令和5年第3回市原市議会定例会 令和4年度決算 総括質疑・意見陳述 小沢みか

総括質疑

初めに質疑を行います。

庁舎強靱化対策事業におけるコンストラクションマネジメントについて

第2庁舎等の老朽化や耐震不足に対する抜本的対策として、令和3年度に新庁舎整備に向けた「庁舎等整備基本計画」が示されました。

R4年度からは基本設計の策定作業に入っている段階で、先月その中間報告が出されたところです。

ところがその中で概算事業費が当初の計画より25億2,000万円上積みされており、特に障害者駐車場乗降用キャノピー6台分・1億2,000万円については、先日の総務分科会でも取り沙汰されました。

そもそも同事業は管理支援業務が委託されており、市はコンストラクションマネジャー(CM)とコストや品質の管理、基本設計業務受託者との調整などについて、こまめな連携のもとで進めていると受け止めておりましたので、今回のような疑義が生じる事態に私共も驚きを禁じ得ませんでした。

そこで改めて、R4年度からCMと適切に連携が取れているのかどうかや、今後このような事態を招かないための方策について、見解を伺います。

※概算事業費143億7,000万円

(総務部長)

通常、建築物を建てようとする場合、基本計画、基本設計、詳細設計を設計事業者に委託し、その後に設計に基づく建築工事が施工され完成となります。

しかしながら、庁舎をはじめオフィスや商業施設、医療施設、ホテルなどの大規模建設プロジェクトでは、基本構想から基本計画、設計業者・施工業者の選定、設計マネジメント、施工マネジメントなどさまざまな業務が発生し、プロジェクトの規模が大きいほどそのプロセスは複雑になり、課題が生じます。

そうした問題を解決し、設計会社や建築会社と対峙し、発注者側の立場になり建築プロジェクトを支援するのが、「コンストラクション・マネジメント」となります。

このことから、新庁舎の整備に当たり、本市では事業方針をはじめ全体工程、事業予算、発注方式の検討など事業計画の策定に設計事業者と同レベルの知見を有するコンストラクションマネジメント会社の支援を受け、進めているところでございます。

その成果といたしましては、「設計業務委託候補者の評価方法の立案、プレゼン資料に対する評価アドバイス」、「設計業者との契約内容の確認」、さらには「施工スケジュール」や「設計」に関する妥当性の評価、「リスクの洗い出し・対応策の提案」の支援により、滞りなく業務を進めてこられたものと評価しております。

なお、今回議会へ中間報告いたしました、基本設計概要につきましては、議会への説明時に合わせて設計会社から取り寄せた生の情報となっており、現在、コンストラクションマネジメント会社にて、建築資材の妥当性やコストなど市の要求水準との検証を鋭意行っているところでございます。

この中で、今回ご心配をいただきましたキャノピーの設計では、設計会社は強固で出来栄えも良い最新の資材を使用した内容で報告をあげてきたところですが、これを第一庁舎と同等の部材に変更した場合等考慮しますと、約37%のコストダウンが図れるとコンストラクションマネジメント会社の意見を先日聴取したところです。

今後は「工事費の査定」や「設計図書の審査」など、設計者から提示された成果物を細部まで検証し、コストダウンや設計改善を図るとともに、建設工事の発注支援業務に当たることとなります。

 その後の工事段階では、工事の進捗状況を確認し、追加工事が発生した場合の必要性の精査、竣工検査への立会いを行っていただきます。

市といたしましては、引き続き、コンストラクションマネジメント会社の支援を受け、品質の確保、コスト削減に努め、新庁舎の整備に取り組んでまいります。

CM委託の契約額は、R5年度までの継続費として計5,600万円。マネジメントフィーが発生している以上、その機能が存分に活かされるよう、より徹底した取り組みを求めます。


一般会計の基金のあり方について

財政調整基金のR4年度末残高は104億5,000万円。もともと近年は高い値で推移していましたが、ついに100億越えの過去最高規模となりました。

標準財政規模(567億円)に対する割合は18.4%。行革アクションプラン2022で定めた目標額の基本指標は10%相当額以上とされていますから、指標に沿っていると言われればその通りです。

しかし、財政調整基金は使途に制限が無いため、残高が必要以上に高くなるほど、時の判断で計画性の低い事業に安易に使われる可能性も高くなります。

事実、財政調整基金条例では基金を処分できる場合として、災害などやむを得ない事情がある場合に限定していますが、近年はどうもその規律が緩んでいるように感じています。

標準財政規模の10%を超えればよしとするのではなく、適正な規模を保つ必要があると考えます。

当局は、法及び条例により決算剰余金の二分の一の額を財政調整基金に編入しています。今後決算剰余金については、直接編入または翌年度積み立て及びその割合などについて、公共施設整備基金・拠点形成基金といった重視すべき特定目的基金に、計画的に振り向けるようルールづくりを検討しては如何でしょうか。

