的ケアの内容や実施者、及び受け入れの手続き等を盛り込むことを予定しております。
今後は、市立学校での受け入れに向けて、ガイドラインの作成を進めるとともに、医療的ケアが必要な子どもの情報を収集するなど、関係部署と連携し準備を進めてまいります。
保護者や通園している施設、かかりつけ医などと話し合いを重ね、安心して就学できるように進めていただくようお願いします。
2)成人式について
*誰もが参加しやすい成人式へ
市原市の成人式は、新成人が社会の形成者・推進者としての自覚を深め、自ら研鑽に励むよう意識の高揚を図るとともに、彼らを守り育ててきた地域社会を挙げて祝福するため、市内12カ所で地区ごとに実行委員会を組織し、地域が主体となって企画・運営を行っておられます。
市原市の成人式の参加率は、会場を1カ所に絞って運営している他市よりも高いのは、地域のつながりや仲間意識が感じられるゆえなのであろうかと思っています。
私が伺った会場では、在学していた中学校別に座席が用意され、当時担任されていた先生方が祝辞を述べるというスタイルで、同窓会のように盛り上がるシーンを目にしてきたが、その度に特別支援学校や私学などに通学していた新成人の居場所がここにあるのだろうかと感じてきました。
来年4月には民法改正に伴って成年年齢が18才に引き下げられる事になりました。そこで市は来年度の成人式の対象者についてアンケートを行い、その結果等を踏まえてこれまで通り20才を対象者とされていますが、私はこれを機に新成人が共生社会を意識した企画運営を試みてほしいと願っています。
誰もが参加しやすい成人式にしていくための取組みについてお伺いします。
(生涯学習部長)
本市では、新成人の方々が社会の構成員としての自覚を深め、自ら研鑽に励むよう意識の高揚を図ることを目的に、成人式を行っております。
実施にあたりましては、新成人の方々を守り育ててきた地域社会が中心となり、地域の実情に即しながら、個性的で温かみのある式とするため、市内12地区において、新成人や地域住民の代表からなる地区実行委員会を組織し、企画・運営を行っていただいているところでございます。
このため、式典の演出や会場レイアウト等に地区の独自性が反映されておりますが、議員ご指摘のとおり、学校別に座席を区分する会場も一部にあり、新成人の心情に寄り添った対応が必要であるものと認識しております。
市といたしましては、卒業した学校や障がいの有無に関わらず、誰もが参加しやすい成人式とすることが肝要であることから、令和4年成人式の実施に向け、実行委員会に対し、中学校別などの座席区分は行わず、参加者が自由に着席できるようにするとともに、車椅子等を利用する方に配慮した座席スペースの確保などを強くお願いしてまいります。
また、コロナ禍での開催となるため、感染防止対策として、会場への入場及び式への参加は新成人の方のみとさせていただきますが、介助等付き添いが必要な場合は事前にご相談いただくことにより、当日の入場を円滑にご案内してまいります。
今後も、新成人となる方の誰もが参加しやすい成人式となりますよう、地区実行委員会との連携のもと、共生社会への意識を共有しながら、取り組んでまいります。
特別支援学校に通学していた人にとっては、成人式への参加はハードルが高いものです。例えば聴覚障害者のために手話通訳を用意する、車椅子席を設けるなどの工夫や、それを式典の案内状で伝えるという事も考慮していただけたらと思います。
共生社会の実現は、互いを知ること、そして「今ここにいない人に思いを馳せる」ことから始まるものと思っています。