令和6年 第1回市原市議会定例会 予算審査総括質疑・意見陳述 小沢みか

市民ネットワーク 小沢美佳です。会派を代表し、初めに質疑を行います。

総括質疑

(1)観光行政のあり方について

一般社団法人市原市観光協会は、R5年度財政援助団体等監査において、不適切な会計処理や債務超過などの指摘を受けました。
これまで市は、同協会の運営・事業に係る資金の大半を交付しており、R6年6月までにその実態調査と原因究明を行うとともに、同協会の今後のあり方を含む再建策の検討を行うとのことです。

R6年度予算案では、同協会の関係経費の多くが削減されています。
同協会は、実質的に市の観光施策の一翼どころか中核的な役割を担ってきたと言っても過言ではありません。

特に市原DMOの設立・運営を通じてその傾向が顕著となり、それに伴って行政側の協働の意識や現場感覚が薄れていったのではない。それがこの一連の問題を大きくした要因の一つと推察しています。
市の責任は非常に重いと同時に、観光行政のあり方そのものが問われる重大な局面にあることは間違いありません。

協会の今後についてはこの場で申し上げる事はありませんが、いずれにせよR6年度以降の観光施策の推進体制をどのようにするか。当座は最低限の事業でしのぐとしても、市は大きな岐路に立たされていると言えます。
すなわち、これまでのように外郭団体に観光行政の主軸を任せるのか、あるいは市が直に担う覚悟で出直すのか。その線引きをどこに定めるのか、という問題です。

私は、この際市が引き受けてゼロから再構築する覚悟を見せてほしいと思っています。庁内にそれだけの危機感が無ければ、いずれまた同じ事を繰り返すに違いないからです。

本市は、飯給駅前や上総牛久駅前に多額の予算をかけ立派なデザイナーズトイレを設置し注目を集めてきました。
その一方、養老渓谷の市境にある駐車場は、紅葉シーズンともなれば100台を越える利用があるにも関わらず、トイレは未だに和式で、清掃も週1回まで。余りの汚さに使用を避ける観光客が後を絶たず、見兼ねて掃除をする方も現れる始末です。

これは一つのエピソードですが、このような状況を訴えても永年放置しているところに、市のスタンスが端的に表れています。どこか他人事で、観光振興ビジョンに掲げる「おもてなしの心」を無くしているとしか思えません。

従ってR6年度は、基本に戻って身の丈に合った着実な観光行政を構築するスタートの年として頂きたいのですが、当局のご見解を伺います。

 

(稲垣副市長)

市原市では、人口減少や少子高齢化が進行する中で、持続的・安定的に交流人口・関係人口を拡大させるため、市の重要施策の一つとして観光振興を位置付けて、取組を推進してまいりました。

 北部地域には日本有数の石油化学コンビナートが立地する一方で、南部地域には養老川の恵みがもたらす美しい田園風景が広がり、一つの市の中で異なる顔を持つ本市の特徴は、観光振興を進める上で、大きな強みになると考えております。

 力強く美しい工場夜景や小湊鉄道のレトロな駅舎、日本一の数を誇るゴルフ場、日本一遅くまで紅葉が楽しめる養老渓谷ほか、チバニアンや数多くの歴史遺産など、未だに市外の方に知られていない観光資源も多く、これらをしっかりと磨き上げて広く発信していく必要があります。

 また、今月23日からは、「百年後芸術祭 内房総アートフェス」が始まります。こうした機会を捉えて、来訪客に本市の魅力を伝えるためには、観光・地域づくりの関係団体と連携するとともに、「市原市観光振興ビジョン」の目標に掲げているように、誰もが「訪れたい、また来たい」と思うようなまちの実現を目指し、おもてなしの心を大事にする必要があります。