ご見解をお聞かせ願います。

(財政部)

委員ご提案の、基金積立ての計画的なルール作りにつきましては、財政需要への的確な対応や規律ある財政運営の点から、大変重要な視点であると考えております。

現在の本市の基金積立の考え方を申し上げますと、

財政調整基金については、災害への的確な対応や税収の大幅な変動にあっても安定的な財政運営に向け確実に準備すべき自主財源であります。目標とする50億円は、常に確保すべき最低限の額と捉え、その確保を一つの財政規律として毎年の予算編成にあたっております。

そこで、前年度決算剰余金について、財政調整基金条例では、決算後ただちに本基金に編入することを可能としておりますことから、先ずは本基金に当該剰余金の2分の1相当を積立てることとしております。

そして、その後の予算編成の中で、他基金への積み替え等も含め対応を図っているところであり、財政調整基金の令和5年度末は61憶円等いうことで予算編成を行ったところであります。

 一方、目標額を設定する、もう一つの基金である公共施設整備基金につきましては、公共施設の老朽化に伴う大規模な財政需要に的確かつ確実に対応するため、先の新行財政改革大綱策定の中で新たに目標額を定めたものであり、直近の3年間で70億円を超える大幅な積み増しを行なってまいりました。

これら目標額を設定する2つの基金をはじめ、他の特定目的基金につきましても、今後の活用見通しや財政推計を踏まえた、一歩踏み込んだ計画的な積み立てといった取組は、健全で持続可能な財政運営を図るうえで重要な方策と考えますことから、その具現化に向け引き続き検討を進めてまいります。

今後控える幾多の大規模事業への対応に向けて、特に特定目的基金の確保策は重要なテーマとなろうかと思います。

ぜひ検討をお願いします。


意見陳述

それではこれより意見の陳述を行います。

(「選択と集中」の具体的な提案)

まず冒頭、私たちはこれまで施策並びに事業の「選択と集中」について、積極的かつ適切に進めて頂くよう都度申し上げてまいりました。

そこで今回の分科会審議では、例えばゴルフ場巡り33事業や地域おこし協力隊事業など、敢えて事業の改廃に係る具体的な提案にも意を用いたつもりです。

ここでは総合的な見地からの陳述に留めますが、個々個別の事業については分科会で申し上げた内容も合わせて重々ご勘案頂くよう、予め要望いたします。

人口ビジョンとまちひとしごと創生総合戦略について

R4年度は総合計画の総仕上げに向けた後半の5年間がスタートした年でしたが、残念ながら27万人堅持という重点目標はますます遠のいてしまったと感じざるを得ません。

また、R4年度は第2期まちひとしごと創生総合戦略の3年目の年でした。

同戦略では、新たな時代の流れを取り入れながら、定住人口27万人の維持、交流人口500万人への拡大、関係人口の拡大、若者・女性をターゲットとした施策展開を掲げていますd。

KPIは20~39歳の人口ですが、こちらもH27(2015)年(63836人)の基準値からR5年4月時点(55259人)で約8600人減少。展望値にはほど遠く、毎年1000人以上の若者が減少していることになります。

本市はR4年度から地方創生部を組織し、戦略として南部の里山を中心とした施策に力を注いでこられました。

各担当部局では所管事業に真摯に取り組まれており、実績値も好調に推移している事業も少なくありませんが、それがなぜ人口ビジョンの成果に現れないのでしょうか。

そもそも目標設定がそぐわなかったのか、手法が噛み合っていないのか。また見込みが甘かったり、国や他自治体の動向に翻弄されたりといった事も、多分にあったのではないでしょうか。

本市は今後新たな総合計画の策定作業が本格化いたします。

同時にまちひとしごと創生総合戦略も国が掲げるデジタル田園都市国家構想総合戦略にシフトしていく事になろうかと思いますが、これら計画が「絵に描いた餅」とならないよう、改めていま一度「本市にとっての地方創生とは何か」問い直して頂くよう切に願います。

女性の視点の反映について

分科会審議では、事業設計や取り組みにおいて、如何に女性の視点が反映されていたかという点にも着目しましたが、未だ改善の余地があると感じました。

総合計画では、27万人の維持のためには20代・30代の女性について毎年30人程度の転出超過を減らす必要があるとしていますが、その割には女性に焦点を当てた指標やデータはほとんど見当たりませんでした。

例えば産業創造拠点整備に係る取り組みにおいて、若者・女性をメインターゲットに据えているにも関わらず、その決定過程での意見聴取やデザイン会議への女性の参画は、まだまだ少ない状況にあります。