 この度の市原市観光協会を取り巻く問題につきましては、指導監督を行う立場として、その責任を痛感しております。
 不適切な会計処理等の実態調査・原因究明を行うため、先月、市役所内に私を本部長とする対策本部を立ち上げたところであり、補助金執行に係る指導体制の見直し等を進めてまいります。
 あわせて、観光振興に携わる市職員が自ら現場に足を運び、地域の皆様と対話を行うなど、観光行政の基本に立ち返って、あるべき推進体制の構築に努めてまいります。


9月までには再発防止策を構築されるとのことですが、単に補助金執行手続きや指導体制といったテクニックに留めてはなりません。
二度と同じ事態を引き起こさないためにも、また観光行政を立て直すためにも、観光行政そのものへの向き合い方や施策推進体制のあり方まで踏み込んだ抜本的な改革を望みます。

(2)行財政改革の効果額の考え方について

資料によると、R6年度予算における効果額は、15項目合わせて約15億2,000万円が見込まれるとしています。
数値だけを見ればかなり大きな効果と取れますが、その中身については正直首をかしげざるを得ません。
その理由を3点申し上げます。

まず「有利な市債の活用」・効果額約4億2400万円。
当局が「有利」とする根拠は、地方債元利償還金の70%など一定割合が、交付税措置されるところにあります。

しかし、今さら申し上げるまでもありませんが、ここで言う「措置」とは、あくまでも基準財政需要額に加算されるという意味であって、交付団体となって初めてその恩恵にあずかることができるものです。

幸か不幸か本市は不交付団体の常連であり、事実R6年度も不交付団体として予算組みされています。従って、効果額とする4億2400万円が将来交付される可能性は極めて低いことから、これを行財政改革の効果とすることには違和感を禁じ得ません。

2点目「国民健康保険料や介護保険料の見直し」・効果額約10億6000万円。
これは一般会計から特別会計への法定外繰入の削減額を指すと思われますが、その実態は保険料の値上げによるものです。
果たして、市民の負担と引き換えの歳出削減を「効果」と言って良いのでしょうか。

3点目・福祉手当の見直し・効果額約1160万円についても、その中身は65歳以上の新規障害者を対象外とすることによるものであって、こちらも市民サービスの削減と引き換えの「効果」です。
さらに驚くことに、効果額の合計約15億2000万円のうち、今申し上げた3つの事務事業群で98%を占めてしまっています。

改めて行財政改革の効果額の考え方について、当局のご見解をお聞かせ願います。

(財政部長)

令和6年度当初予算(案)の概要でお示ししました行財政改革の効果額については、新行財政改革大綱で掲げる改革の5本の柱の重点項目、取組方策に沿って見直した事業を中心に、その効果額をお示ししたところであります。

委員からご質問のありました3つの項目につきましては、「有利な市債の活用」は、事業費に対する起債の充当率が高い、あるいは交付税措置のある地方債の活用による特定財源の確保、「市原市福祉手当」は、類似事業の有無や他自治体とのバランス、効果の検証による社会保障関連経費の抑制、さらに、「保険料の見直し」は、特別会計・企業会計の健全な運営という、それぞれの方策に基づく取組であります。

行財政改革は不断の取組によりまして、令和6年度予算案では、掲載事業のほかにも見直した事業もいくつかございますが、概要には代表的なものとして掲載をいたしました。

行財政改革の効果を適切に示すことは、市民から信頼される行政の推進、さらには、職員の行財政改革への意識向上にもつながるものと考えておりますことから、今後とも、その効果がより伝わるよう、事業選定や示し方の改善に努めてまいります。

 市民の負担を増やせば効果額が増えるにきまっています。単なる収支あわせを改革と定義するのであれば、行財政改革大綱そのものを見直さなければなりません。
 確かに、分科会審査を通して「里山コミュニケーション推進事業」「地域共創プロジェクト事業」「サーキュラーエコノミー普及促進事業」など、立ち止まって再検討したり、統合したりといった行政の意向を感じとれる場面も多数ありました。
 ならばぜひこういった努力や創意工夫も行財政改革の効果として「見える化」して頂きたい。