各種審議会や未来創生ミーティングなども、組織の代表に男性が多いことから必然的に男性の割合が高くなる傾向にありますが、極力女性の選出を求めるなど何らかのポジティブアクションが必要です。

公共資産のメンテナンスについて

分科会審議では、道路、公園、上下水道、建物などあらゆる公共資産の老朽化が年々深刻化していることを実感しました。

現在、公共資産マネジメントとして事後保全から事前予防へのシフトを目指してはいるものの、事後保全すら追いつかない状況です。

近年は毎年のように激甚化する災害に見舞われる恐れが生じています。

災害時に機能不全に陥るリスクを低減するためにも、インフラの更新や維持補修を迅速に推し進めるための予算措置や、いざという時には機動的な対応を取ることができるよう、職員の体制確保・充実を図るよう要望します。

PDCAサイクルについて

今回、事業シートを初めて主要な決算資料として扱いましたが、特に自己評価分析については客観的なデータに基づいておらず、原因まで深掘りした分析がなされていない事業が少なくないことが、より露わになりました。

また、アウトカムと実績値の関連性が曖昧だったり、目標値すら設定されていなかったりする事業も散見されました。

果たしてこれでPDCAサイクルが機能しているのでしょうか。

R4年度の重点的取り組みに「バックキャスティングによる施策の展開」という方針が掲げられていただけに、目指す姿や事業展開までのロジックが共に曖昧である状況は致命的とも言えるのではないでしょうか。

R4年度は統計調査室から政策マーケティング室へ組織改編がなされましたが、まずはEBPM(客観的なエビデンスに基づく政策立案)に対する庁内の一定レベルの共通認識が必要です。

今後、統計データや趣向を凝らした各種アンケートの活用がより進むよう期待します。

財政について

一般・特別・企業合わせた全会計の決算は、歳入約1,814億円、歳出約1,767億9,000万円。共に前年度から減少しましたが、コロナ禍前の水準に戻りつつあるとも言えます。

一般会計を予算額と比較すると、歳入で市税が約23億2000万円増加しており、特に法人市民税が28.1%・約10億1,000万円の増と当初の想定を更に上回り、主に臨海部企業の業績回復が予想以上に堅調であったと推量されます。

新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金については、総額約15億9,600万円が充当されました。

これはあくまでも当方の判断による手計算ですが、充当額のうち、緊急的な救済措置・感染予防・非接触といったDXの取り組み以外の、コロナ禍との関連性が低いと思われる事業(いちはら魅力再発見ツアーなど)に対する拠出は、約1億600万円でした。充当額全体の6.6%で、前年度より精査された様子が伺えます。

交付金の申請に当たっては、例え交付が停止しても取り組むべき事業かどうかなど、目的と手法をよくよく勘案され、適切な予算組みと執行に努められるよう要望いたします。

財政指標については概ね適正と判断できます。

実質単年度収支は9億8,342万円の赤字で2年連続の赤字となりましたが、R4年度決算資料から追加された指標として、財政調整基金編入額も加えた【実質的な実質単年度収支】は22億2千万円の黒字であり、より実態に即した指標として納得した次第です。

組織体制について

振り返ればR2年度、公共資産マネジメント・拠点形成・公共交通の3部門を一体的に推進するため都市戦略部が創設されました。

ところがその僅か2年後のR4年度にその3部門を解体。教育委員会の所管から文化財保護関連以外の文化に係る事務を移し、新たにアートとゴルフ中心の文化・スポーツ・観光を基軸とした市南部の里山エリアの活性化を担う、地方創生部が誕生しました。

私たちは、この組織改編が南部の地域経済の活性化や市全体の人口問題の解消への呼び水になっているかどうかについては、甚だ疑問に感じています。

この妥当性については、総合計画やまちひとしごと創生総合戦略の最終年度に自ずと鮮明になるのではないでしょうか。

(まとめと結論)
以上種々申し上げましたが、新型コロナウイルス感染症対策や物価高騰など激動の社会状況にあって、地域社会のニーズに臨機応変に対応すべく計8回に及ぶ補正予算を組み、感染の再拡大防止や地域経済への影響を最小限とする取り組みを、迅速かつ着実に進められたことに対して、高く評価しています。
その他にも、例えば市原版スクールソーシャルワーカーの配置、小中学校における医療的ケア実施体制の確立など、特に子どもに係る意欲的な新規事業が目立ちました。
企業版ふるさと納税の活用やSDGsの裾野を広げる取り組みなど、地道ではありますが当局の熱が伝わる取り組みも多く、今後への期待感が持てたことなど、総じて評価に値します。
 
R4年度は課題も多い予算編成ではあったものの、概ね規律ある執行に努められたものと認め、市民ネットワークはR4年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計決算について認定できるものといたします。

以上意見陳述とします。