 結局、行財政改革は誰のために・何のために行うのかという視点で、今一度問い直して頂くよう求めます。

意見陳述

それでは引き続き、特に気になった点に絞って意見陳述を行います。

重点的取組事項「こどもまんなか社会の実現」について

 まずR5年度版の実行計画の都市像から「子ども若者、子育て世帯に選ばれるまち」というフレーズが消え、「今住んでいるこども若者、子育て世帯のために」という視点にシフトしたことは大変喜ばしいことです。

 予算案にも、若者の居場所づくり新たな児童発達支援センターの整備教育保育施設への特別な配慮が必要な児童の受け入れ体制の強化、子どもの学習支援・生活支援の拡充など、永年懸案だった課題に向けた事業が目立ち、新たな視点が確かに落とし込まれていることが感じられました。

 引き続き当事者や現場の声に耳を傾けることで、サービス内容をブラッシュアップさせて頂くよう要望いたします。

 一方、R6年度は重点項目に学校教育の視点がほぼ見当たらない事が気になりました。
 これまでハード整備は比較的先進的に取組んでこられましたが、学校教育の質の向上も残された大きな課題です。
 子育て世帯が転居を考える際の最も強い動機の一つは、実は子育て環境ではなく教育環境だという話をよく耳にします。基礎学力の向上はもとより、独自性を打ち出した魅力あるカリキュラムなど、今後は教育の質の向上に一層取組まれるよう要望します。

重点的取組事項「誰一人取り残さない包摂的な社会の実現」について

 R6年元旦に「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」が施行されたことから、本市の予算編成も特に男女共同参画の分野に積極的な動きが見られるかどうか注目していましたが、逆に実行計画の概要から「女性」の文字が消え去り、いわゆるジェンダー予算やポジティブアクションに係る特記事項が見られなかったのは、何とも寂しい限りです。

 ただ、総合計画策定にあたり、若手・女性職員によるプロジェクトチームや若者・女性との対話を活用する方針については、大いに期待しています。
また保育士養成修学資金貸付事業の新設や看護師等就学金貸付事業の拡充といった、女性が担う場合が多い職種に対する予算配分についても評価いたします。
医療・福祉・保育の分野は、コロナ禍においてエッセンシャルワークとして改めてその重要性が認識されたと同時に、女性活躍が最も明瞭に現れる職種と捉える事もできます。

従ってぜひこれらを本市のリーディング産業と位置づけ、まちの創生の観点からも積極的に支援するよう提案致しますd。

イベント事業について

R6年度も大きな行政主催イベントが目白押しです。

 内房総アートフェスR5~6年度で総額3億8700万円、上総いちはら国府まつり5700万円、エンジン02 1100万円、子ども未来館・オープニングセレモニー400万円。
この他、アーティストインレジデンス640万円や五井会館における実証事業約2000万円といった、期間限定のイベント色が強い取組も散見されます。
 特に実行委員会形式の事業は、多額の予算が流れているにもかかわらず使途の実態がブラックボックス化する恐れもあります。

先ずはこうしたイベント後の会計報告や検証を、しっかり行って頂くよう念押しさせて頂きます。

 また例えば加茂地区の地域共生型デマンドタクシー実証運行等270万円、不登校児童生徒支援290万円、孤独孤立対策の強化16万円などといった予算額を見れば、イベントよりも遙かに低予算で生活課題の解消に繋がる事業が、まだ他にも埋もれているのではないかと思わずにはいられません。
 今ここに暮らす人々の生活課題の解消や、自然環境を徹底的に守るといった、地道ながらも人と環境に優しいまちを創造することが、これからの本市の「地方創生」の姿でなければなりません。
 イベントも仕掛け次第で、例えばジェンダーフリーやバリアフリーといった、メッセージ性が明確に打ち出され、参加者の行動変容に繋がる事業であって欲しいと強く願っています。

ガバメントクラウドファンディングの活用について

 R6年度予算案では、クラウドファンディング型ふるさと寄附の活用を3事業で予定していますが、今後はもっと思いきって事業数・規模共に拡大しても良いのではないでしょうか。

 市民が事業に主体的に参画することで、市政を身近に感じ理解や愛着が深まるというメリットは無論のこと、私は行政側のモチベーションアップ効果・つまり資金獲得のため、必然的に住民ニーズに合致したプロジェクトの立案や情報発信力強化に繋がるのではないかと期待しているところです。
 特にイベント事業に対する活用は、目標に達しなければそれだけ必要とされていないという判断となり、スクラップの根拠となります。

クラウドファンディング型ふるさと寄附の活用に当たっては基準が設けられたと伺っていますが、ぜひ積極的な活用に務めて頂くよう要望いたします。

地方創生に向けた交付金の活用について

 分科会審査では、「コミュニティアートを通じたまちづくり事業」「産業支援センター事務委託」など、デジタル田園都市国家構想交付金(デジ田交付金)の活用に着目しました。

 思い起こせば、こうした地方創生型の交付金は、H26年度からの先行型交付金に始まって、加速化交付金、推進交付金、コロナ禍では臨時交付金、物価高騰対策と次々交付されてきましたが、これまで、目的に照らした効果の判定や評価が適切に行われ、積極的に公開されてきたかといえば疑問符が付きます。
 使途が厳密に限定されない交付金は、行政がその先のストーリーを描いていなければ、ただ花火のごとく打ち上がって散るだけです。

 R6年度はひとまず地に足をつけた予算執行に努め、活用事業の効果・評価の更なる透明化を図って頂くよう求めます。
 デジ田交付金も健康・福祉、モビリティ、子育て教育、防災などあらゆる分野で創意工夫を凝らした活用が可能です。今後はそうした分野の活用や部局横断の新たな発想にも期待しています。

拠点まちづくりビジョンの実践について

 組合施工による五井駅東口の土地区画整理事業にしろ、八幡宿駅周辺の拠点整備基本計画の策定・推進にしろ、少し行政が先走りし過ぎているのではないかと危惧を抱いています。

 五井は整備区域内に文化交流施設を整備するべく粛々と計画が進められ、八幡は大学誘致の動きに先立ち民間誘導を前提とした土地の購入が予算化されていますが、どちらも地権者の意向確認や地元住民の意見聴取を行ってから進めるのが筋ではないでしょうか。

 今後も莫大な事業費が見込まれるプロジェクトだけに、いったん立ち止まることも想定に入れつつ慎重に進めて頂くよう求めます。

財政指標について

 R6年度予算はプライマリーバランスが普通会計でマイナス39億3000万とH6年度決算以来のマイナスとなりました。
 市債の発行額が基本指針の上限額50億円を大きく上回る95億3000万円に増加するため、実質公債費比率・将来負担比率・地方債依存度ともに悪化しています。

 まだ単年度だけでは判断できませんが、公共施設の老朽化の進行や一般廃棄物処理施設など大規模建設事業も控えていることから、中長期の収支の的確な見通しや、規律ある財政運営が尚一層求められます。指標の動向に注視していきたいと思います。

まとめ 

 以上縷々申し上げましたが、R6年度予算案を俯瞰すれば、地域福祉協議会への活動支援の強化障害者の入浴援護やおむつ給付など日常生活の質の向上梨の新規就農者の育成強化避難所施設等への再生可能エネルギー設備の導入など、大いに評価できる事業も数多く盛り込まれていました。

 R6年度は、R4年度版の実行計画まで掲げていた「人口27万人の堅持」から、新たな総合計画の柱「ウェルビーイングの実現」に向かって、着実に進化を遂げていると感じさせる予算編成と捉えています。
 従って、市民ネットワークはR6年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、賛成の立場を表明いたします。

 市長が今定例会冒頭のご挨拶で述べられた「ブーカ」の時代の行政経営には、市民ニーズの本質を捉え、前例にとらわれずにあらゆる方策を考え、決断・実行する職員の力が不可決です。
 執行部の皆さまの奮起に期待して、意見陳述といたします。